高齢者が注意するべき肺炎とは?症状や原因、治療法や予防法を知ろう!

高齢者を介護している方、一緒に住んでいる方、たくさんいると思います。大好きな親やおじいちゃん、おばあちゃんには、まだまだ長生きしてもらいたい。その為には病気の早期発見、早期治療も重要になってきます。

肺炎は、日本人の死因第3位で、高齢者の誰もがかかる可能性があります。高齢者の肺炎は、症状が現れにくく、気づきにくいと言われています。重症化する前に、周りが気づいて適切な治療を受けさせる為にも、高齢者の肺炎についての正しい知識を身につけておきましょう。

高齢者の肺炎について

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肺炎は、風邪と同じもしくは、風邪が悪化したものと思われがちですが、風邪と異なります。ここでは、肺炎とは何か、高齢者が肺炎に掛かりやすい理由、風邪と気管支炎、肺炎の違いについてご紹介します。

肺炎とは?

肺炎は肺炎球菌感染症の1つで、感染すると咳や発熱、たんなど風邪と同じような症状が現れます。症状が似ている為、肺炎は風邪がこじれたものと思われがちですが、肺炎と風邪は異なります。肺炎は、細菌やウイルスなどの病原体が肺胞に感染して炎症を起す病気です。

肺胞とは、気管支の先端部分に続いている半球状の小さな嚢のことで、酸素と二酸化炭素のガスの交換を行っています。この肺胞が感染するとガスの交換が出来なくなり、息切れや痰、38度以上の熱を長期間伴い、重症化すると呼吸困難などの呼吸器症状が現れます。更に進行すると呼吸不全を引き起こして死に至ります。

肺炎が起こる原因菌で最も多いのは、肺炎球菌です。その次にインフルエンザ球菌、マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ、黄色ブドウ球菌と続きます。これらの原因となる菌は季節に関係なく常に存在している為、高齢者の方は、年中注意が必要です。

高齢者が肺炎に掛かりやすい理由とは?

肺炎に対して有効な抗生剤があるにも関わらず、ここ数十年の間日本人の死因第3位に常に位置づけています。肺炎で亡くなる方は年間で12万人にもおよび、中でも約97%以上が65歳以上の高齢者と言われており、高齢者の肺炎による死亡率は、非常に高いです。

高齢者が肺炎に掛かりやすい理由として、免疫力の低下が挙げられます。体の中には免疫システムが備わっており、これが細菌やウイルスの進入を防ぐ役割があります。この免疫は年齢やストレスにより低下していきます。

免疫は20~30歳にピークを向かえ、40歳以降は年齢とともに減少していきます。その為、高齢者は、病気に対する抵抗力がなくなり、病気にかかりやすくなります。また、高齢者は下記のような理由で、肺炎が急激に悪化してしまう傾向にあります。

高齢者の肺炎の4つの特徴と注意点

・高齢者は目だった肺炎症状が現れずらく、通常の肺炎の症状と異なる現れ方をする場合がある為、診断や治療が遅れがちになる事

・既に他の病気を患っており、潜在的な肺炎発症因子を持っていたり、増やす因子を持っている為、肺炎が急激に進行しやすい事

・何か物を食べた時に誤って気道に入り込んでしまい、咳き込む力が弱い為に外に出すことができずに、細菌が繁殖してしまう誤嚥性肺炎が起こりやすく、この肺炎は気づきにくい事

・高齢者肺炎に肺結核が混在している事

年齢による免疫力の低下や、糖尿病などの生活習慣病や呼吸器、心臓に持病がある、インフルエンザにかかっているなどにより、体の抵抗力が弱まっている場合、細菌などに感染しやすくなり、肺炎を引き起こします。中でも、高齢者の方は症状が現れずらい事が多いので、風邪だと勘違いしやすく、症状が急激に悪化する事が多くあります。

風邪と気管支炎、肺炎の違い

風邪と気管支炎と肺炎は、細菌やウイルスなどに感染することで呼吸器が炎症を起す疾患の為、症状が似ています。これらは炎症を起す場所によって病名が異なります。細菌やウイルスは喉や鼻の粘膜から感染し、鼻水やくしゃみ、咳などの症状を引き起こし風邪をひきます。

これらの細菌やウイルスが気管支まで到達して炎症を起すと気管支炎になり、肺まで入り込むと肺炎になります。このように、風邪や気管支炎の症状が悪化することで、最終的に肺炎を引き起こす要因になります。風邪と気管支炎、肺炎には症状の現れ方に違いがあります。症状の現れ方を見分け、発見が遅くならないように注意しましょう。

