ビジネスシーンにおいては、お客様や取引先担当者あるいは社内の上司から様々な依頼や業務命令・指示が届きます。ある意味では、その依頼や業務命令などに応えることが仕事だと言えるでしょう。そして、その依頼や業務命令などに応えることを繰り返すことにより、人間としてビジネスパーソンとして信用や信頼を獲得して、ビジネスを拡大していくわけですね。
ところで、お客様や取引先担当者あるいは社内の上司から様々な依頼や業務命令が届くと、それが口頭であれビジネスメールであれ、「了解しました」もしくは「承知しました」などと相手方に返答をしますよね。
この「了解」と「承知」という言葉について、使い分けを意識したことがあるでしょうか?また、「了解」という言葉は目上の人に対して使ってはいけない、という指摘も一部に存在するようですが、真偽のほどはどうなのでしょうか?
そこで今回は、「了解」と「承知」という言葉に関して、それぞれ意味を確認した上で、「了解」と「承知」という言葉の使い方・使い分けについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
「了解」という言葉について
そもそも「了解」という言葉は、どのような意味を有するのでしょうか?
「了解」と「承知」という言葉の使い方について触れる前に、まずは「了解」という言葉について良く知る必要があります。そこで、「了解」という言葉の意味について、ご紹介したいと思います。
「了解」の辞書的意味
「了解」という言葉の意味について複数の国語辞典を調べてみると、概ね次のような意味があることが分かります。
- 理解すること。
- 意味がわかること。
- 物事の筋道を正しく理解すること。
- 他人の立場や気持ちを察すること。
- 了承すること。
- 物事の内容を理解して承認すること。
そもそも「了解」という言葉は、漢語表現の名詞です。「了解」という言葉を構成する「了」と「解」という漢字は、いずれも「(何らかの物事を)わかる・理解する」という意味を持っています。
ですから、「了解」という言葉は、「理解」とほぼ同じ意味であり、基本的には物事の筋道・内容や他人が置かれた事情・状況などを理解することを意味します。そして、物事や事情などを理解すると、物事や事情などに納得することにもつながるので、文脈によっては「了承」と同じ意味合いで使われることもあるのです。
漢語・漢語表現とは?
漢語・漢語表現とは、昔の中国から伝わって日本語となった言葉のことです。加えて、漢字で組み立てて音読みする言葉も、漢語・漢語表現の一つとされます。
ちなみに、漢字の「音読み」は昔の中国の発音を元にした読み方であり、その読み方では同音異義語などの存在から日本語として意味が通じにくくなります。一方で、「訓読み」は古くからの日本語の読み方であり、その読み方で日本語として意味が通じます。
「了解しました」の意味
「了解しました」というフレーズの「しました」は、動詞「する」の丁寧語「します」の過去形です。そのため、「了解しました」というフレーズは、「了解する」の丁寧表現の過去形ということになります。
そして、丁寧語・丁寧表現とは、話し手が聞き手に対して敬意を示して丁寧に言う言葉遣いのことで、尊敬語や謙譲語と並ぶ敬語表現の一つです。
ですから、「了解しました」というフレーズは、話し手が聞き手に対して話題にのぼっている物事の筋道・内容・事情・状況について「理解・了承した」ことを丁寧に伝える表現だと言えます。
「承知」という言葉について
このような「了解」という言葉に対して、それでは「承知」という言葉は、どのような意味を有するのでしょうか?
「了解」と「承知」という言葉の使い方について触れる前に、「承知」という言葉についても良く知る必要があります。そこで、「承知」という言葉の意味について、ご紹介したいと思います。
「承知」の辞書的意味
「承知」という言葉の意味について複数の国語辞典を調べてみると、概ね次のような意味があることが分かります。
- 事情や内容などを知ること。
- 知っていること。わかっていること。
- 承諾すること。
- 依頼や要求など聞き入れること。
- 許すこと。
- 事情や状況を理解して許すこと。
そもそも「承知」という言葉は、漢語表現の名詞です。「承知」という言葉を構成する「承」という漢字は、訓読みをすると「承る(うけたまわる)」と読み、「承諾する」という動詞の謙譲語としての意味を持っています。
また、「知」という漢字は、訓読みすると「知る(しる)」と読み、「物事を認識して理解する」という意味を持っています。
ですから、「承知」という言葉は、「わかること・理解」という意味を含みつつ、一歩進んで「承諾すること・依頼や要求など聞き入れること」という意味も有するのです。そして、大きなポイントとして、「承知」という言葉は謙譲表現として自分がへりくだるニュアンスを含む点には注目すべきでしょう。
謙譲語・謙譲表現とは?
