普段、何気ないことで「頭をぶつけちゃった」ことがあっても「大したことない」と思って忘れてしまうことがあると思います。その何気ないことが後に心配なことに進展するとしたら不安になりますね。
家族に、もし「そういえば最近、様子がおかしいな」ということが思い当たるようなら、今日のテーマである「慢性硬膜下血腫」という疾患の可能性がありますので参考にしてみてください。
この記事の目次
慢性硬膜下血腫(まんせい こうまくか けっしゅ)
漢字を見るだけでも脳の病気だと分かる人も多いと思いますが、この硬膜下血腫とは、冒頭にもあったように「何気ない」程度に頭をぶつけた結果でも起こりうる疾患なのです。(※硬膜とは、頭蓋骨の中で、大事な脳を包んでいる膜のことです。)
好発部位は、側頭、前頭、頭頂であり、左右どちらかの脳に血腫が出来ることが多いのですが、まれに両側性といって左右の両方に血腫が出来てしまう患者も1割程度見られます。
慢性硬膜下血腫とは
「脳を覆う硬膜」と「脳の表面」の間に、薄いけれど丈夫な膜で袋状になった中に血液が溜まってしまう慢性の出血が、脳を圧迫して良くない症状が出てしまう病気です。これを頭蓋内の水様の血腫の合併という意味で「慢性硬膜下血腫」といいます。(※血腫を覆っている皮膜は、厚い外膜と薄い内膜から構成されていますので、しっかりした膜になっているのですね)
また、その袋になる仕組みを簡単にいうと、「脳の表面と硬膜を繋いでいる橋静脈というところに傷がつく」ことによって、少しづつ且つゆっくりと出血を起こす状態です。ちなみに、その膜で出来た袋状の中にある慢性の出血の正体は、さらさらとした薄い血液です。(※血性の貯留液ともいいます)
膜の不思議
血腫を作っている薄い膜は、これだけ医学が発達しても2012年の時点でも、「どうやって作られているか」は、まだ分かっていないのです。薄い膜の正体は、科学的には分からないとしても人間の体が血管から漏れた血液を「脳に直接当たらないように包んでいる」ことは不思議ですね。
このような慢性硬膜下血腫という疾患は、特に頭をぶつけたことがある高齢者や幼少の子どもに起こります。
高齢者と血腫
慢性硬膜下血腫の患者が高齢者の場合には、ご家族が急に「認知症の状態」になってしまい、病院に連れていくケースもあります。高齢者は、室内での転倒や家具での打撲等がきっかけとなって発症することもあるので、周囲が気付かないこともあります。
そのため高齢者が一人暮らしの場合には、寝込んでしまったり、治療が遅くなってしまうことが心配ですね。
慢性硬膜下血腫の原因
高齢者が頭を室内でぶつけてしまうような軽微な打撲でも発症することがあります。それは、脳組織が損傷された場合に「硬膜下腔」での凝固活性が起こるのではないかと考えられています。(※この場合の凝固とは、血液を固める状態のことです)
そのような状態になると、一緒に線溶系活性も起こるために、双方のバランスが崩れてしまい、硬膜下での出血が繰り返されることで慢性化し、結果として慢性硬膜下血腫となります。(※血液を溶かしてしまうこと)
また、脳の表面にある「くも膜」という組織が、打撲等の衝撃によって裂けることで、硬膜下のスペースには血腫が「周囲の肥厚した膜に包まれる」ような形で形成されるのです。
身近にある原因
原因となってしまう頭部の外傷の直後には、一瞬の痛みで終わってしまったり、症状が少ないことから、病院を受診することがない人がほとんどのため原因が分からないことも多くあります。
- 机のかどに頭をぶつけてしまった
- 雪道で転んでしまった
- お酒の席で酔って転んでしまった
- 車に乗り込むときに頭をぶつけてしまった
軽症ゆえの原因不明
慢性硬膜下血腫は、頭をぶつけたりした後に、ある程度の時間が経過してから症状がでることが外傷を受けた日を忘れてしまって「頭部外傷の原因を特定できない」という問題も出てくる疾患です。(※しかし、中には原因の分からないまま発症することもあるので注意が必要です。)
慢性硬膜下血腫の症状
