前庭神経炎の治療法やリハビリ方法は?症状や原因、似ている病気を知ろう!

何の前触れもなく発症する強いめまい。しかも、すぐに治まらないとなると、命に関わる病気の存在を疑いがちです。

似たような症状の病気は多くあって、詳しい検査で正体を突き止める必要があります。早く適切な治療を開始しないと、治療できる期間を失って長い後遺症に苦しむことになりかねません。

似た症状の別の病気を経験した人から、間違ったアドバイスをされることもありますので、必ず医師の診断を受けてください。その第一歩の違いが今後を大きく分ける分岐点になるからです。

前庭神経炎の症状

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前庭神経炎の特性をよく知ることで、他の紛らわしい病気と区別することになります。症状の主なものは日常生活での自覚症状の変化が大半です。

それとは別に決められた検査法があり、定期的にそれらの検査を繰り返して症状の推移を診断します。3か月後に検査の結果と自覚症状の変化を併せて検討し、そこではっきり病名を確認できるのです。

それまでは他の病気である可能性も捨てずに経過を観察しています。

回転性めまい

自覚症状で大きな特徴といえるのは、回転性めまいです。めまいは大きく分けて動揺性めまいと回転性めまいに分けられます。動揺性とは船酔いや車酔いなどのようにグラグラすることから気分が悪くなるめまいで、経験された方も多いタイプのめまいです。それと違って、回転性のめまいとはグルグルとどこまでも回されるようなタイプのめまいです。

とても立っていることはできず、うずくまっていてもグルグル回ります。前触れなく突然、発症するので救急車で運び込まれる方も少なくありません。強い吐き気と嘔吐も伴うので、脳の発作を疑われるからです。

この回転性めまいは1~3日で治まり、大きな発作は1回だけというのが前庭神経炎です。しかし一瞬でも耐えられない回転性めまいが3日も続くと、食べることはおろか、飲むこともできず寝たきりになります。治まっても、辛い頭の重さや身体を動かした時のふらつき感そのものは数週間から数か月も残ります。

長期化すると、日常生活に見えない壁ができて不安と恐怖から心身のバランスを崩しかねないことが大きな課題になってきます。それほど、この回転性めまいは本能的な恐怖を味わう苦痛といえるでしょう。

眼の動きに出る症状

前庭神経炎を診断するために、また回復の度合いを知るために幾つか検査方法があります。少し耳慣れない名称ですが、この検査法を理解しておくことが前庭神経炎を克服することにつながりますので、ご説明します。

検査方法の多くは眼振に注目します。めまいの検査であれば、前庭神経炎であろうとメニエルであろうと、眼振検査は重要です。脳や内耳に異常があるかどうかを、眼振で知ることができるからです。この眼球の動きが検査によって一方に片寄り、それから中央に戻る動き方で異常を診断できるので、めまいの検査には欠かせません。より正確に眼球の揺れ方を確認するため、暗い部屋でフレンツエル眼鏡というものを使用して検査します。

・自発眼振検査・・・正面を注視して、自発的に眼球が動く症状があるかどうかを知る検査方法。末梢神経、中枢神経、前庭神経のいずれかが障害されると動きが出ます。この検査で出る反応は、発症して3週間までには消失します。

・温度眼振検査・・・外耳道に冷水や温水を注入して温度刺激を起こし、反応を観察する検査方法です。三半規管の力が弱まっていないかどうかを知ることができます。具体的には、健康な方であれば軽いめまいが2分ほど続きます。しかし、病的な方の反応は全くめまいがないか、あっても微弱な反応しか出ません。正常な反応に戻るためには発症後、数か月を要します。

・頭位眼振検査・・・頭の位置を変えて、眼振の様子を観察する検査方法です。ここで気をつけなければならないのは、頭部の位置を変える時に眼球を動かさないよう頭の位置だけ動かすことです。発症後に正常化するのが1年は見ておく必要があります。

・電気眼振検査・・・以上の3つの検査ではフレンツエルという眼鏡をかけて、見開いた状態での検査でした。眼を閉じている状態では観察できていません。そこで、フレンツエル眼鏡ではなく、電極を使用して動きを詳細に観察する方法が生まれました。眼の左右の外側、一方の眼の上下に電極を貼ることで常時どんな時も眼振を測定できるようになったのです。

以上の検査を定期的に繰り返して、現状の回復状況だけでなく予後の想定にも役立ちます。意味が分からないと、無意味な検査と誤解して定期的な受診を避ける傾向があります。しかし、これらは重要な判断材料になりますので必ず医師の指示に従いましょう。

前庭神経炎と似ていて違う病気

めまいがする、吐き気がする、それだけに注目するのは危険です。症状が似ていて全く違う病気がたくさんあるからです。受診するのが一番の近道ですが、ここで紛らわしい病気を説明しておくことが前庭神経炎の更なる理解につながるので、数例を挙げます。

・メニエール症候群・・・前庭神経炎とちがって蝸牛症状を伴います。蝸牛症状とは、耳鳴り、難聴を意味します。前庭神経炎では聴覚異常は起きません。強いめまい、激しい吐き気があっても、耳鳴りや聞こえにくいなどの症状があればメニエル症候群を疑いましょう。

詳しくは、メニエール病の完治の期間は?原因や治療方法についてを参考にしてください!