風邪

ウイルスの感染が喉や鼻で起こる為、症状の現われ方も局所的で、比較的に軽いです。風邪の症状は、鼻水、くしゃみ、咳、痰、喉の痛み、38度前後の熱を伴い1週間程度で回復します。

気管支炎

ウイルスの感染が気管支で起こるため、痰の絡んだ咳が出ます。また、首や背中の痛み、関節痛、下痢や嘔吐などの症状が現れる場合もあります。

肺炎

肺炎の場合は、風邪と同様の症状の他に、胸に鋭い痛み、悪寒、脈や呼吸が速い、息切れ、全身のだるさ、食欲低下、顔や唇が紫色などの症状が見られ、熱も38度以上の高熱が長期間続きます。

風邪をこじらせることで発症する場合や、マイコプラズマやレジオネラなどの感染力の強い菌などに感染することで起こります。風邪だと思っていたら肺炎だったことが起こらないように、このような症状が起きた場合は、医療機関をすぐに受診することをオススメします。

風邪による熱は3日程度で回復傾向に向かいます。しかし、3日以上熱が続く場合や38度以上の高熱が出ている場合は、肺炎を疑いましょう。また、肺炎にかからないように、定期的に予防接種を受けることが重要です。

肺炎の種類

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ここでは肺炎の種類と原因、症状についてご紹介します。

肺炎は原因となる菌や微生物によって、「細菌性肺炎」「ウイルス性肺炎」「非定型肺炎」の3つに分けることが出来ます。ここでは、この3つについて詳しくご紹介します。

細菌性肺炎

肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、クレブシエラ菌などの細菌の感染により肺炎が起こることを細菌性肺炎と呼びます。これらの多くは、喉や鼻の奥に常に存在している常在菌でもあり、健康な時は免疫システムにより炎症を起すことはありませんが、体調が悪い時、免疫が下がっている時には、これらの菌が肺にまで進入して炎症を引き起こします。

細菌性肺炎は、菌が気道を通って感染する場合と、血液の循環で肺に到達する場合の2つの感染方法がありますが、ほとんどが気道を通って進入してきます。細菌により肺炎が起こると、咳や高熱、黄色く粘り気のある痰、胸の痛み、呼吸障害、倦怠感、食欲低下が起こります。

菌の感染で起こる肺炎の場合は、医療機関で抗菌薬を処方してもらうのが一般的です。しかし、菌により効果のある薬が異なるため、原因菌を特定することが非常に重要です。高齢者で薬が飲めない場合は、血管注射で投与する場合もあります。

ウイルス性肺炎

ウイルス性肺炎は、ウイルスが原因となって起こる肺炎です。原因となるウイルスで一番多いものは、インフルエンザウイルスで、他にはパラインフルエンザウイルスやSARS、RSウイルス、アデノウイルス、麻疹ウイルス、水痘ウイルスなどのウイルスが挙げられます。

ウイルスに感染した場合、風邪の症状に併せて、咳、発熱、倦怠感、頭痛、嘔吐が見られます。ウイルス性は感染力が強い為、集団感染が起こりやすいです。インフルエンザの症状だけでも辛いのに、インフルエンザ菌が肺に到達して肺炎になってしまったら大変です。

特にインフルエンザが流行する11月~4月にかけてはインフルエンザにかかって、肺炎を併発する率も増加します。ウイルス性肺炎にかかった場合、抗ウイルス剤で治療を行うのが一般的ですが、インフルエンザ以外のウイルスから発症した場合は、効果的な薬がないと言われています。この場合、熱や咳を緩和させる対症療法や二次感染予防の対応が取り入れられます。

非定型肺炎

病原微生物によって発症する肺炎を非定型肺炎と呼びます。この原因となる病原微生物は多く挙げられ、代表的なものはマイコプラズマ球菌やクラミジア菌、レジオネア菌などです。

マイコプラズマは感染力が非常に強く、感染すると乾いた空咳が長く続くのが特徴です。また、熱は微熱や高熱と幅広く起こり、痰が絡むことは少ないです。感染力が強い為、集団感染しやすく、子供から大人までかかります。

クラミジアで肺炎が発症した場合、発熱が起こることが少なく、咳が長く続く続きます。ペットの小鳥から感染するオウム病クラミジアによる肺炎の場合は、高熱、頭痛、意識障害が起こり、重症になりやすいです。

また、レジオネラ菌は通常、川、土、池に住むアメーバに寄生しています。その為、これらの場所や水辺に近づくことで感染します。症状は軽い場合も重い場合もあり、症状の現れ方は幅広いです。これらが原因で肺炎おこった場合、マクロライド系の抗菌薬を投与することが一般的です。

高齢者が気をつけるべき肺炎

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高齢者が気をつけるべき肺炎に「誤嚥性肺炎」があります。70歳以上老人の70%以上が、誤嚥が原因で肺炎に掛かっていると言われています。

これは通常の肺炎よりも症状が現れずらい為、気づきにくいです。いつもと違った異変にいち早く気づいて、重症化する前にすぐに治療することが必要です。

誤嚥性肺炎とは?

