大型の機械や設備で。または包丁や小型ナイフでなど。指が切断されてしまうことはそんなに珍しいものではありません。
事故であれ、故意であれ、指が切断されるような状態というのは緊急な事態です。でもほとんどの人は自分や周りにはそのようなことは起きないであろうと不確かながら信じていて、正しい応急処置の方法や切断された指の保存方法などを理解していないのではないでしょうか?
指の切断では本来は元の通りになることもそんなに難しいことではありません。ただその対処法について正しく理解して対処しないと必ず元に戻るとはいえなくなってしまいます。
ここでは指が切断された場合の応急処置、対処法をまとめてみました。もしもの時に備えて正しく理解しましょう。
指を切断するということ
巷のうわさなどでは、切断された指は氷に包んで保存しておけばすぐに接着できるといわれているようですが、実はその保管方法にも問題があり、さらに接着にも時間的リミットがあるのをご存知ですか?この機会に正しい方法を理解しましょう。
切断された状態には2つのタイプがあります。
①切断指
鋭利な刃物や機械などで指が完全に離れて血が巡らなくなった状態のことをいいます。
②不全切断指
まだ皮膚1枚または腱のみでつながっている状態のことをいいます。
どちらの状態でも切断された指の接着にはリミットがあり、約8時間以内といわれています。
なぜなら指が切断されるということは、皮膚や骨だけではなく他のさまざまな細胞や組織が切断されるということになるので、時間の経過とともに細胞や組織がどんどん死んでいくのです。だから血管などを修復し元通りにするためには一分でも早く取り掛からないといけないのです。
さらに切断部分がきれいに切れている場合は修復も早いのですが、切断部分が裂けるように切断されていたり、圧迫やその他の原因により切れ目が複雑な場合は修復も難しく元に戻らない場合や修復にも時間がかかったりします。
再接着できない場合とは?
切断部分が保存してあっても再接着ができない場合というのがあります。
- 引き抜かれたような状態で切断された指の場合
- 高温または冷却されすぎた指の場合
- 切断部分だけでなく手全体が圧迫や裂傷をうけた場合
このような場合には再接着ができない可能性が高くなります。
切断直後の正しい応急処置について
指の切断という事態になったら、驚きや恐怖、痛さもあるでしょうが、自分や大切な人のために切断された指が再接着できるように正しい対応をしましょう。
救急車の要請
まずは冷静に救急車の手配をしましょう。
驚きや恐怖など感情が乱れていると思いますが、
- 救急車や救急隊員の人にどのような状況で切断に至ったのか
- 救急車到着までにしておくことはあるか。
など聞いておきましょう。
切断部分の圧迫止血
指の切断の多くの場合は、切断部分からの出血を防ぐために止血をすることを指示されると思います。その際は
- 傷口に清潔な布やガーゼをあててその上からタオルや包帯などを強く巻く
- その上から強く押すようにして圧迫止血をします。
- 圧迫止血をした後は、切断部分を清潔なガーゼで覆って強めに根元をとめ、心臓よりも高いところに手を上げておくようにしましょう。
注意したいのは、根元を止める強さです。あまりに強く縛ったりすると、細胞が死んでしまう可能性もあります。血が出ない程度の縛りにしましょう。
切断されたパーツの保存・保管方法
切断された部分の保存に関しては、再接着のために注意が必要です。
まず基本的に気をつけてほしいのは、次の3つのことです。
①乾燥させない。
切断後にそのままの状態にすると、切断部分から乾燥が始まります。そのような状態から細胞や組織が死滅する可能性も出てくるので、乾燥は厳禁です。
②温めない。
保湿は大切といっても、保温をしてはいけません。温めることで細胞や組織が死滅する恐れがあります。
③汚染させない。
切断された部分を汚さないことも必要です。その際、水や氷で直接洗ったり冷やしたりすることも厳禁です。細胞や組織の死滅につながります。
その基本的な決まりを守った上で、
①切断された指は清潔なガーゼなどに包んだ後にビニール袋に入れ密封する。
②密封した袋に入った指を氷水入りのケースに入れ、指に直接水が入らないようにして本人と一緒に対応の医療機関に持参する
*注意したいのは、
①指を直接氷水につけないこと。
指の細胞が破壊されて再接着ができなくなる可能性があります。
②氷だけ大量に入れて冷やしすぎないこと。
この場合も細胞の破壊につながるので、必ず氷水にしましょう。手術して再接着が可能なのは、切断された指がおよそ約4℃の状態で保存された状態がよいとされています。
病院での処置・手術方法
指を病院に持って行った後の治療方法を紹介します。
手術法
手術の方法としては、まず切れた部分の断面をきれいに切除します。その後に骨を固定し、腱を縫い合わせます。それから指の全体的な形を元通りにするように調整していきます。
次に指に通っている神経部分や血管部分などの縫合をします。ここで神経を正確に縫合しないと知覚神経の不具合につながります。
この方法は極めて細かい作業のため、特殊な医療用ピンセットなどを用い顕微鏡などを使っての縫合となります。
マイクロサージャリー
切断された指の再接着や再建には、マイクロサージャリーのできる医療機関をオススメします。
マイクロサージャリーとは微小外科のことです。微小外科とは、通常の手術方法とは違い顕微鏡を見ながら特殊なピンセットや医療機器を使用して手術を行う専門科です。
切断された指などの再接着など細かい神経や血管の縫合や再建手術を専門とするところなので、切断後の再接着や再建などが必要な場合はマイクロサージャリーの出来る医療機関が一番良いでしょう。
ちなみにマイクロサージャリーで最初に切断された指の再接着を成功させたのは、日本人医師だそうです。
再接着が出来ない場合の再生について
切断されたところの状態が悪く再接着の可能性が低くなっている場合や、再接着は不可能と判断された場合はどのような方法があるのでしょうか?
再接着が出来なかった場合は再建という方法があります。指の場合は切断されたところをきれいにして神経や血管などをつなげられる状態にしたところで、足指などのほかのところからの移植手術をすることが可能になります。
その場合も足指を移植したことで歩行などの障害は無く、指に関しても血管・知覚などの再建も可能なので一番良い方法とされています。希望する場合は担当のお医者様と相談をしてください。
手術後の状態や管理方法について
では切断後の手術のあとはどのように過ごしたらよいのでしょうか?手術後の1日は縫合した血管が詰まるなどの不具合が起きやすく注意が必要です。
稀に再手術ということもあります。医療機関ではこれを防ぐためにギプスで手の全体を固定し保護します。また術後の腫れを防ぐためには、手を心臓より上に上げておくことや血管を拡張させるようにする薬の投与や点滴注射を行ないます。保湿をすることも必要です。また喫煙者では血管を収縮させるので手術後は禁煙が必須です。
また手術後1ヶ月程度は安静にし、指の血流が安定してきて始めてリハビリに入ります。神経はゆっくりと徐々に回復するので、根気強いリハビリが必要です。
まとめ
いかがでしたか?
指の切断という不測の事態にも、正しい知識と理解があると冷静に対処できそうですね。
自分や大切な人がこのような事態になったときはまずおちついて対処できるようにしましょう。そして正しい応急処置をしてさらに医療機関の正しい判断を仰いで救急車を待ちましょう。
医療機関では再接着の可能性を聞いて不可能であれば再健などの選択肢を考え、マイクロサージャリーの出来る医療機関を受診しましょう。そうすることで切断された指もほぼ知覚や神経がもとの通りになる可能性が出てきます。
まずは切断後の正しい判断と対処法を理解し、冷静に対処することが必要です。
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