軽度の意識障害では、元気がなかったり、認知症症状が見られたりします。この時に見逃してしまい血腫が大きくなってしまうと意識障害が進行してしまい昏睡状態になることがあります。
そうなると血腫の圧迫が脳ヘルニアの状態までいくと脳の深部にある生命維持中枢となる脳幹が侵されるので、呼吸困難を引き起こしてしまうので最悪の場合には死に至ることさえあります。
現われやすい症状
頭部を受傷(外傷がない場合もあります)してから、平均1か月ほどで下記の症状がみられることが多いです。(※人によっては、慢性期といって3週間~2ヵ月までと症状が出るまでに若干の幅があります。)
- 頭痛(風邪等の原因がない頭痛)
- 吐き気・嘔吐(特に午前中)
- 片側の麻痺・半身の麻痺
- 言語障害(言葉が出にくい)
- 意識障害
- 自発性の低下・意欲減退
- 認知症症状(精神的な変化)
- 歩行障害(歩き方がおかしくなった)
高齢者の場合には急に認知症が進んだと間違って判断されることがないように脳神経外科を受診して検査を受けることも大切です。
若年層の症状
典型的な症状を起こすのは年齢等によっても変わることがあります。
若年層での症状の特徴は、主として頭痛や嘔吐を中心とした圧迫症状(※頭蓋内亢進症状)、片麻痺、失語などの局所的な神経症状がみられます。
脳について
頭蓋骨内の脳は、触れると崩れるほど柔らかいのですが、そのために守ってくれている頭蓋骨に直接当たってしまうと壊れてしまいます。壊れた状態を脳挫傷、脳挫滅と呼んだりします。そうならないように衝撃を吸収するようなクッションの役割のある水が入っています。(※この水を脳脊髄液といいます)
脳は、脳の中にある脳室というお部屋の中で、肌のように365日ずっと新しく作り出されて入れ替わりますが、何らかの原因が起こるとこの水が上手く吸収をされないという状態になります。
水頭症
水を吸収できなくなった脳の中の水はどんどん溜まっていきます。すると大切な脳を圧迫してしまうことで、脳の機能をマヒさせてしまうのです。
初めのころには、この水の圧迫のために頭蓋骨の圧力は上がっていきますが、脳室が拡大してくると測定した圧力が大体正常に戻ってくるようになります。この状態が正常圧水頭症といいます。
水頭症の症状
CTで見ると脳が水に押されてしまい、脳室が大きくなっているのが分かります。その頃の症状は、ボケてきてしまい、足がふらついたり、尿失禁(※尿意が分からなくなるためです)するようになります。
水頭症の治療
溜まっている水をお腹などに導いて腹膜の静脈から吸収させたり、直接静脈へ吸収させることで良くなります。手術にはいくかのシャント手術があります。
- 頭からお腹へチューブを通す(脳室~腹腔シャント)
- 腰からお腹へチューブを通す(腰椎~腹腔シャント)
- 脳から心臓へチューブを通す(脳室~心房シャント)
これらは、正常圧水頭症の原因等を考慮して症例に合わせた適切なシャント手術を選択してくれます。(※脳室~心房シャントを選択する頻度は低いです)
疫学(慢性硬膜下血種)
慢性の硬膜下血腫は50~60代の比較的、年齢の高い中高齢者に多いとされていますが、年間の発生頻度としては、人口10万人に対して1~2人程度です。
しかし、頭部外傷での正確な頻度としては不明な部分が多いです。また、頭部外傷の事実がないのに、発症する特発例としては、約20%と言われています。
お酒と発症
アルコールを常飲している男性に多いことも特徴です。それは、飲酒の際に「酔っていて覚えていない」ことも可能性として高いことが伺えます。それに加えて、トラブルや転倒などでの頭部を強打することにより血管が損傷するなどの外傷でも発症することが知られています。
慢性硬膜下血腫の検査と診断
脳神経外科で受診すると、頭部CTを撮影することがありますが、脳に影が見えることが分かり、慢性硬膜下血腫が疑われるとMRIで脳内の状態を撮影して画像診断することになります。
硬膜下血腫になりやすい人
外傷を受けたかどうかが不明の人については、発症に影響を及ぼす原因となるものを考えていきます。
