貧血と言うと鉄分不足で女性の方がよくなる病気と思われがちですよね。しかし悪性貧血という病気は鉄分不足だけでなく、胃に関係していている貧血なのです。
これは女性だけでなく男性の方もよくなる病気なので、他人事だと考えずに是非ご覧になって下さい。
貧血の種類
まずはどんな貧血があるか見てみましょう。
貧血にも種類があるのを知っていましたか?
●鉄欠乏性貧血
貧血の中で一番多いのがこの鉄欠乏性貧血です。体内の鉄が不足する事によってヘモグロビンが生産出来ない状態になる事が原因です。ヘモグロビンは赤血球の細胞内にあり、そのヘモグロビンを構成するのが鉄になります。赤血球が減るわけでなく、赤血球の質が下がるという事です。
●再生不良性貧血
骨髄にある血液を作る造血幹細胞という元の細胞が少なくなってしまう事によって、「白血球」「赤血球」「血小板」が減ってしまう病気です。この3つは体にとってとても大切な細胞ですので減ってしまう事によって様々な症状が出てきます。
白血球は細菌などから守る細胞で、減ってしまうと熱が出たり感染症の症状が出ます。赤血球は肺から取り込んだ酸素を体中に送る細胞で、減ってしまうと体の酸素が不足してしまい息切れや疲れやすくなったりします。血小板は出血した時に止血してくれる細胞で、減ってしまうとアザができやすくなったり鼻血などの出血が出やすくなります。
この貧血は厚生労働省から難病指定されています。この貧血になる原因は生まれつきの場合もありますし、後天性のものもありハッキリとした原因がわからないものもあるようです。
●溶血性貧血
赤血球が破壊される事を溶血と呼び、赤血球が破壊される事によって貧血が起こる状態の事です。原因としてあげられるのが細菌感染によるものや血漿浸透圧の低下などがあります。破壊された赤血球の色素が沈着して黄疸や脾臓の腫れという症状が見られ、尿の色が濃くなる事もあります。
●二次性貧血
血液疾患以外の疾患(ガン・腎臓病・肝臓病・感染症など)が原因で起こる貧血の事をいいます。
●悪性貧血
胃粘膜の萎縮によってビタミンB12が欠乏する事で起こる貧血です。
悪性貧血について
今回はこの悪性貧血について詳しく見ていきます。
悪性貧血とは
胃粘膜が萎縮する事によってビタミンB12を吸収する際に必要な内因子が低下して起こります。赤血球を作るのに鉄が必要ですが、ビタミンB12も必要な物質です。
昔は原因がわからずに治療法が無かったので、必ず死に至る病気と言われていました。医療技術の進歩によって今では原因がはっきりとしているので、死に至る前に完全に治療する事が出来るようになりました。
原因
ビタミンB12は動物性の食品に含まれていて、胃液中の内因子と結合して腸で吸収されます。吸収された後はトランスコバラミンという物質と結合して葉酸というビタミンと一緒に体細胞の分裂成熟や神経組織の代謝といった働きに力を貸します。
一番多いのが、タンパク質である内因子が自己免疫の攻撃を受けてしましビタミンB12と結合出来なくなるものと、壁細胞も自己免疫の攻撃を受けて消滅していく自己免疫性萎縮性胃炎によるものです。
- 胃液中の内因子が欠乏
- 妊娠などで消費が激しい
- 胃を全切除
- 腸内細菌によって摂取され尽くす
こういった事が起こると悪性貧血を引き起こします。
症状
症状としては一般的な貧血の症状の「めまい」「頭痛」「吐き気」「ふらつき」「眠気」「食欲不振」「消化不良」などがみられます。この他に悪性貧血独特の症状としては神経性のものがみられます。舌に口内炎などの炎症が見られたり、手や足の痺れ、感覚麻痺になり尿意の間隔が鈍くなります。
また、胃に関係するので無胃酸症になり胃もたれや胃痛を引き起こす場合もあり、下痢や便秘などが繰り返し起こる時もあります。
消化器症状の1つでハンター舌炎というものがあり、食べ物が舌に触れた時に痛みを感じたりしみる感じが出ます。
検査や治療
静脈から10mlほど採血して血液検査を行います。他に骨髄検査・肝機能検査を行い骨髄検査の際に巨赤芽球が検出されると悪性貧血と確定します。
治療としてはビタミンB12の非経口投与を行います。しかしいくらビタミンB12を大量に摂取したとしても、その吸収を助ける内因子が少ない事にはどうにもなりません。内因子が欠乏している場合にはビタミンB12を投与するだけでは意味がありませんので、吸収する際に内因子を必要としない筋肉注射で摂取します。
1習慣1日あたり500~1000gを注射してその後数ヶ月に1回投与します。大体はこれで完治しますが、胃に内因子がない場合はビタミンB12の注射を投与し続けなければいけない場合もあります。
若白髪は悪性貧血(ビタミンB12欠乏)の影響?
