歯は毎日の食事で使う欠かせないものです。それでいて、永久歯は一度しか生えず、何かしらの病気になってしまうと取り替えがききません。歯を大事にすることはいつまでも元気に食事をすることと同じかもしれませんよね。
フィステルは口の中、歯茎にできる病気の1つです。大きな症状があるわけではありませんが、症状を放置してしまうと歯に深刻なダメージを与えてしまうことがあります。では、このフィステルについてみていくことにしましょう。
フィステルとは
フィステルは歯茎にできたおできのようなもので、内歯瘻や瘻孔と呼ばれることもあります。見た目は「おでき」そのもので、一部が白く腫れ上がっています。痛みはなく、それほど深刻なようには思えません。
フィステルは歯根の先端に発生した膿が歯肉に出て、表面化している症状です。膿が歯根から外へ出ようとする穴・出口なのですね。厄介なのは一度膿を出したとしても、膿がまた溜まることで同様の症状がみられるということです。
痛みはありませんが、体の調子が悪い時や免疫力が下がっていると痛みを感じることがあるようです。また、膿・病巣そのものには臭いがあるため、口臭の原因となることがあります。周囲の反応が気になるようであれば早々に治療する必要があるでしょう。
フィステルになるメカニズム
フィステルはある日突然、発症するわけではありません。その状態になるまでには過程があります。具体的には以下の過程を辿っていきます。
歯が虫歯になる
歯磨きを怠るなどの様々な原因で歯が虫歯になると、歯は侵食されていきます。虫歯は個人で治すことは難しいですから、治療が遅れれば遅れるほど歯の状態は悪くなっていきます。
虫歯になった時、進行すればするほど痛みやしみるといった症状は大きくなっていくと思います。ただ、それでも何かしらの理由で放置してしまうと、虫歯は進行してしまいます。自力で治すことはできませんから、早めの治療を受けるようにしましょう。
歯の神経が死んでしまう
虫歯が進行すると、歯の神経を侵食してしまいます。この段階では歯の痛みを感じるかもしれませんが、それでも放置してしまうと歯髄の炎症が進みます。そして、細菌は増え続け、歯をさらに侵食していきます。
膿が溜まり、排出される
侵食した痕に膿が溜まり始めます。また患部は痛みや炎症を招くことがあり、早急な治療を求められるでしょう。膿が限界まで溜まると、フィステルを発症。歯茎から膿が出てくるようになります。
フィステルを放置すると…?
歯の神経が侵食され、神経が死んでしまうと痛みを感じなくなります。歯を見なければ異常に気づかないかもしれませんね。
しかし、歯ではとんでもないことが起きていますから、治療をする必要があります。放置してしまうと以下のことを発症してしまうことがあります。
歯がぐらついてしまう
歯根の膿が大きくなると歯を支えることが難しくなってきます。歯のぐらつきが起こり、非常に不安定な状態となってしまうでしょう。膿による骨の吸収も起こります。食事をする際、歯のぐらつきによって咀嚼が難しくなることがあります。
口臭の原因になってしまう
その他、冒頭でも述べたように、膿は臭いを発します。このため、口臭の原因となることがあります。膿は何度も再発してしまうので、根本的な治療をしなければ口臭改善は期待できないでしょう。
フィステルの原因
フィステルは細菌が歯の深くまで入り込み、増殖してしまうことが原因でした。では、細菌が入り込む原因としてどういったことが考えられるのでしょうか。
フィステルを予防するために、原因をみていくことにしましょう。
歯周病
歯周病は歯に歯石や歯垢が溜まっていたり、歯周ポケットと呼ばれる歯茎と歯の隙間が大きい状態です。進行の程度によって異なりますが、歯周ポケットが深ければ深いほど、細菌は入り込みやすく、フィステルの原因になることがあります。
歯周病を進行している人ほど、細菌の繁殖が活発で、口臭を発していることがあります。また、朝起きた時に口内のねばねばがあると、歯磨きが不十分である可能性があるでしょう。日々のブラッシングが歯周病予防につながります。
根尖性歯周炎
歯の根っこの先に炎症ができる歯周炎があります。これを根尖性歯周炎といいます。症状が進行すると歯周組織に悪影響を与えたり、膿がたまり、フィステルを発症することがあります。
歯の根っこに膿ができているので噛むと痛みを感じたり、レントゲンで黒く撮影されることがあります。
歯が割れている
何かしらの原因で歯自体が割れていたり、ヒビが入ってしまうと、その隙間から細菌が入り込んでしまうことがあります。それがフィステルの原因になってしまうのですね。
歯根治療を繰り返していると歯がもろくなってしまうことがあります。
外傷によるもの
歯を強くぶつけてしまったりすると、そのまま歯の神経が死んでしまうことがあります。そして、細菌が侵入し、フィステルを発症してしまうのです。
歯を強くぶつけて、見た目でわかる異常が出てきたら、歯医者に行くようにしましょう。
