スランプはスポーツ選手だけでなく、だれにでも起きます。今まで何でもなくしていたことが、急にうまくいかなくなります。空振り三振続き・記録が伸びない・絵が描けない・仕事がうまくいかない・・・スランプで悩む人はどこにでもいます。
スランプは悪いことではありません。次の段階に成長する前触れです。スランプを上手に克服することで、飛躍発展することができます。
スランプとは何か?スランプになりやすい人、スランプから脱出する方法についてお伝えしますね。
スランプとはどのような状態?
「スランプ」には3つの意味があります。土木建築の用語の他に「不景気・不況」「心理的・身体的な不調や混乱状態」を言います。まず心理的な「スランプ」についてお伝えします。
[スランプの意味]
「スランプ」とは「心理的・身体的・情緒的に複合した原因のつかみにくい混乱状態」「心身の調子が一時的に不振になっている状態」です。その人本来の実力を発揮できず、スポーツの記録や成績・仕事の成果が上がらず気分が落ち込んでいる状態です。
[スランプになるとどうなるの?]
人生には「自分がグングン伸びていくのがわかる・成果がどんどん上がる時期=好調期・高潮期」と「何をやってもうまくいかない・成果が上がらない・成績が落ち込んでいる=不調期・低潮期」とがあります。この不調期・低潮期をスランプといいます。
記録や成績が伸びない・試合に負け続ける
野球選手なら「打席に立てば空振り三振続き・ピッチャーマウンドに上がればポカスカ打たれる」という状態です。陸上競技や水泳などのアスリートなら「記録が思うように伸びず、試合に出ればみじめな成績しかとれない」状態です。
アスリートはだれでも多かれ少なかれスランプを経験しています。イチローや錦織選手はスランプ知らずに見えますが、スランプを短期間で克服しているだけです。
行き詰っている・何をやっても結果が出せない
画家・音楽家・詩人・小説家もスランプに陥ります。突然、絵が描けなくなったりストーリーが思いつかなくなったりします。
学生も社会人もスランプになります。突然、勉強の仕方がわからなくなったり学習内容が頭に入らなくなったりして成績が落ちます。バリバリと順調に仕事をしてきたのに予想外のトラブルが起きたり失敗の処理を誤ったりミスを連発したりして、結果を出せなくなります。モチベーションが低下して絶望的な気分になります。最悪の状態と感じます。
マイナス思考・ネガティブ思考になる
ミスや失敗が続くため、「またミスをするのではないか?」「また失敗に終わるのではないか?」という心配が先に立ち、精神的にも身体的にも委縮してしまいます。そのため、ミスや失敗をしやすくなります。物事を悲観的にしか考えられなくなり、マイナス思考・ネガティブ思考に陥ります。「自分は何をやってもダメだ」と思い悩むようになります。
好調期と現実のギャップに悩む
スランプに陥ると心理的にも身体的にも不調になり、混乱した状態になります。これは、今まで何でもなく普通にしてきたことがうまくいかないためです。頭も身体も好調な状態を覚えているので、不調になるとギャップを感じます。ギャップを感じて混乱し、悩みます。
[成長曲線はなだらかに上昇を続けることはない]
子供が成長する時に描く成長曲線は、決してなだらかに上昇するものではありません。成長期と停滞期を繰り返しながら成長していきます。
スポーツも勉強も仕事も趣味も同じです。成長曲線には上昇期(成長期)と停滞期があります。一定レベルまで達してもう一段上の段階に進むためには、停滞期が必要なのです。この停滞期をプラトーといいます。
プラトーは成長するための前段階
技術や勉強・仕事などが一定の水準にまで到達すると、視点がワンランク上になります。そのため、今まで通りの行動に違和感を覚えてしまい、伸び悩んでしまうのです。
この伸び悩む停滞期プラトーは、成長するための前段階です。成長と停滞を繰り返しながら上達していきますから、成長曲線を「上達曲線」とも言います。
プラトーとスランプの違い
スランプも上達・成長が止まってしまう時期です。ただし、プラトーが停滞しているだけなのに、スランプは技術・学力・仕事能力のレベルが低下している状態です。プラトーになった時に不必要に慌てたり落ち込んだりすると、スランプに陥る可能性が大です。
アスリートや野球選手はスランプに陥ると、技術レベルが低下していることがはっきりわかります。プラトーでは技術レベルの低下は見られません。
スランプは必ず脱出できる
スランプも基本的にはプラトーと同じで、さらに高いレベルに上達(成長)するための前段階です。必ず脱出できます。脱出すれば、飛躍的な発展をとげられます。
自己防衛のためにスランプ脱出をあきらめる
ただ、スランプは数ヶ月も数年間も続く可能性があります。スランプが長く続くと途中であきらめてしまう人が少なくありません。マイナス思考に陥り、物事のマイナスの面しか見えなくなってしまうのです。
失敗やミスを避けたいという自己防衛のために、スランプ脱出の努力をしなくなります。スポーツから引退したり趣味を止めたり転職したりします。挫折感だけが残ります。
なぜスランプになるの?
