「事なかれ主義」という言葉を知っていますか?何か問題が発生した時に、人との衝突を避けようとする事を優先的に考えて行動する人の事と言います。優しさだと思って自分の意見を押し堪えてきた人は、事なかれ主義である可能性があります。
このような人は、友人として接する分には「優しい人」という印象を持たれていたとしても、仕事場や家庭では嫌われている可能性があります。ここでは、事なかれ主義とは何か、また改善策について詳しくご紹介します。
事なかれ主義について
人の優しさは、時には優しさと捉えられない時があります。それは物事の本質からずれてしまっている時に起こります。衝突を避けようと、相手の意見に同調しがちの人は周りから「事なかれ主義者」と呼ばれているかもしれません。
ここでは、事なかれ主義とは一体何か、概要と例題について見て行きましょう。
事なかれ主義とは?
事なかれ主義の意味を知っていますか?意味を辞書で調べてみると・・・
■事なかれ主義の意味:事を荒立てないことを指針とすること。
参照:weblio辞書
このように、争いごとを回避して平穏無事であることを優先する事です。解決するべき問題があるのにも関わらず、それを回避したり見てみぬふりをしたり、放置するという考え方です。日本の社会ではこの傾向が多いと言われ、中でも公務員や大企業に勤めるなど組織に所属した人によく見られます。自分や勤めている会社に都合の悪いことがあると隠蔽を行ったりするようになります。
実際に起きた事実を解決しようと努力しないと、その問題から何も学ぶことはありません。一度上手に隠せたり、穏便に済ませることを覚えると、次回も同じように対応して同じ失敗を繰り返すようになります。
事なかれ主義は一見人間関係を上手に構築する手段の1つに見えますが、この事が原因となって人付き合いが上手くいかない場合もあります。間違っている事は間違っているとハッキリ指摘することで成長が出来たり、信頼関係が生まれるようになるのです。
事なかれ主義の例題
事なかれ主義が原因となって大きな問題へと発展するケースもあります。ここでは、学校や会社、家庭内で「事なかれ主義」によって引き起こされる問題について例題をみていきましょう。
学校の場合
2017年の10月に埼玉県内の公立中学校の校長先生と教頭先生が書類送検されました。この学校の教員が女子生徒の着替えの様子をビデオカメラで撮影しており、その事実を知りながら学校側が隠蔽していたという内容です。
このように学校側が不祥事を起した場合「公になると、来年度の入学に影響を与える可能性があるかもしれない」と隠そうという意識が働きやすいです。学校は閉鎖的な空間である為、問題を隠せるのではないという意識が働き、学校で起きたいじめ、自殺、教員の不祥事などの事実が隠蔽されやすい傾向にあります。
このような場合、被害を受けた保護者の方や被害者本人がマスコミなどに匿名の投稿をして事件がテレビを通じて明るみにされる場合があります。
会社や組織の場合
会社や組織の中で働いていると、事なかれ主義になりやすくなります。例えば、2008年大手居酒屋チェーン「和民」で起こった新入社員の過労死事件を覚えているでしょうか。この事件は新入社員の1人が過度な労働に耐えられずに自殺をしたという内容です。
通常、労働時間は1日8時間労働、週に最大で40時間と決められております。そして、月に80時間~100時間ほど時間外労働が続くと過労死する可能性があると言われています。この時はそれを大幅に上回る141時間もの時間外労働が続き、適応障害となりマンションから飛び降り、自ら人生の幕を下ろしました。
この事件も事なかれ主義が招いたと言えます。働いている本人だけでなく、周りも法令違反である事や問題であると知りながらも大きな問題にしていませんでした。この問題が明るみに出れば、会社が経営不振になったり、仕事を失う可能性も出てくるため、問題を指摘する事ができないのです。事なかれ主義によりこのような最悪な事態を招く恐れもあるのです。
家庭内の場合
事なかれ主義は家庭内でも影響を及ぼします。共働きの家庭で子どもがいる場合は、お互いが育児や家事に関して真剣に取り組まないと、片方に負担がかかってしまい不満を抱え始めます。多いケースとして見られるのが、夫が育児や家事に参加しないという事です。
育児や家事などは女性の方が得意分野である為、夫が家で「事なかれ主義」になってしまうことが多くあります。例えば「娘をどの保育園に入れるか」という問題を抱えた時に、「奥さんがやってくれるだろう」と考えてしまいがちです。他にも、妻が残業で夜中に帰ってきた時に、夫が洗濯物を畳まずにくつろいでいたという事もあります。
お互いが育児や家事に熱が入らないと、片方に負担をかけてしまいます。「たいした問題ではない」と軽視していると、価値観が合わなくなり夫婦関係を悪くする原因にもなります。