歯科の医療がきっかけのケースも…
歯の治療は歯科医師の技量に関わることがあります。抜歯治療や虫歯治療などで歯科治療が不十分ですと、歯の神経を死なさせてしまうケースもあるようです。これがフィステルの原因になることがあります。
また、インプラントを埋めたとしてもフィステルを発症することがあります。インプラントといえど、歯なのできちんとしたメンテナンスが必要ですし、インプラント周囲炎などの異常があれば医者に行く必要があります。
毎日のメンテナンスを怠ると…
フィステルの原因は歯周病や治療法によるものがありました。しかし、やはり日々のメンテナンス、つまりブラッシングが病気を起こす起こさないの大きなポイントになるでしょう。きちんと磨いているつもりでも、磨き残しはあるものです。
磨き残しがあれば歯石となり、歯の状態は悪くなります。歯周病の原因になり、歯磨きをすると血が出ることもあるでしょう。若いうちはいいですが、歳をとればとるほど歯の状態は悪くなっていきます。最終的には入れ歯やインプラントをしなければならなくなることもあるでしょう。
歯はちょっと磨かないだけで虫歯になります。また、虫歯治療は自分でできないからやっかいです。時間をとって歯医者に行く必要がありますが、忙しければ先延ばしにしてしまう…なんてこともあるでしょう。それがまた歯の状態を悪くしてしまいます。フィステルを始め、歯や口の中の病気を防ぐためには、きちんと毎日メンテナンスをする必要があるのです。
フィステルの治療方法
では、実際にフィステルになってしまったとき、どういった治療が行われるのでしょうか。
病気が進行していればしているほど治療は大掛かりになり、歯への負担も重くなるものです。具体的には以下の方法があげられます。
感染根管治療
その名の通り、細菌に感染を起こした歯の根管を治療する方法です。根の管を拡大し、根管内を消毒していきます。感染根幹治療では細菌を十分に殺すことがポイントです。なぜなら、根管処置の際、少しでも細菌が残ってしまえば再発の恐れがあるためです。
感染根管の治療の際は歯科医や根管治療専門医に相談するようにしましょう。治療回数は3,4回程度です。ちなみに根幹治療は保険治療の適応となります。
歯根端切除術
根管治療が難しい場合は、歯茎の方向から膿を取り出す治療をします。これを歯根端切除術といいます。麻酔をし、歯の根っこの一部を切除、薬を詰めていきます。これも同様に細菌を残さず殺菌することがポイントになります。
しばし、銀歯や詰め物をしている人はその歯茎からフィステルが出ることもあるようで、原因歯の治療には医師と十分相談する必要があるでしょう。
再植術
歯を一回抜き、膿の袋を除去。その後、再び歯を植える治療法を再植術といいます。
抜歯の際、歯が曲がっていると折れてしまう可能性があるため、注意が必要な術式です。
予防を意識する
フィステルの治療・処置は大掛かりで、歯に大きな負担を与えることがあります。食事に関しても不自由になることもあるかもしれませんね。そうなると食事が楽しく無くなるなんてこともあるでしょう。
フィステルを始め、歯の病気は予防することが最大の治療といえるでしょう。歯は自己治癒しませんから、虫歯にならないための予防を日々意識する必要があります。では、次はそんな予防法や歯を綺麗に保つ心得についてみていきましょう。
歯の健康を保つために
フェステルを始め、歯や口内の病気にならないためには日々の歯磨きが大切です。それを少し怠っただけでも歯は虫歯になったりしますから注意が必要です。
では、歯の健康を保つためにどういったことができるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
歯の磨き方を覚える
歯は当たり前ですが全て形状が異なります。形状が異なるということは、磨き方が異なるわけで、それぞれ適した磨き方をしてあげる方が汚れが落ちるでしょう。前歯、奥歯。それぞれで磨き方を意識してみてください。
また、歯間なんかは先の細い歯ブラシや糸ようじなどを使い歯垢を除去するようにしてください。普段、無意識にブラッシングをしていると、それだけ磨けていない部分もありますから注意が必要です。
歯の磨き方については歯医者の検診の際に教えてもらえます。歯医者に行くときはその前に歯を磨くと思いますが、自分がどれだけ磨いたと思っても、磨き残しがあるもの。その部分を歯科衛生士に指摘してもらうことで、改善することができます。
歯並びによってはとても磨きにくい場所もありますが、そういった部分は専用の歯ブラシで磨いてみると、汚れをきちんと落とすことができます。
できれば電動歯ブラシを使ってみる
筆者は長年電動歯ブラシを愛用しています。手磨きでは到底追いつかない振動数で歯垢を落としてくれます。使用を始めてからというもの、一度も虫歯になったことがありません。それほど電動歯ブラシは強力なサポーターといえるでしょう。
