精神科と心療内科は実は全く違うものだということをご存知でしょうか?中には神経科の医師は神経科という看板で開業すると敷居が高くなるので心療内科と名乗っているケースがあるという話もありますが、根本的な定義としては全く意味が異なります。
確かに今日の日本の医大では卒業するまでに全ての診療科を学び国家試験もほぼ全ての科の問題がでるので、精神科でも心療内科でも知識はあるはずです。しかし研修内容が異なるので専門性と経験の差があります。
心の病気、と一口に言ってもその原因や症状や治療法が異なります。精神科と心療内科の違いを知るというよりは、自分や他人の病気を一概に『心の病』と呼ぶときに実際はどこに問題があってどうするべきか、あるいはどう接するべきかを知っておくことが大切です。
精神科と心療内科と神経科、神経内科、カウンセリング(心理相談機関)精神保健福祉センターなども混合されやすい施設です。施設の名前には法的な定義があります。具体的な定義の確認をして受診の際にはよく選ぶようにしましょう。
精神科と心療内科の違い
多くは精神科の知識も心療内科の知識も両方の知識を持っているお医者さんのほうが多いようです。しかし、一般には単に『心の病』という場合庶民にとってはそれらは混合されています。
実際に精神科のお医者さんが心療内科だと名乗るのは、日本では精神病者に対する偏見が強く「精神科はキチガイがいく場所だ」という庶民の誤った認識のせいで「心療内科と書かれていないなら行きたくない、あるいは身内を行かせたくない」という風評被害があったためです。その為、神経科は心療内科だと名乗って開業することが多いので「どっちも同じ」という考えが広まりました。
しかし、医学的な区分としてはそれらははっきりと異なるものです。
心療内科とは?
心の状態によって体に不調がでる症状を取り扱うのが心療内科です。歴史的には、もともと内科のお医者さんがメンタル面と内科的な不調の関係に興味を持ってできたという経緯があります。精神科というより、内科から派生した医学的な区分です。
例えば、ストレスがかかると胃が痛くなる、ストレスがかかると吐き気がする、喘息が起こる、心筋梗塞が起こる、など心理的な変化に応じて身体に不調がでることを指します。
これらの心身症の症状は多岐にわたります。
- 胃潰瘍
- 精神性胃炎
- 神経性嘔吐賞
- 喘息
- 緊張性頭痛、片頭痛
- アトピー性皮膚炎
- 慢性湿疹
- じんましん
- 円形脱毛症
- 間接リュウマチ
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 不整脈
- 月経不調
- 高血圧
- 過敏性腸症候群(心身症による下痢)
- 過敏性膀胱(心身症による頻尿)
- 便秘
- 腹痛
この通り内臓に関する症状がでるので心療内科という単語には『内科』が含まれています。
治療方法は胃酸がで過ぎてしまう場合は調整剤を処方してくれますし、また緊張を和らげたり、不安感を和らげる、気分の落ち込みを和らげるような精神に関係するお薬も処方してくれるでしょう。日本では東洋医学、漢方薬に詳しい先生も多く、身体を温める漢方や生理痛を抑える漢方を処方する場合もあります。
病名としては自律神経失調症として処理されることが多いです。
また、最近発見された「逆流性胃炎」は原因がわからなかったために「精神の問題だ」と誤解されてきたような病気も存在します。
内科的な病気は場合によっては見落としがあるケースもあるのです。精神的な病かと思ったら別の病気が隠れているという可能性もなくもありません。大学病院や総合病院でもない限り心療内科に内視鏡などの装置がそろっていることは珍しいので一度は内科で調子を見てもらうのもよいでしょう。
精神科とは?