具体的には下記のような状態に当てはまる人となりますが、不明のまま発症する人は全体の10%~30%存在します。
- お酒をよく飲む
- 脳に萎縮がある等で脳梗塞の薬を服用している(抗凝固剤)
- 水頭症に対する短絡術などの手術後である
- 透析をしている
- 癌が硬膜に転移している
慢性硬膜下血種と急性硬膜下血腫
両方とも「硬膜下血腫という疾患」なのですが、大きな違いとしては「脳の損傷」の有無です。大人の場合での慢性硬膜下血腫の場合は「脳の損傷」がないことがほとんどです。
慢性硬膜下血腫の治療
基本的には手術するのが一般的なので局所麻酔下による「穿頭血腫洗浄ドレナージ術」という手術方法で治療していきます。
※病院や医師によっては、穿頭血腫ドレナージ術や、穿頭血腫除去術(せんとうけっしゅじょきょじゅつ)という治療の呼び方になりますが「血腫を取り除く」という意味では同様の手術と考えます。
穿頭血腫洗浄ドレナージ術
手術の方法と手順は下記のようになりますが、患者の状態や出血の様子で変わってきます。
- 局所麻酔 頭部の血腫が一番肥厚している箇所の皮膚から局所麻酔をする
- 切開 麻酔をした箇所に3㎝程度の切開をする
- 開孔 頭蓋骨に1か所の小さな穴を開ける
- 洗浄 硬膜と血腫外膜(※血腫を包んでいる膜)を切開して内部の血腫を洗浄する
- 挿入する ドレーンを挿入して管の一部を身体の外に出しておくことで排出する
- ドレーンを抜く 経過が良いことを確認ののちにドレーンを抜きます。(※ドレーンを抜く時には通常痛み等はありません。)
穿頭ドレナージ術のメリットである症状の改善としては、認知症状や頭痛、麻痺等の症状が徐々にではありますが手術の直後から現れるということが分かりやすいメリットだと思います。
手術の課題点
身体にメスを入れることや体内の組織を空気に触れる状態にしてしまうので、手術には何らかのリスクを伴うものです。
今回の穿頭血腫洗浄ドレナージ術も例外ではなく術後には、いくつかの課題や合併症があります。
慢性硬膜下血種の再発
約10%の人には再発がみられるといいます。特に高齢者では、脳萎縮の強い症例があり、その他にも血液凝固異常を起こしたり、髄液短絡術後症の場合では、再発の危険性は高くなってしまいます。
しかし手術の手技での明らかな違いは今のところ出ていないようです。経過を観察したあとに症状が再発したり血腫の消退傾向(病気が消えたり回復している様子)がない時には、手術を再び行うことになります。
術後痙攣(じゅつご けいれん)
血腫を除去したり、ドレナージュの手術治療を受けると、脳への刺激が起こるため、こちらも特に高齢者の場合だと全身痙攣を起こす可能性があります。
このような場合には、手術の前に予防の意味で「抗痙攣剤」を使うことがあります。
緊張性気脳症
手術後の血腫腔(血腫によって作られた空洞)の残存空気が温められて膨張することで起こります。この膨張によって脳を圧迫され頭蓋内占拠性病変(ずがいない せんきょせい びょうへん)での症状が現れます。
術後感染症
手術後の感染として硬膜下膿瘍や髄膜炎を合併する危険性があります。こちらの感染症は、どの手術でも起こりうるリスクなので、術後には抗生剤を投与するのが一般的ですね。
ツイストドレナージュ
手術の種類には、ツイストドレナージュという方法があります。
この手術は、血腫があった箇所の洗浄をせずに排出するためのドレーンを挿入するだけの手術をすることです。洗浄する手術と効果の差には、大きな開きはないようです。
除去とドレナージ(ドレナージュ)
ドレナージュとは、開けた箇所に管を挿入して、外に付ける袋に患部の良くない血を流して排出することなので、血腫を取り除くだけなのか、管でしばらく中の血を外へ出していくのかということが違いとなります。
ドレナージュをするのは、出血量が多い時や症候性がある場合に行われることが多いです。所要時間は、1時間以内という短時間で行われるために比較的、患者にとっては負担の少ない手術といえますね。
ドレナージュのメリット
ドレナージュを選ぶ医師が多い理由としてのメリットは、下記のようにいくつかあります。
