入念に歯を磨いたにも関わらず、何だか臭い……。ニオイの強い食べ物を食べたわけでもないし、一体なぜだろうとお悩みのあなた!その口臭、胃が原因かもしれません。
学校や職場、デートの時など、他人とコミュニケーションをとる上で、口臭は大きな妨げとなります。そこで今回は、口臭の仕組みから、胃がもたらす口臭の予防法までしっかりと学び、今すぐニオイの悩みを解決しましょう!
口臭の原因を知ろう
口臭にはいくつか原因がありますが、9割は口腔内にあると言われています。その原因は実に身近で、放置した虫歯や歯石、歯磨きの不届きが招いた歯垢のかたまりや歯槽膿漏などです。日常のブラッシングに加えて歯間ブラシでのお手入れ、さらに3カ月ごとに歯の定期健診を行うなど、まずは口腔内トラブルを回避する努力が必要です。
他にも原因はいくつか考えられます。まず、「アセトン臭」と言われる物質です。人間は、体内の糖分が不足した場合、代わりにたんぱく質や脂肪を分解してエネルギーを作り出します。その際に発生したケトン体にアセトンが含まれていて、ニオイを発生させてしまうのです。無理なダイエットで糖分が不足している方や糖尿病の方は、アセトン臭がする可能性が高いです。
もうひとつは、ドライマウスです。いわゆる、緊張やストレスなどで唾液の分泌量が少なくなり、口内が乾いている状態のことです。口が乾いた状態が長く続くと、細菌が繁殖して口内に広がり、口臭の要因となってしまいます。水分をこまめに摂るなどの対処が必要です。
さらに、胃の不調が原因ということも考えられます。口腔内のトラブルも、アセトン臭もドライマウスも問題ない方は、まずは胃の病を疑うといいでしょう。
口臭を引き起こす胃の病気
胃の不調が口臭を招く要因になることは理解したけれど、どんな胃の病気が考えられるのでしょうか?まぁいいか……と見過ごせない病も中にはあるので、しっかり確認しましょう。
胃潰瘍や胃炎
乱れた食生活などで胃潰瘍や胃炎などをおこし胃の機能が低下している場合、食べた物を消化しきれずに胃の中に食べ物が残った状態になります。長時間そのままの状態が続くと食べ物が発酵して、胃の中でニオイが充満します。これが、血流に乗って肺に到達し、口や鼻からニオイを発生させてしまうのです。
ニオイは、卵が腐ったようなアンモニア臭が特徴です。胃潰瘍については、胃潰瘍の症状をチェック!治療するための方法は?を読んでおきましょう。
逆流性食道炎
強いストレスを受け続けたり、不眠などによる生活習慣の乱れも大きな原因になると言われている逆流性食道炎。胃酸が、胃から食道へと逆流を繰り返す中、口の中に上がってきたときに息と一緒に外に漏れ出してしまうことで、ニオイを発生させることがあります。
十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍とは、胃から腸へと向かう途中にある十二指腸に潰瘍ができる病気です。
胃潰瘍や胃炎と同様で、十二指腸潰瘍を患うと消化不良をおこしやすく、さらに胃酸が食道を逆流する症状も現れます。喉元に酸を感じるようなゲップをした時や、消化不良により胃の中で異常発酵した食べ物のニオイが肺に到達し、呼吸とともに外に漏れ出して口臭を発生させます。
詳しくは、十二指腸潰瘍の症状をチェック!原因や治療法は?を読んでおきましょう。
胃がん
胃がんになった場合、個人差はありますが、ドブ川のような強いニオイを発する場合があります。
原因は、体の中で細胞が死滅するときに壊疽臭(えそしゅう)が発生するからと言われています。このニオイ成分が体内の血液を巡り肺に到達した後、呼気として外に漏れ出すため、口臭を発生させるのです。
詳しくは、胃がんの原因は?ストレスや食生活に要注意!を読んでおきましょう。
食後の口臭は胃からではない!
胃の不調や病が口臭の原因になることは理解したけれど、食後の胃からこみ上げるニオイの方が原因となる可能性が高いのでは……?と疑問に思う人も多いでしょう。しかし、食べた後に胃からニオイが漏れ出すことはありません。
何故かというと、胃から食道につながる途中に、胃にある食べ物のニオイを逆流させないための強力な蓋があるからなのです。この蓋は、括約筋と横隔膜で出来ていて、食事中だけ蓋をあけて食べ物を通しますが、それ以外の時はがっちりと閉めて、ニオイを外に放出させることは決してありません。では何故、ニンニクなどの香りが強い食べ物を摂取した後、口臭が発生するのでしょうか?