心療内科は心自体ではなく、心の変化によっておこる「内科的な」治療を行う医学的知識の区分の専門知識と資格のあるお医者さんがなのる診療所やクリニック、および病院のことを指します。
では精神科はどんな医学的な区分の専門知識があるのかと言いますと、これは心自体の病を取り扱う医学的な区分です。
- うつ病(気分が落ち込んで何もできない)
- 躁鬱(元気なときと落ち込むときが激しくコントロールができない)
- 不安感が強い
- わけもなくイライラする
- 発達障害(自閉症やアスペルガー症候群)
- 頑張っているのに忘れ物が多い、約束を守れない
こういった症状は神経物質の発生の異常や受け取りの異常、甲状腺ホルモンの分泌異常の場合があります。痴呆症など脳や神経が傷ついて起こっている場合は神経科、脳神経外科に診てもらうように診断書を書いてもらえる場合もあるでしょう。
殆どは投薬治療です。
精神科と心療内科のお医者さんの違い
日本の医大では卒業するまでに全ての診療科を学び国家試験もほぼ全ての科の問題がでるので、精神科でも心療内科でも同じ医学的な知識はあるはずです。
しかし研修内容が異なるので専門性と経験の差があります。
最近は違う科の病気も知るべきだという声が上がっており、医師の研修制度が変わろうとしていますが、今のところは精神科医で研修を受けた人は、精神科医の現場しか知らず、心療内科での研修を受けた人は心療内科の研修しかしていないということになります。
ただし心療内科と精神科は前述したとおり「日本人の偏見のおかげで精神科なのに心療内科と名乗らなければならなかった」という事情により近しい関係にあります。
その為、精神科医のお医者さんが心療内科に就職していたりその逆もあり得るということです。
その為、精神科と心療内科の違いはお医者さんの質の問題と言う面に関しては現実的に違いがない可能性が大です。日本ではほぼ混合されています。
どちらかというと、庶民の精神科と心療内科の違い、医学的知識の欠如、精神病患者に対する偏見、誤解のほうに問題があります。
精神科と心療内科にかんするよくある誤解
精神科=キチガイの行く場所、心療内科は軽度、という見識は全く間違っています。これは全く意味のない区分です。前述したとおり、取り扱っている病気の区分が全く違うので、精神科>心療内科という考えはナンセンスです。
医学はそのような区分ではなく、ちゃんと必要な専門知識が治療に役に立つように区分を設けています。確かに心療内科でも精神科的な治療の心得を持っているお医者さんが多いので気にしなくてもいいという意見も一理あります。
しかし、庶民の無知による風評被害で精神病という単語で一括りにされて病気に対する理解を妨げ、治療や共存を妨害し、偏見がある状態は良くありません。
中には『精神の病気→人格がおかしいこと、ストレスで胃が痛くなるなんて仮病だ、甘えだ』と勘違いしている人も多いです。それが健康な人ならいいですが、もし自分自身の症状であれば、自己否定することになります。自分が差別されるのではないか、俗にいう「キチガイ」という別称を投げかけられる人の仲間だと思われるのではないか、と恐れて精神科、心療内科を受けようとせずに苦しむ人もいます。
ネットの知識で間違った解釈を広めず、事実確認をして精神科と心療内科の違いも一緒くたにせずよく確認し、自他の病気について正しい知識を持ち、他人やあるいは自分自身を間違った知識で蔑視することがないように重々注意しましょう。
いつまでも村社会の迷信を信じてしまうことなく、正しい知識を付けましょう。
そもそも精神科の病気は治るのか?
治る例はありますし、患者の協力もあれば治るようです。しかし、風邪のようなきっぱりとした線引きができないので難しい面があります。
そもそも、どこからが健康でどこからが病的か、という線引きをすることが本来は無意味だ、という精神科医もいます。
精神科の場合なぜ薬が効くのか、ということがはっきりわかっていません。この症状がでたらこの薬を飲めば「治った」という報告があったという理由に過ぎません。
精神科医はどちらかというと社会から「こいつ(自分)を何とかしてくれ」という要求に答えるためにいます。病名は社会が作るのです。医者も人間ですから、厄介な患者さんに「○○人格障害だ」と診断し、主治医が変わったら別の病名に変わって元気に治療されたというケースもあり、はっきり言って治し方がよくわからない、というのが精神科の実情なのです。
これは精神科の歴史的にもそうでした。主治医にとって厄介な患者を何でもかんでもPsychopathy(精神病質)通称パチーとよび無理やり治療対象にしたという歴史があります。
診断書の病名と実際の病名は必ずしも100%一致するわけでもありません。もし診断書に自律神経失調症と書いていれば、「原因がわからないが患者(もしくは保護者や学校や会社などの社会)が症状を訴えている」という意味かも知れません。
それでは心身症は治るのか?