スランプの原因ははっきり把握できていません。「原因不明の混乱した状態」です。
しかし、原因の一つは「人間はだれでも高潮期と低潮期を繰り返して生きている」「人間は成長と停滞を繰り返して上達していく」存在ということです。スランプは次の高いレベルに成長するための前段階です。上達・成長するためには避けて通ることのできない関門です。
この他にも、スランプに陥る原因があります。
①過度の期待などのプレッシャー
アスリートでも秀才でも仕事のできるエリートでも、優秀な人間ほど周囲から過度に期待されています。過度な期待は本人には相当なプレッシャーとなります。
「周りの期待に応えなくてはいけない」というプレッシャーに対する義務感や焦りから、平常心が失われ言葉や行動に微妙な変化が起こります。環境にも変化が生じます。こうした微妙な状況の変化が心身に影響して、スランプに陥る可能性があります。
オリンピックの候補選手は常にプレッシャーを受けている
オリンピック候補のアスリートたちは常に「金メダル」のプレッシャーを受けています。日本国中の人たちから期待されています。かれらはプラトーやスランプを短期間で脱出できるように常にメンタルトレーニングを行っています。高い期待値に圧し潰されることはありません。効果的なスランプ脱出法を心得ています。
②完全主義・完璧主義
成長の停滞期プラトーはだれにでもありますが、完全主義者・完璧主義者はプラトーからスランプに陥りやすくなります。自分にミスすることを許さない人は、プラトーに入ると原因を突き止めるまで朝から晩まで考え込んでしまいます。
ミス一つしないようにするために、あれこれ考えすぎて心身ともに疲れ果ててしまいます。そのため、余計に技術や能力のレベルが低下して、スランプに陥ってしまいます。
③過度に自分を鍛える
アスリートによく見られます。プラトーに入って思うように記録や成績が伸びなくなると、練習時間を増やしたり苛酷なトレーニングをしたりします。そのため、心身ともに疲労が蓄積したり怪我をしたりして、スランプに陥ることがあります。
勉強でも仕事でも趣味でも、停滞期に入ったのに過度に自分を鍛えようとすれば、上達するどころがスランプに陥る可能性が大きくなります。
スランプから脱出するためには?
