急な腹痛や嘔吐感に襲われると、いろいろなことが頭をめぐります。それに蕁麻疹が伴うと、ぼんやり浮かんでいた食物アレルギーの疑いが確信的なものに変わります。何が原因か悩んだ末、もしかしたら昨夜食べた鯖(サバ)・・・?と思い当たるようなら、この記事を最後まで読んでみてください。
ここでご紹介する食物アレルギーの症状や鯖を食べたこととの因果関係と照らし合わせて、自分のケースに当てはめて考えてみましょう。また、鯖を食べる人全員に関係のある、気になる情報もお届けします。
食物アレルギーとは何でしょうか?
国が定める食物アレルギーの原因=アレルゲンとなる可能性のある食品の中には、鯖も含まれています。そもそも食物アレルギーとは何でしょうか。これまで何のアレルギーを発症したこともない人にとっては、わかりにくいものです。
ここでは鯖アレルギーに限らず、食物アレルギーの大枠を説明します。
食物アレルギーとは何か
食物アレルギーとは、特定の食べものを食べたときに起こる病的な過剰反応のことをいいます。食中毒は一時的なものなので、食物アレルギーではありません。
2001年から、食品衛生法規則によって、特に重症化しやすいカニ、エビ、コムギ、そば、卵、乳、落花生の7つが特定原材料と定められました。特定原材料が加工食品と食品添加物に含まれるときは、その旨を表示しなければいけません。商品の裏に、エビ、カニ・・・と記載されているのを見たことがあるのではないでしょうか?
鯖は日本では、「特定原材料に準ずるもの」とされています。これは、加工食品や食品添加物に鯖が含まれている場合には、表示をしなければいけないわけではないけれど、できればしてくださいという意味があります。
なぜかというと、加工食品や添加物はアレルゲンである原材料を加工しているため、一見してそのアレルゲン食材が使われているかどうかが判断しずらいものだからです。パン屋さんでも、よく見ると1種類ごとに特定原材料の有無が表示されていることが多いです。
食物アレルギーで死に至ることある
アレルゲンとなる食物を食べると起こる過剰反応=アレルギー反応には、時間が経つと治まる軽度のものから、激しいショック症状を引き起こすなど生命にかかわる危険性のある症状の場合もあります。
軽視できない食物アレルギーも少なくないことがわかったため、事前にその食品を避けられるように法律が強化されたという経緯があります。以前は特定原材料に指定されていたのは5品目のみでした。
子どもに多いが大人で発症することも
日本では、乳児は全体の10%が食物アレルギー反応を起こすとされています。生後半年は母乳、ミルク以外は飲ませないことが推奨されるのもこのためです。3歳児で5%、小学生以降は1.3~4.5%とされています。
全年齢の平均は1~2%程度なので、頻繁に起こる病気というわけでもなさそうです。ただ、欧米での食物アレルギーの発症率は3~5%と高いので、日本ではアレルゲンを持っているのに気付かずに過ごしている人も多いのではないかといわれています。
鯖アレルギーの症状について
ここでは、鯖を含めたあらゆる食物アレルギーを起こしたときの症状と応急処置をご紹介します。
アレルギー検査は必ず必要ですが、自分があるいは周囲の人がアレルギー反応を起こしたときの対処法を知っておくと、いざというとき役立ちます。
皮膚に現れるケース
食物アレルギー反応で皮膚に異常を生じることはよくあります。局部的な蕁麻疹や、皮膚が急激に赤くなったり、原因不明の湿疹が出たりします。もともとアトピー性皮膚炎の人は、突然アトピーがひどくなることも知られています。蕁麻疹は30分~2時間くらいで自然に消えますが、その間かゆみがあるので掻いてしまうと炎症を起こしてしまい跡が残りやすくなります。
初めて蕁麻疹が出ると慌ててしまうものですが、掻かずに冷やしてかゆみを抑えましょう。皮膚科を受診すると、皮膚のアレルギー反応を抑える抗ヒスタミンの飲み薬やかゆみや炎症を抑える薬を処方してもらえます。
急場しのぎには薬剤師のいる薬局で、相談しながら薬を選ぶとよいでしょう。アレルギー反応を抑える飲み薬は1錠で12~24時間効果があるものが多く、蕁麻疹が突然出て困る人は常用しているケースもあります。
腹痛、下痢、嘔吐、胸焼けなど