誤嚥性肺炎とは、嚥下障害が起こることで生じる肺炎です。通常、食べ物を口に入れると歯で物を噛み砕いて小さくしたものを喉の奥に送って、飲み込みます。この時、軟口蓋が鼻腔と口腔を遮断し、喉頭蓋が気管を蓋して、物を食道に送る仕組みになっています。このようにして、通常は気管に物が入らないようにしています。

しかし、老化や持病により、食べ物の咀嚼や飲み込みが難しくなることで、気管に細菌や物が入ってしまいます。これを嚥下障害といいます。健康な方、若い方の場合は、気管に物が入るとむせが発生し、咳き込むことで外に追い出すことが出来ます。

しかし、高齢者は吐き出す力が弱まっている為、外に出すことができずに、細菌が肺に入り繁殖する原因になります。食べ物や飲み物を誤嚥する以外にも、寝ている間に口の中で繁殖した細菌を誤嚥したり、嘔吐物を吐き出せずに気管に入れてしまうことで細菌が増えて肺炎が引き起こされます。

健康な方でも、自分の唾液や細菌を誤嚥する場合がありますが、量が少ないことや翌朝痰として吐き出すことが出来るため、肺炎に掛からずに済みます。しかし、高齢者の場合は誤嚥しやすい事に加えて、吐き出す力が弱いこと、免疫力が低下していることで細菌が繁殖しやすい為に、肺炎にかかりやすいです。

原因とは

実は、加齢と誤嚥のしやすさは直接的な関係はありません。咳や嚥下反射の低下を引き起こすのは、脳梗塞などの脳血管障害だと言われています。脳梗塞などの脳血管障害により、神経伝達物質が乏しくなり、咳反射や嚥下反射が低下します。

その為、誤嚥を起こしやすくなると考えられています。全く脳梗塞の症状が見られない老人の方でも、MRIなどで検査を行うと、無症候性脳梗塞が発見される場合が多くあると言われています。加齢により脳梗塞などの脳血管障害にかかりやすくなり、誤嚥を引き起こして肺炎になるといった流れが高齢者の肺炎によく見られる傾向です。

症状とは

通常の肺炎の場合は、発熱、咳、痰などの症状が現れますが、誤嚥肺炎の場合は症状が現われにくいです。高齢者の場合下記のような、いつもと違う症状がみられた場合は、肺炎を疑い、治療が遅れる前に病院を受診しましょう。

  • 元気がない
  • 1日中眠そう
  • 食事中によくむせる
  • 喉がゴロゴロ鳴っている
  • 唾が飲み込みにくい
  • 食事に時間がかかる
  • 痰がよくでる

詳しくは、誤嚥性肺炎の症状を紹介!高齢者や子供は要注意!を読んでおきましょう。

肺炎の予防法と治療法は?

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肺炎の原因となる病原菌は、肺炎球菌とインフルエンザ菌が多いです。その為、この2つを予防することで、肺炎にかかるリスクを大幅に減らすことが出来ます。予防方法は、医療機関でワクチンを定期接種を行うことがオススメです。

また、高齢者は誤嚥性肺炎を起こしやすいため、誤嚥を防止することが予防に繋がります。ここでは、肺炎の予防と治療法についてご紹介します。

肺炎球菌の定期予防接種

肺炎の原因菌は、肺炎球菌が一番多く、高齢者の5%の鼻や喉に常在している菌でもあります。この肺炎球菌を予防するための肺炎球菌ワクチンが高齢者を対象に定期接種に指定されています。予防接種法は、ニューモバックスNPと呼ばれるワクチンを1回接種します。

肺炎球菌には、93種類の血清型が存在し、定期接種で使用されるニューモバックスNPのワクチンは、23種類の血清型に対して効果を示すと言われています。この23種類の血清型を予防できることで、肺炎球菌感染症の7割を予防できることが期待できます。高齢者肺炎球菌ワクチン予防接種の費用助成制度は、定期予防接種と任意予防接種の2つあります。