治る例はありますし、患者の協力もあれば治るようです。しかし、これも難しい話です。原因がわからないので、症状を緩和しながら体の健康と、ストレスの緩和をしながら生活する手段を模索することになります。心理的な問題が解消されて治る場合もありますし、心理的な問題を緩和しながら、上手く薬を使って普通に生活がすることができます。
胃液がで過ぎているなら胃薬をだせますし、喘息であれば気管支を広げる薬があります。急な下痢に効く薬も出すことができます。
症状がでている、その症状を抑える、という点では、比較的わかりやすい治療なのかもしれません。
しかし、現代の医学も完璧ではありません。逆流性胃炎も今までは神経性の胃炎だろうと考えられてきたようです。病気の見落としもないとは言い切れません。
素人と医学知識を持つお医者さんの違いはありますのである程度の信頼は必要ですが、どうしてもよくならないという場合は他の対策を考えてもいいでしょう。
人間は基本的に完璧でなくても生きてみんな死亡します。すべての病気が治らなければ生きていけない、というわけではなく、折り合いをつけながら幸せに生きられるならそれでいいのかも知れませんね。
精神科と心療内科とカウンセリングとの違いは?
カウンセリングは医療免許を持っていなくてもできる業務です。
医療免許を持っているカウンセラーがいなければ、普通は投薬や採血ができません。悩みを持つ人の話を聞くことがメインです。
精神保健福祉センターとは?
各地区保健所を支援するためのもので、地区により名称は違うことがあります。保健所と同じような設備と、利用可能な福祉制度をアナウンスしてくれます。
相談は無料なので、病気の負担額がかさんでいる場合は相談するとよいでしょう。
また保健所でも相談してくれます。こちらも相談は無料です。
クリニック、診療所、病院の違い
クリニックや診療所は入院する設備がないが医師がいて診察を受けることができる施設です。病院は入院を受け入れる設備があれば病院と名乗ることができます。
会社、学校に病気がばれるのが怖い
学校は大丈夫ですが、会社は会社が負担している健康保険には通院した病院名を閲覧できます。
その為、精神科、心療内科にいったことは報告されます。そういったもので差別されるかというと、人事としては健康な人間を雇いたいと思うので日本の会社では偏見を持たれるのは事実です。また意識の低い会社ですと、口の軽い経理が社員全員に話して、少しずつ窓際に追いやられ、噂になったのが嫌で仕事を辞めてしまった、という人がいるのが現実です。
診断名は告知されないものの、それ故に勝手に詮索されてしまいます。「あのひと鬱かも?プロジェクト頓挫したら嫌だからリーダーから外そう」とか「気が利かないしアスペかもw」とか「発達障害じゃないかあいつ使えないしw」「似るからにメンへラだよね、絶対ビッチ」などなど、病気の内容を知りもしないのに気に入らない相手に病名を別称として使い、心無い噂を流す人が多いというのが日本社会の実情です。
よって、もし保険を使って診察をするなら、自分から「こういう病気です」と説明するか、気分が落ち込んでうつ病だと思っていったけどなんともなかった」などと話しておくほうがマシかもしれません。もしあなたに対して思慮のある判断をしてくれなさそうな会社、使い捨てを好むような会社なら、少し気を付けなければいけません。
あるいは、まずカウンセリングを行う、お医者さんに相談して保険を使わないというのも手です。
貴方がもし自分で働いて身寄りがないなら、精神的につらいのに仕事を失うという状況になることも考えられなくはありません。上手く立ち振る舞いましょう。
あるいは思い切って仕事を辞めて生きる場所を他に探すのも手です。
まとめ
心療内科と精神科は全く異なる医学的な区分ですが、
日本では精神科に対する偏見が強いために精神科も心療内科と名乗るようになったため、どちらでも同じような診察を受けることができるというのが現実です。
実際に日本の医大ではすべての科目を学んで国家試験もすべての科目を出題されるので知識は一応国が認めています。しかし実践経験は今のところ一つの病院や科目の研修をするため、経験に差があります。
ただし心療内科と精神科に関してはどちらの経験もある先生のほうが多いようです。
心療内科と精神科の違いを気にするときは、自分がお医者さんを選ぶときではなく、自分や他人がどんな病気なのかをはっきり理解し、他人への偏見、あるいは自分への劣等感を持つ必要がないことを知るために知っておいた方がいい知識です。