食物アレルギーで引き起こされる症状として、消化器の異常もよくあります。食事後あるいは食事中に突然の激しい腹痛、下痢、嘔吐などがあり、同じ食事をしている他の人に異常がみられない場合は食物アレルギーを起こしているケースが多いです。下痢では血便がみられることもあります。
対処法としては、嘔吐や下痢は我慢せず悪いものを体外に出してしまいましょう。食物アレルギーが原因の場合は、原因物質が出ていくことで症状が治まることが多いです。下痢や嘔吐の直後は胃腸が弱っていて反応を起こしやすいので、30分~1時間は飲食を控えます。
その後、嘔吐感や腹痛が抑まっていれば、脱水症状を起こさないように水分を少しずつ摂取しましょう。食事はうどんやおかゆなど、消化の良いものにします。
くしゃみ、鼻水、目やにといった粘膜の異常
目、鼻、口の粘膜の異常症状が起こることもあります。口の中に異物感を感じたり、喉が腫れる、まぶたが腫れる、くしゃみ鼻水が止まらないといった様々な症状があります。食物アレルギーとリンクしにくい症状だと思われがちなので、こういった身体のサインも気にかけてみましょう。
特に口の中に異常が見られると、呼吸困難になる恐れもありますので注意が必要です。目のかゆみや鼻の症状には、皮膚症状と同様に抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が有効です。眠くなりにくいアレグラなどは、薬局でも購入できます。呼吸が苦しいときはただちに医療機関を受診します。1人で車を運転することは危険なので、場合によっては救急車を呼びましょう。
全身症状アナフィラキシー
上述した食物アレルギー反応のうち2つ以上の重い症状が重なる多臓器症状のことを、アナフィラキシーといいます。嘔吐と呼吸困難が同時に起こったり、全身の蕁麻疹と下痢を併発する場合などがあります。さらに、血圧が低下して意識が朦朧としてくると、アナフィラキシーショックと呼ばれる生命にかかわる危険な状態になります。
アナフィラキシーの状態に陥ってしまったら、またはその気配があれば、ただちに救急車を呼びます。救急車が到着するまでの間は、仰向けに寝て待ちます。嘔吐していれば横向きに体を傾けます。これは嘔吐物が気管に入ることを防ぐためです。
鯖アレルギーかどうかを判断する方法
鯖アレルギーかどうか、またその程度については病院で問診や血液検査、皮膚反応を診てもらわなければ断定はできません。
ここでは、病院を受診する前に自分である程度の判断をしたい人のために役立つ情報をまとめています。
鯖を食べてからアレルギー症状が出るまでの時間
食物アレルギーとは通常、アレルゲンとなる食べ物を摂取してから最長で4時間以内に起こるアレルギー症状をいいます。ほとんどは食べた直後から1時間以内にアレルギー症状が出ます。これは即時型アレルギーといいます。
まれに遅延型アレルギーで食べてから翌日~2日後に症状がさらに悪化することがありますが、時間のかかる検査をして因果関係を証明しなければ食物アレルギーかどうかはわかりません。
つまり、鯖を食べた翌朝に胃痛や嘔吐感を生じたのであれば、鯖による食物アレルギーの可能性は低いといえます。鯖を食べた直後に症状が出たのであれば、皮膚科を受診して検査をして医師に判断してもらいます。通常は問診、血液検査、皮膚テストを行い、さらに食物除去試験や食物負荷試験が行われる場合もあります。
ヒスタミン食中毒の可能性も
鯖アレルギーと誤解されやすいものが、ヒスタミン食中毒です。鯖アレルギーの人は1万人に5人程度といわれており、それも他の食物アレルギーを複数持っている人が多いのです。これまで食物アレルギーを起こしたことがなければ、鯖アレルギーよりはヒスタミン食中毒の可能性を視野に入れた方がいいでしょう。この場合、食べた鯖の衛生状態に問題があったため食中毒反応が起きたので、鯖そのものにアレルギー反応を起こしたわけではありません。
鯖のような赤身魚の筋肉には、アミノ酸の一種のヒスチジンが多く含まれています。魚を常温で放置していると、ヒスチジンをヒスタミンに変えてしまう細菌が増殖して多量のヒスタミンが生み出されてしまうのです。このヒスタミン食中毒の症状は鯖アレルギーを起こした場合の症状とよく似ているのです。
原因の鯖を食べてから数分~2時間程度で嘔吐、下痢、腹痛、じんましん、粘膜の異常などを生じます。
寄生虫アニサキスによるアレルギー
