肘部管症候群とは?症状や原因、治療方法を紹介!

「肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)」ときいて「あれか!」とすぐに分かる人は少ないでしょう。それだけに、医師から診断された直後は不安が募ります。手術が必要なケースも少なくない肘部管症候群ですが、日常的な動作の積み重ねで誰にでも起こりうるのです。

そして、意外と誰しも経験があるような症状をもった病気なのです。この記事では、肘部管症候群の症状と原因、治療についてお伝えしていきます。

肘部管症候群という病気について

手

病院で突然、知らない病名を告げられたら、説明はなかなか頭に入らないものです。インターネットで情報集めに必死になっていると、余計に不安が増してしまいます。ここでしっかりと、病気について理解しておきましょう。

こんなことありませんか?

机の角などで肘をぶつけてしまって、指先がしびれた経験はありませんか?その後は、いつもと同じようにしているのに、指先が鈍く感じる・・・腕が重くて力が入らない・・・このような覚えはありませんか?「疲れがたまっているから」とか、「年齢のせい」など、なんとなく原因を考えて納得してることはあるのではないでしょうか。

実は、これは危険なサインなのです。しびれが慢性的に続いていたり、しびれが緩和されず、むしろ酷くなっているという人は要注意です。それは「肘部管症候群」かもしれません。

肘部管症候群とは

小指と薬指の感覚を、普段意識することはあまりないでしょう。

この部分の感覚と、指を曲げたり、伸ばしたり、開いたり、閉じたりする手指の筋肉を支配している神経を尺骨(しゃっこつ)神経といいます。尺骨神経が、肘(ひじ)の内側の肘部管(ちゅうぶかん)というトンネルで、圧迫や引き延ばしなどを受けると神経麻痺が発生することがあります。これが、肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)です。

もっと簡単にいうと、肘の部分で神経が長く圧迫されることで、小指側がしびれる病気です。

この病気のポイント

肘部管症候群の直接的な原因は、尺骨神経の圧迫や引き延ばしです。この「尺骨神経」がどこにあって、どんなものなのか知るとこの病気やこれから説明する内容を理解しやすくなります。

尺骨神経は、肘の内側付近から手関節に達する神経です。小指と薬指の外側への感覚をつかさどる神経で、指の運動もこの神経によって可能となります。そのため、尺骨神経がいろいろな原因で麻痺すると、神経の支配領域に運動麻痺や神経麻痺を起こすのです。

尺骨神経がどこにあるのか、イマイチぴんとこない、という人もいるでしょう。肘をぶつけて、ビリッと響く感覚を覚えたことはありませんか?そのときぶつけた部分に、尺骨神経が走っています。

肘部管症候群の症状

フォーク

肘部管症候群の症状がかなり進むと、指が常に曲がった状態で、触れるだけで痛みが走ります。では、初期症状でこの病気を見分けることは可能だったのでしょうか?初期症状からの進行具合を説明します。

初期症状は気付きにくい

肘部管症候群の症状は、初期は「普段誰しも感じたことがあるような痛み」です。初期症状としては、小指と薬指の小指側(手の外側)にしびれや軽い痛みを感じます。

この感覚自体は、指をはさんだりぶつけたときなど、直接的な外傷によっても起こる痛みです。この段階では、肘が原因の病気だという発想になかなか結び付きません。小さな異変でも病院に行き、原因を追究するような人であれば早期発見も可能です。

手がやせてくる

初期状態を放置すると、麻痺が進行していきます。手の筋肉が萎縮して、少しずつ手が痩せていきます。

ただ、毎日見ている手なだけに、変化が少しずつだと本人は見慣れてしまって気付かないことがあります。しびれを感じる手が、もう片方と比べてやせている気がするときは、肘部管症候群の可能性が大きいです。すぐに整形外科を受診してください。

日常の動作に支障が出始める

進行が進むと、特に手の骨と骨の間の筋肉がやせるので、指を開いたり閉じたりする力が弱ります。親指と人差し指で物をつまむ力も弱くなります。

人差し指と中指をクロスさせにくくなり、普段の指の可動域とちがう、という不安が次第にでてきます。パソコンを打ちにくい、箸が使いにくくなる、など細かいことがしにくくなります。また、手で水をすくう動作もしにくくなります。

指の変形が起こることも

肘部管症候群の症状が進むと、「かぎ爪指」という指の関節の変形が起こります。仕事で長年指を酷使したり、脳こうそくなどによる筋肉の萎縮による硬直でも起こる症状です。

薬指と小指の付け根の関節が伸びて、第1・2関節が曲がったまま硬直してしまう状態です。手が変形して鷲の手のようになるため、鷲手変形(しゅうしゅへんけい)とも呼ばれます。

肘部管症候群の原因って?