1万円ほどのものであれば十分効果があります。反対に数千円という少々低価格のものだとあまり効果が期待できません。また、高すぎても手が届かないので1万円程度が買いやすいでしょう。
電動歯ブラシを使って実感することは大きく2つあります。1つ目は歯がツルツルになること。これはブラッシング後、下で歯を触るとすぐにわかります。手磨きでは得られないようなツルツル感に感動します。
2つ目は朝の口のねばねばがなくなるということ。朝起きて独特の口の不快感があるということは、磨き残しがあるということですが、電動歯ブラシを使い始めるとそれが全くなくなります。それだけ口の中を綺麗にすることができるのですね。歯の健康に不安がある人はぜひ電動歯ブラシを買ってみてください。
半年に一度、歯科検診を受ける
電動歯ブラシを使っていても、歯石は日々蓄積しています。そして、それはなかなか落ちるものではありません。そのため、歯科クリニックや歯科医院に行き、定期的に歯科検診を受け、歯の状態をきちんと確認する必要があります。
歯の状態は歯磨きをするだけで、意識してみることって少ないですよね。自分で鏡でみようにも奥の歯はなかなか覗けないものです。100均一で歯医者で使われているような口内専用の鏡もありますが、買って見る人は少ないでしょう。
歯医者に行けばムシ歯治療、歯石の除去、歯垢が残っていればその指摘などをしてくれます。虫歯が小さいうちから治療すれば大事に至ることはありません。面倒と思っても、必ず行くようにしてください。
食べ物はよく噛んで食べる
食事に関することですが、よく咀嚼して物を食べることは歯の健康に役立ちます。これは唾液の分泌が関わっています。唾液が分泌されるほど、口の中を清潔に保つことができるのですね。あまり食べ物を噛まないという人は少し多めに咀嚼することを意識してみてください。
あまり咀嚼が進まない食べ物としては麺類があげられます。ラーメンなどの麺はすすってそのまま喉を通ってしまうので、あまり唾液がでないでしょう。こういったものを普段から食べているとどうしても咀嚼回数が減ってしまうものです。麺類も意識してよく噛むようにしてくださいね。
フィステルと似た病気・症状
口の中の病気や症状はフィステルだけではありません。痛みやしみるといった症状を発症することもあり、食事が難しくなるといったことを招きます。
似たような症状として以下があります。
口内炎
口の中に炎症ができる状態です。誰しも一度は経験したことがあるでしょう。食事中にしみることもあり、なかなか食事が進まないことがあります。
不規則な生活をしていたり、食事が偏っていると口内炎を好発します。薬を飲み早めに治療するようにしましょう。
骨隆起
強い食いしばりによって顎に力が加わり骨が変形、隆起してくる状態です。目に見えて歯茎が隆起しますが、痛みはありません。治療の必要はないものの、フィステルなどの治療を行う際に邪魔になることがあります。
骨隆起が起きる原因の1つに歯ぎしりがあります。寝ているときによく起こる歯ぎしりですが、原因はストレスともいわれています。日常的に何かしらのストレスがかかっていると、寝ている間にはぎしりが起こり、強い負担が歯にかかります。
歯ぎしりは骨隆起だけではなく、歯を割ってしまうことにもつながります。自分で自覚することは難しいですが、家族に歯ぎしりを指摘されたときは早めに対処したいものです。ちなみに歯ぎしりの対策としてマウスピースをはめる方法があります。市販のものもありますが、歯医者でオーダーメイドで作ってくれるので相談してみるといいかもしれませんよ。
詳しくは、骨隆起とは?原因や症状、治療方法を知ろう!手術が必要な場合もある?を読んでおきましょう。
歯肉炎
子供に多くみられる歯肉炎。これは不十分な歯磨きによって発症します。もちろん、大人でも歯磨きが不十分であれば発症する可能性はあります。
歯磨きの時に血が出てくるなど歯肉が弱っていくようであれば、歯肉炎を発症している可能性があるでしょう。
詳しくは、歯肉炎の症状を紹介!痛みや治療方法を紹介!の参考にしてください。
まとめ
歯の病気を発症してしまい、歯をダメにしてしまうと、インプラントや入れ歯を実施するかもしれません。その場合、お金がかかり、食事の楽しみも減ってしまうなんてことがあるかもしれませんよね。
歯は一生モノであり、日々きちんとメンテナンスをしてあげなければなりません。メンテナンスに気を抜いてしまうと、すぐに虫歯になり、歯をダメにしてしまうことがあります。それはとても辛いことですよね。
フィステルは歯の不摂生を教えてくれる1つのサインでもあります。歯磨きが足りなかったり、歯周病などを発症している。そういったことを教えてくれているのですね。歯の健康をきちんと保つようにしてくださいね。
関連記事として、
・歯茎にできものが出来る原因とは?病気の可能性や口内炎について紹介!
これらの記事も読んでおきましょう。