- 手術時間が30分程度という短い所要時間(※患者がかなり高齢でも体の負担が少ない)
- 麻酔も局所で済むことが多い(※リスクを小さく抑えられる)
- 手術直後から症状の改善がみられる
- 1~2週間程度の短期間の入院ですむので普通の生活へ戻りやすい
このように治療を早く受けることが出来ると社会復帰も早くできるので、高齢者が寝たきりになるということを防ぐことも可能になります。出来るだけ元気だったころと同じような生活に戻してあげることが重要な治療選択の基準になりますね。(※入院の期間については患者の状態や主治医の考えにもよるので若干変わってきます)
大開頭手術
ひと昔までは、全身麻酔下においての大開頭・被膜摘出術という形で行われていました。
しかし現在は、負担の少ない穿頭血腫洗浄ドレナージ術が主流になったため、石灰化してしまった慢性硬膜下血腫や難治性の再発性慢性硬膜下血腫といった特殊な症例でしか「慢性硬膜下血腫」での大開頭術はしなくなりました。
手術以外の治療法
軽症の場合には、自然治癒することもあります。数年前までは、手術しかないと思われていた治療も「保存的な治療」をすることで改善すると見られるようになりました。
また、慢性硬膜下血腫の自然治癒例での報告もあるのですが、治癒に至った仕組みはまだ解明はされてないのですね。
薬剤治療の課題
また、症状が軽微な場合や血腫が少量だと「自然に治癒することがある」と知られていますが、漢方等の薬剤での治療も研究が進められています。
慢性硬膜下血腫の経過と予後
手術をすれば改善されるとはいえ、慢性硬膜下血腫は再発のリスクを伴う疾患として経過観察が大切になります。慢性硬膜下血腫の再発は、手術から早い時期に起こるために、退院してからは気を付けてあげましょう。
時間がかなり経ってからの再発はほとんどないのですが、ゼロではないので低い確率で起こることがあります。再発が進行性の場合には、緩やかな進行をしていきますが、脳ヘルニアを起こしてしまうほどになると、重篤な後遺症を残してしまったり、死に至ることもあります。
再発の原因となるもの
治療をしても再発する確率が高いもの事実です。再発の因子となるものを自分でも理解しておくことで、今後の生活で気を付けることも分かってくると思いますので下記に記しておきますね。
- 慢性アルコール中毒症
- 高齢者
- 乳幼児
- 血液透析
- 血小板凝集抑制剤(※脳梗塞治療や予防に使う血液をサラサラにさせる薬)
- 血友病などの血液凝固障害
- シャント手術を受けている
いろんな治療で使う薬等は仕方がないところがありますが、再発の原因に結びつくようなアルコールは、肝臓のためにも今のうちから防ぐ努力はしていきたいですね。
生活と脳ドック
自分の脳の状態が気になっても外側から確かめることは難しいですね。脳は頭蓋骨に囲まれているので、その中を見るには検査で脳神経外科医による画像診断を受ける必要があります。
秋田県には、病気になっているかどうかを確かめる方法があるそうです。内科の人間ドックのように、脳にはドックがあるのですね。
MRI機器を使って調べられることは、脳こうそく、脳内出血、脳腫瘍、脳萎縮などです。また、MRI・MRAでは強力な磁場を利用した脳の形態画像や脳の血管像を撮影が可能です。
医療機器で出来ること
これにより、放射線での被ばくをせずに診断が可能です。
- MRIでは、脳こうそく、脳腫瘍
- MRAでは、脳の血管の狭窄や閉塞、動脈瘤
このように撮影できることによって、血管壁の状態や血管の詰まり具合を調べる頸動脈超音波検査も行ってくれます。(※身体の状態によっては受けることが出来ないので詳細は下記へ相談してからにしましょう)
地方独立行政法人秋田県立病院機構の取り組み
秋田県にある地方独立行政法人秋田県立病院機構の取り組みを少しご紹介いたしますね。
秋田県立脳血管研究センターでは、手術・治療情報データベース事業への参加をしています。これは、全国の手術・治療情報を登録することで集計・分析をしていき医療の質の向上に役立て、患者さんへの医療を提供することを目指すプロジェクトということです。(参照:秋田県立脳血管研究センター 脳神経外科診療部門)
