血液検査でBUN(尿素窒素)が高い、低いという結果を見た事があると思います。この値がどんなことを意味しているかよくわからない人もいらっしゃると思います。低かった場合、高かった場合どうなってしまうのかご説明します!
尿素窒素とは何なのか?
尿素窒素(にょうちっそ)とは尿素由来の窒素量を示す単位です。主に肝臓や腎臓の状態を検査する為に用いられます。
腎臓の機能が低下すると尿素窒素に異常が起こる
タンパクが体の中で分解された時にできる物質のひとつが尿素です。その尿素はすべて腎臓から排出されるのですが、腎臓の排出機能が低下すると血液中に出ていけない尿素が溜まってきて異常を起こします。
腎臓の排出機能が悪化していると、尿素窒素の値が高値になり、腎障害に陥ってしまいます。それ以外にも尿素窒素の合成過多による高値の場合は腎臓以外の消化器官などの障害や、合成過少での低値の場合には肝障害などが疑われます。
尿素窒素の目安は以下の通りになっています。
- 7.9以下 低尿素窒素血症:妊婦や低たんぱく食、多尿などでみられる症状です。特に気にするものではないので、経過観察で大丈夫です。
- 8.0~22.0 正常
- 22.1~29.9 軽度上昇:腎障障害に気を付けなければいけません。他の因子による可能性も考えられるので診察が必要になります。
- 30.0~39.9 中度上昇:腎障障害の可能性が高いので、腎臓の精密検査を行います。
- 40.0以上 高度上昇:腎臓障害は勿論、糖尿病など他の消化器官の障害の可能性もあります。
測定方法
尿素窒素の測定方法は現在2種類の方法が使用されています。1つはウレアーゼ法です。ウレアーゼを尿素と反応させ炭素アンモニアにし、そのアンモニアを測定する方法です。
もう1つは、「ジアセチルモノオキシム法」。尿素を酸性溶液中でジアセチルモノオキシムと橙黄色に呈色するのを比べる方法です。この方法はヒドロキシアミンが副産物として作られますが、これが縮合反応を起こす可能性があるので、それを防ぐ為に酸化剤を加え分解します。ですので酸化剤による退色の差が出てしまう問題があります。ウレアーゼ法の方が厳密に測定できるようです。
尿素窒素が高いことについて
まずは尿素窒素が高い場合を見てみましょう。
原因
先ほどお伝えした様に、血液中の尿素窒素はタンパク質が分解されてできる物質です。タンパク質が体内で使用されると、アンモニアとして肝臓へ届けられ二酸化炭素と結び付き尿素窒素になるのです。腎機能の低下が原因でうまくろ過できずに血液中に残るので値が高くなります。
高値の場合考えられる病気
・タンパク質の多量摂取
おならが臭くなったり、体のむくみが酷くなります。また、タンパク質を過剰に取ると体内でしっかり分解されずにアレルゲンとなり、「痒み」「湿疹」「喘息」「咳」「下痢」といったアレルギー症状が出てくる場合があります。
・脱水
水分喪失量に対して摂取量が不足すると起きるものです。これにより「発熱」「下痢」「嘔吐」といった症状が現れます。詳しくは、脱水症状の対処方法を紹介!飲み物は何がいい?を参考にしてください。
・胃腸の出血
消化性潰瘍といった傷口で消化管出血が原因です。症状としては便がタールのように黒くなります。排便中に腸から出血することがあり、その場合便器やティッシュに血が付きます。また酷い場合は吐血も見られます。
・腎不全
腎臓の機能が30%を下回った状態の事を言います。腎臓は左右にあり、それぞれ100万個のネフロン(腎臓の基本的な機能単位で、腎小体と繋ぐ1本の尿細管のこと)によって構成されています。
この組織が尿の生成や細胞外液中の濃度を調整する働きを持っています。この組織が60%以下まで下がった状態を「腎不全」10%未満まで下がると「末期腎不全」となります。
・糸球体腎炎
糸球体の炎症により、タンパク尿や血尿が出る病気のことです。これには種類があり、急性と慢性に分けられます。
急性型は一般的に子供に多く発症しますが、まれに成人の人もなります。扁桃や喉の炎症が治ってから1~2週間後に血尿やタンパク尿、むくみ、高血圧などの症状が発生します。この原因は溶血性連鎖球菌などの細菌による喉の炎症がきっかけです。
慢性型はとても複雑な病気で、慢性糸球体腎炎1つの病気ではなく様々な病気の総称になります。症状や原因がほとんどわかっていない為、専門医の間でも治療法に差があります。
・閉塞性尿路疾患(へいそせいにょうろしっかん)
この病気は尿の流れが反対方向へ流れる状態を言います。腎臓から膀胱に流れず尿が肝臓に逆流してしまうのです。
2つの臓器の間で尿を運ぶ管の尿管が塞がれてしまうのが原因でなる病気です。そして腎臓の片方または両方に腫れが見られたり、他の損傷を引き起こす可能性があるので重度な病気です。原因としては腹腔内での腎臓への圧迫です。
・甲状腺機能亢進症