鯖アレルギーと似た症状が現れるものに、寄生虫アニサキスによるものがあります。
この寄生虫の幼虫が、鯖やイカ、あじ、カツオなどの中にまれにいることがあるのです。アニサキスが入った魚を生で食べると、人体に寄生して腹痛などの胃障害を起こすことがあります。70度以上の加熱でアニサキスは死亡するため、調理をして食べれば問題はないようです。
ただし、寄生虫アニサキスに対してアレルギー反応を起こす人が食べると、死骸であってもアレルギー症状が出てしまいます。
アニサキスが原因のアレルギー反応では、鯖の食物アレルギーとほぼ同様の症状が出るため判断するためには病院での血液検査などが必要です。
鯖アレルギーの治療について
鯖アレルギーになってしまうと、もう治らないの?好きだった鯖の味噌煮も、もう食べられない?そんな疑問や、鯖アレルギーの治療方法についてお答えします。
アレルギー反応の度合いによって異なる治療
鯖アレルギーの治療は、どのくらいの量を食べたときにどの程度のアレルギー反応が出るかによって異なります。
少しの鯖を食べただけで強いアナフィラキシーの症状が出るような場合には、完全除去といって鯖を微量に含むような加工食品も避けます。最近では、アレルゲンになるものを食べながら治すという治療法も行われています。個々のアレルギー反応に応じて、鯖を食べてもよい量を医師が決めて、少しずつ食べながら耐性をつけていきます。
鯖アレルギーを含む食物アレルギーに直接効く薬は未だありません。炎症やかゆみを抑える抗ヒスタミン剤の投与など、対処療法的な治療が行われます。食物アレルギー症状の大半が蕁麻疹など皮膚反応なので、皮膚のバリア機能を良い状態にしておくことが予防にもつながります。
もう鯖は食べられない?
アナフィラキシーを起こす重度の鯖アレルギーでない限りは、これから先全く鯖が食べられなくなるということはありません。軽度の鯖アレルギーの場合は医師の指導の下、少しずつ食べる量を増やしていくことができます。重度の鯖アレルギーの場合も、年齢と共に改善することが多いので、定期的な専門医の受診をしましょう。皮膚検査や血液検査で、鯖を食べても大丈夫かどうか判断してもらえます。
また、鯖アレルギーではなくヒスタミン食中毒であった場合には、また鯖を食べることは全く問題ありません。原因となるヒスタミンの増殖は鯖だけに起こるものではないので、不必要に鯖を避けても意味がないことなのです。
ただ、今後同じようなヒスタミンの増殖を起こさないために魚の選び方と保管方法には注意が必要です。
鯖を安全に食べるための注意点
当初は新鮮で安全な魚だったにもかかわらず、保存方法が悪いためにヒスタミンを増殖させてしまうケースが最近増えています。テクノロジーが今ほど進化していなかった昔は、新鮮ではない魚を食べてヒスタミン食中毒を起こすことはよくあることでした。
そのため、魚は痛まないように冷蔵して、早めに食べるという知恵が自然と日本人に身に付いていたのです。しかし、特に最近の若い人は食の安全を過信している傾向があり、買った魚をすぐに冷蔵庫に入れなければいけないということを知らない人もいます。
赤身魚を買ったら、自宅まで確実に持つ保冷剤をもらって帰宅後はすぐに冷蔵庫に入れましょう。そして、できればその日中か遅くとも翌日には食べてください。保存をする場合には、帰宅後にすぐ冷凍しましょう。ヒスタミンは100度で加熱してもほとんど壊れません。そのため、「少しくらい痛んでいても加熱したら大丈夫」と考えることは危険なことなのです。
まとめ
鯖とアレルギーの関係について、知識が深まったのではないでしょうか?
はじめは鯖によるアレルギーかと思っても、実際にはヒスタミン食中毒であることが多いのです。採れたての新鮮な鯖だからと安心して購入しても、その後の保存状態が悪ければ食中毒の原因となってしまいます。
常温状態に置くことで細菌はどんどん繁殖してしまい、ヒスタミンを生み出してしまうのです。これは鯖に限らずどの赤身魚にもいえることなので、魚を買ったらすぐに冷蔵庫に入れて早めに食べる、それが無理ならすぐに冷凍保存をするということを徹底するとよいでしょう。日本人はお刺身やお寿司が好きで生食も多いので、特に気をつけたいものです。
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