心筋梗塞は中年以降の人がなるイメージを持っている人が多いかもしれませんが、実は若い人でも心筋梗塞で突然倒れてしまう……というケースもあるようです。元日本代表のサッカー選手・松田直樹さんは練習中に突然心筋梗塞で倒れ、34歳の若さで亡くなりました。女優の天海祐希さんは軽度の心筋梗塞を患い、入院しましたがその後女優として復帰されています。
いつ引き起こすか分からない心筋梗塞ですが、前兆があることが多いとも言われています。さらに、後遺症に悩まされる人も数多くいるため、予備知識をしっかりと身につけ、いざという時にも備えられるようにしましょう。
心筋梗塞のメカニズム
まずは心筋梗塞のメカニズムを知っておきましょう。
心筋梗塞になる状態
心臓はものすごく強力なポンプの力で、1日で約10万回もの拡張・収縮動作を行い、1分間に5リットルもの血液を全身に送り出しています。筋肉の塊からできる心臓は、3本の動脈から血液を受け取っていますが、その動脈が詰まってしまうこと(動脈硬化)によって血流が妨げられるのが心筋梗塞です。動脈が詰まってから40分ほど経つと、心筋が壊死してしまいます。
心内膜側から始まる心筋の壊死は、時間が経つにつれて、心外膜側へと広がっていきます。発症から6〜24時間で貫壁性梗塞(かんぺきせいこうそく)になってしまいます。よく似た症状として比較される狭心症は心筋の壊死までに至らず、心臓は機能していますが、心筋梗塞の場合は心臓が機能しなくなってしまいます。
よって、心不全の合併症や脳にダメージを与えてしまうなどの二次災害的な危険性も多くあります。
心筋梗塞の前兆
一昔前にあった、メタボ傾向にある中年男性が心筋梗塞になるものというイメージが変わりつつあります。というのも、最近では18歳の発症例もあり、若年化傾向にあるようです。心筋梗塞を患う約半数の人が前兆なく発症すると言われていますが、その半面、前兆のある人は次のような症状があるそうです。
- 吐き気をもよおす
- 左肩や背中に痛みを感じる
- 胸部に圧迫感のある痛みを感じる
- 左手の小指に痛みを感じる
- 虫歯のない状態で下あごや奥歯に痛みを感じる
- 息切れや呼吸困難が起こる
- 不整脈がある
上記の様な症状は前兆として挙げられますが、その症状自体が心臓から来ているものと認識しづらいようです。例
えば、吐き気は流動性食道炎を思わせるような症状のため、気づきにくく、胃の調子が悪いと勘違いしてしまうようです。その理由は心臓と食道は近い場所にあるため、脳に危険信号が送られても、食道からの信号と捉えるためです。左肩や背中に関する痛みは、本来は心臓が痛みを脳に伝えているのですが、痛みの神経が左肩を通るため、左肩や背中が痛いと脳が勘違いしているそうです。
また、胸部に圧迫感のある痛みはすぐに痛みが終わってしまうため、気にならない可能性があります。周りから見ると、頻繁に胸部を触っていたり、胸部を気にしているようなしぐさをしていることがあります。不整脈も同様に、本人は気にならない場合でも、周りから見ると普段より動きが遅く感じられます。
それは、苦しいのをかばうため遅く動きからです。他にも、胸がモヤモヤ、ざわざわと違和感がある場合やいつもより余計に疲れている場合は要注意です。自分はもちろん、家族や同僚など周囲が気づいてあげることが大事になります。
詳しくは、心筋梗塞の前兆は?症状を知って適切な処置を!を参考にして下さい。
心筋梗塞の症状
心筋梗塞の症状はまず激しい胸痛です。さらに、次のような症状もあります。
- 呼吸困難
- 吐き気
- 冷や汗
30分以上も激しい痛みが続き、呼吸困難や吐き気、冷や汗などを併発する場合があります。また、冠動脈が詰まってしまうため意識不明になることもあります。または、時間が経つに連れて痛みが弱まったような感じがするケースもありますが、これは収まったということにはなりません。
症状が進み、心筋や神経が壊死し始めることで痛みを感じにくくなるのです。心筋梗塞は、発症後数時間以内で約3割は死亡すると言われています。もし、心筋梗塞の症状がある場合はすぐに救急車を呼びましょう。万が一、心臓が停止して脳へ血液が行かなくなるとたったの10秒で意識がなくなり、痙攣が起こります。
中には、まれに激しい痛みのない心筋梗塞もあります。糖尿病患者や高齢者は痛みを伝える信号が脳へ届きにくいためです。この場合は発見が遅れ、大変なケースとなってしまいます。心筋梗塞自体は、突然に起こる場合が多く、発症率が高い時間帯は早朝(午前6時〜8時)、夜(午後8時〜10時)です。
また、季節は冬が要注意です。夏に比べ、冬の発症率は1.5倍です。
心筋梗塞を発症したら
心筋梗塞が発症した時の対処方法を知っておきましょう。
知っておきたい緊急対処法
一刻を争う心筋梗塞は、意識がなくなる、痙攣するなどの症状が見られた時は、心臓のポンプの働きが止まっています。このような状態になると、1分経つごとに10%ずつ死亡率が高くなると言われています。
