「ご清聴ありがとうございました」の「清聴」と「静聴」の違いや意味、使い方は?

ビジネスシーンにおいては、多くの人を前にしてプレゼンテーションを行わなければならない場面が、少なからずあるのではないでしょうか。また、時には友人や会社の同僚などの結婚式などに参加して、スピーチを頼まれる人もいるかもしれません。さらには、社会人でなくとも、大学の研究発表会などで発表者として自らの研究内容の説明をするケースもあるでしょう。

このようなプレゼン発表やスピーチなどにおける最後に、「ご清聴ありがとうございました」という締めのフレーズを、誰しも1度や2度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

そんな「ご清聴ありがとうございました」の「ご清聴」という言葉について、混同しやすいのが「ご静聴」という言葉です。そこで今回は、「ご清聴」の意味を再確認した上で、「ご清聴」と「ご静聴」の違い、「ご清聴」の具体的例文と言い換え表現などについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。

「ご清聴」の意味について

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「ご清聴ありがとうございました」。たしかに、プレゼンやスピーチの最後で良く耳するフレーズですよね。とはいえ、そもそも「ご清聴」という言葉は、どのような意味なのでしょうか?

「ご清聴」と「ご静聴」の違いについて理解するには、まず「ご清聴」という言葉の意味を知らなくてはなりません。そこで、「ご清聴」という言葉の意味について、ご紹介したいと思います。

「清聴」の意味

「清聴」という言葉の意味について、いくつかの国語辞書を調べてみると、次のような意味があることが分かります。

  • 清らかに聞こえること。
  • 他人が自分の話を聞いてくれることを敬って言う言葉。

「ご清聴」の意味

このように「清聴」という言葉には、二つの意味があります。そして、「清聴」に敬語表現の接頭語「ご」を組み合わせた「ご清聴」という言葉では、他人が自分の話を聞いてくれることを敬って言う意味で使われます。

ですから、「ご清聴」という言葉は、自分の話を聞いてくれる人たちに対して、「自分の話を聞いてくれること」に敬意を表する尊敬表現なのです。

尊敬表現とは?

尊敬表現は尊敬語とも言い、動作の主体が話し手である自分よりも上位の存在である場合に、話し手が自分から敬意を表する言葉遣いのことです。

別な説明をすると、目上の人など自分が敬意を払うべき相手方が動作や行為をする場合に、その相手方を「立てる」ために敬意を込めた表現方法が尊敬表現であり尊敬語だと言えます。

尊敬表現は主に動詞や助動詞の語形変化によって敬意の意味を込めますが、名詞に尊敬の接頭語「お」や「ご」をつけることによっても尊敬表現となります。

「ご清聴ありがとうございました」

このような「ご清聴」の意味を踏まえると、「ご清聴ありがとうございました」というフレーズは、プレゼンやスピーチなど人前で何らかの話をする場面において、自分の話を聞いてくれた人たち(聴衆)に対して感謝や御礼を伝える表現だと言えるでしょう。

そして、「ご清聴ありがとうございました」というフレーズは、プレゼンやスピーチなど人前で何らかの話をする場面における、締めの言葉として常套句・決まり文句だとも言えるのです。

「ご清聴」と「ご静聴」の違いについて

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それでは、「ご清聴」という言葉と「ご静聴」という言葉は、いずれも「ごせいちょう」と読みますが、どのような違いがあるのでしょうか?「ご静聴」という言葉の意味を再確認した上で、「ご清聴」と「ご静聴」の違いについて、ご紹介したいと思います。

「静聴」の意味

「静聴」という言葉の意味について、いくつかの国語辞書を調べてみると、次のような意味があることが分かります。

・他人の話などを静かに聞くこと。

「ご静聴」の意味

このように「静聴」という言葉は、他人の話などを静かに聞くことを意味します。

ですから、「静聴」に敬語表現の接頭語「ご」を組み合わせた「ご静聴」という言葉は、他人の話などを静かに聞くことを丁寧な言葉遣いにしたものと言えます。

例えば、研究会や講演会といった場面で、演壇で発表者などが発表やスピーチをしようとする直前に、司会者が参加者や聴衆に向かって「ご静聴願います」と言って注意喚起するために使われます。

「ご清聴」と「ご静聴」の違い

「ご清聴」という言葉と「ご静聴」という言葉は、いずれも「ごせいちょう」と読みます。

しかしながら、ここまでの説明からも分かる通り、「ご清聴」と「ご静聴」は使う場面が異なるのですね。

「ご清聴」は基本的に「ご清聴ありがとうございました」というフレーズで用いられ、発表者・スピーカーと聞き手・聴衆という関係性において、発表者が聴衆に対して自分の話を聞いてくれたことへの感謝や御礼を伝える表現です。簡単に言ってしまうと、「私の話を聞いてくださって、ありがとうございます」という意味です。