甲状腺内組織の活動が異常に活発になり、甲状腺ホルモンの分泌量が過剰になる疾患です。甲状腺ホルモンは非常に大事なホルモンで、体の大半の組織に影響を及ぼします。
この原因として多いのがバセドウ病、甲状腺炎、甲状腺ホルモンの過剰摂取などがあります。
・糖尿病
糖尿病は慢性の高血糖状態の代謝疾患です。健康な人は空腹時の血糖値は110mgdl以下で食事などをして上昇しても2時間すると空腹時と同じに戻ります。
インスリン分泌低下またはインスリン抵抗性を来すと、食後の血糖値が上昇して次第に空腹時の血糖値も上昇してしまいます。症状としては「口が渇く」「尿が増える」「体重減少」「体力低下」「倦怠感」「意識障害」などが起こります。
こういった沢山の病気が考えられるのですが、尿素窒素のみでは病気の特定ができないのです。ですので、クレアチニン・尿タンパクの検査を合わせて行い診断します。
尿素窒素が低いことについて
では次に低い場合どうなるかを見てみましょう。
原因
素窒素が低くなる原因は主に2つあります。通常の人であれば、1つは肝臓の機能が不全であること。もう1つはタンパク質の摂取量がとても少ないことです。
その他に妊婦になると尿素窒素が低くなることもあります。胎児にタンパク質を与えるので、自身のタンパク質が減ってしまうからです。低くなるメカニズムはタンパク質の摂取不足と同じものになります。
能祖窒素が低くなると大きな問題なのが、肝臓の機能不全による低尿素窒素。アンモニアは強い神経毒性をもっているので、これが体内に滞在した状態はとても悪影響を及ぼします。長期にわたって高アンモニア血症は肝性脳症という脳障害を発生させます。
低値の場合考えられる病気
・薬物性肝障害
肝障害にもいろんな種類があります。1つは薬物性肝障害です。病気を治す為に薬を使いますが、飲んだ人の体質によっては好ましくない作用を体に及ぼすことがあり副作用として現れます。一番副作用が多く報告されているのが抗生剤です。
副作用を起こすのはアレルギー反応、中毒反応といったものです。症状は服用開始後1~4週間以内に「発熱」「発疹」「かゆみ」などが現れます。
・アルコール性肝障害
アルコールのを余分に摂取しすぎることで、最初に発生するのはアルコール性脂肪肝です。肝臓に必要以上の脂肪がつく病気です。こうなったにも関わらず更に大量の飲酒を続けているとアルコール性肝障害になります。
肝性脳症や肺炎や急性腎不全などの合併症が伴う場合もあり、1ヶ月以内に死亡する重度の肝障害にも陥ることもあるのです。症状は基本無症状です。あまりにも酷くなると「右上腹部が痛くなる」「肝臓の圧痛」「食欲不振」「嘔吐」「下痢」などの症状が現れてきます。
対策
では、対策はどうしたらいいのでしょうか?
尿素窒素を下げる方法
尿素窒素が高い場合、食事療法が重要になります。特に腎障害が酷く高尿素窒素となっていると自分でコントロールする手段がとても限られてきます。
尿素窒素が高いということは腎臓機能がうまく働いていないという事ですので、「これを食べなさい」という食事はありません。代わりにただし食事制限を行わなければいけません。
・タンパク質の制限
元々の原因がタンパク質の大量摂取ですので、一番制限しなければならない物です。体を作るために重要な栄養ですが、尿素窒素が高い場合は減らさなければいけません。
・塩分の制限
塩分も腎臓に負担をかける原因になります。できるだけ腎臓への負担を少なくする為に必要になります。
この他にもサプリメントを使って尿素窒素を下げることができます。「クレアギニンEX」「協和発酵バイオ オルチニン」「しじみ習慣」といった物が販売されているので、そちらも確認してみると良いでしょう。
更に運動でも下げる事が可能です。運動することでタンパク質の消費ができるのです。年齢や健康状態によって変わりますが、タンパク質は体を作る為の栄養素として必要不可欠な物になるので、いくら腎障害を起こしているからといってタンパク質の摂取を0にしてはいけないのです。その際に消費する方法として運動が大切になります。特に効果的なのが有酸素運動です。
尿素窒素の数値を上げる方法
一番はタンパク質を摂るということです。ですが数値が低いという事は腎臓の機能が弱っているという事になるので、過剰に摂取するのは避けて下さい。程よい程度に摂ることが大事です。
そしてカロリーの摂取も大事ですので、成人女性であれば1800カロリー、成人男性であれば2100カロリーを1日の目安として下さい。普段食べていなかったおやつや、朝食にボリュームを持たせるなどしてカロリーを増やしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。数値が高いにしても低いにしても腎臓に影響を与えているようです。普段の生活を見直して数値が正常に戻るように心がけましょう。
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