街中や電車の中などで、大きな声で独り言のような言葉を繰り返し叫んでいたり、全然知らない人なのに突然生年月日や住所などを何度も聞いてきたり、あるいは手をひらひら、体をゆらゆらさせながら唸っている人を見たことはありませんか?
もしかしたら彼らは自閉症かも知れません。
病名から「部屋に閉じこもっている内気な子」といったイメージを持たれている方も多いと思いますが、これは誤ったイメージと言えます。また、自閉症は親の育て方によって起こるものではありません。この誤解によって苦しんでいる親たちが非常に多いのです。
自閉症に対する正しい理解をする為に、自閉症とはどのような病気なのかをまとめました。
自閉症とは
自閉症とはどのような病気なのでしょうか。
先天性の発達障害
原因はまだ明らかにされていませんが、冒頭で述べた通り、自閉症は親の育て方や環境などで後天的に発症する病気ではありません。
現在はっきりと分かっていることは、何らかの原因によって脳の機能にがうまく働かず、生涯に渡って続く先天性の発達障害ということです。
発症率
ひと昔前までは自閉症は非常に珍しい病気だと考えられ、1万人に4~5人の発症率と言われていました。しかし研究が進み、自閉症の概念も拡大されたことから、現在では1000人に2~6人、軽度の自閉症を合わせると100人に1人の確率で罹患していると考えられており、珍しい病気ではなくなりました。
また、男女比は4~5:1で男性に多いことが分かっています。女性の場合は自閉症であってもほとんどが軽度であると言われています。
発覚のきっかけ
自閉症はまだ原因が明らかになっていない為、生まれてすぐの赤ちゃんが自閉症かどうか判断することはできません。
誕生後しばらくしてから、他の赤ちゃんとは”何か違う”という感覚を抱いてきます。例えば
- あまり泣かない
- 目線を合わせない
- 言葉の発達が遅い
といったことです。こういった症状が続いた後、3歳頃までに医師から告知されるのが主な流れとなります。
自閉症と遺伝
原因はまだ分かりませんが、遺伝も原因の一つとして考えられています。
遺伝の確率
兄弟のうち1人目が自閉症の場合、2人目以降の子供が2~10%の確率で自閉症であると言われています。
一卵性双生児の場合は1人が自閉症の場合、80~90%の確率でもう1人も自閉症であり、二卵性双生児の場合は2人とも自閉症である確率は10%と低いようです。
また、身内に自閉症がいない場合は0.2%の確率とされている為、少なからず遺伝の影響があるようです。
父親が高齢の場合
以前は母親が高齢出産も原因ではないかと考えられていましたが、現在では父親が高齢であった場合の自閉症との関連性が謳われています。
父親が30歳未満であった場合と40歳以上であった場合の自閉症発生率は1.5倍以上という研究結果があり、特に50歳を超えている場合にそのリスクは更に高くなるようです。
こちらも原因は明らかとなっていませんが、男性の遺伝子特性または加齢による精子への影響があるのではないか、と言われています。
母親の年齢
父親の影響の方が強いのではないか、と言われていますが、母親の場合は40代以上の高齢出産の場合にリスクが上がると言われています。
ただし、母親の場合は高齢の場合だけでなく、18歳以下の若い年齢での出産の場合も同様に、それ以外の年齢の時よりもリスクが上がるとの研究結果もあります。
両親の年齢差が大きい場合
父親や母親の片方の年齢だけでなく、両親の年齢差が大きい場合にも自閉症のリスクがあるという研究結果も出ています。
最もリスクが高いと言われているのは、父親が35歳以上で母親が10歳以上若い場合です。
ただし、これら遺伝(遺伝子)の要因については例えば父親が自閉症である場合、必ず生まれてくる子供も自閉症とは限らない為、まだまだその可能性が僅かながらに見られるといったレベルです。
現在も研究段階であり、100%遺伝が関係しているとは決していい難いのが現状です。
自閉症の特徴
成長するにつれて、自閉症の様々な特徴が現れてきます。大きく分けて3つに分類されます。
社会性の障害
社会性の障害として、以下のような症状が見られます。
- 目線を合わせない
- 他人に対して無関心である
- 怒られた時等笑う状況ではない場面で笑ってしまう
