急に咳き込んでしまい、食事が気管に入ってしまった!なんていうことは誰にでもあることなのではないでしょうか?しかしそんな些細なことが原因で誤嚥性肺炎になってしまい、最悪の場合命を落とすことになるかもしれないなんて知っていましたか?
主に高齢者だけがなると思われてる誤嚥性肺炎ですが、実は高齢者だけでなく誰でも発症する可能性がある疾患なのです。
ここではそんな誤嚥性肺炎についてまとめてみました。
誤嚥性肺炎とは?
あまり耳慣れない疾患かも知れませんが、高齢者のいるご家庭では特に注意しなければいけない疾患のひとつでもあります。
この誤嚥性肺炎とは、食べ物や飲み物または逆流した胃液などが誤って気管や気管支に入ってしまい、咳き込み(「誤嚥」ごえん)してしまい、その際に口腔内の細菌が気管や気管支を通って肺にまで達し肺炎のような症状を起こすことを言います。
食べ物や飲み物などを飲み込むこと(「嚥下」えんげ)がきちんと出来ない状態である嚥下障害のひとつです。
風邪の流行る季節などに高齢者に多く見られます。加齢による体力不足や免疫力の低下などから嚥下作用が弱るためといわれています。単なる風邪や流行り病などとあまり区別がつかないのが特徴ですが、放置すると肺炎の症状が悪化して、死に至らしめる油断のならない疾患ですので、注意が必要です。
さらにこの疾患は、高齢者の肺炎患者の約70%程度を占めているといわれています。また治療後も再発する可能性の高い疾患で再発・治療と繰り返していくうちに、体内に耐性菌が生まれ抗生物質が効かなくなり、治療が思ったような成果が出ないこともあります。そのため現在では多くの高齢者の死亡原因のひとつになってしまっています。
特別老人ホームや認知症患者のいる介護施設などでは、このような誤嚥性肺炎の発生は時期を問わず多く、注意すべき疾患のひとつされています。
誤嚥性肺炎の原因は?
では誤嚥性肺炎の原因について紹介します。
口腔細菌
この誤嚥性肺炎の主な原因は誤嚥によって口の中にある細菌が飲み物や食べ物、または唾液とともに気管や気管支に入りさらに肺にまで達することです。肺にまで達した細菌は徐々に増殖し、炎症を起こし肺炎となります。
しかしこの細菌は気管や気管支などに侵入しなければ、通常口腔内に常在している雑菌です。ゆえに誤嚥に気をつけていれば、このような疾患にかからずに済むのです。
誤嚥性肺炎にかかりやすい人は?
この疾患にかかりやすい人は加齢や嚥下能力が衰えた高齢者だけでなく、以下のような人にも発症しやすいといわれています。日頃から注意をしましょう。
①脳梗塞などの脳疾患後の後遺症や認知症が原因の脳機能障害を発症している人
疾患により自分で思ってるよりも嚥下能力が低下している可能性があります。いつも以上に気をつけましょう。
②胃の疾患などで飲み物や食べ物を飲み込む力が弱くなっている人
胃の疾患などが原因で逆流などが起こりやすくなっています。逆流の際に誤嚥を引き起こす可能性があります。
③食後すぐに横になる人や酔った状態で寝ることが多い人
食後すぐに横になったり、泥酔状態で横になると胃の中のものや胃酸が逆流する恐れがあります。気をつけましょう。
④常備薬などで睡眠作用の強い薬を服用している場合
睡眠作用の高い薬の服用は嚥下作用を低下させます。このような薬の服用がある場合は特に気をつけましょう。
⑤虫歯などの口腔衛生状態の悪い人
虫歯や歯周病などの症状がある人は、口腔内に細菌が繁殖しやすい状態だともいえます。まずは口腔衛生に気をつけ、虫歯などの症状は早めに治療をしましょう。
⑥食べるのが早い人
食事の時に早飲み・早食いといわれる人は注意しましょう。健康でもそのような習慣を持つ人は誤嚥の可能性も大きいといわれます。食事の際にはゆっくりと食べ物を良くかんで食事する習慣を身につけましょう。
このように高齢者以外でも上記のようなことが思い当たれば注意しましょう。
誤嚥性肺炎の症状
誤嚥性肺炎は肺炎の一種で下記のような症状がでます。
- 熱
- 咳と痰
- 胸痛
- 呼吸困難
- 食欲不振
