膝に痛みを感じる人は、年齢に関わらず多いのではないでしょうか。
膝は、歩行や階段など、いろんな動きに必要な関節のひとつですが、痛めてしまうと、本当に辛いものとなってしまいますね。
今回は、その膝の痛みの中でも、「膝の上の痛み」を中心に調べて来ましたので、さっそく見ていきましょう。
膝上が痛い時に考えられる病気
一般的には、膝が痛いというと変形性膝関節症と思い浮かべると思いますが、膝の上が痛い時というのは、思わぬ場所が原因になっている可能性があるのです。
変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)
先天性のものが多いのですが、股関節の形が正常ではないまま長い期間を過ごすことによって、次第に変形していく病気です。この場合には、膝の上だけではなく、太ももや股関節にまで痛みが現れます。
一般的な、変形性膝関節症と同じように、加齢によっておこるとされる原因の場合と、先天性の場合の2つがあります。
先天性の場合で見ると、先天性股関節脱臼(せんてんせい こかんせつ だっきゅう)や先天性臼蓋形成不全(せんてんせい きゅうがい けいせいふぜん)で発症し、女性に多いのが特徴となります。
膝蓋大腿関節症(しつがいだいたいかんせつしょう)
膝蓋大腿関節症は、膝の皿と大腿骨から構成されている膝蓋大腿関節という部分の炎症に対する病名です。
膝蓋大腿関節症の可能性としては、膝の上の痛みの他に、次のような症状を伴います。
- 膝の皿の動きが大きくなったような気がする
- 膝が腫れてしまっている
- 膝の皿のうえを中心として痛む
- 膝が強張って(こわばって)動きにくい
最初は、膝を動かしたときだけ痛みを感じて、休息をすると痛みが和らぐ状態から進行していきます。
進行していくと徐々に、痛みは大きくなり、休息しても痛みが治まらなくなるだけでなく、痛みの度合いも強くなっていきます。
膝蓋大腿関節症は、この膝の関節が炎症を起こして、軟骨も減少していくので骨が変形してしまい、関節がしなやかな動きが出来なくなるので強張る(こわばる)という状況になってしまうのです。
膝蓋(しつがい)とは膝の皿のことなのですが、このように膝蓋大腿関節症の場合は、膝蓋の中で骨棘(こっきょく=小さな骨のとげ)が出来てしまい、ぶつかりあうための痛みということになります。
更に、症状が進行していくと、安静時にさえ激しい痛みを伴うのですが、時には膝蓋骨(しつがいこつ)の違和感が出現してきます。
膝蓋骨の脱臼
膝蓋骨(しつがいこつ)の違和感の原因としては、膝蓋骨が外側にずれ込んでしまって、脱臼をしていることが考えられます。
膝蓋骨が脱臼をしていると、違和感や不安定な感覚を覚えるようになってきます。膝蓋の脱臼とは、膝蓋が決まった位置より外側に起こるために、大腿骨と皿が上手く働かなくなって、ちがう場所で皿が動いてしまうことをいいます。
スポーツや外部からの衝撃(しょうげき)、靭帯の損傷などで、脱臼は起こります。
これを放置したままでいた場合には、摩擦で軟骨が減少していくので、さらに変形していくなど症状がかなり進行していきますので、早急に治療が必要となります。
先天性の脱臼は、生まれつきの骨等の異常で起こり、「膝蓋大腿関節不適合症候群(しつがい だいたいかんせつ ふてきごうしょうこうぐん)」と呼ばれています。
では、膝の仕組みを少しご説明いたしますね。
膝の関節について
膝の関節を構成している骨には、大きく分けて2つあるのです。
- 大腿脛骨関節(だいたい けいこつ かんせつ)
- 膝蓋大腿関節(しつがい だいたい かんせつ)
この大腿脛骨関節とは、膝の上~太ももにかけてある骨(大腿骨・だいたいこつ)と、脛骨(けいこつ)という脛(すね)の骨から構成されています。
今回の膝蓋大腿関節症の場合には、膝蓋大腿関節という「膝の皿と大腿骨から構成されている骨」の変形からくる痛みのことです。
変形が進んで骨棘が出来てしまい周辺の組織を刺激する痛みは、同じように膝の関節が変形して起こる「変形性膝関節症」に似ていますが、それは変形性膝関節症というものが、膝蓋大腿関節で発症した病気でもあるからなのです。
