その肩の痛みは、肩こりですか?それとも四十肩ですか?――同じ肩の痛みでも、実は肩こりと四十肩とでは痛みが発生する原因も、症状も大きく異なります。
また、「四十」という数字がついているため、40代の人がなるものだと思われやすいのですが、20代、30代の人も四十肩になる可能性があるのです。肩に痛みを生じると上半身がドッと重たくなったように感じ、気分まで落ち込みがちになります。
さらに、日常生活の動作にも制限が出てくるため、イライラしてしまいがちです。そこで、ここでは四十肩になる原因を見ながら、改善方法をご紹介いたします。
四十肩とは?
「四十肩」という言葉自体は、多くの人が一度は聞いたことがあるでしょう。また、四十肩とセットで出てくる「五十肩」というものもあります。四十肩と五十肩は、大きな症状の差はなく、痛みを引き起こしている原因はどちらも同じものです。
つらい症状を和らげるためにも、まずは四十肩がどのようなものなのか、知らなければなりません。では、早速、四十肩について見ていきましょう!
肩こりと四十肩の違い
肩の痛みは全て肩こりだと勘違いしてしまうことが多いのですが、肩こりと四十肩は、大きく異なります。
肩こりは、姿勢の悪さや筋肉の緊張などからくる、肩や首周りの筋肉疲労によって起こります。疲れて固くなった筋肉が、血管を圧迫して血行の流れを邪魔するため、筋肉の中に発生した乳酸が流れず、筋肉内に溜まるのです。
すると、酸欠の状態で乳酸が作られることになり、さらに筋肉が固くなるのです。肩こりは、痛みやハリ、だるさが発生し、ひどい場合は、頭痛や吐き気を引き起こすこともあります。
一方、四十肩(あるいは五十肩)の場合。正式名称は、【肩関節周囲炎】といいます。肩こりのような「筋肉疲労」ではなく、「肩関節周辺の炎症」によって、痛みが生じると考えれています。
具体的に言うと、上腕二頭筋の腱や、骨と骨を結びつける靭帯に炎症が起こります。その他にも、肩の付け根の内側にある肩甲下筋と棘上筋の隙間(=筋肉と腱板の隙間)に炎症が起こることもあります。
肩こりが、「肩周りの筋肉疲労」ならば、四十肩は、「肩関節周辺の炎症」と言えます。
急性期と慢性期
四十肩の多くは、ある日突然、肩関節に痛みが生じることによって始まります。朝起きたら、なぜか突然肩が痛くなっているという人もいるようです。この、痛み(炎症)が発生した時期が急性期にあたります。
人によっても異なりますが、早ければ1~2ヶ月、遅ければ3~6ヶ月ほどで、痛みは自然と軽減していきます。
しかし、痛みが軽減したあと、生じるのが、肩関節の可動域の低下です。つまり、肩や腕の動きが悪くなるのですね。これが慢性期にあたります。このような状態を、拘縮と言うのですが、拘縮が起こると、洋服を着るのが困難になったり、遠くの物を取るのがつらいなど、日常生活に支障が出てきます。
四十肩の症状
症状としては、
- 肩が痛くて腕が上がらない
- 腕を上げようとした時点で、すでに肩が痛む
- 腕を後ろに回すと痛む
- 激しい痛みによって、眠れない
- 腕がしびれる
などがあげられます。急性期に当たる時期はとくに、無理矢理動かすと、炎症がさらに悪化してしまいますので、安静にしておく必要があります。
また、四十肩は、女性に多いとも言われていますが、実際のところは女性の方が少し多い程度で、男女の差はさほど大きくはありません。
四十肩の原因は?
肩こりは、気づいたら、肩にだるさやハリ、痛みがあったという感じですが、四十肩はピキッといった激痛がきっかけとなって、起こります。つまり、肩こりに比べ、痛みが生じた時期が明確、ということです。
では、なぜ、肩関節周辺に炎症が起きてしまうのでしょうか?早速見ていきましょう。
四十肩の原因
実は四十肩の場合、「痛みの原因」が肩関節周辺の炎症であることはわかっているのですが、「なぜ炎症が起きるのか」の原因については、明確になっていません。
肩関節は、肩甲骨・上腕骨・鎖骨の3つの骨によって構成されており、その周辺にある様々な筋肉や腱、靭帯などの組織が集合して、3つの骨を繋ぎ、腕を動かせるようになっています。その構造は非常に複雑なので、炎症が起こりやすい部分であると言えるのは、確かです。
今のところ、外傷、自律神経障害、血行不良、ホルモンバランスの変化・乱れ、加齢に伴う肩関節周辺の組織の変性などが考えられていますが、はっきりとしていないのが現状です。
どんな人がなりやすい?