・良性発作性頭位めまい症・・・頭の位置が変化することによって内耳にある後半規管が刺激され、回転性のめまいが発症するものです。たとえばベッドから寝たり、起きたりする場合は頭位が最も大きく変化します。この時にめまいが起きるケースでは前庭神経炎の特性から外れます。

・上小脳動脈循環障害・・・めまいの多くは耳鼻科の領域ですが、脳からもめまいは発症します。特に小脳、脳幹に必要な量の血液が運ばれないとトラブルが発生します。その症状の中にめまいが挙げられますが、他にも聴覚障害や手足のしびれ等の神経症状も伴います。

・小脳腫瘍・・・小脳に腫瘍ができると嘔吐やめまいにつながりやすいので紛らわしいのですが、意識障害を伴うために前庭神経炎ちは一線を画します。これも初期には間違えやすい病気として警戒したいものです。

前庭神経炎の治療方法

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突然、発症して生活を一変させる病気ですが、すぐに治るとは限らない病気でも知られています。早い段階での治療が功を奏しますが、根本からの治療が難しいのです。なぜなら原因がよく分かっていないからです。

ウイルス感染、血管障害、脱髄性病態と原因の候補になるものは挙がっていますが確定するに至りません。従って、対処療法になります。ここでは一般的によく使われる治療法を説明します。

安静と水分補給

過労やストレスが原因というわけではありませんが、免疫力が落ちることでウイルスの影響を受けやすくなるであろうと想定し、安静を言い渡されます。それが事実であろうとなかろうと、吐き気とめまいで動けません。結果的に安静にはなります。

ここでいうウイルスとは、外に浮遊するものや他者から感染されるものではありません。体内に持っているヘルペス・ウイルスです。神経に感染することで知られるヘルペスは通常の体力であれば発症しません。しかし、体力が低下してヘルペスを抑え込む力が失われると、ヘルペスが活発に動き出して前庭神経に感染して炎症を起こすのではないかという説に基づいた治療法です。

急性期(発症から1~2週間後)発作時は、安静を指示されなくても動けないので問題ありませんが、少し落ち着いた頃が問題です。悪化すれば予後は厳しいものになるので注意が必要です。その意味で慢性期(2週間誤~数か月)の間は努めて安静を守りましょう。

水分補給は嘔吐で体内の水分が損なわれる上に、激しいめまいで何も受け付けなくなるからです。口から何か飲もうとしても、より吐き気を強めてしまうようであれば点滴で水分をとる必要があります。脱水予防で点滴をする際に、衰弱を防ぐための栄養剤や薬類も投与します。大きな発作が1回とはいえ、3日間も強いめまいと吐き気が絶えないようでは体力の低下を免れません。まずはこの段階での脱水予防が何より重要になります。

投薬による治療

これは段階によって対処療法が違っくるので、急性期と慢性期に分けて対策を講じます。

急性期は発症した初日から二週間を目安にします。その内、特に3日以内は大きな発作時であることが多いので特に注意します。脱水や栄養失調に留意するのは、急性期の初期です。めまい止め、吐き気止めもこの期間は有効で体力の消耗も防ぐので積極的に取り入れていい時期です。入院の指示が出ることもありますが、期間としては平均1週間程度です。

抗めまい剤は発作時や発作の前兆があれば服用します。めまいや吐き気を抑えて、内耳の循環を改善し、神経の興奮を抑える作用があります。副作用としては、口の渇きやのぼせがあります。

そして、この急性期の炎症にはステロイドを投薬します。炎症を抑えて血行を良くする作用があります。点滴もできますが、飲める状態であれば家庭内で服用もできます。短期間の投薬について、医師の指示を守れば副作用は心肺ありません。ただし、胃潰瘍、結核、糖尿病を患っている方には使用できない薬になっています。

2週間目から数か月を慢性期と言って区別します。この頃には検査も一通りは済んで、大体の傾向は把握されています。そして所見に基づいて投薬の内容が決まっていきます。

循環改善薬はよく処方される薬の代表です。脳や内耳の血行を良くし、代謝の改善という作用を持った薬です。副作用としては、悪心、動悸、熱感があります。

急性期で患者は日常生活の中断や変更を余儀なくされ、めまいへの恐怖でストレスも最大に大きくなっています。発作時に較べて少し落ち着いたとはいえ一向に発作前に戻れず、退院して自宅療養といっても仕事が気になって、十分な養生が難しい時期です。

抗不安剤の処方も検討されます。不安を和らげる作用があります。副作用として心配されるような依存性に関しては、医師の指示を守れば問題ありません。それ以上に、長引く心労の方が慢性期においては改善を妨げる問題と言っていいでしょう。

