不治の病とも言われている糖尿病。食事制限やインスリン投与などつらいイメージが先行してしまいますよね。でも、本当に糖尿病は完治しないのでしょうか?
本当に糖尿病になってしまったら、人生を諦めなければならないのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。まずは、糖尿病とはどのような病気なのかを知りましょう。
糖尿病はどんな病気?
糖尿病と聞くと、皆さんはどのような病気を想像されますか?
- 「美味しいご飯が食べられなくなる・・・」
- 「生活習慣病?贅沢病?」
- 「治らないから、インスリン注射を続けなければならない・・・」
そんなつらいイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか?
糖尿病という病気は、上のどれもが当てはまりますが、実はもっと奥が深い病気なのです。「自分は糖尿病かも⁉︎」と心配されている方は、まず、糖尿病がどのような病気なのかを正しく知ることから始めましょう。
糖尿病とは、なんらかの原因により、膵臓(すいぞう)で生成されるインスリンに異常がある病気です。膵臓が生成するインスリンが足りなかったり、正常に機能しなかったり、あるいは膵臓がインスリン自体を生成できない、などといった原因により引き起こされる病気なのです。
身体内でのインスリンの働き
私たちは、食事を摂取しています。
食事を摂ると、胃腸などの消化器で摂取した食物が消化され、さまざまな種類の栄養素となるのですが、中でも白米やパンなどのタンパク質は「血糖」と呼ばれる「ブドウ糖」という栄養素となります。
このブドウ糖は、人が活動するためのエネルギーとなるもので、血中より各臓器などに蓄えられたり、運動するときのエネルギーとして筋肉で消費されるので体にとって大切な栄養素の一つなのです。そのため、食後には一時的に血中の血糖値が上がることになります。
血中の血糖値が上がると、膵臓にあるβ細胞はインスリンを分泌して増えた血糖を各臓器に蓄えたり、運動エネルギーとして消費するために筋肉に取り込みます。取り込まれた血糖は、各臓器の成長を促す栄養素、あるいは運動するためのエネルギーとして消費されます。つまり、インスリンは血糖という栄養素を体内に取り込む重要な役割を果たしているのです。
正常な身体のブドウ糖摂取は以下になります。
・摂取した血糖=成長するための栄養素+消費するエネルギー
=> 健康な身体を維持することができる
このブドウ糖と成長・消費エネルギーのバランスが崩れると以下のようになります。
・摂取した血糖>成長するための栄養素+消費エネルギー
=>血糖が多いために過剰なエネルギーが蓄積される
・摂取した血糖<成長するための栄養素+消費エネルギー
=>血糖が少ないために必要なエネルギーが体内に供給されない
上記のように、健康な身体であれば、通常摂取した血糖はインスリンの働きによって体内に取り込まれ、成長や再生のための栄養素または消費エネルギーとして使われることになります。
糖尿病は、なんらかの原因によってこのインスリンの働きが正常に機能しなくなり、摂取した血糖がきちんと体内に取り込むことができなくなってしまうことによって発症します。
では、糖尿病とは一体どのような病気なのか、もう少し詳しく見てみましょう。
2つの糖尿病
糖尿病は、先に述べたとおり、膵臓で生成されるインスリンの異常によって引き起こされる病気ですが、その原因や症例によりI型糖尿病とII型糖尿病の2種類に分類することができます。
I型糖尿病
I型糖尿病とは、通常、おもに若年層、つまり若い方に多い糖尿病ですが、年齢を重ねても発症します。日本での糖尿病患者全体からみた割合は10%にも満たず、なんらかの原因によって膵臓のインスリン生成が全く、あるいはほとんどできなくなってしまったために発症する糖尿病です。
II型糖尿病
I型糖尿病に対して、II型糖尿病は日本における糖尿病患者の9割を占める糖尿病です。一般的に、その多くは30代以降に発症しますが、II型糖尿病はその症状により、さらにインスリン分泌不全とインスリン抵抗性の2種類に分類することができます。
I型糖尿病とは
I型糖尿病は、実のところ現代医学では原因が正確に解明されていない病気です。膵臓のインスリン生成機能に異常があることには変わりはないのですが、まだ未知の部分が多いのです。ただ、血液中の血糖値が高くなる病気であることは、II型糖尿病と同じです。
I型糖尿病の原因
I型糖尿病の正確な原因は、まだ突き止めるに至っていませんが、考えられる原因としては、体質、あるいはなんらかの原因によってインスリンを生成している膵臓の細胞が破壊されてしまったことによって発症するとされています。