膝の上(ひざのうえ)
膝の上は、一般的な呼び方として「もも」の部分を指しています。前の部分を「前もも」といい、後ろにある部分を「後ろもも」と呼んでいます。
膝と筋肉について
前ももの部分にある筋肉は「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」と呼ばれており、大腿四頭筋の名前にあるように、これは4つの筋肉で構成されています。
この4つの筋肉は、「大腿四頭筋腱(だいたいしとうきんけん)」といって、膝の上で1つの腱となり、膝の皿に繋がっているのです。膝の皿は、他の骨のように関節としては、連結した形をとっていないので、大腿四頭筋の収縮と一緒に動くようになっています。
前ももである大腿四頭筋が収縮することで、膝の皿を持ち上げるような働きがあるので、「膝の皿」と「膝の上の筋肉」とは密接な関係であるといえます。
また膝の関節は、膝の上にある大腿骨と、膝の下にある脛骨(けいこつ)は、繋がっているような位置にあるのです。
したがって、膝が衝撃を吸収する力が低くなったままでいると、症状は悪化していき、関節の変形だけでなく膝を支える筋肉の力まで低くなってしまうのです。
では、どうしてこのような病気になるのか見ていきましょう。
膝蓋大腿関節症の原因
原因としては、加齢をはじめ若い人でも起こり得ることがたくさんあるのですが、主な原因としては膝の上の筋肉の問題があげられます。
膝の上の痛みは、筋肉や筋膜がありますが、膝以外の部分に原因があることも多いのです。なぜなら、膝のお皿より上部には構造的に、大腿骨か、筋肉組織しか存在しないということが理由にあります。
そのために膝の皿だけでなく、上から骨盤、股関節、膝、足首などの骨の構成がずれてしまうと、膝の上の筋肉や筋膜にも大きな負担が掛かってしまいます。
その他の原因をご説明いたしますね。
加齢
負担をかけたまま放置しておくと変形性膝関節症と同様に、加齢によって組織が衰えてしまったり、長い間膝を酷使していたために負担が蓄積されてしまい軟骨が減少してしまうので変形につながっていきます。
脱臼
先ほどの脱臼ですが、もともと膝蓋や骨に異常がある人や、思春期の女性なども靭帯などが緩んでいることがあるので、脱臼しやすいので注意が必要です。
ジャンプ時の着地などの負担も膝には重くかかってしまいます。変形膝関節を含め、早く対処していないと症状は進行してしまいます。
受診について
受診については、痛みの原因がはっきりと分かっていて心配を感じない場合や、症状が軽い場合には2~3日なら様子を見ることも可能です。
一般的な膝の痛みというと、短期での膝に対する酷使が原因のことが多いので、一時的に膝の周囲にある筋肉や人体が疲労しています。
その場合には、膝を動かし始めに痛みがあるものの、膝の安静を保つことで回復していきます。しかし、それでも症状が良くならない日が続くようだったり、症状が強いようなら早急に病院で医師の診察を受けるようにしましょう。
また、症状の大きさだけでなく、膝の問題により動くのが辛いとか、精神的に変化が出てくるような時にも目安として、受診しましょう。
膝蓋大腿関節症の検査
膝の上の痛みの原因を特定して、治療をする必要があるために、膝の中を観察する検査を受けることが多いです。
レントゲン検査
レントゲン検査では、骨と骨のすき間のようすを見たり、脱臼の確認のために骨の位置関係を見ていきます。
軟骨の減少や、変形があれば膝蓋大腿関節症の診断もしやすくなるのですが、初期の場合には診断は困難となります。
MRI
膝蓋大腿関節症の診断には、詳細に観察が必要なためにMRIの撮影を行います。
MRIの長所として、いろんな断面での撮影が出来るので骨の変形、軟骨の減少具合、骨のすき間の様子を詳細に知ることが出来ます。
また、進行具合を診断するために有効な検査となります。
関節鏡
他の検査では、分かりにくい軟骨の小さな傷や骨のすき間、骨棘の様子などを知ることが出来ます。
今の膝の状態を詳細に診断することが正しい治療に結びつくので、検査は重要ですね。
では、その治療はどのように行われるのか見ていきます。