このように一般的な風邪やインフルエンザ、呼吸器疾患と同じような症状があるために診断が難しく長引いてしまう場合があります。
また高齢者では、上記のような症状がはっきりと現れないことも多く、そのかわり普段よりも眠気が強かったり元気が無く口数が少なくなったりすることがあるようです。
さらにこの誤嚥性肺炎では①微熱が長く続く②脱水症状などの症状が出ることも特徴です。そのような症状があるときは誤嚥性肺炎を疑ったほうが良いでしょう。早期発見・早期治療が死亡などの危険を避ける一番の手段です。
誤嚥性肺炎の検査方法と治療法
誤嚥性肺炎の検査方法は次のような方法があります。
- 胸部X線検査
- 胸部レントゲン検査
- 喀痰培養検査
これらの検査で、誤嚥性肺炎の原因となっている菌を特定します。
治療法は、検査後に分かった原因菌を殺すために抗生物質などが処方されます。
そのような治療法で回復した後、嚥下能力が回復または誤嚥しない状態になればよいのですが、治療後も誤嚥を起こす可能性が高い場合は、嚥下能力を良くするためのリハビリ訓練や専門医からの食事療法などの指導があります。その後も良くならない場合は、医療措置として専用の管を胃に通し栄養剤や食事を注入する方法を行うこともあります。
また予防法として嚥下障害改善のための薬剤療法もあります。まずは再発を防ぐことが大切です。
誤嚥性肺炎の予防法
では、このような誤嚥性肺炎にならないためにはどうしたらよいのでしょうか?
日常生活でできる予防法についてまとめてみました。
口腔衛生に気をつけましょう
普段から口腔衛生に気をつけましょう。口の中をキレイに保つことは誤嚥性肺炎を予防するだけでなく、歯や口腔の疾患の予防にもつながります。
①うがいの習慣をつける。
うがいの習慣をつけることで口腔に対する意識が変わります。食後には歯磨きを習慣にし、口腔内を清潔に保ちましょう。
②歯科医師の検診を定期的に受ける。
定期的に歯垢や歯石などを除去することで細菌の発生を防げます。
③入れ歯などの場合はこまめに消毒して清潔に保ちましょう。
入れ歯などの器具は雑菌が発生しやすいところです。清潔に保ちましょう。
④手洗いをこまめにしましょう。
汚れた手で口のなかを触らないようにしましょう。細菌が口に入るのを防ぎます。
⑤市販されている消毒薬や口腔衛生液などを活用しましょう。
水だけでは出来ない殺菌も市販薬で手軽に出来ます。
⑥歯茎のマッサージも効果的です。
歯茎のマッサージは嚥下障害に効果があるといわれています。
食事の際には
①日頃から健康的な食生活を心がけましょう。
たんぱく質やビタミン・ミネラルなど体力や免疫力をつけるのに必要な栄養素をしっかりとることで、誤嚥性肺炎だけでなくほかの疾患の予防にもつながります。
②食べる量に気をつけましょう。
一回で口に運ぶ量が多すぎたりして口いっぱいにほおばって食べていませんか?少量づつ口に運ぶようにしましょう。飲み込むときの負担を減らすことで誤嚥も防げます。
③食事の時の姿勢にも気をつけましょう。
寝ながら食事をしたり、食後すぐに横になったりすると胃の中のものや胃酸が逆流する可能性があります。少なくとも食後2時間程度は、起きているように心がけましょう。
日常生活で気をつけたいこと
健康的な食事をとったら、適度な運動も心がけましょう。身体的な不調が無い限りは筋肉が衰えないような運動も必要です。
またアルコールやタバコなどの嗜好品も控えましょう。健康的な食事や生活態度を維持することで、疾患に負けない体力や免疫力がつきます。
まとめ
いかがでしたか?
高齢者を身近に持つ方にとってはとても気になる疾患である誤嚥性肺炎ですが、加齢や免疫力の低さからくる高齢者特有の疾患ばかりではないことがわかりましたね。
高齢者は特に気をつけなければいけませんが、比較的若い方にも生活習慣などの要因から発症する可能性のある疾患です。また風邪やその他のよくある疾患と区別のつきにくいこの疾患は早期発見・早期治療が大切です。
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