I型糖尿病の症状
I型糖尿病に多く見られる症状は、喉の渇き、頻尿、さらには急激な体重の減少に疲労感などが挙げられます。
ダイエットしている方は、「体重が減ってラッキー!」と思われるかもしれませんが、実は身体からの危険な信号なのです。「最近、やたらと喉が渇くなあ・・・」とか「最近、トイレ近いなあ・・・」と感じている方は注意が必要かもしれません。
I型糖尿病の発症メカニズム
I型糖尿病の発症メカニズムは、ウィルス感染と考えられています。その後、なんらかの原因によって引き起こされる免疫機能の過剰な反応が、自分の膵臓内にあるβ細胞を破壊してしまった結果、インスリンがほとんど分泌されなくなって血中の高血糖の原因となると言われています。
II型糖尿病とは
I型糖尿病が、上記のように膵臓機能不全による発症とされているのに対して、II型糖尿病はインスリンを生成する膵臓の機能低下によるものとされています。主に、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性という2種類のII型糖尿病があります。
II型糖尿病の症状
II型糖尿病の症状は、I型と重なっている症状もあります。例えば、疲労感や頻尿、喉の渇きなどが類似した典型的な症状です。その他、以下のような症状があります。
- 皮膚が乾燥、かゆみがある
- 手足の感覚の低下、ちくちく刺す痛み
- 感染症にかかりやすい
- 目がかすむ
- 性機能の低下
- 切り傷や皮膚の傷の回復力低下
など、さまざまな症状が出ます。
II型糖尿病の原因
II型糖尿病の原因は、主に患者さんの生活習慣にあると考えられています。また、遺伝による場合もありますが、具体的には以下のような原因が挙げられます。
- 30〜40歳以上
- 肥満
- 糖尿病歴のある家族がいる場合
- 運動不足
- 妊娠中に糖尿病歴がある
- 体重4kg以上の赤ちゃんを出産
- 病気や怪我などのストレスを抱えている
- 高血圧
などなど、さまざまな原因が絡まり合ってII型糖尿病の原因となります。
II型糖尿病の発症メカニズム
II型糖尿病には、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性という2種類の糖尿病があると上述しましたが、どのように異なるのでしょうか?その違いを理解するためには、まずインスリンが身体内で果たしている役割についてあらかじめ理解しておく必要があります。
- インスリン分泌不全
- インスリン抵抗性
インスリン分泌不全
インスリン分泌不全とは、なんらかの理由で膵臓にあるβ細胞でインスリンを生成することができなくなってしまって発症した病症です。
インスリンを生成できなくなってしまった結果、食事で摂取された血糖を体内に吸収することができず、血糖値が高くなります。インスリンをまったく生成することができない場合は、インスリン注射を摂取することになります。
インスリン抵抗性
インスリン抵抗性とは、本来インスリンが分泌されると血糖を吸収するはずの臓器や筋肉が、なんらかの原因によって血糖を体内に取り込むことができなくなってしまったことに起因する糖尿病です。
ホントは怖い糖尿病
糖尿病を放置しておくと・・・こわい「糖毒性」
このようにして、正常に機能しなくなった膵臓により、インスリンが正常に分泌されない、あるいはその分泌量が少なくなった結果、血中の血糖値は上昇します。
通常であれば、食後などに血中血糖値を下げる働きをするインスリンが正常に機能しなくなったので、自然と血中の血糖値は高い値を保ち続けます。すなわち、高血糖の状態が続くのです。
さらに、高血糖の状態のまま、食べすぎ、あるいは運動不足といった悪い生活習慣を続けると膵臓の機能に障害がますます悪化します。すると、先に挙げたインスリン分泌不足あるいはインスリン抵抗性といった原因により、高血糖の状態がさらに悪化します。
高血糖の状態のまま、生活習慣を改善しないと、動脈硬化や肥満、高血圧、高脂血症などの合併症を引き起こす可能性があります。それどころか、このままの状態を放置すると、命の危険にさらされる心臓病や脳卒中、失明、腎不全、心筋梗塞、認知症といった病気に進展する可能性もあるのです。
そのような合併症を避けるためには、インスリン療法が不可欠となります。その結果、インスリンを投与し続けないと、常に命の危険にさらされるという悪循環となります。
このような悪循環は、「糖毒性」と呼ばれています。
「たかが、生活習慣病だし、食べたいものを食べて何が悪いんだ!」と開き直っている方は、みずから自分の命を危険にさらして「自分の食べたいもの」を食しているのです。
糖尿病は完治するの?