スランプは適正な対処方法によって必ず克服できます。スランプの克服方法は人によって違うこともありますが、基本的な考え方は同じです。ポイントは途中であきらめないことです。
スランプにはメンタルが大きく関係しています。技術や能力・知識などの問題よりも精神状態の問題が60%以上といいます。「スランプは必ず脱出できる」「スランプは長期間続かない」とポジティブに考えることが、スランプ脱出の1歩となります。
①スランプを自覚して受け入れる
前述したように、人間の成長曲線はなだらかに右肩上がりに上昇していくものではありません。ある程度の水準に達すると、次の一段高い段階に上がる(ステップアップする)前に、一時的に停滞したり退行したりするします。また、人間には好調と不調の波があります。
成績や記録が思うように伸びなかったり仕事の成果が出せなくなったりした時は、「今はスランプなんだな」と自覚して受け入れることです。スランプという状況を受け入れると、「なぜ自分は急にダメになってしまったのだろう?」と悩んだり「こんな状態ではダメだ」と自分自身を責めなくなります。
人間には好調と不調の波がある
スランプになったら「人間には好調と不調の波がある」「良い時もあれば悪い時もある」と考えるようにします。「今は不調の波が来ている」と思い、心の波を乗り切ります。
好調の時の自分と現在の自分を比較しない
スランプの時は、「前はあんなこともこんなこともできたのに・・・」と、好調な時の自分と現在の不調な自分自身とを比較しないようにします。好調な時の自分と比べると、焦るばかりです。
「今」に意識を集中してするべきことをする
アスリートや野球選手は「スランプは必ず脱出できる」と確信して、今するべき練習やイメージトレーニングを行います。仕事や勉強も「今やるべきこと」に意識を集中して、淡々とするべきことをします。
スランプは頑張った証拠
スランプになるのは、技術力や能力が一定水準に達したためです。その人の現在の限界に達し壁にぶち当たったような状況です。限界の壁を乗り越えるのは容易ではありません。スランプを克服すれば、限界の壁を乗り越えて次に進めます。
ですから、スランプになることは良い事なのです。スランプは、ある高い水準に到達するまで頑張った証拠です。スランプになったことを感謝するくらいの心の余裕を持ち、頑張った自分を褒めてくださいね。
②思いきってスランプの原因と離れる
スランプに陥った時は、思いきってスランプの原因であるスポーツ・勉強・仕事・趣味などと離れます。アスリートや野球選手は「積極的休息」と呼びます。
アスリートや野球選手の場合は、スランプのきっかけが怪我・病気・疲労の蓄積などが多いので休息して心身ともに疲労回復することがスランプの脱出方法です。
やる気になるまで休む
スランプという悩みの原因になるスポーツ・勉強・仕事・趣味から離れて休むと、心が穏やかになります。少し距離を置いて自身を見つめ直すことができます。そのうちに、「野球がしたいな」とか「また絵が描きたくなった」と思うようになります。
距離を置いて自分自身を見つめ直すことでスランプの原因が見えてきたり、心の疲れが回復したりして、やる気が湧いてきます。モチベーションが再び高くなります。
完全に休めない時は取り組む量を調節する
趣味の絵やゴルフなどなら完全に離れることができますが、野球が仕事の野球選手やプロ級のアスリートは全く練習をしないわけにはいきません。仕事や勉強も完全に離れることはできません。
完全に離れられないならば、取り組む量を調節します。スポーツ関係ならば、練習量や練習時間を調節したり練習の方法や練習内容を変えたりします。仕事の場合は取り組む仕事量を調節したり仕事の内容を見直したりして、心と体の負担を減らすようにします。心と身体が疲労回復すると、再びやる気を取り戻すことができます。スランプから脱出する道が見えてきます。
今がどん底と考える
「何をする気にもなれない」「どうしても結果が出せない」とマイナスの思考に陥りがちですが、「今がどん底だから、これ以上悪くなりようがない」と考えます。「どん底」ですから、「これからは良くなる一方だ」とプラス思考に切り替えます。
③イメージトレーニングをする
スランプは、自分自身と不安との闘いです。むやみに焦ったりあがいたりするのは逆効果です。プレーでも仕事でも勉強でも、良いイメージを描いて「自分はできる」と信じるようにします。良いイメージを描いて自信を持つと、マイナス思考がプラス思考に切り替わります。
理想のプレーや仕事の進め方のイメージを思い描く
スポーツ・仕事・勉強・趣味、何でも理想のイメージがあります。「こんなプレーをしたい」「このようにできたら最高だ」というイメージを思い描きます。頭の中でイメージトレーニングを行い、「イメージできたことは実際にもできる」と自分の実力を信じます。人間はイメージでできたことを実現する力を持っています。
スポーツ心理学ではイメージの力を重視する
アメリカでは以前からスポーツ心理学が盛んで、アスリートたちはイメージトレーニングを重視しています。日本でも大西正裕氏らはイメージトレーニングやイメージの力を、アスリートたちのスランプ克服や技の向上に利用しています。
