性感染症のひとつ、コンジローマ。とても不快な症状を引き起こす病気です。男性も女性も発症しますが、女性の場合、より重い病気に関係する可能性があります。
発症したら完治を目指さないと、あなたが濃厚接触する相手を、ことごとく苦しめることになります。そのためにも、コンジローマの症状、原因、治療、予防を知っておいてください。
コンジローマの基礎知識
正式名称は「尖圭（せんけい）コンジローマ」といいます。「尖」は「とがっている」という意味です。「圭」は「角ばっている」という意味です。いずれも、尖圭コンジローマによって現れる、「腫瘍」の「形」を言い表しています。
この記事では、「尖圭」の文字を省いて、単に「コンジローマ」と記述していきます。腫瘍といっても、「がん」ではありませんので、コンジローマで死ぬことはありません。
コンジローマの症状
まずはコンジローマの症状について紹介します。
女性の症状
女性がコンジローマに感染すると、大小陰唇など膣の周辺に腫瘍ができます。「イボかも？」と感じるかもしれません。膣の中にできることもあります。そのほか、膣と肛門の間の会陰（えいん）や、肛門、尿道にも腫瘍ができます。
痛みはないことが多いです。まれに、かゆみや、おりものの増加といった症状がみられます。ただこれも「なんかかゆいな」とか「最近、おりものが多いな」といったぐらいの、軽い症状です。症状のなさ、または、軽さが、コンジローマ拡散のリスクを高めます。
男性の症状
男性でコンジローマの腫瘍が生じる場所は、陰茎、亀頭分、包皮、そして陰嚢です。少し下品な表現になりますが「オチンチン全体と、金玉」といった方が分かりやすいでしょうか。尿道内に発症することもあります。
表面がざらざらした感じになります。指の腹で触ると、普段と違うことが認識できるでしょう。男性も痛みを起こすことはありません。
共通した症状
次に、男女に共通した症状を紹介します。
腫瘍の大きさは数ミリです。初期は、米粒か小豆ぐらいですが、悪化すると小指の先ぐらいにまで成長してしまいます。先端がとがった形をしています。触ると硬い印象を持ちます。
コンジローマの腫瘍の色は、淡い赤、褐色、白、茶色と様々です。
腫瘍の数は、数個から始まり、時間の経過とともに次第に増えていき、20個、30個となることもあります。
潜伏期間
コンジローマは、ウイルスに感染してもすぐに症状が現れるわけではありません。コンジローマの潜伏期間は、数週間から8カ月間といわれています。つまり、「今の症状」が「8カ月前のセックス」によって引き起こされている可能性があるのです。
女性は特に注意を
先ほど、「コンジローマで死ぬことはない」と言いました。しかし、女性は特に注意が必要です。コンジローマを発症した女性は、子宮頸がんになることがあるからです。因果関係はよく分かっていませんが、コンジローマの原因となるウイルスが、子宮頸がんに関与している可能性があります。
コンジローマの原因
では、いったいどういう原因でコンジローマが発症するのでしょうか？
6型と11型
コンジローマを引き起こすウイルスは「乳頭腫ウイルス」といい、100種類以上あります。しかし、どれに感染しても症状が起きるわけではありません。乳頭腫ウイルスのうち、6型と11型だけが、不快な症状を起こす腫瘍をつくることが分かっています。
性感染
ここで簡単に用語の説明を。
ウイルスと細菌は、「目に見えないくらい小さくて、人にとってありがたくない症状を引き起こす」という点で同じです。しかし、単独で生きていける細菌と異なり、ウイルスは、ほかの生物の細胞に住みつくことによって生き長らえます。
さて、女性の大陰唇や、男性の陰茎は、かなり頑丈な皮膚で守られています。なので、コンジローマのウイルスが付着しただけでは、感染しません。感染しなければ、症状も起きません。ウイルスなので、感染しないと、そのまま死んで消えてしまいます。
しかしセックスは、皮膚と皮膚をこすりつける行為なので、その過程で、微小な傷ができていることが多くあります。あまりに微小なので、出血もありませんし、痛みもありません。しかし、ウイルスにとっては「大きな入口」になってしまうのです。
コンジローマの治療
では、コンジローマの治療方法について紹介します。
簡単な検査