では、糖尿病ははたして完治するのでしょうか?
「治る人もいれば、治らない人もいる」
無責任なように思われるかもしれませんが、これがこの問いに対する答えです。実は、この問題は根が深くて難しい病気なんです。
だからといって諦めて自暴自棄にだけはならないでくださいね。病状をますます悪化させてしまうのは避けましょう。
I型糖尿病の完治
I型糖尿病の場合、体質的な要因もあって糖尿病を完治するのはなかなか難しいのが現状です。ただ、たとえ完治は難しくとも、食事療法や薬剤投与などで病状を落ち着かせて普通の生活をおくることができる場合もあります。
「I型糖尿病だから・・・」と諦めてしまったら、そこで治療は終わってしまいます。それよりも、病気と仲良く付き合って生きていく方法を考えましょう。
II型糖尿病の方
II型糖尿病の場合、話題になったメタボリック・シンドロームに代表される現代の生活習慣病の可能性が高いのです。
この場合、脂質の多い肉類を避け、魚類や野菜などの植物を摂取して食生活を改善して体質改善を試みましょう。そして、散歩やジョギングなど運動してインスリンの効果を高める努力をしてみましょう。
また、食生活を改善できれば、少量のインスリンでも血糖値を抑えて正常な数値に戻すことができる可能性もあり、完治の可能性も出てくる場合があります。
完治する可能性のあるII型糖尿病には、早期発見、早期治療が重要です。
「24時間365日戦えますか?」なんて、古いキャッチコピーの生活を地で強いられている現代人にとって、一度崩れてしまった生活習慣を改善することは難しいですよね。
でも、ここで発想を転換してみましょう。逆に、生活習慣を改善して血糖値を正常な値に戻すことができれば、健康な方と同じような生活を過ごすことができる可能性もあるのです。
たとえ、今は食事制限のために美味しい食事を口にすることができなくても、糖尿病の症状が改善されれば、いつかその美味しい食事を食べることができるようになるかもしれません。
血糖値が正常化したらー継続は力なり
食生活や規則的な生活、薬剤投与などで血糖値を下げることができたら、次はその良好な状態を続けることに気を配りましょう。
努力して血糖値をここまで下げたのです。食生活がまた乱れてしまったら、せっかくの努力が水の泡です。ここまできたら、以前よりも普通の食生活を送ることができるはずです。
以下の3点に気をつけましょう。
- 腹八分目
- 栄養バランスのとれた食事
- 規則的な食生活
規則的な食生活を心がけ、栄養が偏らないような食事をとります。そして、最後に適量、すなわち腹八分目で抑えるのが重要です。
お腹いっぱい食べたくなるのが人間の心情ですが、食べ過ぎは逆に身体に悪影響を及ぼすからです。
まとめ
昔からある糖尿病ですが、現代においては生活習慣病の様相を呈しています。
携帯電話にインターネット、24時間365日営業のコンビニエンスストアなど眠らない社会『不夜社会』が現代日本社会の代表的な特徴の一つですが、このような社会が規則正しい人の生活を破壊せしめて「糖尿病」という生活習慣病を招いているのです。
糖尿病治療には、まず適切な食事と適度な運動で人が本来そなえている「自然治癒力」を取り戻しましょう。
そして、回復した自然治癒力を保つために、規則正しい生活を送り続けましょう。
先人も、
「継続は力なり」
と言っています。
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