これに対して、「ご静聴」は「ご静聴願います」というフレーズで用いられることが多く、発表者と聴衆という関係とは別に第三者的な立場で聴衆に対して発表者の話を聞くように注意喚起をする表現です。こちらも簡単に言ってしまうと、「聴衆の皆さん、発表者の話を静かに聞いてください」という意味です。

このように「ご清聴」と「ご静聴」は同音異義語であり、使われる場面が異なります。しかし、前述のように「ご清聴」と「ご静聴」は読み方が同じであり、しかも「ご清聴」と「ご静聴」はどちらも書き言葉として用いられる機会が少ない言葉でもあります。そのため、漢字を間違えてしまい混同しやすいのです。

そして、頻繁にパワーポイントなどのプレゼンソフトを利用する人は、最終スライド(ページ)に「ご清聴ありがとうございました」というフレーズを挿入するケースもあるでしょうから、漢字の表記には注意しましょう。

ですから、改めて「ご清聴」と「ご静聴」について、漢字の違い、使い方や使われる場面の違い、意味に込められた気持ちの違い、などを意識しておく必要があるでしょう。

「ご清聴」の具体的例文と言い換え表現について

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ここまでの説明で、「ご清聴」と「ご静聴」の違いについて、ある程度はご理解いただけたものと思います。そこで、最後に「ご清聴」の具体的例文をご紹介するとともに、「ご清聴ありがとうございました」の言い換え表現についもご紹介したいと思います。

「ご清聴ありがとうございました」の言い換え表現

「ご清聴ありがとうございました」というフレーズは、プレゼンやスピーチなど人前で何らかの話をする場面における、締めの言葉として常套句・決まり文句となっています。このような「ご清聴ありがとうございました」というフレーズの言い換え表現を、いくつかご紹介したいと思います。

  • 「私からの発表は以上になります。ありがとうございました」
  • 「最後まで私の拙い話をお聞きいただき、ありがとうございました」
  • 「長時間にわたり話を聞いていただき、ありがとうございました」
  • 「ご清聴を賜り、深く感謝申し上げます」

このように「ご清聴ありがとうございました」というフレーズの言い換え表現はいくつか考えられるのですが、いずれもプレゼンやスピーチを聞いてくれた人への感謝や御礼を伝える点に変わりはありません。そのため、締めの挨拶の表現にこだわるよりも、感謝や御礼の気持ちを心から表現することの方が大切かもしれませんね。

類語「傾聴」との違い

「清聴」の類語に「傾聴」という言葉があります。どちらも、「人の話を聞くこと・人の話に耳を傾けること」を意味します。

しかしながら、「清聴」と「傾聴」には日本語として使われる場面・意味において、決定的な違いがあります。その違いのポイントは、「清聴」は話し手が「聞くこと」を表現するものであり、「傾聴」は聞き手(聴き手)が「聞くこと」を表現するものである、という点にあります。もう少し補足説明すると、「清聴」は発表者・スピーカーから聞き手・聴衆に向かって使われる言葉であり、「傾聴」は聞き手・聴衆から発表者・スピーカーに向かって使われる言葉なのです。

ですから、プレゼンやスピーチの締めの言葉として、「ご傾聴ありがとうございました」と言うことは日本語として誤りになるので注意が必要です。

「ご清聴」の具体的例文

「これで、弊社新製品のプレゼンテーションは終了となります。本日は、私共のプレゼンテーションに足をお運びいただき誠にありがとうございました。

質問等につきましては、別途質疑応答の時間を設けておりますので、その際に各担当者にお尋ねくださいますようお願い申し上げます。

本日は、至らぬ点もあったかと存じますが、最後までご清聴を賜り誠にありがとうございました。」

まとめ

いかがでしたか?「ご清聴」の意味を再確認した上で、「ご清聴」と「ご静聴」の違い、「ご清聴」の具体的例文と言い換え表現などについて説明してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?

ビジネスシーンにおいては、多くの人を前にしてプレゼンテーションを行わなければならない場面が少なからずあるでしょう。そのようなプレゼン発表やスピーチなどにおける最後に、「ご清聴ありがとうございました」という締めのフレーズがあるだけで、プレゼンやスピーチが聞き手に与える印象は大きく変わります。

そして、その締めのフレーズにおいて注意しなければならないのが、「ご清聴」と「ご静聴」を混同してはならないことなのです。

ぜひ本記事などを参考にして、今一度「ご清聴」と「ご静聴」の違いについて確認することで、聞き手に好印象を与えられるプレゼンやスピーチを実現していただければ幸いです。

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