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初期症状で気付きにくく、放置すると日常生活にも支障を及ぼす厄介なこの病気は何が引き金で起こるのでしょうか。原因も、日常生活に潜みます。

変形性肘関節症の人が多い

現在では、変形性肘関節症による肘関節の変形を原因とする人が多いです。肘の関節は、3つの関節から成っています。

その周りは、靭帯や腱などで支えられています。関節を形成している骨の先は、関節軟骨で覆われていて、クッションのように骨にかかる衝撃を和らげてくれる役割を果たします。この軟骨部分がすり減って、ひじに痛みや変形などが起こる病気を、「変形性肘関節症」といいます。

肘の使い過ぎによるもの

野球やテニスなど肘をよく使うスポーツや、長年肘に負担をかける動作が多かった人に起こりやすいといわれます。

変形性肘関節症の原因もまた、外傷や先天異常によるものよりも、肘の使い過ぎを発端とするものがほとんどです。肘の酷使によって、骨の軟骨部分がすり減ると、硬い骨どうしが直接ぶつかりあうことになります。

その他の原因

ほかに考えられるのが、骨折や加齢に伴う肘の変形、神経を固定している靭帯が厚くなったことによる圧迫、肘部管の内外にできたガングリオンなどの腫瘤による圧迫、慢性関節リウマチ、軟部腫瘍による圧迫などがあります。尺骨神経の圧迫による神経麻痺なので、原因はさまざま考えられます。

日常的なものでは、長時間肘を曲げ続けることでも症状が出るので、長時間の運転、肘を曲げて手を枕代わりにして長時間寝ることなどもあります。

肘部管症候群の検査と診断について

病院

肘部管症候群の診断方法について説明します。また、肘部管症候群の可能性を簡単に見極める方法もお伝えします。

病院での診察

正確な診断は、整形外科で行われます。まず、しびれがある場合は、その範囲を調べます。小指と薬指の小指側(手の外側)の指先にしびれがある場合は、尺骨神経の障害であることに間違いありません。

尺骨神経の障害では、この肘部管症候群が最も頻度の高いものになります。肘の骨折をして変形が残っている場合は、さらに可能性は高くなります。

フローマンテスト

小指と薬指が正常に動くかを調べるほか、フローマンテストが用いられることがあります。親指と人差し指、人差し指と中指、中指と薬指、薬指と小指の順番に、間に紙をはさんで、紙を引っ張ります。

そのとき、親指が曲がらないかどうかを観察するテストがです。親指と人差し指の間の紙が引き抜かれたり、親指の上から1番目の関節がガクッと曲がるのは、肘部管症候群の特徴です。正常であれば、親指は曲がらず、紙も引き抜かれにくいのです。

画像検査

肘の骨折がないか、尺骨神経を圧迫するものがないかどうかを調べるために、CTやMRIが用いられます。

肘の変形がある場合には、X線(レントゲン)検査をします。肘の外反変形が見られたり、関節の隙間の狭いことが、この病気の特徴です。

自分で行える簡易診断の方法

正確な診断には、必ず医療機関の受診が必要ですが。しかし、病院が遠方であったり、様々な事情で気にはなっても気軽に病院に行けない人もいるでしょう。

簡単に自分で確かめる方法をご紹介します。肘を軽く曲げて、肘の骨の溝を走っている尺骨神経(肘の内側)を軽く叩いてみてください。小指と人差し指に電気が走るような感じがあれば、肘部管症候群の可能性が高いです。

肘部管症候群の気になる治療方法

医師

慢性的に進行して、手術が必要になることも多い病気です。どのような状態になると手術を要するのでしょうか。

しびれが軽度の場合

軽度の場合は、安静にして様子をみることもあります。仕事やスポーツなどで肘を酷使したことが原因の場合は、その時間を短くするなどで症状が緩和することがあります。

睡眠時の姿勢が原因の場合は、姿勢を変えるなども効果的です。しびれがなくなったからといって、また酷使すると再発しますのでご注意ください。

薬による治療

ボルタレン、ロキソニンなどのNSAID(非ステロイド消炎鎮痛薬)を服用することで症状が緩和します。手軽でいいのですが、難点もあります。それは、これら鎮痛薬を数か月以上服薬すると、胃腸症状、腎機能低下が高い確率で発生することです。急性期をすぎたら、主治医と相談し、減量や休薬を考えましょう。

メチコバールなどに含まれるビタミンB12には、神経の再生を促進する作用があります。メチコバールの場合、服薬4週間で64%の改善率があるようです。これにも難点があり、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、発疹などの発症があります。また、効果には個人差が大きく、2か月以上服薬していても改善が見られなかった事例もあります。

しびれが重度になると手術

手術により原因を取り除くことができる場合があります。尺骨神経を圧迫しているものを除去することで圧迫から解放され、症状がなくなることもあります。神経の緊張が強い場合には骨をけずったり、神経を前方に移動させる神経前方移行術という手術が行われます。皮下前方移行術、筋層下前方移行術など位置を変えて圧迫から解放する方法もあります。

それぞれ原因となるものによって術式は異なりますが、外科的に原因を取り除ける場合は、手術によりかなり改善されます。肘関節部の局部麻酔で手術を行い、手術時間も短時間であることが多いです。術後の肘関節のギプス固定の有無など、病院によって方針が異なることもあるので、信頼できる医師に納得いくまで説明してもらうとよいでしょう。

まとめ

肘部管症候群は、早期発見が大切です。早い段階で原因を除去したり、治療を開始することで、その後の指の変形などの症状を回避できます。ひどくなると、箸が持てずにフォークやスプーンでなければ食事ができない人もいます。

長く病気を放置しておくと、手術後の経過も悪くなる傾向があります。指のしびれや痛みがあるときは、できるだけ早く医師の診断を受けて、治療を受けることをおすすめします。特に小指側にしびれがある人は、できるだけ早く専門医を受診するようにしてください。

  
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