妊娠初期には、生理痛のような痛みや、お腹が張る違和感が生じることがあります。身体の急激な変化に辛さを感じる方も多いかもしれません。赤ちゃんを育てるための生理的な現象であり、多くの方が経験されることなので、過度に心配する必要はありません。
しかし、お腹の張りが長く続いたり、お腹が張るまでの間隔が短くなるときは、切迫早産などのサインを送っていることもあり、病院に診てもらわなければなりません。安心して良い現象か、危険なサインかを見極め、対処する方法をご紹介します。
「お腹が張る感じ」は人それぞれ
妊婦さんはよく「お腹が張る」と表現しますが、どんな感覚なのでしょう。妊婦さんの体験談を見ていくと、人によって感じ方はそれぞれのようです。妊娠初期では、お腹がパンパンに膨らんでいるように感じる方や、便秘が続いて固くなったような感じがする方もいます。
違和感が続くと不安になってしまいがちですが、感じ方が多様であるということは、多くの妊婦さんが経験されていることになります。赤ちゃんを産むために身体が変わろうとしているのです。
妊娠初期にお腹が張る原因は?
妊娠初期(2~4ヵ月)は子宮に胎盤が作られる時期で、お腹が突っ張るような感覚になりやすいと言われます。同時につわりもひどいので、お母さんはしんどい時間が長いかもしれません。
生理的な子宮の収縮による
赤ちゃんを育てる子宮は筋肉からできています。普段は緩んでいますが、妊婦さんが働いたり、運動したりして疲れると、子宮が収縮することがあります。これをお腹が張っている違和感として感じるのです。
また、妊娠するとホルモン分泌が変化するため、子宮は不規則に収縮するようになります。これはブラクストン・ヒックス収縮といい、子宮を収縮させる物質の感受性が高くなるためと考えられています。
子宮と子宮を包む膜が膨らむ
上述のように、子宮の本体は筋肉ですが、周りを膜が包んでいます。外側にあるのが子宮外膜で、内側にあるのが子宮内膜です。赤ちゃんの成長とともに子宮が大きくなり、よって外膜・内膜も膨らむため、お腹が引っ張られるような違和感が生じます。
子宮の大きさは、妊娠前は7㎝×7㎝ほどで、長さは人差し指くらいです。妊娠初期が終わり、胎盤が完成する頃には、子宮は子どもの頭くらいの大きさになります。妊娠10ヵ月の大きさと比べるとまだまだ小さいですが、急激な変化であるために突っ張る感じが強いといえます。
子宮を支える靭帯が引っ張られる
子宮は骨盤のつくる腔の中にあり、5つの靭帯で支えられています。子宮が大きくなって重くなると、靭帯が引っ張られるため、お腹が張るように感じます。
皮膚が突っ張る
妊娠初期が終わる頃にはお腹がふっくらしてきますが、同時に体の皮膚も引っ張られ、お腹が張っているように感じます。
医学的には問題ありませんが、妊娠によって皮膚に線ができることがあり、見た目が気になるという方もいます。
妊娠でなく、便秘が原因のことも
妊娠初期は、ホルモンバランスの変化、生活習慣の変化やストレスで便秘になりやすいと言われています。妊娠の影響だけでなく、便秘でお腹が張っている方も少なくありません。
便秘による腹痛自体は赤ちゃんに影響しませんが、体の危険なサインとしてお腹の張りが起こっていたときも、便秘の痛みと勘違いしてしまうことがあります。なるべく便秘にならないよう、食生活には気をつけましょう。水分を良く摂り、食物繊維が不足しないようにします。
妊娠初期のお腹の張りを軽減する方法
では、お腹の張りを強く張る場合の対処方法を紹介します。
力を入れる動作を避けること
力を入れると子宮が収縮しやすくなり、お腹の張りが強くなります。できるだけ重い物は運ばないようにしましょう。
また、ストレス解消のために体を動かしたい方も、息をこらえるような運動、激しい無酸素運動は控え、軽いウォーキングにとどめましょう。
お腹を冷やさないようにする
冷たい物を飲んだり、涼しい場所に長時間いると、お腹を壊しやすくなります。便秘や下痢でお腹が痛いと自然に力が入り、トイレにいる時間も増えるので、子宮も収縮しやすくなってしまいます。
また、服装にも注意が必要です。薄着にならないよう気をつけましょう。スカートはお腹が冷えやすいので、履きたい場合はインナーパンツつきスカートやロングスカートにするなど、工夫が必要です。
すぐに身体を休めること
お腹の張りを感じたら、横になってしばらく休みましょう。仕事をしている方はなかなか難しいかもしれませんが、できれば周囲に理解を求め、無理をしないようにしてください。疲労は子宮の収縮につながり、余計にお腹の張りがひどくなってしまいます。
買い物などの外出中で横になれないときもあるので、座って休める場所を事前に探しておくとよいかもしれません。
ストレスをためないこと
妊婦さんは、体の変化とともに心理的にも不安定になりがちです。激しい運動はできませんが、ゆっくり静かにリラックスできる方法を探してみましょう。
読書やお風呂は副交感神経を高め、リラックスしやすいのでおすすめです。
危険なサインの見つけ方
実は、妊婦さん自身で危険かどうかを見極めることはとても難しいです。気になった場合は医師に診てもらった方が安心ですが、仕事や外出をしていてすぐには行けないという状況もありますよね。まず、以下のようなサインがないかどうか確認してみましょう。
休んでもお腹の張りが収まらない
ほとんどの妊婦さんでは、お腹の張りを感じても、横になったり、座ったりして安静にすれば自然に収まります。
1時間以上休んでも変わらず、痛みや違和感が続く場合は心配です。「無理をしたから」、「体調が優れないから」などと決めつけずに、他にもサインがないか確かめてください。
お腹の張りを感じるまでの間隔が短くなった
生理的な子宮の収縮は不規則です。お腹が張るまでの時間が短くなり、間隔が同様になってきたときは、切迫早産の疑いがあります。すぐに病院に連絡しましょう。
また、目安として、妊娠初期で一日に3回以上はお腹の張りがある方は、早めに病院で診てもらいましょう。
出血を伴う痛みがある
不正出血し、痛みがある場合は、すぐに病院に行ってください。痛みが強い方は、結果的に流産や早産してしまう場合もあります。
ただし、出血にもさまざまな種類があり、子宮頸部にできたポリープや、性交渉による子宮膣部びらんなど、直ちに治療する必要がないこともあります。「切迫流産」といい、妊娠初期の方が出血した場合に診断されます。これは流産ではありません。
また、子宮からの出血ではなく、便秘により肛門周囲が切れて出血することもあります。赤ちゃんに影響はありませんが、出産時に痛んでしまいお母さんが大変なので、遠慮せずに医師に相談すると良いでしょう。
まとめ
妊娠初期にお腹が張る原因は、子宮が不規則に収縮すること、子宮が大きくなるにつれ靭帯や皮膚が突っ張ることです。これらは赤ちゃんを育てるための生理的な現象で、お腹が張っても心配ないことが多いです。
しかし、お腹が張るのが規則的で、一日に何度も起こるという場合は、病院に受診した方がよいでしょう。様子を見ることもありますが、医師に経過を観察してもらえれば安心です。便秘による腹痛は切迫早産や流産などのサインを見逃しやすくなるので、生活習慣には気をつけましょう。
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