寒くなって空気が乾燥し始めると流行するのが、風邪(かぜ)ですよね。すでに風邪をひいたという人も、いるかもしれませんね。風邪にかかると、寒気がして発熱したり、喉(のど)の痛みや咳が生じたり、鼻水や鼻づまりが発生したり、と様々な症状が現れます。そして、これらの症状が現れると体力が消耗するのに加えて、食欲まで無くなってしまいます。
風邪の対処方法は、基本的に病院を受診して処方薬や市販薬を服用した上で、休養や睡眠などで安静にすることで体力回復を図ることが一般的です。しかしながら、薬剤の服用で安心してしまい、食事による栄養補給や水分補給がやや軽視されがちな傾向があることは否めません。
そこで今回は、風邪からの早期回復のポイントとなる食事による栄養補給について、風邪の症状別におすすめな食べ物を紹介したいと思いますので、参考にしていただければ幸いです。
そもそも風邪とは?
風邪からの早期回復のポイントとなる食事による栄養補給について知るには、その前提として風邪に関する知識を知っておく必要があります。
そこで、そもそも風邪とはどのような病気なのか、風邪の原因や風邪の症状といった風邪に関する基礎知識を再確認しておこうと思います。
風邪とは?
風邪という病気は、鼻や喉といった上気道にウイルスが感染することによって生じる急性鼻炎や急性咽頭炎などの急性炎症の総称です。
一口に風邪と言っても、風邪をひき起こすウイルスの種類は多岐にわたり、しかもウイルスの種類や感染した人の免疫力・抵抗力によって様々な症状が現れます。
ちなみに、風邪にかかることで生じる風邪の諸症状は、基本的に身体に備わる免疫機能がウイルスに抵抗しようとするための防御反応だとされています。
風邪の原因
風邪の原因は、基本的に鼻や喉といった上気道にウイルスが感染することだとされます。加えて、身体の中でウイルスに抵抗する免疫機能が低下することも、風邪の原因の一つと言えるでしょう。ウイルスが上気道に感染する感染経路や風邪を引き起こすウイルスの種類は、以下の通りです。
ウイルスの感染経路
風邪はウイルスが上気道に感染することによって罹患しますが、ウイルスが上気道に辿りつく経路(感染経路)には三種類が存在します。
- 空気感染:ウイルスが空気中を浮遊し、その空気を吸い込むことによって感染。
- 飛沫感染:ウイルス感染者の咳やくしゃみによって、ウイルスを含む飛沫から感染。
- 接触感染:ウイルス感染者や感染者の使用物と直接接触した自分の手などを通じて感染。
ウイルスの種類
風邪を引き起こすウイルスの種類は多岐にわたり、主な原因ウイルスとしては次のようなウイルスが挙げられます。
- ライノウイルス:最も一般的な風邪の原因ウイルス。主症状は鼻水や鼻づまりです。
- コロナウイルス:冬場に流行するウイルス。
- インフルエンザウイルス:冬場に流行し、高熱・倦怠感・筋肉痛などを伴います。
- アデノウイルス:夏場に流行するウイルス。結膜炎を伴うことがあります。
- エンテロウイルス:夏場に流行し、胃腸で増殖して下痢症状を伴います。
免疫力の低下
体内にウイルスが侵入すると、免疫細胞である白血球が働き、ウイルスを攻撃して死滅させます。この免疫細胞の白血球には、マクロファージやリンパ球(T細胞・B細胞・NK細胞)といった種類があり、これらが連携してウイルスに対抗します。
しかしながら、このような免疫機能の働きを低下させる事情があると、ウイルスに感染しやすくなり、ウイルス感染後も回復が遅くなってしまいます。そして、免疫機能・免疫力を低下させる事情としては、主に次のようなものが挙げられます。
- 疲労
- 睡眠不足
- 体温の低下
- 栄養不足、栄養バランスの偏り
- 高齢者あるいは子供
- 病中病後
それゆえ、風邪の予防や回復には、疲労回復・十分な睡眠・栄養補給などによって免疫力向上を図らなければならないのです。
風邪の症状
風邪にかかることによって現れる風邪の諸症状は、とても多岐にわたります。そして、前述の原因ウイルスの違い、ウイルス感染者の免疫力・抵抗力などによっても、症状の現れ方は異なります。風邪で現れる可能性のある症状は次の通りで、基本的には以下の症状が複合的に現れます。
- 咳(せき)
- 咽頭痛、喉の痛み
- 鼻症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)
- 発熱
- 悪寒、寒気
- 頭痛
- 下痢
- 全身倦怠感
- 筋肉痛
- 関節痛
風邪の際の食事による栄養補給について
それでは、このような風邪に関する基礎知識を踏まえて、風邪からの早期回復のポイントとなる食事による栄養補給について、説明していきたいと思います。
まずは、風邪の症状別におすすめな食べ物を紹介する前に、風邪の際の食事による栄養補給について、必要な栄養素や栄養補給時の注意点など総論的な事柄を紹介したいと思います。
消化の良い食べ物を食べる