謙譲語・謙譲表現とは敬語表現の一つであり、話し手かつ動作の主体である自分側がへりくだることによって、結果的に聞き手や動作の相手方を上位・目上の存在として高めて、敬意を表する言葉遣いです。
「承知しました」の意味
「承知しました」というフレーズの「しました」は、前述のように動詞「する」の丁寧語「します」の過去形です。そのため、「承知しました」というフレーズは、「承知する」の丁寧表現の過去形ということになります。
そして繰り返しますが、丁寧語・丁寧表現は、話し手が聞き手に対して敬意を示して丁寧に言う言葉遣いのことです。加えて、「承知する」という動詞は、前述の「承知」の意味からも推測できる通り、「わかる」という動詞の謙譲語・謙譲表現でもあります。
ですから、「承知しました」というフレーズは、話し手が聞き手に対して話題にのぼっている物事の内容・事情・状況について、「理解・承諾した」ことを丁寧かつ自分がへりくだって伝える表現だと言えます。
「了解」と「承知」の使い方・使い分けについて
それでは、ここまで説明した「了解」と「承知」という言葉について、使い分けを意識したことがあるでしょうか?
また、「了解」という言葉は目上の人に対して使ってはならず、目上の人には「承知」を使ううべきだ、という指摘も一部に存在するようですが、真偽のほどはどうなのでしょうか?そこで、「了解」と「承知」という言葉の使い方・使い分けについて、ご紹介したいと思います。
目上の人に対して「了解」は使えない、という主張の根拠
目上の人に対して「了解」を使うことは失礼にあたるので「承知」を使うべきだ、という主張が一部に存在しています。
このような主張の根拠は、前述した「了解しました」と「承知しました」の意味にあります。すなわち、「了解しました」は丁寧表現にとどまり、「承知しました」は丁寧表現かつ謙譲表現であるため、相手方が目上の存在である場面で「了解しました」を使用するのは敬意や丁寧レベルが不足して失礼にあたる、というのが理由になります。
そのため、取引先担当者や会社内の上司などとの関係で、「了解しました」を使用することはビジネスマナー違反やメールマナー違反だ、と主張するビジネスマナー研修のマナー講師やメールマナー本が見受けられるわけです。
目上の人に対して「了解」を使っても日本語として問題はない
実際には、目上の人に対して「了解」という言葉を使っても日本語としては特に問題ない、というのが現在の主流となっている考え方となります。
たしかに、「了解しました」は丁寧表現にとどまり、「承知しました」は丁寧表現かつ謙譲表現です。そのため、相手方が目上の存在である場面で「了解しました」を使用するのは、敬意や丁寧レベルが不足して相手方に失礼な印象を与える可能性がある、という理由は一見すると正しいようにも思えます。
しかしながら、それであれば「了解しました」というフレーズの「しました」を、丁寧表現かつ謙譲表現の「いたしました」に変更すれば、敬意や丁寧レベルが不足することはありません。むしろ、敬語表現としては、相手方に十分に気を配った表現だと言えるでしょう。
ですから、「了解する」という動詞における謙譲語への語形変化にさえ注意すれば、「了解」という言葉も問題なく目上の人に対して使用できるのです。
「了解する」の謙譲語・謙譲表現
「する」という動詞の謙譲語・謙譲表現は「いたす」です。ですから、「了解する」の謙譲語・謙譲表現は「了解いたす」となります。
そして、「了解いたす」という謙譲表現に丁寧表現「ます」を加えると「了解いたします」となり、これを過去形に変化させると「了解いたしました」となります。
「了解」と「承知」の使い分けについて
このように「承知」という言葉はもちろんのこと、「了解」という言葉も目上の人たちに対して使うことについて、日本語としては問題ありません。
ただし、「了解いたしました」と「承知しました」とでは、現実問題として多くの人が「承知しました」のほうが感覚的に丁寧な印象を受けるようです。とすれば、取引先担当者や上司といった目上の人に対しては「承知」を使い、同僚あるいは部下などの目下の人に対しては「了解」を使うことが、無難だと言えるかもしれません。円滑なコミュニケーションのためには、相手方の受け取り方にも気を配るのが、優れた社会人だと言えるかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたか?「了解」と「承知」という言葉に関して、それぞれ意味を確認した上で、「了解」と「承知」という言葉の使い方・使い分けについて解説してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?
本記事で紹介した「了解」と「承知」のように、普段何気なく使っている言葉であっても深く掘り下げてみると、本当に細かな意味やニュアンスによって相手方に異なる印象を与える表現は沢山あります。
本記事をきっかけにして、日本語の表現について今一度見つめ直してみると、新たな発見があるかもしれませんよ。
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