- ”暗黙のルール”が理解できない
- 人間関係をうまく構築できない
- 協調性が見られない
赤ちゃんの頃にはあまり分かりませんが、成長につれて社会生活を送らなければいけなくなってくると、こういった症状により孤立してしまう等といった問題が生まれます。
コミュニケーションの障害
コミュニケーション上の障害では以下のような症状が見られます。
- 言語の発達に遅れがあり、うまく話すことができない
- オウム返しをする
- 独特な言葉の使い方(言葉の抑揚が少しかわっている等)
- 話すことができても、その意味が正確に理解できておらず、その場面において適切な言葉が出ない
- 会話のキャッチボールが苦手で、会話を長く続けることができない
学校にあがると周囲の人とコミュニケーションをとる必要が出てきますが、独特な表現方法があり一般的なコミュニケーション方法をとることが難しく、人間関係を構築することが難しくなってきます。
物事への異常な執着
自閉症の大きな特徴として物事への執着が強い傾向あります。
- 単純作業が好きで、没頭して取り組む
- 特定の食べ物しか食べない。同じ食品でも銘柄にこだわる。
- 数字、アルファベット等に強い興味があり、日付(カレンダー)や電車の時刻表などを覚える
- まわっているタイヤや扇風機など、反復動作するものをじーっと見続ける
- 本や物の並び順にこだわり、自分のルールで揃えていないと落ち着かない
こういった強いこだわりは決してマイナスにだけなる訳ではなく、このこだわりによって大きな才能を生み出すことがあります。特に数字を扱った分野では高い能力を発揮する自閉症患者が多いのです。
知的障害のない自閉症
一般的な自閉症患者の約80%に知的障害が見られます。しかし中には、知的障害のない場合もあるのです。
高機能自閉症
高機能自閉症とは、自閉症の症状を持ちながらも知能の低下がなくIQ70以上の自閉症のことを言います。
その為学校の勉強や試験などは問題なく出来るのですが、言語の発達には遅れがある為、その意味を理解していないことも多いのです。
アスペルガー症候群
近年、よく聞かれるアスペルガー症候群も自閉症の一つです。一見自閉症であるのかどうかが分かりにくく、”変わり者”とされることも多くあります。
その原因として、知能は正常もしくは高く、言語の発達に低下も見られません。
しかしながら人とのコミュニケーションにおける障害は自閉症と同様の症状を持ち、暗黙のルールを理解したり空気を読むといったことが出来なかったり、相手の立場になって想像するといったことが出来ません。その為、そういった性格の人というレッテルを貼られやすくなってしまう傾向があります。
アスペルガー症候群については、アスペルガー症候群が成人に現れた時の症状は?対処方法も紹介!の記事を読んでおきましょう。
サヴァン症候群
1988年にヒットした映画『レインマン』で関心が広がったサヴァン症候群。
サヴァン症候群は特定の分野に対して特殊な能力を発揮する人達です。
例えば、
・一度聞いただけの音楽を間違うことなく弾くことができる
・カレンダーを記憶し、年月日の曜日を正確に答えることができる
・一度見た風景を完全に記憶し、絵で再現することができる
などです。
これらのように、特に優れた記憶力を発揮します。
しかしながら自閉症は抱えている為、人とのコミュニケーションは上手くとれなかったり、記憶をしているものの内容について理解している訳ではないようです。
自閉症患者の約10%の確率でサヴァンの能力を発揮すると言われています。
まとめ
自閉症の原因は明らかにされておらず、現在言われてる遺伝、遺伝子の影響についてもその可能性はあるが研究段階である状況です。
また、決して後天的な影響ではないことは明らかなので、ご両親の責任ではないことを、本人や周囲の人は知る必要があります。
また、自閉症患者は一般的な人と比べて少数派の文化を持っている人達であるということです。
同じような言語や表現文化を持っていないだけで、多数派の一般的な人達が、彼らを障碍者と呼べるのかどうか、も考えるべき課題ではないでしょうか。
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