事なかれ主義の心理と性格的特徴
事なかれ主義者は自分に責任がないと思っている事がほとんどです。当事者意識が低いために、問題を解決する事が出来ません。
会社や学校などの組織や家庭内で意見を譲ってしまっている事が多い方、周りからはどのように見られているのか一度客観視してみましょう。ここでは、事なかれ主義の心理状況や性格的特徴についてご紹介します。
問題対応能力がない
トラブルに直面しているにも関わらず、それを隠そうとしてしまうのは、この問題に対して解決できる自信がないという心理状況から生まれます。経験豊富で臨機対応に物事が対応出来る人であれば、事実を隠さずに問題を解決していこうとするものです。
問題だと分かっているのであれば、それを解決できればより良い状態になるのは分かっているはずです。しかし、事なかれ主義の人はチャレンジしたり、やり遂げる自信がないのです。このようなタイプの人は、特に新しい事を作り出すことに向いていません。
その為、会社で新しくプロジェクトが立ち上がった場合に「自分がやりたい」と立候補しません。また、自分から新しいアイディアを発表することも少ないです。それは万が一自分の案に決まってしまった時にプロジェクトを任される可能性があるからです。
新規プロジェクトというものは、未来はどうなるか分からないもので、問題が多く発生していきます。既に運用されている仕事であればトラブルが発生してもマニュアルが既に作られている事が多いですが、新しいものは自分で作り出さないといけません。その為、このような新しいチャレンジをしようとする気が起きないのです。
楽をしようとする
プロジェクトマネジメントをする時には、多くの問題が発生します。そして、この責任を担うプロジェクトマネージャーの方の中には、関係者たちと調整しなければいけません。しかし、このような状況になった時に「めんどくさい」という理由で先送りにしようとする人がいます。
その問題が小さいことであり、優先するべきことが別にある時は問題ありません。しかし、問題が大きく、優先順位の高いものを先送りにしようとすると、後々支障がでてきます。問題に取り組みたくないと思うのは「どうにかして、楽したい」と思っているからです。プロジェクトに関わっている人が当事者意識を持たずに楽をしようとしていると、良いものを生み出すことは出来ません。
責任感が低い
起こっている問題に対して当事者意識が低いと「自分が解決しなくても他の人がやってくれるだろう」と考えてしまいます。問題を自分の問題と考えずに他人に任せてしまい責任から逃れます。
このようなタイプの人は子供の頃から学級委員や生徒会などに名乗りを上げるタイプの人ではありません。これらの仕事はクラスをまとめたり、問題を対処したり雑務など大変な業務がたくさんあります。このような時には「誰か立候補しないかな」と待っています。
勇気がない
事なかれ主義者は勇気がない人とも言えます。問題に対して気付いているのにも関わらず、解決しようとしないのには勇気がないからです。少しの勇気が問題解決に繋がるにも関わらず、その問題を見てみぬふりをした方が安全でいられると判断してしまうのです。
例えば、学校でいじめが起こっていた場合に、自分がトラブルに巻き込まれたくないという理由で見てみぬふりをする人がいます。いじめを止めようとしている事がいじめっ子にバレてしまうと、次回のいじめのターゲットに自分が選ばれる可能性があるからです。今まで、このような場面に遭遇しながらも何もしてこなかった人は、少なからず事なかれ主義であるという事が出来ます。
傷つくのが怖い
事なかれ主義の人が抱く心情が「傷つくのが怖い」という事です。問題解決をする際には、事態が良い方向へと進む場合もあれば、大きな問題へと発展してしまう可能性もあります。そして、必ず誰かと論争をしなければいけなくなり、人から責められたときの事を想像すると怖いと感じてします。これらの事を頭で想像してしまい、隠蔽するようになるのです。
例えば、部下が起した不祥事などは上司の責任になる事が多いです。部下から問題について打ち明けられたにも関わらず、その問題を一緒に解決しようとはしません。周りから責められたり、自分の立場を失ってしまうかもしれないという怖さから問題を隠すようになります。
他人と摩擦を起こしたくない
事なかれ主義の人は、他の人と摩擦を起こしたくないという気持ちを持っています。相手にも不快な思いをさせたくなく、自分も不快な思いをしたくない為に面倒を避けようとします。例えば、会議をしている時にこのような状況がよく見られます。
しっかりと自分の意見を持っていたとしても「相手との関係に摩擦を起こしたくない」や「良いイメージのままでいたい」と思った場合に自分の意見を言わずに押し殺す場合があります。上司や先輩の話に納得できない点があったとしても、同調してしまうケースが見られやすいです。
