女性が仕事に参加できるようになるとともに、世の女性のライフスタイルは変化してきました。就職したばかりの20代では収入が安定しないこともあり、結婚してすぐに妊娠というわけにはいかないかもしれません。よって、高齢出産の方が増えています。
しかし、医学的な妊娠適齢期は昔から変わりません。高齢になるほど妊娠する確率は低下する上に、赤ちゃんが先天異常を持つ確率も高くなります。高齢出産のリスクと、子育てを考慮した本当の妊娠適齢期はいつなのか考えていきましょう。
妊娠適齢期はいつまで?
女性は50歳くらいまで生理がありますが、生理があるから妊娠できるというわけではないのです。医学的に妊娠が可能なのは、閉経の10年前まで、つまり40歳ほどと言われています。しかし、年齢を重ねるほど妊娠しづらくなるという事実があります。
なぜ生理があっても妊娠できないのか
そもそも生理(月経)とは、赤ちゃんを育てる胎盤をつくるためのしくみで、主に卵巣から分泌されるエストロゲンというホルモンの働きによるものです。妊娠しなかった場合に、胎盤のもととなる組織を体外に排出して、胎盤が古くなるのを防いでいます。卵巣は50歳くらいまで機能し、エストロゲンも分泌されているので、それまでは生理が起こります。
ところが、肝心の赤ちゃんは卵子から作られます。卵子は原子卵胞がもとになって作られますが、原子卵胞の数は毎日減り続けています。
高齢になるほど妊娠しにくい理由
・卵子を作る原子卵胞が減少するから
原子卵胞は、卵子を作るための袋のような組織で、女性が生まれる時にはすでに200万個ほど蓄えられています。ところが、思春期までには180万個ほどが消失するため、実際に妊娠する20代以降では約20万個しかありません。その後も1回の生理周期で1000個ほどが減少するといわれています。
・卵子の機能が低下するから
原子卵胞は新しく作られることはないため、いま体内にある原子卵胞は赤ちゃんの時に持っていたものと同じです。つまり、原子卵胞は女性の年齢と同じだけ年をとっているのです。古くなった原子卵胞が作り出した卵子は機能が低下しており、受精しても着床しやすかったり、流産しやすいと考えられています。
高齢出産になるほど赤ちゃんが先天異常になりやすい?
出生前診断センターによれば、35歳以上の出産では先天異常の確立が急激に高くなっています。
先天異常は命に関わることもある
先天異常(先天奇形)とは、赤ちゃんが生まれるまでにできる身体の異常です。心臓、神経系、消化器、生殖器、眼などがうまく成長せず、本来の機能を果たせないため、子どもが大きくなってからも生活に支障が出る場合があります。
日本で特に多いのは、左心室と右心室がつながってしまう心室中隔欠損症、唇や上顎にひびが入ってしまう口唇・口蓋裂、染色体の異常により様々な症状が起こるダウン症です。他にも様々な先天異常があります。
命に関わる場合、新生児集中治療室(NICU)での治療が必要になります。
・生活習慣の改善で防げる先天異常もある
先天異常の中でも、二分脊椎症は葉酸の欠乏によって起こるため、妊娠前からしっかりと葉酸を摂取していれば防ぐことができます。また、母親が痩せすぎであることも先天異常の要因と考えられています。
飲酒は先天奇形を引き起こすことが明らかになっています。また、喫煙は赤ちゃんに十分な栄養を送れなくなり、低体重になりやすいです。飲酒・喫煙ともに、妊娠中は控えるようにします。
このように、高齢出産以外にも先天異常の要因はあるので、リスクを最小限に抑えるよう努めましょう。
20代でも絶対に起こらないわけではない
先天異常は新生児全体の約5%に存在すると言われていますが、20代で出産した場合も、先天異常は一定の確率で起こります。「高齢出産だから危険」と極端に結論づけるのではなく、正しい認識を持つようにしましょう。
出生前診断の選択が精神的ストレスとなりやすい
出生前診断とは、胎児の状態を調べる検査です。エコー検査、血液検査、羊水検査など様々な検査があり、胎児に先天異常があるかどうか調べることができます。
より高齢の出産で赤ちゃんの先天異常が多いと分かっているので、「出生前診断をする」という選択もお母さんの視野に入ります。もし出生前診断をして、子どもに先天異常があると分かったとき、今度は「そのまま出産するか、中絶してしまうか」という考えが必然的に浮かんでくるでしょう。
倫理的な問題も重要ですが、事実として、赤ちゃんの先天異常が分かったために中絶を選択した方もいらっしゃいます。育児をするのはお母さん自身なので、誰も無責任に進言することはできません。どちらを選択しても、お母さんは心に負担を抱えやすいでしょう。
なお、出生前診断のうち、羊水検査が原因で流産してしまう確率は0.1~0.3%と言われています。高齢出産のリスクについては、高齢出産のリスクを紹介!出産する時の注意点とは?の記事を読んでおきましょう。
妊娠だけでなく、子育てにも適齢期がある
今まで述べた内容から、やはり妊娠は若い方が良いとばかり考えてしまいます。しかし、妊娠し出産することがゴールではなく、子育てのことを考えなければなりません。若ければ子育てが上手くいくかというと、そうではないですよね。
人生経験の長いお母さんの方が子育てが上手?
子育てでは様々な問題に直面します。子どもが完全にひとり立ちするまでの長い間、身体的・精神的、そして経済的なサポートが必要です。子どもを育て上げなければという責任感から心を病んでしまったり、子どもと上手く関係が取れないことに悩んでしまうお母さんも少なからずいらっしゃいます。
亀の甲より年の功という言葉の通り、年を重ねた女性の方が臨機応変に対処する力がついているので、子育てでも知恵を使えるでしょう。また、若いうちは持っていなかった包容力や、人を教育する力も、子育てに良い影響を与えるかもしれません。
また、より年齢の高いお母さんの方が、育児でノイローゼを発症しにくいとも報告されています。
妊娠適齢期は人それぞれという考え方もできる
「就職したばかりで、軌道に乗るまでは仕事に専念したい」という方もいれば、「子どもがたくさんほしいので、結婚したらすぐにでも妊娠したい」という方もいらっしゃるでしょう。
医学的に妊娠の適齢期が決まっているとはいえ、個人の事情によって必ずしもその通りにはいきません。40歳で健康な子どもを産んで、仕事をしながら育児を頑張っている方もいます。50歳で妊娠した方もニュースになりました。
まず、ライフスタイルで何を優先させたいのかを考え、子どもがほしいのならいつまでに妊娠するか、若いうちに人生設計を思い描くことが重要でしょう。
まとめ
医学的な妊娠の適齢期は確かに存在し、40歳以降は妊娠が難しくなります。さらに、35歳以上では赤ちゃんが先天異常を持つ確立が高まります。これは女性の身体のしくみによるものなので、変えることはできません。できるだけ早く妊娠することが、子どもが健康に生まれるために一番大事なことだと言えます。
しかしながら、育児について考えると、必ずしも若ければ良いというわけではありません。仕事で成果を出したいという方や、経済的にまだ余裕はないが将来生みたいという方は、いつ頃までに妊娠するか、見通しを立てておきましょう。
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