頸肩腕症候群、一見、字だけ見れば聞き慣れない言葉ではありますが、現代病とも言われる病気の一つです。誰にでもかかる可能性がある、この病気の詳細から予防法まで今回は深く触れてきたいと思います。
頸肩腕症候群とは何か?
では、まず頸肩腕症候群が何かというところから見ていきましょう。
俗に言う肩こりの一種
頸肩腕症候群とは、俗に肩こりというものの一種で、首筋の違和感や肩から腕にかけての異常、痛み凝り、腫れなどの総称です。
これ全体を頸肩腕症候群と言って、現代病とも言われています。現代、パソコンやスマホなどの普及に伴い職業病とも言われており多くの人が悩まされている病気でもあります。
これは検査で原因が明らかになる病気とは別物とされており、逆に言えば原因がわからないもの、つまり病名がはっきりとしているものの定義からは外されており、神経学的な異常が見当たらない気質的疾患の判断がはっきりしないものを頸肩腕症候群と見なされます。
筋肉とは血流と大きく関係してくるものなので、血流が滞っている場合など、一部体を長時間動かすことがなくなってしまった場合に起こる病気でもあります。長時間同じ姿勢を保つことによって血流が悪くなり筋肉は少しずつ萎縮していきます。萎縮していくと疲労物質が蓄積され頸肩腕症候群へと導かれるということが順序として挙げられます。
つまりこの病気は筋肉や血流と密接に関係した病気であることがわかりますが、一定の病名などは付けられておらず俗に肩こりやそれに起因した腕や首筋にかけての痛み、凝り、腫れなどがあるという曖昧な定義となっているのが現状です。
頸肩腕症候群の定義
曖昧な定義とは言っても行っての名は付けられています。それが頸肩腕障害というものです。経験腕障害とは産業医学の分野で使われている言葉であり、産業衛生学では上肢を使う作業に準ずる頸部、首筋から肩にかけて、腕などの痛みや凝り、腫れ、または痺れなどの症状が現れる疾患を経験腕障害と定義しているようです。
この言葉はほぼ同じ意味合いを持っていて頸肩腕症候群と頸肩腕障害は同定義であるとも言われています。
総括すると、首筋から腕までの痛み、凝り、痺れ、腫れなどを全てを頸肩腕症候群と呼ぶということがわかります。
頸肩腕症候群の主な症状
では、実際具体的な症状について詳しく触れたいと思います。
痛みや痺れが主であり、悪化すると感覚障害に至る
これは主に首筋から腕にかけての筋肉に関係してくる病気です。首の筋肉や肩、上腕などの筋肉が腫れて痛み、血流が悪くなることによって悪化し、神経が圧迫され痺れが出ます。
さらに病状が進行すると神経の圧迫により感覚障害が生じ運動機能障害へと至る場合もあります。この神経の圧迫が首筋から腕にかけてだけでなく、重症化することによって目の疲れ、また痛み、視力へとの影響や風邪、花粉症の症状なども現れることがわかっています。
単純にこれだけの症状が起こるだけでなく、放置して長引かせて悪化させれば頸肩腕症候群の症状がさらに重度のものへと進行していくこともわかっています。
この病気に限って言えることではありませんが、軽い症状の放置は病状を進行させる大きな要因となっています。軽いから放っておけば治るという軽い考えが重症化や別の病気への促しに起因すると考えられています。
こうした症状は軽視せず、ある程度の違和感があった場合はもう少し真剣に病状と向きあうことが大事であるといえるでしょう。
頸肩腕症候群の二次症状
初期症状は上記に挙げた首筋から腕にかけての痛みや腫れ、それに伴う痺れなどですが、これを放置し、悪化させることによって二次症状がみられてきます。
代表的な二次症状として、頭痛や耳鳴り、目のかすみや視力への影響、目の疲れ、集中力が続かない、または集中できないなどの神経症状、精神状態の不安、不安による精神の不安定が原因で精神病への移行により、鬱症状や睡眠障害など出始めることがあります。