原因がはっきりとしていないので、どのような人が四十肩になりやすいかも明確にはなっていないのですが、身体をあまり動かさない人がなりやすいと言われることもあるようです。
たとえば、筋力もさほどなく、肩周りのアライメントが整っていない状態で、大きな負荷をかけたときなどに、肩関節のどこかしらを傷め、炎症を招く場合も希にあるのだとか。
また、長期間に渡り、野球などのスポーツで肩関節を酷使した人や、過去に肩関節を傷めたことのある人は、四十肩になった際、治りにくい傾向があるとも言われています。
四十肩の改善方法
レントゲンやMRIなどで検査をしても、これといった問題が見つかるわけではなく、本人が痛みを訴えるという症状であることに加え、時間が経つと、あるとき突然痛みを感じなくなるので、四十肩は、医学的には「病気」ではありません。
そのため、四十肩の改善方法もまた、明確ではないのですが、「痛みを和らげること」と「肩関節の動きを良くすること」を意識しながら、時の経過を待つというのが一つの改善方法とも言えるかもしれません。
ここでは、痛みを和らげる方法と、肩関節の動きを良くする方法をご紹介します!
肩周りを冷やさない・温める
四十肩は「炎症」なので、冷やしたほうが良いと思いがちですが、四十肩を経験した人によると、痛みを和らげるには、温める方が効果的だそうです。
たとえば、胸周りが大きく開いた洋服は、肩を冷やしてしまいます。痛みがひどい時期は、できるだけ肩周りを冷やさないような服装を心がけるのも良いでしょう。
また、入浴やサウナなどで、全身を温める方法もありますし、使い捨てカイロやサポーターなどを使って、痛みがある部分のみを温めるのも手軽な方法の一つです。
さらに、お灸や鍼治療などで身体の巡りを良くし、冷えを取るといった方法もあります。
安静にする
急性期はとくに、無理に動かそうとすると、痛みが悪化します。ひどく痛む時期は、激しい運動や重たい荷物を持つことを避け、安静にしておくことが大切です。
四十肩であることを、周囲の人に伝え、日常生活を過ごす際、家族や友人などに協力してもらえると、心強いですね。
薬物療法
あまりにも痛みが激しく、夜も眠れない場合には、病院で薬物療法を受けることもできます。薬物療法には、消炎鎮痛薬を使うものと、ステロイドやヒアルロン酸ナトリウムなどを患部に直接注射するものとがあります。
消炎鎮痛薬には、湿布や内服薬、座薬などがあり、その人の体質や症状によって、薬の種類を選び、服用します。
患部に注射をする場合、最近はヒアルロン酸ナトリウムを用いることが多いようです。ステロイド薬は、抗炎症作用においては非常に効果がありますが、副作用も出てくるので、本来、滑液にも含まれ、副作用もないヒアルロン酸ナトリウムの方を選ぶことが多いようです。
神経ブロック
これは、薬物療法を行っても、ひどい痛みが続く場合に行う、最終手段とも言えます。肩甲上切痕というところに、局所麻酔薬を注射することで、一時的ではありますが、痛みを抑えることができます。
肩の可動域を広げる体操
急性期が過ぎ、痛みがおさまってきたら、それまで痛みによって動かせなかった肩周りを少しずつ、動かしてあげることが必要です。
これをしないと、どんどん肩周り周辺の筋肉が固くなり、「痛くはないけれど、腕を回しにくい・動かしにくい」といった症状を引き起こします。できるだけ負荷の少ない体操で、徐々に慣らして行きましょう。
<腕の上げ下げを補助する体操>
- 仰向けになり、痛くない方の手で、痛む方の手首をつかみます。
- 痛い方の手は力を入れず、だらんとした状態のまま、痛くない方の手で、痛い方の手を持ち上げます。持ち上げたとき、ちょうど肘が90度くらいになるところで止めます。
- 痛い方の手は、力を抜いたまま、痛くない方の手で、ゆっくりと下におろしていきます。
- この動作を5回ほど繰り返しましょう。
<後ろへの可動域を広げる体操>
- 足を肩幅に広げてまっすぐ立ち、痛い方の手首を、痛くない方の手で持ち、後ろで組みます。ちょうど尾てい骨のあたりに、組んだ両手が置かれる感じです。
- 痛くない方の手の力で、ゆっくりと痛い方の手首を、肩甲骨へ向かって上げていきます。無理をしないように、腰のあたりまで上がれば十分です。
- 上まで上げたら、痛くない方の手で、痛い方の手首を下へ降ろし、戻します。
- この動作を5回ほど繰り返します。
<筋力強化の体操>
- 壁の前で立ちます。両手を床と平行に上げたとき、手のひらが壁に付く位置で、壁の方を向いて立ちましょう。
- 両手を床と平行になるように上げて、壁に手のひらをつきます。この時点で肩に違和感がある人は、まだ、この体操をしないでください。
- 肘を少しずつ曲げながら、手で身体を支えるようにして、壁の方へ向かって身体を倒します。ちょうど、壁に向かって腕立て伏せをしているような感じです。曲げた肘が外側へ向かないように気をつけてください。
- この体操を5~10回、無理のない範囲で行いましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。四十肩は、血行不良などが原因となる肩こりに比べて、外科的な要素が強いのかもしれません。怪我をしたときと同じように、痛みがひどい時期には安静にして、徐々にリハビリをしていく、という感覚ですね。
肝心なのは、痛みがおさまってきたときに、少しずつでも肩や腕を意識的に動かすということです。無理のない範囲で行い、一日でも早く、健やかな日常生活に戻りましょう。
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