ヘルペスが原因であろうと思われる前庭神経炎については、抗ウイルス薬も処方されます。これは市販でもよく扱われていますが、経口薬なので在宅においても服用に問題ありません。必要な時に必要な薬を見極めていく、その為にも定期的な検査は欠かせません。

前庭神経炎はリハビリが有効

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治療を全て終えても、何だかすっきりしない、そういう方の予後について知る必要があります。同じような発作で始まっても、発見の時期、治療開始時期、治療の方針、患者の取り組みや安静具合で治療後の容態はバラバラに違っています。

適切な時に必要な治療を受けられなかった場合、症状を持ち越すケースもあります。ここからは治療だけでなくリハビリが役に立ちます。

それぞれの予後

検査をふまえて予後を想定することができ、最終診断期間は3ヵ月です。それまでの間を追跡期間といって定期的な検査や診察を重ねて対処療法で様子を診ます。

眼振検査に加えてもう一つ、重要な検査があります。重心動揺検査という検査法で、めまいや平衡障害の診断を目的としたものです。患者は検査台に直立して1分間、目を開けます。そして再び1分間、目を閉じます。その時の重心の動揺を記録して分析するのです。

この重心動揺検査は前庭神経炎の治り具合や予後について大きな根拠になるデータを提示します。このデータが改善しないと自発眼振の消失が遅れるとされています。通常3週間くらいで消失するはずの自発眼振が慢性期中盤においても改善が見られない時、データも共に改善されてなかったら予後は課題があると言えます。

ここでは各検査に基づいて想定できる予後についてご説明します。問診時の自覚症状も大きな決め手になります。

温度眼振検査で正常な反応で、めまいもなければ前庭神経炎は消失したものと診断され、再発の心配もありません。反応の低下が1ヵ月以内であれば、その後の自覚症状や眼振所見の改善が期待できます。1ヵ月以上、観察期間の3ヵ月近くなっても反応低下が見られなければ、完治は難しく予後も不良と診断されます。

頭位眼振検査では一度治まったデータが観察期間内に再発すると、予後の不良が見込まれます。

前庭リハビリ

もともと人間の身体には片方が障害されれば補う機能を備えています。そこで患側の内耳機能を障害した場合も、健康な方の小脳の働きを駆使して左右の前庭神経核機能のバランスを保とうとします。

この働きを中枢性前庭代償と言い、視刺激・前庭刺激・深部感覚刺激の3刺激を繰り返すことで体得できます。この繰り返しで前庭性左右差の改善を図り、めまいを改善するのが目的です。

この平衡訓練を前庭リハビリと呼び、アメリカでは歴史のある治療法ですが日本では普及されていないのが実情です。最近、少しづつですが浸透してきて「治療段階を過ぎたら、めまいは寝ていては治らない」という方針になりつつあります。

安静を長期間、過度に強いると廃用性萎縮を起こして更に機能が劣化するというのが理由です。本来は安静にするべき期間でさえ、大きな発作が過ぎた直後なら前庭リハビリを開始した方がいいと主張する医師もいるくらいです。

神経に刺激を与えないと、目的とする反応が得られないという点では一致しています。ただ、めまいが強い期間については、不安についてどれだけ軽減することができるかという点が問題になります。抗不安剤を増やしてでも、前庭神経に刺激を与えて覚醒させることが優先なのかどうか、これからの研究が待たれるところです。

リハビリの方法

具体的なリハビリの内容は、平衡機能を鍛えるための平衡訓練です。地道に繰り返し、神経が反射的に反応するまで染み込ませることが重要です。

★頭の位置を固定して、ゆっくり目で動くものを追ってみる、それも左右に数回、繰り返します。その後、パッと早い動きに変えます。

★目だけでなく顔ごと目標物に向けて、ゆっくり動かします。これも左右に数回、繰り返します。これもその後、パッと早く動かします。

★首を大きく、かしげます。まるで、変だな?という感じで左右に数回、繰り返します

★目を閉じて立ち、足裏の感覚を養います。その場で50回ほど足踏みして、できるだけ同じ場所をキープできるように努めます。

まとめ

前庭神経炎は、すぐに良くなれば予後も悪くない病気ですが、長引くと別ルートの神経回路を作る必要があります。それも繰り返し、繰り返しインプットすることでしか作れません。これが根気のいるリハビリです。

一人で孤独にするのが難しいので、集団で取り組む病院もあります。同じ、めまいの仲間同士で分かり合えるのが続く理由のようで好評です。いつまで続くか分からないめまいというのは、抗不安剤を処方しなくてはならないほど精神的に苦しいのに、見た目は異常ないので周囲の理解を得られないという二重の苦しみもあります。

それを支え合える仲間がいれば続やすいことが大きなメリットです。繰り返せば新しい能力が何歳でもできます。めまいもこの機能で克服することができることを、多くの患者が実証しています。

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