またそれ以外にも、血流の圧迫や循環の低下により手足の先が冷える症状「レイノー現象」や、それに似た病気である冷え性なども発症する可能性もあります。筋肉の動きが低下するだけでこれだけの症状が見られるというのはとても軽視してはいけない病状であることがわかります。筋肉の停滞は血流の圧迫や障害に起因しますのでその部分をしっかりと理解することが大事でしょう。
二次症状は悪化するにつれてまだ他の症状が出る危険性もあります。他には、寝起きの倦怠感や筋力低下により運動障害、動悸や息切れ、胃腸障害から月経困難など、全身にわたって病状が起こる可能性があります。
主な原因は筋肉にありますが、その根底は血流に大きく関係してきます。血の巡り、つまり循環がうまく行われず阻害されることによって身体の様々な部分に大きな影響を及ぼすということがわかると思います。特になぜこれだけの症状が現れるかと言いうと、主な問題は「首筋」という部分に関係してきます。
首というのは脳とその下の部分を繋ぐ大きな役割を果たす部分でここには脳からの命令を流す太い神経が通っています。首筋の筋肉が原因であるということは首筋の血流が悪くなること、つまり身体の首から下へ命令をだす機関の血流の循環がうまく行われないことによって全身の機能障害へと繋がるということになるのです。
首の血流というのは身体の大部分を支えていると言っても過言ではありません。半身麻痺などの原因は首の神経の損傷や圧迫によるものが主ですので、とても大事な部分であることが言えます。ただの肩こりであるからといって決して軽視してはいけません。
首の神経を円滑に活動させるための血液がうまく循環されないことによって他の臓器の機能も低下し、それだけでなく日常生活に大きな支障をきたす恐れもあります。そうならないためにもしっかりとした知識と日頃の運動を欠かさないことが大事であることがいえるでしょう。
頸肩腕症候群の主な原因
では、頸肩腕症候群になる主な原因や要因について触れたいと思います。
同じ姿勢での作業や動作
現代病と言われる要因はやはり同じ姿勢での作業にあります。パソコンの作業など、デスクワークを行う仕事では多く見られる現象であることがわかっています。同じ姿勢で長時間の作業を余儀なくされる場合、頸肩腕症候群になりやすいでしょう。
特にデスクワークでのパソコン作業に関しては同じ姿勢のまま同じ動作を繰り返すことが多いのでより注意が必要です。さらに、パソコンはブルーライトもありますので眼精疲労などの併発も考えられます。頸肩腕症候群だけでなく直接的に目に影響を及ぼすというのはやはり対策をこうじる必要があると言わざるを得ないでしょう。
かつてはパソコンのない時代、頸肩腕症候群は限られた職業のみに起こる病気であることがわかっていました。職人であったり料理人などの同じ姿勢で同じ動作を長時間繰り返すことが多い職業に限定されていたのですが、現代はパソコンの普及に伴いより多くの人が発症する可能性のある病気へと変貌しました。会社などでパソコンを導入していないところはほとんどありません。現代の世の中はパソコン、いわゆるネットワーク社会となっていますので、パソコンを使用する人、さらに言うならパソコンを長時間にわたって使用する人などはかなり多いと多いと思います。社会人だけでなく、若い世代でも今は一家に一台パソコンがあるという時代ですので、こういったものはもはや社会人だけでなく一般の人にでも起こり得る病気であることがいえるでしょう。
姿勢の悪さも原因の一つ
同じ姿勢で長時間作業をするパソコン仕事などに多いと述べましたが、これは作業に限定されることではありません。作業をしていなくてもなり得るということが言えます。
特に同一の姿勢を長時間にわたって行っている場合にもこれは当てはまります。例えば、外食時や日頃の座る姿勢などにも言えることで、猫背や腕をついて長時間固まっている状態なども当てはまります。テレビを見ているときなどは集中しているのでついつい気づかすのうちにしんどい悪い姿勢をしがちでしょう。