それは、胃から出ているニオイではなくて、香りの強い食べ物が持つ素材そのものの成分が血液中に取り込まれて、肺に到達した後に口や鼻から外に漏れ出していたのです。夕飯で餃子を食べた時、翌日の朝起きても臭い時がありますよね。つまりこれは、消化不良が原因ではなく、血液中に悪臭成分が残っているからなのです。しかし、胃の不調が原因の場合もあるので自己判断は危険です。原因が分からずに口臭で悩んでいる方は、一度医師に相談するといいでしょう。
胃からくる口臭の予防と治療
胃の不調で生じる口臭は、どうやったら防げるのでしょうか?胃潰瘍や胃炎、逆流性食道炎、十二指腸潰瘍、胃ガンの予防策と治療法をはじめ、日々の暮らしをどう改めるべきかも一緒に学びましょう。
胃潰瘍、胃炎
胃潰瘍や胃炎が発症する原因の多くは、「ピロリ菌」への感染だと言われており、退治する必要があります。
過度な飲酒や暴飲暴食、不眠やストレス、喫煙なども、胃潰瘍や胃炎を起こす原因になります。胃に負担のかからない、規則正しい生活を心がけましょう。
もし病が発症してしまった場合は、胸やけや吐き気、みぞおちが強く痛むなどの症状が特徴です。これらの症状が出たら、すぐに病院に行きましょう。
逆流性食道炎
胃液の酸が食道へと流れ込んでしまう逆流性食道炎は、強い胸の痛みや喉の奥の痛み、ひどい胸やけや酸味の強いゲップがたくさん出ると言われています。
胃酸を増やすと言われる脂肪分の多い食事や、消化に時間がかかるたんぱく質の多い食事の過度な摂取、また肥満体系や姿勢が悪く背骨が曲がっているのも原因になります。さらに、飲酒や喫煙、ストレスなども原因のひとつです。
食生活のコントロールや働き方の改善など、日々の暮らしを調整しましょう。医師や専門家のアドバイスを受けるのもいいでしょう。
十二指腸潰瘍
胃酸過多が原因で、消化液の胃液と胃の壁を守ろうとする粘液の量のバランスが崩れることによって、十二指腸を破壊して発症してしまうのがこの病気です。
原因が胃潰瘍と似ており、ピロリ菌の感染が主な原因とされています。また、胃潰瘍と同じくみぞおちに痛みを感じますが、十二指腸潰瘍の場合は、みぞおちの周辺と背中に痛みを伴うと言われています。また、痛みを感じるタイミングも胃潰瘍とは違い、空腹時や睡眠中に感じることが多いでしょう。症状は、みぞおち周辺と背中の痛み以外にも、吐き気や強い胸やけ、胃の痛みや食欲不振などを感じるのが特徴です。
これらは、ピロリ菌の感染が主な原因ですが、ストレスが症状の悪化を加速させてしまう要因になります。ストレスを感じたら発散をするよう心がけましょう。また、辛い食べ物やカフェインの過剰摂取による胃への負担にも注意が必要です。
胃がん
現在日本では、2人に1人が癌になると言われています。2014年の「死亡数が多い部位」の統計で、男性の2位、女性の3位に胃がんが入っています。今もなお患者数が増加していると言われており、予防と発症した場合の早期発見が重要となっています。胃ガンは早期の場合、不快感や痛みなどの症状が現れにくく、ある程度のところまで進行しないと発見できないのが現状です。しかし、健康診断を定期的に行うことで早期に発見することができるため、最低でも1年に1度は健診を受けるようにしましょう。
ちなみに、進行した胃ガンは、ドブ川のような強い口臭を伴うほか、体重の減少や食べ物が喉元で引っかかるなどの症状が現れます。他にも、胃痛や胸やけなどの症状もありますが、これらは胃ガンと特定するのは難しいので、胃に不快感を感じたらなるべく早く病院に行くことをおすすめします。
胃は食べた物と直接的に関わり続けるため、良好な食生活が胃がんの一番の予防法です。中でも、塩分の摂取量に注目しましょう。高血圧予防に塩の摂取量を抑えるといいと言われますが、胃がん予防にもとても効果的です。
日本人の食事は、味噌や醤油などを中心に摂取するため、気を付けていても塩分が高くなってしまいます。これからは、お味噌汁の味噌の量を今までの半分にしたり、炒め物は素材のうまみを生かして醤油はあえて使わないなど、調理方法を工夫してみるのもいいでしょう。
予防として積極的に摂取したい食べ物は、緑黄色野菜、キノコ類、海藻、果物です。これらはガンの発生を抑制する成分がたっぷり含まれています。1日にできるだけ多くの品目を取り入れる努力をしましょう。
呑気症
胃の病気のほかにも、無意識で空気を飲んでしまう呑気症を改善するのも、口臭の予防につながります。空気を飲むことで胃に空気がたまり、食後や他人との会話中などにゲップとして外に出されることで、ニオイが発生します。口臭だけでなく、ゲップの頻度も多く、相手に不快感を与えてしまいます。
食後だけでなく、何気ない時にもゲップの回数が多い人は、呑気症の疑いがあります。知らず知らずのうちに空気を飲んでいるため改善するのは難しいですが、呑気症の原因の多くはストレスにあると言われています。ストレスを回避する方法を見つけて、心穏やかに暮らすと改善されるでしょう。
病院へ行く際は、消化器科や耳鼻咽喉科を受診するといいでしょう。
まとめ
口臭の原因が分からずに悩んでいた方……、謎は解明しましたか?胃の病気やダイエットなどによるアセトン臭、緊張からくるドライマウスを疑う前に、まずは歯科医院で口腔内のトラブルが無いかを検査することをおすすめします。
口臭の原因が分からなかったり、少しでも胃の不快感を感じている場合は、口臭が胃の病気の早期発見につながる可能性もあります。自己診断せずに、できるだけ早く病院に行きましょう。