風邪にかかってしまった場合、胃腸が弱ってしまい消化機能が低下することが多く見られます。エンテロウイルスのように、いわゆる胃腸風邪を引きおこすウイルスに感染した場合は当然として、それ以外のウイルス感染による風邪であっても胃腸の調子が悪くなってしまうことが往々にして見られます。
ですから、風邪の際には、基本的に消化しやすい食べ物を食べるようにしなければなりません。そして、消化しやすい食べ物とは、水分を豊富に含んだ柔らかい食べ物です。
風邪の際に避けたほうが良い食べ物
風邪の際には消化の良い食べ物が推奨されるわけですから、逆に言えば、消化しにくい食べ物や刺激物などは避けるべきでしょう。
例えば、肉類や脂っこい料理など脂質を多く含む食べ物は消化に時間がかかるので、胃腸が弱っている時には負担となり、消化不良を引き起こしかねません。また、刺激物としては、カフェインを含むコーヒー、アルコールを含む酒類全般、唐辛子などのスパイス類なども避けたほうが良いでしょう。
決して無理をして食べない
風邪からの早期回復には、前述のように免疫力向上が必要不可欠ですが、だからと言って無理矢理にでも食事をして栄養補給をしなければならないわけでもありません。
そもそも風邪にかかって胃腸が弱っていれば、無理矢理食べても消化不良を引き起こしてしまいます。ですから、風邪の際には、基本的に自分の体調と相談しながら、無理のない範囲で、なるべく栄養補給をするというスタンスでいることが大切になります。
身体を温める食べ物を食べる
風邪をひいて発熱するのは、ウイルスが基本的に熱に弱いことから、体内に侵入したウイルスを発熱によって死滅させるためです。言い換えれば、発熱することによって、一時的に免疫力を強力に高めている、と言うこともできます。
とすれば、前述のように体温低下は免疫力低下の要因ですから、逆に体温を下げないように身体を温める食べ物を摂取することによって、免疫力を高く維持することにつながるのです。
ちなみに、体内に侵入した細菌については抗生物質という薬剤の服用が効果を発揮しますが、この抗生物質はウイルスに対しては効きません。体内に侵入したウイルスに対しては、基本的に自分自身の免疫機能に頼るしかないわけです。
症状に応じた食べ物を食べる
前述したように風邪で現れる可能性のある症状は、とても多岐にわたります。それゆえ、単なる鼻水や鼻づまり程度の、いわゆる鼻風邪の場合と、発熱して体温が高くなっている場合とでは、自ずと必要とされる食べ物や飲み物も異なります。
ですから、風邪の際には、自分自身の症状を見極めた上で、その症状に応じて必要とされる食べ物を摂取するようにしましょう。
風邪の際の栄養補給時に必要な栄養素
栄養素はバランス良く摂取することが理想ですが、風邪の際には、特に次のような栄養素や栄養成分を意識的に摂取するようにしましょう。
- 炭水化物:基本的に身体を動かすエネルギー源となります。
- たんぱく質:免疫細胞はたんぱく質が主な材料となって生成されます。
- βカロチン(ビタミンA):粘膜細胞を正常に保つ働きがあり、免疫力を高めます。
- ビタミンC:抗酸化作用があり、皮膚や粘膜細胞の維持に必要不可欠です。
- ビタミンE:抗酸化作用があり、免疫力を高めます。
- ビタミンB1:炭水化物からのエネルギー産生を促進する働きがあります。
- ミネラル:ミネラルの中でも特に亜鉛は、各細胞の活性に必要不可欠です。
風邪の症状別のおすすめな食べ物
このように風邪からの早期回復のポイントとなる食事による栄養補給については、基本的に消化の良い食べ物を適度に摂取して、可能であれば症状に応じて必要とされる食べ物を食べたり、必要な栄養素に気を配るようにします。
それでは、どのような食べ物が具体的に推奨されるのでしょうか?そこで、風邪の症状別のおすすめな食べ物について、ご紹介したいと思います。
風邪全般の初期・引き始めに、おすすめな食べ物
風邪の原因となるウイルス感染の初期、つまり風邪の引き始めは、体内でのウイルス増殖がそれほど進んでいません。そのため、免疫機能を食べ物で上手くサポートすることによって、ウイルスを撃退することも可能です。
消化の良い食べ物
まずは、前述のように消化の良い食べ物でなければいけません。というのも、消化に時間がかかる肉類や脂質の多い食べ物は、それだけ消化にエネルギーが必要となり、ウイルスと戦うためのエネルギーまで奪ってしまいかねないからです。具体的には、次のような食べ物を食べると良いでしょう。
- おかゆ
- うどん
- スープ類
身体を温める効果のある食べ物
このように消化の良い食べ物であることを前提として、身体を温める効果のある食べ物を摂取すると良いでしょう。前述のように体温低下は免疫力低下の要因ですから、逆に体温を下げないようにすることで、免疫力を高く維持することにつながるからです。具体的には、次のような食べ物を摂取すると良いでしょう。
- おかゆ、温かいうどん(煮込みうどん)、温かいスープ類