イメージを描いて達成感を得る
頭の中で「こうしてプレーすれば成功する」「このように仕事すれば成果を得られる」というイメージを描くと、目標に到達した達成感を味わうことができます。イメージによる達成感がモチベーションを向上させ、実際の成功と目標の達成感を得ることができます。
今までのプロセスを振り返って見る
スランプの時は、プレーの方法や仕事の成功のさせ方がわからなくなっています。結果や成績にばかり囚われて、成功に導くプロセスがわからなくなり混乱している状態です。今まで、どのようにプレーして来たのか?どのように練習してきたのか?どのような仕事の進め方をしてきたのか?どのような勉強方法をしていたのか?・・・プロセスを振り返ります。
その上で、現在の状況と照らし合わせて、うまくいかなくなった原因が現在の自分の行動にあるのかどうか、考えます。
理想のイメージと照らし合わせる
あるいは、今までのじぶんのやり方が通用しなくなっている可能性もあります。新しい方法に切り替える潮時かもしれません。理想のプレーの仕方や理想の仕事のやり方のイメージと照らし合わせて、自分自身のブレークスルーにします。
「ブレークスルー」とは「革新・進歩・前進・障壁突破」の意味です。
④長期的な大きな目標を目指す
人生は長いのです。目の前の目標を達成したら終わりではありません。目の前の目標達成に成功したり失敗したりして、一喜一憂することはないのです。現在がうまくいかなくても、先はまだまだ長く続きます。
物事を長期的に見るようにして、大きな目標を設定して目指すようにします。本当の実力は長期的な成果によってのみ知ることができます。長期的な大きな目標を目指すと、モチベーションが上がり高く維持することができます。
長期的な大きい目標を目指していれば、スランプが繰り返し訪れてもその都度脱出することができます。
⑤視野を広げる
スランプになったら、何か元気の出るような趣味や習い事をしたり違う世界の人たちと友達になったりして視野を広げます。自分が普段いる世界とかけ離れた世界に身を置くと、発想の転換ができます。今まで経験したことのない趣味や習い事に没頭しているうちに、思いがけないスランプの脱出方法が見つかる可能性もあります。
できるだけプラス思考の人と付き合う
スランプの原因となった物事とはかけ離れた世界の人たちと付き合う時、ネガティブ思考・マイナス思考のグループや物事のマイナスの面ばかり話題にする人たちは避けます。自分も気持ちが落ち込むばかりです。
ポジティブ思考・プラス思考のグループに入ったり、明るい話題や積極的な思考の人たちと付き合うようにします。プラス思考の人たちと親しくすると、自分もエネルギーがもらえて元気になります。気持ちに張りが出て元気になると、スランプから脱出する力が湧いてきます。
⑥とにかく自分を信じる
スランプを脱出する方法で一番大事なことは、自分を信じることです。「まだやれる」「もう少し頑張れる」「これが自分の限界ではない」と思うことです。どんなに苦しい長いスランプでも「自分にはスランプを克服する実力がある」「もう一段高く上れる力がある」と信じれば、必ずスランプから脱出できます。
自分自身を信じることで精神状態を強くできます。メンタルトレーニングです。メンタルを強くすれば、途中であきらめることなくスランプから脱出できます。
子どもの頃からメンタルを鍛える
スポーツでも学習でも習い事でも、子供の頃からメンタルトレーニングをすることが大事です。子どもたちにもスランプはあります。子供の頃にスランプからの脱出方法を身につけていると、社会人になってからも仕事のスランプを克服して飛躍することができます。
まとめ スランプはさらに進歩するための前段階
スランプはだれにでも起こります。スランプを経験しないアスリートはいません。音楽家も画家も作家も普通の会社員でも、一生のうち何回かはスランプに陥ります。それは、その人の技術力・知識力・仕事能力などがある一定の水準に到達したためです。次の高い段階に上がるためには、自分の限界という壁を超える必要があります。限界の壁を超えるのは容易ではなく、何をやってもうまくいかない状態になります。心理的にも身体的にも不調な混乱状態です。
スランプはステップアップするための準備段階とも言えますから、どんなに苦しくつらくても必ず脱出できます。「自分にはスランプを克服する実力がある」と信じることが大事です。「自分は必ずスランプから脱出できる」と信じて、スランプであることを自覚して受け入れます。イメージトレーニングをしたり仕事や練習に取り組む量を調節したりして、再びやる気が湧き、モチベーションが高まるのを待ちます。メンタルトレーニングで心を鍛え、長期的な大きな目標を目指すようにします。視野を広げてゆったりと構え、プラス思考で取り組みます。
スランプは必ず脱出できます。あせったり自暴自棄になったりしてあきらめると、挫折感だけが残ります。スランプを脱出すれば、飛躍発展することができます。