優しい平和主義
事なかれ主義の方は、心の優しい平和主義者とも言えます。自分の意見を押し殺してまでも相手との対立を嫌がり、対立している相手の意見を尊重する傾向にあります。人に優しくする事はいい事ではありますが、場合によってはこのような対応が優しさにはならない時があります。
友人同士で話している場合であれば、どちらかが意見を抑える事で「大人だな」や「優しい」と思われる場合もあります。しかし、仕事場などの場面では意見を抑えていても優しいと思われる事はなく、自分の意見を持っていない人という捉われ方をされます。
マイナス思考
問題が出てくれば誰もがマイナス思考になってしまいがちです。「自分に解決できるわけない」と考えがちで、どうしても悲観的になってしまいます。しかし、自分だけで解決しようと思わずに、誰かの力を借りてもいいのです。
問題を解決していこうとする姿勢がまず大事であり、それを成し遂げるには周りの協力が必要な時もあります。手段はいくらでもありますが、やる気がない人は成功しません。また、仮に失敗したとしても、失敗から学ぶことは多く次回に同じような問題が出てきたときに対処できるようになります。
事なかれ主義の改善方法
事なかれ主義になってしまう原因は、本来の目標や目的を見失っている事です。人間関係の構築だけに重きを置いている為、発言を控えて周りとの摩擦を避けるようにします。
しかし、このようなタイプは、仕事で成果を出すことは難しいです。「出世したい」や「結果を出したい」という欲があるようであれば、この性格を改善していかなければいけません。ここでは、事なかれ主義を改善法についてご紹介します。
目的と目標を考える
事なかれ主義を改善するには、まずは目的や目標について考える癖をつけましょう。物事には目標や目的がありますが、これを把握していないと別の方向に目を向けてしまいがちです。事なかれ主義の方の場合は、目的を見失い周りとの関係性に重きを置いている傾向にあるのです。
例えば、会社の業績が落ちている時に「成果を上げる為にはどうしたらいいか」と会議になった場合、あなたはどんな案を出すでしょうか。社員にもっと働かせようとする考えをする企業が多くあります。そして、事なかれ主義の人は人との争いを避ける為にこのような意見に賛同し、自分も多く働かなければいけない状況を作り出してしまいます。
しかし、社員に多くの業務を課せば課すだけ疲弊していき、いいパフォーマンスを出すことができなくなります。また残業代が払われない場合もあり、不満を抱える人も増えてきます。これを放置してしまう事で、社員のパフォーマンスが悪くなったり、退職率が上がったり、ブラック企業と言われてしまったり、いい社員を雇用するが困難になる事に繋がり、結果的に成果を上げることが出来なくなります。
事なかれ主義の人は「誰かが解決してくれるに違いない」と問題を見ないようにしがちです。しかし、成果を上げるための方法はいくらでも考えられます。目的を深く考えて本気で行動に移す事で会社にとって良い結果を生み出すことが出来るようになります。
本気になる
目的や目標となるものに対して、本気になれないと問題を解決することは出来ません。もし、本気になれない場合は、会社の環境や部署が合っていない可能性もあります。どんな事に自分が打ち込めるようになるのか考えて行動に移しましょう。
誰でも、自分が好きでないものには熱をこめることは出来ません。本気になれるものを探しましょう。
意見を言いやすい方法で伝える
皆の前で意見を言うのは、慣れていない人にとっては避けたい場面です。2人の間では言える事でも、皆の前では遠慮してしまうこともあると思います。意見を持っているにも関わらず、このように場面によって発言できないタイプの人は、自分なりの方法を考えてみましょう。
例えば、会議の前の上司や先輩に話しておくというのも1つの手です。会議の後で言うと「なぜ、その場で発言しないんだ」と怒られてしまったり、会議に出る必要がないと思われる事もあります。
その為、議題が事前に分かっているのであれば、打診しておくことで自分に自信が持てて発言出来る場合もあります。また、相手があなたの意見を分かっている場合、あなたが話しやすいように話を振ってくれる可能性もあります。少しずつ皆の前で意見を言える練習をする事で、事なかれ主義から脱出できるようになります。
おわりに
事なかれ主義者は、解決するべき問題があるのにも関わらず、争いごとを避ける為に見てみぬふりをする人のことです。争いごとを避けているだけの行為は優しさではありません。
解決するべき問題にきちんと向き合っていかないと人間関係を悪くしてしまう可能性があります。今回ご紹介した改善点と向き合い、少しずつ態度を変えていくようにしましょう。
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