スマホの普及で急増した症状があります。通称「首猫背」、またの名を「ストレートネック」といいます。整形外科での正式名称は「頭部前方位姿勢」といいます。
悪い姿勢を取り続けることで、悪い姿勢が固まってしまうという点では普通の「猫背」と同じなのですが、スマホを覗き込むときの独特の姿勢から、そのような名称が付けられました。
単なる見た目の問題を通り越して、意外に深刻な症状をきたすことがあります。注意しましょう。
首猫背の症状
ストレートネックという名称から分かる通り、「ネック=首」がストレートな状態が異常なのです。頭が正しい状態で肩の上に乗っているとき、首は弯曲しています。それが首猫背になると、首がまっすぐに伸びてしまうのです。
凝り
スマホを見るときに、首だけを下げることが多いと思います。あごを引いている状態です。首は完全に伸びきっています。これが癖になると、頭を通常の位置に戻そうとしたときに、思っているよりあごを突き出した姿勢になってしまいます。これが首猫背です。
これは変な姿勢を長時間取り続けているために、首の筋肉がガチガチに硬くなってしまうからです。
首猫背の症状は、首と肩の凝りからスタートします。
痛み、頭痛、めまい、吐き気
首の凝りと肩の凝りを放置すると、次に痛み、頭痛、めまい、吐き気へと順番に悪化していきます。
体の歪み
それでもなんの対処も行わないと、体の骨格が歪み始めます。つまり首猫背は、頭の位置がずれたために、それを修正しようと首の形が変わるわけです。しかしこのような首猫背の姿勢は、全身の骨格に対して異常な負担をかけています。全身の骨格は、その負担を逃がすために変形するのです。
全身の骨格の変形は、まずは骨盤に現れます。骨盤が後ろに下がるようになり、お腹を突き出す姿勢になります。この状態は首猫背と「調和」が取れているので、次第に首猫背の姿勢の方が楽になってきます。つまり「スマホ姿勢」が完成してしまうのです。ここまでくると、修正はかなり大変になります。
内臓への影響
首猫背の症状が胃や腸など内臓に及ぶことがあります。内臓には無駄な圧力がかから方がよいのです。そのため内臓は、骨や筋肉で守られているのです。
しかし首猫背が悪化すると全身の骨格を歪めるので、内臓を守るはずの骨や筋肉が、内臓に圧を加えるようになってしまうのです。これにより消化不良、便秘、胃炎、胸やけといった症状が出ることがあります。
心への影響
姿勢が悪くなると、心が変調をきたします。重症の首猫背の患者には、不安、イライラ、落ち込みなどの症状が現れます。ボーっとしたかと思うと、「プチうつ」状態になることもあります。
あたかも、スマホのバーチャルな世界に引きずり込まれ、リアルの世界に疲れ切ってしまったかの様相を呈します。
老化?
首猫背の人は、ほうれい線が目立ちやすくなると指摘する医師がいます。また二重あごになることもあります。つまり、老け顔になりやすいのです。
顔の骨格が歪み、顔の筋肉にも異常な圧がかかるためです。首猫背でなければ生じない皮膚のたるみ皮膚の緊張が、顔の老化を早めてしまうのです。
首猫背の原因
首猫背の人が急増しているのは、スマホが原因です。スマホを長時間見る人ほど首猫背の症状が重いのです。しかし下を向く時間が長くなったり、弯曲した首がまっすぐになるだけで、どうしてこんなに多くのつらい症状が出てきてしまうのでしょうか。
頭の重さ
成人の頭の重さは5~7kgもあります。体重60kgの人なら、全体重の1割が頭の重さなのです。これだけの重量物を、首の骨だけで支えているのです。
首の骨は、背中の骨と腰の骨につながっています。これらを合せて脊椎といいます。脊椎は合計26個の骨のパーツでできています。そのうち、首の骨を構成しているのはわずか7個です。
頭という重要な臓器は、実はたった7個の小さな骨で支えられているのです。なので正しくない姿勢を取り続けると、7個の骨では持ち応えることができず、その姿勢で固定されてしまうのです。
重要な血管
臓器の中で最も血液を必要とするのは脳です。脳が必要とする大量の血液を送り届けているのは、首の血管です。首猫背は、首の血管を圧迫してしまうため、脳への血流が滞ってしまうのです。
首猫背の症状には、骨や筋肉の痛みのほかに、頭痛、めまい、吐き気があります。これらは血流が悪化したために生じるのです。
重要な神経
首を通過する重要な臓器はまだあります。神経です。しかも首を通っている神経は、全身に張り巡らされている神経の中でも、最も重要な神経です。
神経は脳の命令に従って、全身の臓器を動かしたり静止させたりしています。首を通過している神経が障害されると、こうした脳の命令が臓器に届きません。それで大きな体調不良に陥り、心にも変調をきたすようになるのです。
首猫背の治療
首猫背かどうかをチェックする方法は簡単です。壁の前に立ち、壁にかかととお尻と肩甲骨をくっつけます。このときに自然に立っていながら、後頭部が壁に付いていないと、首猫背の疑いがあります。
首猫背はあごを前に突き出す姿勢なので、後頭部が後ろに下がり、壁に付くようなイメージがありますが、実際はその逆なのです。あごを突き出すと首の先端は前方に向かうのです。志村けんさんの「アイーン」のポーズを思い出してください。そのため後頭部が壁から離れていくのです。
あごを引く
自宅でできる首猫背の矯正法は、スマホを見るときの姿勢の逆の姿勢を取ればいいのです。スマホを見るときの姿勢は、首がダランと下がり、頭がガクンと落ちています。この逆の姿勢ですから、首を下げず、頭を肩の上に乗せます。このとき、あごを引くことが重要です。
既に首猫背が悪化している人は、「頭を肩の上に乗せる」と意識していても、しっかり乗っていない場合があります。それを修正するには、あごを引くことをしっかり意識する必要があります。
テニスボール
次の紹介する矯正法も自宅で簡単にできます。テニスボールを2個用意して、靴下の中に入れます。2個のテニスボールが離れないよう靴下の先端に押し込み、しっかり結わいてください。それを夜眠る前に、枕の代わりに首の下に置いくだけでOKです。首の筋肉の血行が改善します。
ただ、そのまま眠ってしまわないようにしてください。テニスボール靴下を首の下に置くのは、1日5分程度でOKです。やりすぎないようにしてください。眠るときは枕に差し替えてください。
整骨院から整形外科へ
首猫背で吐き気や心の変調まで至っていない場合は、整骨院や整体院の施術でOKです。首猫背の矯正方法をしっかり学んで、日頃の生活に活かしてください。ただ、症状が悪化している場合は、整形外科の受診をおすすめします。歪みが深刻化している場合、CTやMRIを撮り、歪みの程度を測る必要があります。
整形外科でも、大きな治療は行われないのが一般的です。大半は生活の改善と、リハビリに通うことになります。