定期接種

平成26年10月1日からワクチンの定期接種が開始され、接種対象年齢は、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳です。また、60歳以上65未満の方でも心臓、腎臓、呼吸器の機能、ヒト免疫不全ウイルスのいずれかに障害があり、日常生活が困難な方は対象となり接種することが出来ます。しかし、一度ニューモバックスNPを接種された方は対象ではありません。
高齢者の定期接種は、実施主体は市町村です。対象の方は、市から接種券が個人通知書で届いているはずです。これを元に指定医療機関で予約を行いましょう。対象年齢にも関わらず接種券が届いていない方、接種期間や実施医療機関についての質問は、お住まいの市町村にお問い合わせください。

任意接種

市に住民登録がある75歳以上の方で、定期予防接種の対象でない方を対象に接種することが出来ます。しかし、5年以内に肺炎球菌ワクチンを接種されたことがある場合は対象になりません。高齢者の任意予防接種は、実施主体は市町村です。実施医療機関については市町村にお問い合わせください。また、下記の証明書を持っている方は、自己負担額が免除できます。

自己負担額免除可能な証明証

  • 生活保護受領証明書
  • 市民税非課税確認書
  • 介護保険料納入通知書・介護保険料額決定通知書、特別徴収通知などの区役所から送付されたもの
  • 中国人残留邦人本人確認証
  • 世帯全員の市県民税証明書と世帯全員の住民票

自己負担金額免除に関する証明証を持っていない場合でも、個人番号カード(マイナンバー)で予防接種無料受診券申請を申請することが可能です。

接種方法

定期予防接種、任意予防接種を希望される方は、市町村が指定する委託医療機関に予約を取り、接種を行います。指定していない医療機関で実施した場合は、全額自己負担になる為、注意が必要です。接種日に持参するべきものや接種料金は下記のものです。

■持参するもの

  • 接種を希望される方の健康保険証などの身分証明書
  • 生活保護世帯の方の場合は、生活保護受給証
  • 中国残留邦人等支援給付制度受給の方の場合は、本人確認証
  • 予防接種手帳、予防接種予診票兼接種券

■接種料金

接種費用は実施する市町村によって異なります。市町村から費用助成がでて、自己負担額は2500円~5000円ほどになります。生活保護受給世帯の方、中国残留邦人等支援給付制度受給の方は、無料で実施できます。

市町村によっては助成金の金額が異なる為、詳しくはお住まいの市町村もしくは指定医療機関にお尋ねください。

インフルエンザ予防接種

肺炎球菌に続いて、肺炎の原因となる原因菌はインフルエンザです。肺炎球菌予防接種だけでなく、インフルエンザ予防接種を併用すると、肺炎の予防効果が高まります。インフルエンザが予防接種を受けることで、肺炎だけに限らず脳炎も予防することが出来ます。

インフルエンザワクチンの接種を希望される方は、インフルエンザがピークを迎える11月~4月よりも前に済ませておくことが重要です。

誤嚥の予防

高齢者の場合、誤嚥性肺炎が多く発生します。その為、細菌の誤嚥を起さない為に出来る予防方法を取り入れましょう。口腔内の細菌を減らすために、口内環境を整えることが重要です。

朝、昼、夜とこまめに歯を磨いたり、口腔内マッサージをするなど、生活習慣を改善することで、細菌を減少させたり、唾液の分泌量が増え、嚥下反射の改善が期待できます。

肺炎の治療方法

肺炎に掛かった場合の治療法は、薬物療法が一般的です。まず原因となる細菌、ウイルスを特定し、それに効果的な抗生物質を使用することが主な治療方法です。比較的に症状が軽い場合は、通院になりますが、炎症が広範囲に及ぶ場合や糖尿病などの疾患がある場合は入院治療となります。

また、熱や痰などの症状を軽くするために解熱剤や去痰薬を使用したり、息切れや呼吸障害が起こっている場合は酸素吸入を行い、呼吸症状が重症の場合は、気管を切り開いて人工呼吸器をつける必要があります。

おわりに

肺炎は毎年死亡率の高い病気の1つです。特に免疫力の弱い高齢者の死亡率が高いです。秋から冬にかけての寒い時期は菌やウイルスが繁殖しやすい時期です。

この時期になる前に肺炎球菌やインフルエンザの予防接種を受けて、肺炎予防をしましょう。また、高齢者に多い誤嚥性肺炎にも注意が必要です。

関連記事として、

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