救急車を呼ぶまでの間、もし身近にAED(自動体外式除細動器)を発見したら、使うようにしたいものです。これは、電気ショックを与えて心臓の動きを蘇生させる装置です。表示されている手順に沿って、使ったことのない人でも誰でも迷わずできるようになっています。
1秒でも早く心臓の蘇生をしなければ大変危険な状態のため、救急車が車での間にAEDや心臓マッサージや人工呼吸などをする必要があります。
入院や治療法について
病院についてら、軽度の場合でも最低1週間〜10日の入院が必要です。まずは心臓を休ませるため、絶対安静が必要です。心臓への負担を減らすために、酸素吸入を行ないます。そして、薬物療法を行ないます。
主に使われるのは、血管を拡張する効果のある硝酸薬、発作を予防させるβ遮断薬、冠動脈を拡げるカルシウム拮抗薬です。これらの薬物治療以外には、カルーテル療法があります。カルーテルは検査にも有効的で、細いカルーテルを手首や肘などの動脈へ挿入し、冠動脈の状態をみることができます。
どの程度の詰まりがあるかを詳しく見られるため、検査をしてそのままカルーテル療法へと移るケースもあります。カルーテル療法は外科手術となりますが、心臓へ直接行なうのではないため心筋梗塞患者にとって負担の軽い手術と言われています。また、状況によっては冠動脈バイパス手術を行なうこともあります。
これは、カルーテル療法できない程の状態の時や何度も再発している人に行います。
後遺症:疲れやすい
一度心筋梗塞を発症すると、壊死した心臓は元通りにならないため、心臓の働きが弱くなっています。その代表的な例として疲れやすくなります。急いで歩くことや階段の上り下りが辛くなり、動機や息切れがします。
重度だと、食事をするだけでも疲れてしまい、休みながら食べる場合もあります。これは、心筋梗塞によって、心臓のポンプ機能が弱くなるため、血液を体内に十分に行き渡らせにくくなるからです。
後遺症:狭心症
再発の可能性が最も高くなるのが、後遺症に狭心症の症状が表れた場合です。狭心症は一時的に胸に強い痛みを感じます。心筋梗塞で血液が十分に行き渡りづらくなった状態からさらに進行すると発症します。
また、人によっては同時に動機や息切れ、口の乾きを感じることもあります。重い荷物を持った時や急な運動時、睡眠中などに起こります。
後遺症:不整脈
心筋梗塞後の心臓は、心拍が一定のリズムを刻めない「心室期外収縮」や「心室瀕拍」と呼ばれる不整脈の症状が出てきます。激しい動悸はめまいも引き起こします。
その状態を放置すると心不全につながくこともあります。ペースメーカーを利用するなど、病院で相談をしましょう。心筋梗塞の後遺症で最も多い症状のため、注意が必要です。
今すぐ始める予防策
心筋梗塞の予防方法を紹介します。
高血圧の予防
高血圧の人の心筋梗塞の発症リスクは、健康の人の3倍と言われています。私たち日本人は味噌や醤油など塩分を多く含む食品を摂る食文化で育っているため、塩分過多から高血圧になりがちです。
1日の塩分摂取量を10g以内に収めるような減塩生活が大切です。
脂質異常症の予防
30〜40代の働き盛りの人たちに注意が必要なのが、コレステロールや中性脂肪です。これらが増えることによって、脂質異常症となります。暴飲暴食や外食の機会が多い人は特に注意が必要です。気をつけるべきポイントは以下です。
- 動物性脂肪(牛、豚、鶏)を摂りすぎない
- 卵やレバーなどコレステロールの多い食品を摂りすぎない
- 野菜や海草類などコレステロールを排出する食品を多く摂る
- 過食をしない
- こまめに歩いたり、体を動かす生活習慣を身につける
糖尿病の予防
なんと、心筋梗塞に発症した人のうち約40%もの人が糖尿病患者です。なぜなら、糖尿病は心筋梗塞の引き金となる動脈硬化を進行させる病気です。
気をつけて血糖値をコントロールすれば動脈硬化の進行を防げるため、自己管理や普段から定期的に診断を受けるなどして、糖尿病のリスクがないかを確認することが大切です。
+αで気をつけたいこと
上記に加えて気をつけていきたいのは、タバコです。心筋梗塞を引き起こすリスクがタバコのニコチンにあります。
- 中性脂肪の濃度が高くなる
- 血管を収縮させ、血圧が上がる
- 心拍数を高め、心臓の負担となる
- 血液のドロドロ化が進み、血栓ができやすくなる
タバコの煙に含まれる一酸化酸素は体内の酸素と結びつく性質があります。これによって、本来は心臓へ送られるべき酸素の量を減らします。よって、心筋の虚血となり、結果心臓の機能そのものに大きな負担を及ぼします。
まとめ
いかがでしたか?自覚症状や前兆がある場合と無自覚の2つに分けられますが、出来る限り、異常に気づき早期発見が大切です。日頃の生活習慣の見直しや、いざという時に落ち着いて対処できる知恵を身に付けておきたいですね。定期的な健康診断などで健康状態を把握しておくことも大切です。
また、魚を多く食べると、魚を少なく食べている人より心筋梗塞のリスクが約半分まで減るというデータもあるそうです。魚にはドロドロ血液をサラサラにする効果もあるため予防する力が備わっていると言えそうです。