- 湯豆腐
- 卵酒
- 生姜(しょうが)
咳(せき)や喉(のど)の痛み・炎症に、おすすめな食べ物
咳が出たり、喉の炎症で痛みがある時には、ハチミツ(はちみつ)を混ぜた生姜湯を飲むと良いでしょう。
生姜は加熱すると、ジンゲロールという成分がショウガオールという成分に変化し、ショウガオールの血行促進作用によって身体が温まります。しかしながら、生姜をすり下ろして、お湯に溶かすだけでは、苦味や辛味があって非常に飲みにくいですよね。そこで、ハチミツを加えることによって甘味をプラスすることができ、飲みやすく調整できるというわけです。
しかも、ハチミツには抗菌作用があることは良く知られていますが、長崎大学の研究報告によると、ハチミツには抗菌作用の他にも抗酸化作用・抗炎症作用があり、一部のウイルスに対しての抗ウイルス作用もあるとされています。
ということは、ハチミツ入りの生姜湯は、生姜による血行促進で身体が温まることによるウイルス抑制と、ハチミツの抗炎症作用・抗ウイルス作用とによって、二重のウイルス対策となるわけです。
発熱している時に、おすすめな食べ物
前述したように、風邪の際に発熱するのは、ウイルスが基本的に熱に弱いことから、体内に侵入したウイルスを発熱によって死滅させるためです。それゆえ、安易に解熱鎮痛剤によって体温を下げることは、免疫機能による身体の防御反応を邪魔することになってしまいます。ただし、あまりに体温が高くなると、身体に障害が発生する危険性もありますので、高熱が続くような場合には解熱剤の服用が必要です。
このような発熱時には、発汗による脱水症状の予防と、発熱によって消耗した体力の回復がポイントになります。ですから、基本的には発汗とともに失われる水分・ミネラル・ビタミン類を補給するために、水分補給と水分が豊富な食べ物を摂取すると良いでしょう。具体的には、次のような食べ物・飲み物を摂取すると良いでしょう。
- スポーツ飲料
- 麦茶
- 100%果汁の果物ジュース
- 味噌汁
- 果物類(いちご、みかん、レモンなど)
- 梅干し
- ゼリー、機能性食品のゼリー
- ノンカフェインの栄養ドリンク
- 甘酒
悪寒や寒気がする時に、おすすめな食べ物
風邪による悪寒や寒気といった症状は、体内に侵入したウイルスに対抗しようと、身体が発熱しようとしている前触れです。このような悪寒や寒気の症状がある場合は、なかなか食欲が出ないのが通常です。
もし食欲がある場合には、前述のような身体を温める効果のある食べ物を食べるようにしましょう。
下痢をしている時に、おすすめな食べ物
風邪によってお腹を下している時には、無理に食べても胃腸に負担がかかるだけですから、下痢症状が小康状態になってから食べ物を食べましょう。また、下痢症状は、思っている以上に水分を体外へと排出しますから、脱水症状に気を付ける必要があります。
ですから、風邪による下痢症状の際には、基本的には水分補給を中心にして、下痢症状が小康状態になってから食べ物による栄養補給をはじめましょう。具体的には、次のような食べ物・飲み物を摂取すると良いでしょう。
- スポーツ飲料
- 麦茶
- すり下ろしたリンゴ
- ヨーグルト
- おかゆ
- ゼリー、機能性食品のゼリー
風邪全般の回復期・治りかけに、おすすめな食べ物
発熱が治まったり、その他の風邪の諸症状が落ち着いたら、消耗した体力を回復させる必要があります。
そのためには、エネルギー源となる炭水化物に加えて、失われたミネラルやビタミン類と免疫細胞などの材料となるたんぱく質の摂取を徐々に増やしていかなければなりません。ただし、身体が回復傾向にあるとは言っても、胃腸などの消化機能も本調子ではありませんから、十分に体調を見極めながら食事量を増やしていく必要があるでしょう。
ですから、風邪からの回復期には、徐々にミネラル・ビタミン類・たんぱく質を含む食材を食べるようにしましょう。具体的には、次のような食べ物を摂取すると良いでしょう。
- ごはん(お米)
- うどん
- 緑黄色野菜
- 白身魚
- 肉類(豚肉・鶏肉)
- 卵
まとめ
いかがでしたか?風邪からの早期回復のポイントとなる食事による栄養補給について、風邪の症状別におすすめな食べ物を紹介しましたが、ご理解いただけたでしょうか?
たしかに、風邪の対処方法は、病院を受診して処方薬や市販薬を服用した上で、休養や睡眠などで安静にすることで体力回復を図ることが基本です。しかしながら、薬剤の服用と安静だけでは、風邪からの早い回復は望めません。薬剤の服用と安静に加えて、食事による栄養補給や水分補給が適切になされることで、はじめて風邪からの早い回復が実現するのです。
もし風邪をひいてしまった場合には、是非とも本記事などを参考にして、風邪からの早い回復を実現してくださいね。
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