ビジネスシーンにおいて、インターネットの普及以降はビジネスメール(電子メール)のやりとりが社内外を問わず増えています。そのような中で、重要なメールを受け取る際には、受け取り確認メールを返信することも少なくないでしょう。また、契約書類や商品サンプルなどの荷物を受け取り、その到着確認メールやお礼メールを取引先担当者などに送信することもあるかもしれません。
このような場面で、ポイントとなる言葉が「受領(じゅりょう)する」という動詞です。そして、取引先担当者などが相手方の場合、「受領した」ことを敬語で表現するのがビジネスマナーです。
そこで今回は、「受領する」という言葉の敬語表現、それらのビジネスメールでの使い方などについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
「受領」の意味と類語
ビジネスシーンで頻繁に使われている「受領」という言葉ですが、改めて意味を確認する機会は少ないのではないでしょうか。
そこで、「受領する」という言葉の敬語表現やそれらのビジネスメールでの使い方について触れる前に、その前提となる「受領」の意味について、再確認しておきたいと思います。
「受領」の意味
「受領」という言葉の意味を複数の国語辞書で調べてみると、以下のような意味をもっていることが分かります。
- お金や物を受け取ること。
- 受けおさめること。
- (日本史用語)平安時代以後に地方へ赴任する行政官の呼称の一つ。
そもそも「受領」という言葉は、漢語表現の名詞です。「受領」という言葉を構成する「受」という漢字は「受ける・受けとる」という意味で、「領」という漢字は「うける」や「おさめる」と訓読みされて「受けとる・収める・支配する」といった意味を有します。
ですから、「受領」という言葉は、他人からお金や物を受け取って収めること、といった意味を持つわけです。
この点、「受領」という言葉は、何かを受け取ることを意味すると言っても、「愛」や「親切」といった抽象的概念には使用することができません。あくまでも「受領」は、物理的に具体性のある「物」を対象とする点には注意が必要です。
「受領する」の類語
このような「受領」という言葉の意味を踏まえて、「受領する」という動詞の類語・同義語を挙げると次の通りとなります。
- 受け取る
- 受納する
- 受け入れる
- 収める
このような類語の中でも、「受け取る」は「愛」や「親切」といった抽象的概念にも使用することができるので、「受領する」よりも使える場面が広くなります。
「受領する」という言葉の敬語表現
ビジネスシーンにおいては、取引先企業の担当者などが相手方の場合に敬語表現を用いるのがビジネスマナーです。
それでは、「受領する」という動詞を敬語表現にすると、どのようになるのでしょうか?そこで、「受領する」という動詞の敬語表現について、ご紹介したいと思います。
「受領する」の尊敬語・尊敬表現
尊敬語・尊敬表現とは、目上の人など自分が敬意を払う必要のある相手方が動作や行為をする際に、その相手方を高めることで敬意を示す言葉遣いです。そのため、尊敬語・尊敬表現が使われる文章の主語は目上の相手方となります。
基本的に動詞や助動詞などが語形変化したり、名詞に敬語の接頭語がつくことによって尊敬語・尊敬表現となります。「受領する」という動詞の場合、尊敬語・尊敬表現は「受領なさる」となります。
この点、「受領なさる」だと堅すぎる印象があるので、類語の「受け取る」を尊敬語・尊敬表現にした「お受け取りになる」と言い換える方法もあります。相手側との関係性によって、使い分けても良いでしょう。
「受領する」の謙譲語・謙譲表現
謙譲語・謙譲表現とは、相手方や聞き手の人に対して敬意を示すために、敢えて自分側の動作や行為についてへりくだった表現をする言葉遣いです。そのため、謙譲語・謙譲表現が使われる文章の主語は自分側(自分・身内・自分の所属組織など)となります。
基本的に動詞などが語形変化したり、名詞に敬語の接頭語がつくことによって謙譲語・謙譲表現となります。「受領する」という動詞の場合、謙譲語・謙譲表現は「受領いたす」となります。
また、類語の「受け取る」の謙譲表現である「拝受(はいじゅ)する」に言い換える方法もあります。「拝受」とは「つつしんで受けること・つつしんで受け取ること」を意味し、謙譲の意を含む漢語表現の名詞です。そして、この「拝受」を動詞化した言葉が「拝受する」であり、「受け取る」や「受領する」の謙譲表現にあたるのです。
一方で、類語の「受け取る」を謙譲語にした「お受け取りする」や「お受け取りいたす」は、日常会話でもビジネスシーンでも一般的ではなく使われることは少ないようです。
「受領する」の丁寧語・丁寧表現
丁寧語・丁寧表現とは、伝達内容を丁寧に表現することによって、相手方や聞き手に敬意を表する言葉遣いです。丁寧語・丁寧表現は、基本的に文末や語尾を「です」・「ます」・「ございます」とします。