こういった日頃の姿勢の悪さからも頸肩腕症候群は発症すると言っても過言ではありません。姿勢が悪い状態で日頃過ごしていることは頸肩腕症候群の発症のリスクを高める行為であることと思ってください。家庭でノートパソコンなどをする場合は特に注意が必要です。ノートパソコンは画面とキーボードの位置調整ができないので、前かがみや悪い腕の角度での作業が目立ちます。そういったところから頸肩腕症候群は発症すると考えてもおかしくはありません。
パソコンだけに限らず、現在はスマホの普及率はパソコン以上となっていますので、若い世代から高年齢の世代まで同じ姿勢で長時間スマホでゲームやSNSなどをすることが頸肩腕症候群の発症を高めるということにつながります。
これは10代でも言える話です。若いから大丈夫だと思うのは軽薄です。若くてもヘルニアなどの症状は起きますので、頸肩腕症候群はもっと起こりやすい病気であることを自覚しましょう。特に今の若い世代はスマホ依存が強いので長時間同じ姿勢でのスマホ作業はなるべく控えるようにしましょう。
睡眠時の姿勢も原因の一つ
作業などに言えることだけではありません。これは睡眠時の姿勢にも影響してきます。誰しも睡眠時は自分の一番楽な姿勢や気に入った姿勢で寝ることが多いと思いますが、悪い姿勢での睡眠は疲れが取れないだけでなく頸肩腕症候群の発症につながります。もう既に発症している人も少なくはないでしょう。
主にあげられるのが、高い枕やふかふかのベッドで深く沈むタイプのものです。これは猫背になりやすく、また首への負担がかなりかかると思ってください。寝ている時間は人それぞれでしょうが寝るという行為は人が生きる上で欠かせないことです。日頃猫背でない方もこういった睡眠時の姿勢で知らず知らずのうちに猫背になってしまうことも少なくはありません。睡眠時の姿勢にも気をくばるよう心がけましょう。
カバンなど重い荷物を持つ時
最後に鞄など、ショルダータイプのバッグは肩や首に負担をかけるものと言っても過言ではありません。特に片側のみをかけるタイプのバッグは片側に負担をかけ左右の筋肉のバランスを保てなくなります。これは長年の積み重ねによるものが大きくたまに使うだけなら問題はありません。ただ、長年、特に通勤や通学時に同じ鞄を同じ方向の肩でかけている場合は頸肩腕症候群になる確率を上げることになります。
これだけで言ってしまえばはっきり言って頸肩腕症候群になる確率はほぼ平均ほどでありますし、日常的に同じ動作を繰り返すというのは人間誰しもあることなのでそう簡単にはかかることはありませんが、上記の鞄だけでなく、その他のことと併用していることが一番の発症の原因に繋がるということなのです。
つまり、鞄だけでなく、スマホの同じ姿勢での作業やパソコンを使うなどいろいろな積み重ねがこの頸肩腕症候群の発症のリスクを高めるということと思ってください。
皆が皆、発症するわけではない
では、なりやすい人とそうでない人の違いをご説明しましょう。
運動不足の人
なりやすい人の代表格とも言えます。日頃運動をしていない人にこれはよく見られます。運動と言っても通勤や通学などの歩く行為は運動には入りません。しっかりとした運動を行うことが大事になってきます。
日頃からウォーキングやジョギング、軽いストレッチやヨガなども軽運動に入ります。これにより体力の低下を防ぐだけでなく頸肩腕症候群の発症を抑える効果もあります。運動不足の人は体力の低下により上半身の筋力が落ちているのが頸肩腕症候群の一番の要因となっています。適度な運動は行うようにしましょう。
体の冷えや冷えやすい人
体の冷えやすい人、またはもともと冷え性の人などもこの頸肩腕症候群になりやすいとわかっています。これは代謝や筋肉量に関係してくることで、筋肉の少ない人は低体温により体の熱を十分に保てない等データが上がっています。またクーラーなどで冷える、などもこの頸肩腕症候群の大きな要因につながっています。
筋肉量を増やすということ、そして代謝を上げることにより体の体温を上げ、そして一定に保つことができるのです。
