結膜下出血(けつまくかしゅっけつ)とは、小さな血管が破れて白目部分が赤くなる状態をいいます。結膜とは、白目の表面を覆っている粘膜のことをいいます。結膜には大小の血管がたくさん存在しているのです。
一口に結膜下出血といっても、人によって症状は様々です。自分でわかるほど白目が赤くなってしまう人もいれば、周りに言われて初めて気付く人もいます。病院に行くほどのことなのか、とお悩みの人もいるでしょう。
この記事では、結膜下出血の症状と原因、治療法から予防まで詳しくお伝えします。専門医に診てもらうことは大切ですが、夜間や休日など、まずは情報を集めたいというときは、ぜひ参考にしてください。
結膜下出血とは何か
そもそも自分の症状が結膜下出血に当たるのか、気になりますよね。ここでは結膜下出血の症状について、わかりやすく説明します。
目の中に出血が見える
結膜下出血とは、目の中の小さな血管が何らかの原因で破れて、出血した状態をいいます。白目の部分に広がる出血は、小さな点状のものから、斑状、広範囲に及ぶものまで様々です。血流のこぶである、血腫をできることもあります。
出血は1~2週間で自然吸収されることが多いのですが、数か月かかることもあります。いずれにしても自然になくなり、心配いらないケースが殆どです。
自覚症状はある場合は要注意
結膜下出血は、痛みやかゆみ等の症状は通常ありません。通常以上に目やにが出るといったことありません。眼球内部に血が混入するわけではなく結膜下での出血なので、視力低下や視界に変調を来すこともありません。
もし自覚症状がある場合には、必ず眼科医を受診してください。
充血とちがう点
よくある目の充血とのちがいは、血液(赤い色)が見えるかどうかです。結膜下出血は血管が破れて出血している状態なので、血管の走行は見えません。
目の充血は、血管が拡張している状態なので血管の走行が見えます。充血の場合は、血管収縮剤を用いて赤みを鎮めることができます。
結膜下出血になる原因を探る
結膜下出血は誰にでも起こりうるのでしょうか?その原因として考えられることを挙げました。
外傷を受けたため
部活動でボールが当たって強い衝撃を受けたり、高齢者がバランスを崩して家具にぶつけてしまった場合などは、結膜下出血が起こることがあります。
この場合、目の周りにあざができることが多いです。あざと結膜下出血にとどまらず、相当強い衝撃を受けると網膜剥離や水晶体の変動など、直ちに治療しなければ視力が損なわれる状態になる場合もあります。
不安があるときは、眼科医による診察と治療をできるだけ早く受けるべきです。
原因不明のケースがほとんど
結膜下出血とは、小さな血管が破れて白目部分が赤くなる状態であると説明しました。血管が破れてしまう原因は、外傷によるものを除いては不明のことが多いのです。
まばたきで結膜が眼球からずれたときに出血が起こるのではないか、ドライアイで誘発されるのではないか、等様々な説が専門家の間でも出ています。出血の前日に長時間のパソコン作業や読書などで、目を酷使していたという患者さんもいます。
結膜炎や他の病気の影響によるもの
高血圧や糖尿病といった内科的疾患、あるいはウィルス性結膜炎や結膜弛緩症でも結膜下出血を生じることがあります。内科的疾患による発症は、繰り返し起こることが多いです。
これらの疾患を持ち合わせていなくても、結膜下出血を繰り返す場合には内科で異常がないかどうか調べてもらいましょう。結膜炎による発症では、痛みや目やにといった自覚症状があります。眼科で結膜炎の治療を受け、他の人に移さないようにタオルを共有しないなど、日常生活において気を付けましょう。
熱を伴う場合は要注意
インフルエンザ、ジフテリア、コレラ、チフス、麻疹などでも結膜下出血の症状が出ることがあります。ただちに受診し、原因疾患を治療しましょう。
結膜下出血の治療法について
痛みやかゆみといった自覚症状はないといっても、多少目がごろごろしていると感じる人もいます。それに、何といっても見かけも気になりますよね。ここでは、治療法と予防について見ていきます。
単独発症のケースは治療不要がほとんど
結膜炎など他の病気の影響によるものではない結膜下出血では、治療がいらないことが多いです。出血は自然吸収され、10日前後できれいな元の目に戻るでしょう。出血がなかなか引かず長引く場合には、結膜下注射で吸収促進を図ることもあります。
目の外傷を受けた場合や、他の疾患の合併症である場合には、必要な治療が個々の状態によって異なるため、専門医を受診しましょう。また、網膜下出血となるような要因や病気は思い当たらなくても、まぶたに違和感があるなど自覚症状がある場合も病院へ行くことをおすすめします。