ですから、「受領する」の丁寧表現は「受領します」となります。また、「受領する」の尊敬語・尊敬表現や謙譲語・謙譲表現と組み合わせることで、より丁寧な敬語表現となります。
ビジネスメールにおける「受領する」の敬語表現の使い方
それでは、このような「受領する」という動詞の敬語表現を踏まえた上で、どのように実際のビジネスシーンで使っていくべきなのでしょうか?特にインターネットの普及以降はビジネスメール(電子メール)のやりとりが社内外を問わず増えていますので、ビジネスメールでの使い方に焦点を当てつつ、「受領する」の敬語表現の具体的な使い方や注意点をご紹介したいと思います。
相手方との関係性に応じて使い分ける
荷物やメールなどの到着確認メールとして「受領した」ことを取引先担当者などの相手方に伝える場合、基本的には次のような形で伝えることになります。
- 「受領しました」(「受領する」の過去形+丁寧表現)
- 「受領いたしました」(「受領する」の謙譲語の過去形+丁寧表現)
この点、相手方とより深い関係性が築けているケース、例えば取引先担当者と長年にわたって付き合いがあり顔見知りであるケースでは、上記のような表現は堅すぎるかもしれません。そこで、次のような類語を使った表現をしても良いかもしれません。
- 「受け取りました」(「受け取る」の過去形+丁寧表現)
逆に、相手方に対して通常よりも敬意を示したいケース、例えば通常時はあまり接点のない取引先担当者の上司などと連絡を交わすケースでは、より丁寧かつ敬意をこめた表現をすべきでしょう。そこで、以下のような表現を用いることをお勧めします。
- 「拝受しました」(謙譲表現「拝受する」の過去形+丁寧表現)
- 「拝受いたしました」(謙譲表現「拝受する」の謙譲語の過去形+丁寧表現)
二重敬語について
前述の「拝受いたしました」については、二重敬語にあたり日本語の用法として間違いではないか、という指摘もあります。
二重敬語とは、尊敬表現+尊敬表現あるいは謙譲表現+謙譲表現というように、同じ種類の敬語を重ねて使うことを言います。この二重敬語は日本語の用法として誤っており、しかも場合によっては相手方の気分を損ねる可能性があります。その理由は、話し手が最大級にへりくだって敬意を示したつもりでも、相手方によっては慇懃無礼(いんぎんぶれい)な言い方に感じられるからです。
しかし、言葉の使い方は時代の変遷によっても変化を見せます。例えば、「拝見いたしました」や「拝読いたしました」という表現も二重敬語にあたりますが、現在では普通に使われるようになっています。
ですから、「拝受いたしました」についても、文法的には「拝受しました」が正しいものの、現在では完全に間違いとまでは言えないのです。
「いただきました」は、あまり適当ではない
「受領する」の類語である「受け取る」の謙譲語・謙譲表現として、「いただく」や「頂戴する」を挙げるケースがあるようです。
しかしながら、「いただく」や「頂戴する」は、「もらう」という動詞の謙譲語・謙譲表現です。たしかに、「もらう」という意味で「受け取る」を使う場合もありますが、「もらう」と「受領する」では意味が明らかに異なります。
ですから、荷物やメールなどの到着確認メールとして「受領した」ことを取引先担当者などの相手方に伝える場合には、「いただきました」は適当ではありません。
受領側は「査収」を使わない
相手側から荷物やメールが送付されてくる際に、例えば「〇〇の請求書ファイルをお送りいたします。ご査収ください。」といった形で、メッセージに「査収」が使われていることが多々あります。
そもそも「査収」とは、「よく確認して受け取る」・「よく調べて収める」という意味です。それゆえ、「ご査収ください」は「よく確認してお受け取りください」という意味なのです。
このような送り手からメッセージに、受け取る側が「査収いたしました」と返信するのはチグハグです。この場合「請求書ファイルを受領いたしました。内容を確認させていただき、改めてご連絡もうしあげます。」などと到着確認メールを返す書き方がベターです。
まとめ
いかがでしたか?受領する」という言葉の敬語表現、それらのビジネスメールでの使い方などについて説明してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?
ビジネスシーンにおいて、インターネットの普及以降はビジネスメールのやりとりが社内外を問わず増えており、荷物やメールなどをを受け取る際には、受け取り確認メールを返信することが少なくありません。
このような場面で適切に返信するには、「受領する」という動詞とその敬語表現が非常に大切なポイントになります。ぜひとも本記事などを参考にして、日頃からお世話になっている取引先などとの間に適切なメールコミュニケーションを実現してください。
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