筋肉量が少ないと体の熱を保てなくなり、必然的に冷え性や冷えやすい体になってしまい頸肩腕症候群の発症に繋がるということですので、筋肉量を増やすトレーニングなどを心がけるようにしましょう。
ストレス体質やストレスを溜めている人
これも大きな要因となっています。ストレス社会と言われている現代ですが、日頃ストレスを溜め込んでいる人も頸肩腕症候群になりやすいとわかっています。ストレスは体の弱っている部分に現れやすい、またそこを弱点として疲労が溜まりやすいというのが言えます。
仕事や育児、学校などストレスを受ける場所は沢山あります。こういった場合はストレス発散を心がけましょう。ストレスを溜め込む、つまり精神面というのは頸肩腕症候群だけでなく体のいろいろな部分に現れてきます。
日頃からストレスを溜め込まないように、リラックスできる方法を模索し、それを実行することによってある程度のストレス解消に繋がります。少しのストレス負荷というのは人間には必要であるというのもわかっているので、ある程度のストレスは問題視しなくても良いでしょう。
頸肩腕症候群の治療法、また予防法
では、具体的な治療法や予防法についてご説明します。
炎症を抑える治療法
頸肩腕症候群の主な症状は首筋から腕にかけての凝りや痛み、痺れなどですのでその元を改善する治療法が一番であると考えられています。
気質的な異常が認められない場合は整骨院などでのマッサージ、鍼灸、整体治療などが一般的な治療法になります。肩こりが主な場合は軽度のストレッチ法なども日常的に取り入れてみましょう。
その他、重度に至った場合について。炎症などにまで至ってしまった場合は消炎鎮痛剤の投与、または服用が有効です。また症状の悪化により精神面にも症状を来してしまった場合は心療内科や精神科の受診が必要となります。
その場合は精神安定剤(抗不安薬)の服用が必要となるでしょう。またカウンセリングの療法も同時に行ってください。
精神面に支障をきたすほどの症状は稀な場合が多いです。そこまで放置するということは滅多にないのであまりないといえるでしょう。
頸肩腕症候群の検査方法
主な検査方法としては、血液検査、レントゲンやCTなどが挙げられます。筋肉の状態や血液の循環、血液内部の状態を調べることによって異常が見当たらないにもかかわらず肩こりなど、頸肩腕症候群の症状が見られる場合、発症している可能性が高いでしょう。
つまり医学的に特に初期症状で体内部に異常が見られないにもかかわらず首筋から腕の凝り、痛みがある場合は頸肩腕症候群であると考えるのが妥当であると言えます。
しかし、早期に決断をするのは良くありません。一番いいところは総合診療と言って特定の科を受診するのではなくセカンドオピニオンのような総合診療を受診すると良いでしょう。
頸肩腕症候群の主な予防法
頸肩腕症候群の予防法としては、長時間同じ姿勢で同じ動作を繰り返す行為をやめることにあります。根底の元を断つという意味で、一時間おきに体を休める、もしくはストレッチや身体の血流を良くするために座りっぱなしではなく適度に立ち上がり血流を良くすることも大事な予防法であると言えます。
その他にもやはり一番は運動不足であることが挙げられますので、日頃の運動は欠かさないようにしましょう。ジムなどに通う大掛かりなことは別にしなくても大丈夫です。
一番効果的な運動は夜のウォーキングやジョギングなどが効果的です。有酸素運動は体力面でも有効であると医学的に根拠がありますので、軽い運動を心がけるようにしましょう。
できれば夜に行うことが望ましいです。なぜなら朝であると、1日の体力が減ってしまう恐れがあるので、夜寝る前やお風呂前などに軽いウォーキングなどがオススメです。
まとめ
では総括に入ります。
やはり一番は長時間同じ姿勢をすること、そして運動不足です。適度な時間感覚でストレッチを入れる、運動をするなどの予防法を取り、頸肩腕症候群の予防につなげましょう。
日常的にストレスなども危惧されますので、リラックスできることを行うことやストレス発散なども心がけて頸肩腕症候群を予防し、より良い生活を送ってください。