性感染症では、なかなか「症状が出た、よし、病院に行こう」とはならないことが多いでしょう。症状が悪化するか、「コンジローマに間違いない」と確定するまでは、診察を受ける勇気が湧かないものです。
そこで、簡易検査キットを使うことをおすすめします。インターネットで購入できます。ただし、購入先は厳格に選んでください。販売元が、医療機関と取引のある検査会社であるかどうかを確認した上で、購入してください。
しかし、本当は、軽い症状でも、性交渉後に発症したのが確実であれば、すぐに医者にかかることが最善です。簡易検査といっても、検査キットの購入から結果判明まで、2週間近くかかります。この間も、症状はどんどん悪化します。
自然治癒するの？
コンジローマは、自然治癒することがあります。これは、感染者の免疫力が、コンジローマのウイルスに打ち勝ったことを意味します。あるデータによると、コンジローマに感染した人の2、3割の人が、治療をせず完治するそうです。
このように書くと、心配があります。それは、「その2、3割にかけてみよう」と考える人が現れることです。自然治癒する可能性があることは事実なので、そのことはお知らせしなければならないと考え、記述しました。しかしそれは「様子をみてください」という意味では、決してありません。
コンジローマは、「かもしれない」の段階で病院にかかることが鉄則です。
再発
具体的な治療法を説明する前に、「再発する病気である」ことをお知らせします。このことは強く覚えておいてください。そうでないと、途中で治療を中断しかねないからです。
きちんと治療を受け、きちんと医師の指示に従っても、再発することが多い病気なのです。しかし、それが治療の意義を薄めるものではありません。
数カ月から半年、場合によっては年単位で根気強く治すことによって、完治が期待できるのです。
薬
症状が重い場合、かなり強い薬を使います。「ブレオS軟膏」という薬は、抗がん剤としても使われていますが、コンジローマの治療でも使われるのです。当然、副作用も大きく、皮膚が荒れる可能性があります。
また、「ポドフィリン」という薬は毒性が強く、ウイルスを退治する力が大きい薬です。これも副作用が強いです。
しかも、「ブレオS軟膏」も「ポドフィリン」も、医療保険の対象外です。治療費は100％自己負担となり、費用面でも負担が大きい治療といえます。重症になる前に、医者にかかれば、こうした薬を使わなくて済むかもしれません。
凍結療法
初期のコンジローマであれば、凍結療法の治療が有効です。マイナス196度の液体窒素を腫瘍に当てて、ウイルスを殺す治療です。実際の手技は、液体窒素を含ませた綿棒を患部に当てるだけです。
簡単な治療なので、患者の負担が少ないという大きなメリットがあります。ただ、マイナス196度という温度ですので、膣の中や尿道の中のコンジローマには使えません。
焼く治療
電気メスや炭酸ガスレーザーで、腫瘍を焼き切る治療法もあります。凍結療法より、完治に近づく可能性が高い治療法です。また、痛みや出血も、凍結療法より少ないとされています。
しかし「焼く」ので「傷」ができます。その傷が治るのには1週間ほどかかります。その後も、傷あとや、ひきつった感じは長く残ります。
コンジローマの予防
性感染症なので、「不特定の人とセックスをしないこと」、または「安全なセックス」が最大の予防法です。
コンドームは有効です。必ずコンドームを使いましょう。しかし、コンジローマのウイルスが肛門に付着している場合、コンドームでは防げません。
性感染が主ですが、まれに、風呂の椅子や、入浴後のタオルから感染することがあります。親が子供にうつすケースも報告されています。
まとめ
性感染症は、医療分野以外でも語られることが多い病気です。「因果応報」という考え方です。悪いことをすれば、悪いことが起きる、という意味です。
特定のパートナーと、ノーマルなセックスをしている限りは、コンジローマを発症することはまれです。不特定の人との性交や、趣味性が強すぎる性交が、性感染症という悲劇を生むのです。
1万歩譲って、不特定の人との性交も、趣味的性交も許容したとします。しかし、性感染症が分かったら、すぐに医者にかかってください。せめて感染を拡大させないことに、協力してください。
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