軽傷でも治療が必要となるケースとしては、まぶたの裏にものもらいができしまっていて血管を圧迫して結膜下出血を引き起こしたとき、まぶたの見えにくい所ににまつ毛が刺さっていることなどがあります。
結膜下出血の予防法
結膜下出血の原因は人によって異なるので、予防法は一概に誰にでも当てはまるわけではありません。ケース別にご紹介します。
ドライアイのケース
結膜下出血を繰り返してしまう要因のうち最も大きなものは、ドライアイです。ドライアイとは、目を守るのに欠かせない涙の量が足りなかったり、涙の成分のバランスが崩れることで目に涙が均等に行き渡らず、結果として目の表面に傷ができてしまう病気です。
パソコンやスマートフォンの使用、コンタクトレンズ愛用者の増加により、ドライアイの人は日本国民の10人に1人はいるといわれています。
涙は目の表面を保護して、目を守ってくれる、バリアのような存在です。涙が少ないと目の表面の細胞を傷つけてしまいます。網膜下の小さな血管が破れると、網膜下出血を起こしてしまいます。これは、これまでの説明にもありましたね。ドライアイの自覚症状としては、物がかすんで見える、目がごろごろする、目が疲れるといったことがあります。
ドライアイを要因とする結膜下出血の予防法としては、ドライアイを治療して改善させることが1番近道です。一般的な治療は点眼薬による治療で、水分を補給したり、涙を目の表面に長く保てることができるようにして傷ついた目の修復をします。
ドライアイ予防の対策としては、目の乾燥を防ぐよう日常生活において工夫することができます。パソコンを使うときは目を大きく開かなくて済むように、目より下に画面が来るようにします(パソコンを見上げない)。
また、長時間使用するときはこまめに休憩をしましょう。空調にも注意してみましょう。エアコンが効いている部屋は乾燥するので、加湿をしましょう。加湿器がない場合は、濡れたタオルをハンガーにかけて置いておくだけでも大丈夫です。冬場で乾燥がひどく、出張先や旅先のホテルの部屋の乾燥があまりにつらいときの方法として、浴槽にお湯を張ってドアをあけたまま寝るというものもあります。
出張の多いビジネスマンの知恵ですが、ホテルや旅館のルールがある場合には、そちらに従いましょう。
結膜弛緩症のケース
目が乾いているのに、涙目にもなってしまうという人の症状で多いのが結膜弛緩症です。白目の表面を覆う粘膜にたるみが出ることで、目に涙が均一に行き渡らなくなる症状が主です。
まばたきをすることで涙が出て乾燥が改善するドライアイとちがって、結膜弛緩症はかえって違和感が強くなってしまいます。たるんだ結膜が眼球とまぶたに挟まると、結膜の毛細血管が切れやすくなり、結膜下出血を起こしてしまうのです。
眼科医に処方してもらう目薬を使用して治療することが多いですが、手術で治すこともできます。結膜弛緩症の手術で結膜下出血の再発を軽減できたという専門家の報告もあるようです。
服用している薬が原因の場合も
ワーファリンやバイアスピリンなど、脳こうそくや心筋こうそくの予防薬を常用されている方に結膜下出血は起こりやすいことがわかっています。かかりつけの専門医に相談するとよいでしょう。
原因不明のケース
結膜下出血の原因は不明であることが9割以上といわれています。考えられる要因としては、くしゃみ・せきによる一瞬の強い力みによるもの、暴飲暴食によるもの、メガネのサイズが合わない、月経周期によるものなどがあります
。病院を受診しても原因がわからず、しかも繰り返してしまうような場合は、上記のような考えられる要因を1つ1つ見直してみるのもよいかもしれません。アレルギー性鼻炎で鼻をつよくかんでしまうなど、日常生活で思い当たることがあれば、そこを気を付けることで予防できることもあるでしょう。
まとめ
結膜下出血という病気単独では、痛みやかゆみなどの自覚症状もなく、視力に悪影響を及ぼすこともありません。多くの場合は心配いりませんが、繰り返す場合や、気になる自覚症状があるとき、合併症が思い当たるときはなるべく早めに病院を受診してください。
また、特に心配のいらないケースでも、見た目が気になる人は多いですよね。人と話すときは目に視線が向かいますし、トイレで鏡を見る度に自分でも気になりがちです。自然に治るまでどうしても気になるという方には、おしゃれメガネをかけるといった対策もおすすめです。日差しが気になるときは、紫外線から目を守るためにもサングラスもよいでしょう。
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