膝蓋大腿関節症の治療
ここでは、様々な治療法を見ていきます。
薬
まず痛みを取ることが先決ですので、激しい痛みについては消炎鎮痛剤や湿布薬が処方されます。
炎症を抑えたり、軟骨の減少を抑えたりするとともに、骨の滑りを良くするため、ヒアルロン酸を膝の関節内に注射することもあります。
症状が中等度という、少し進行してきたような時には、ヒアルロン酸の注射は効果があることも多いようです。
装具
膝の関節を補強する必要がある時に、運動療法だけでは足りないと判断された場合には、装具を使用します。
この時の装具の役割は、膝蓋が外側にずれていかないように、正しい位置へ矯正することで、膝蓋大腿関節症の痛みの緩和を促します。
手術
膝蓋大腿関節の軟骨がなくなっている状態でも、大腿脛骨関節の軟骨なら残っているという場合に適応となる膝蓋大腿関節置換術(しつがい だいたい ちかんじゅつ)が行われます。
保存療法では改善されない場合に行われる手術法となります。
この手術の長所としては、皮膚や骨の切除が少なく、膝関節の中の靭帯も温存できるので負担が少ないことです。症状によっては、この手術中に洗浄して骨のかけらを取り除いたり、形を変えるなどして、膝蓋骨がずれないように位置を固定していきます。
進行してしまうと大変なことが分かりましたね。では、予防をしていくためには、どうしたらいいのでしょうか。
膝蓋大腿関節症の痛みを改善することの中に、予防方法のヒントがありそうですので見ていきましょう。
膝上の痛みの改善と予防の工夫
ここでは、色々なトレーニングや生活上の工夫を見ていきます。
筋肉トレーニング
太もももの筋肉の中でも、膝蓋大腿関節症の場合には「内側広筋(ないそくこうきん)」を鍛えることを中心とした筋力トレーニングが有効とされています。
内側広筋は、膝蓋骨が外側にずれないようにする(内側に引き寄せる)働きがあります。
女性のつま先が内側の人や、膝をねじるなど膝蓋骨に負担を与えてしまう人は、将来膝の病気を招くことがありますので改善していきましょう。
生活習慣
日常のいろんな動作や歩き方、階段の昇降など、意識をして動くようにしましょう。
基本的には、例えば、ベッドにする、イスに座る、様式トイレを使う等、様式の生活が身体の負担を軽減してくれます。
体重管理
普通に歩行するだけでも、自分の体重の3倍の重さが膝へかかるといわれています。体重が、1キロ増えてしまうと、3キロの負担が掛かってしまいますね。
体重が増えてしまうと、動くのが辛くなり、さらに動くのが辛いという不のスパイラルに陥ってしまうので、膝には負担が増えるばかりになってしまいます。
入浴
浴槽で、ゆっくりと身体を温めると筋肉をほぐすことができ、血流が良くなってきます。
血流を促すことで、疲労物質や炎症の原因物質を排出する効果も期待が出来ます。
食事
軟骨を構成している成分が含まれる食品を積極的に摂取しましょう。
- グルコサミン(ウナギ、おくら、カニ、エビなど)
- コンドロイチン(ウナギ、どじょう、納豆、ひらめなど)
- ヒアルロン酸(豚足、サメの軟骨、鶏のとさか、海藻など)
- コラーゲン(ふかひれ、ウナギ、カレイ、豚足、牛筋など)
骨を構成する食品としては、以下のようになります。
- カルシウム(干しエビ、小魚、牛乳など)
- ビタミンD(イワシ、鮭、ウナギ、干しシイタケなど)
ショウガやよもぎ等も炎症を軽減する働きのある食品です。
まとめ
では、今日のまとめです。
- 膝蓋大腿関節症とは、変形性膝関節症というものが、膝蓋大腿関節で発症した病気
- 膝蓋の中で骨棘(こっきょく=小さな骨のとげ)が出来てしまい、ぶつかりあうための痛みが激しくなる
- 放置しておくと進行するので、生活習慣を見直す
- 洋式の生活をして膝の負担を軽減する
- 膝の上の痛みは、大腿四頭筋の問題によるものが多い
- 保存療法で改善されない時には、手術療法をする
食事では、ウナギが優秀な選手でしたが、万能なお魚というところでしょうか。
膝の負担は姿勢や歩行の仕方で、随分と変わってきますので、予防を中心とした膝の補強にも取り組んでいきましょう。