子供や若い人でも白髪が生えているという人がいると思いますが、その原因の1つにビタミンB12欠乏症が挙げられます。髪の毛を作る為に血液から酸素や栄養をもらっているのですが、貧血になり送る血が限られてしまうと体の大切な部分に血を送ろうとします。あまり重要視されていない髪の毛は後回しにされてしまうのです。
髪の毛に着色するメラニン色素の元になる「チロシン」という成分も血液によって運ばれるのですが、貧血の為髪の毛まで届けられず白髪になってしまうと考えられています。
萎縮性胃炎について
悪性貧血を引き起こす萎縮性胃炎とは?
原因
萎縮性胃炎とは慢性胃炎により胃の粘膜が萎縮してしまう病気です。原因としてはヘリコバクター・ピロリ菌の感染によって起こるのが一番ですが、他にも生活習慣やストレスなどによっても引き起こります。
症状
慢性的な胃炎が長期に渡って続く事によって起こります。ですので一般的な胃炎の症状の「胃の不快感」「胃痛」「嘔吐」「吐き気」「食欲不振」が主な症状になります。
外的からは見えませんが胃の中を見てみると、健康的な胃はキレイなピンク色をしていますが、萎縮性胃炎になると胃の色がくすんでしまいます。
貧血の時に良い食べ物
まず貧血にならない為には毎日3食バランスよく食べる事が大前提になります。特に朝食は1日の始まりで1日のエネルギーを作るのに大事な食事です。貧血になる人で朝食を食べていない人が多いようなので、朝食は必ず食べるようにしましょう。
全く食べないという人と並んで多いのが、パンやおにぎり1個だけという朝食です。これだけではバランスが悪いので、時間が無いのであれば量が少なくても食べる物を工夫しなければいけません。
鉄分を多く含む食べ物
鉄は血液を作る上で欠かせない物質です。ヘム鉄と非ヘム鉄という種類に分かれていて、ヘム鉄は「肉」「魚」などの動物性の食べ物に多く含まれています。肉類であれば「豚・牛・鳥のレバー」「牛もも肉」、魚介類であれば「アサリ」「マグロ」「カツオ」「牡蠣」に多く含まれています。
非ヘム鉄は野菜や植物性食品に多く含まれています。大豆類の「納豆」「豆腐」「高野豆腐」野菜類であれば「ほうれん草」「ひじき」「干し大根」などに多く含まれています。朝はガッツリ食べるのが辛いという人が多いと思うので、これらの軽い食材を入れた朝食を摂ると良いでしょう。
ビタミンCで鉄分の収集率UP
ビタミンCは鉄分の吸収率を高めてくれるので、鉄分が多く含む食材と一緒に摂取するととても効果的です。普段非ヘム鉄の方が多く摂取する機会が多いですが、体に吸収されやすいのはヘム鉄の方です。しかし非ヘム鉄でもビタミンCと一緒に摂取する事でヘム鉄と同じ様に吸収されるのでオススメです。
ビタミンCが多く含まれる食べ物は果物に多く「レモン」「いちご」「キウイフルーツ」などがあります。果物以外にも「ブロッコリー」「赤ピーマン」「黄色ピーマン」などに含まれているのでそれらを食事に取り入れると良いでしょう。
タンパク質を多く含む食べ物
血液中のヘモグロビンは鉄色素とタンパク質から出来ているので、鉄分だけでなくタンパク質も摂取するようにしなければいけません。
「もやし」にはタンパク質が多く含まれていますしビタミンCと鉄分も含まれているので、貧血対策にはもってこいの食材です。お値段も安く量もたくさん食べられ、ヘルシーな食材なので女性の方にも嬉しいですね。
詳しくは、貧血にいい食べ物って?成分や調理方法を紹介!を参考にしてください。
貧血になった時の対処方法
貧血になるとめまいが襲ってくるという場合がほとんどで、急に起こるとパニックになってしまいますよね。貧血になったらまず、その場に座って安静にして下さい。その場所に座り込むのが恥ずかしい場合でも、無理に動いてしまうと悪化してしまいます。
また、血流を妨げているもの、例えばベルトや体を締め付けるような物を外して血行を良くするように心がけて下さい。
ゆっくり呼吸をして落ち着かせれば数分で良くなる貧血がほとんどです。落ち着いたと思っても、急に起き上がったり立ち上がったりしないようにして下さい。貧血が酷い場合には座るだけでなく横になるのが一番良いです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。貧血にも
「鉄欠乏性貧血」「再生不良性貧血」「溶血性貧血」「二次性貧血」「悪性貧血」
こんなに種類があるのに驚きですね。自分は貧血持ちだと自覚していても、どの種類の貧血なのかわからずにいたという人も多いのではないでしょうか?悪性貧血は普通の貧血の症状に加えて胃に不調が出るので、そこを見逃さないようにしましょう。
昔は死に至る病気でしたので治療をせずに放置していればとても危険です。治療をすれば今は完治するので診察してもらいましょう。
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