患者に寄り添う医療
このプロジェクトには患者さんに対して「よりよい適切な医療を提供し医師の適正配置が検討できる」ことや、秋田県立脳血管研究センターが「患者さんに最善の医療を提供するための参考となる情報」を得るためという目的があるのです。
このため医療関係者に対して診療情報提供を呼びかけているのですが、個人情報など患者さんの気持ちを尊重する形で登録情報を慎重に扱っているので安心です。
地方独立行政法人秋田県立病院機構では、このように脳の疾患を研究してデータに残す「研究部門」と実際に患者への診察や治療にあたる「診療部門」に分かれて、それぞれの特性を活かしながら患者さんにとって安心な治療に尽力してくれているんですね。
小児の慢性硬膜下血腫
小児の場合には、硬膜下液貯留状態といって硬膜下に、組織間質液や血液の浸透バランスが崩れてしまい、その組織液が異常に溜まっている疾患となります。
このため臨床的には大人の慢性硬膜下血腫とは異なる病態となります。
発症年齢
だいたい首が座ってくる3ヵ月頃~お座りを始める9カ月頃までが発症のピークといわれています。
原因
生まれてくるときに、産道を通過する際の頭蓋骨の重積(産道を通りやすくするために胎児が頭蓋骨を重ねて頭を小さくして生まれる時の状態)が起こることで、架橋静脈(かきょうじょうみゃく)が断裂するからではないかとの見かたもありますが墜落や交通事故、虐待、出血傾向など様々な要因が考えられます。
症状と診断
進行性の頭部拡大、大泉門の膨隆(だいせんもん の ぼうりゅう)、不機嫌になる、けいれん発作、嘔吐など、頭蓋内圧亢進症状があらわれます。
CTを撮影すると出血の時期や再出血の有無によって低吸収域~高吸収域までの様相が現れることがあります。また、脳溝や髄液槽が消失しているのが分かります。大泉門の外側からの穿刺による硬膜下穿刺で血液性が認められると診断が確定します。
治療方法
硬膜下穿刺だけで治療が可能になることが多いです。(※頭蓋骨の内圧を穿刺によって下げることが出来るためです)頭蓋内圧亢進の例として大泉門の膨隆や嘔吐などがある時には穿刺をします。
また、小児の場合には管理が大人とは異なることがあるために、小児病棟や子ども病院で治療や経過観察をすることが多いです。
子どもは公園などで元気に遊んだりしますが、乳幼児にとっては室内でも危険がいっぱいです。思わぬところでの打撲や転倒など、ほんの少し「こぶ」が出来た場合でも、3週間程度は様子をみてあげましょうね。
血腫と水腫と浮腫
血腫とは、外傷等により身体の内部で出血したものが血管の外へ流れ出して体内や組織内に留まり、排出されないまま固まってしまい滞留してしまったものが、大人の慢性硬膜下血腫での「血液が溜まった血腫」です。
しかし、小児の場合には「組織液」が溜まったものなので、大人の慢性硬膜下血腫と違う疾患と捉えられています。
ちなみに組織液に水分が溜まって腫れることが、肺なら肺水腫、お腹なら腹水などの呼ばれ方をしていますが、そうやって組織液で腫れた状態を「浮腫」といいます。つまり、この場合には脳浮腫ということなんですね。
まとめ
では今日を振り返ってみますね。
- 慢性硬膜下血腫はお酒が好きな中高齢者が発症しやすい
- 基本的には手術が一般的だが、術後直後から症状の改善がみられる
- 若い年齢では症状が頭痛や嘔吐などの圧迫症状(※頭蓋内亢進症状)ということが多い
- 大人は血腫だが、子どもは組織液が溜まるので穿刺で治ったりする
- 自分の脳に不安がある人や治療を受けたことがある人は脳ドックで画像診断を受けることが出来る
高齢化社会が問題になっていますが、同じように慢性硬膜下血腫の症例は増えています。少し様子がいつもと違うなということがあれば、早めに検査等で確認するようにしていきたいですね。
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