ビジネスシーンにおいて日頃は意識しなくとも、非常に重要な存在であるのが事務所・オフィスの場所です。そのため、頻繁に発生するわけではありませんが、事務所・オフィスの移転はビジネスにつきものと言えるでしょう。例えば、より便利な立地の事務所・オフィスへの移転、業務拡大のための事務所・オフィス移転や新営業所開設といったケースです。
事務所・オフィスを移転するとなると、物件の選定、事務所・オフィスのレイアウト決定や什器の選定、引っ越しの手配など、通常業務に加えて様々な仕事が発生します。その中でも、特に忘れてはならないのが取引先企業や顧客への「事務所移転のお知らせ」でしょう。
そこで今回は、事務所・オフィスの移転に伴う取引先企業や顧客に対しての、事務所・オフィス移転のお知らせ・案内をする通知方法について、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
「移転のお知らせ」を通知するタイミング
そもそも会社の事務所・オフィスの移転にあたり、どのタイミングで取引先企業や顧客に移転の通知や案内をすれば良いのでしょうか?
事務所・オフィスを移転するとなると通常業務に加えて様々な仕事が発生しますが、その忙しさにかまけて移転の通知や案内を怠ると、会社の信用問題にも関わります。そこで、まずは「移転のお知らせ」を通知・案内するタイミングについて、ご紹介したいと思います。
「事務所移転のお知らせ」について
「事務所移転のお知らせ」とは、取引先企業や顧客に対して自社の事務所・オフィスなどが移転し住所が変更となったことを知らせるための書面であり、数多く存在するビジネス文書の一つと言えます。
事務所・オフィスなどを移転すると、取引先企業においては請求書や納品書などの作成の元となる取引台帳や基幹システムに登録された所在地情報を変更しなければなりません。また、顧客が自社の営業所や店舗へ訪れる業態の会社では、顧客に対して新営業所や新店舗の所在地を周知徹底する必要があります。ですから、自社の事務所・オフィスなどを移転した場合には、必ず取引先企業や顧客に対して通知・案内しなければなりません。
ちなみに、「事務所移転のお知らせ」は絶対的な名称ではなく、次のように様々な呼び方をされます。
- 「オフィス移転のお知らせ」
- 「事務所移転の案内状」、「オフィス移転のご案内」
- 「事務所移転の挨拶状」、「オフィス移転のご挨拶」
「事務所移転のお知らせ」を通知するタイミング
「事務所移転のお知らせ」を取引先企業や顧客に対して通知する適切なタイミングは、新たな事務所・オフィスなどでの業務開始日・営業開始日の概ね一ヶ月前でしょう。
もう少し詳しく言うと、取引先企業や顧客の手元に移転の通知や案内状が届くのが、概ね一ヶ月前である必要があります。というのも、前述のように取引先企業においては請求書や納品書などの作成の元となる取引台帳や基幹システムに登録された所在地情報を変更しなければならないからです。取引先企業における変更作業についての配慮が必要になるわけです。
このように取引先企業や顧客の手元に移転の通知や案内状が一ヶ月前までに届くようにするには、新たな事務所・オフィスなどでの業務開始日・営業開始日の概ね二ヶ月前から準備をする必要があります。というのも、ハガキによる郵送での通知の場合、原案作成・印刷の依頼・発送という一連の手続きを考慮すると、少なくとも一ヶ月程度は期間を見込んでおく必要があるからです。
「移転のお知らせ」を通知する手段
それでは、どのような手段で取引先企業や顧客に対して移転の通知や案内をすれば良いのでしょうか?
そこで、次に「移転のお知らせ」を通知・案内する手段について、ご紹介したいと思います。
ハガキや封書・手紙が基本
「事務所移転のお知らせ」を取引先企業や顧客に対して通知する手段は、ハガキや封書・手紙などの郵送が基本であり一般的です。
たしかに、テクノロジーの発達によって現代の世の中は、ハガキや封書・手紙の他にも様々な連絡手段が存在します。例えば、メールで通知したほうが手間も費用もかかりませんから合理的です。
しかしながら、ビジネスシーンにおいては合理的に利益追求をする一方で、会社と会社の付き合いという側面では形式や儀礼を大事にすることもあります。また、ビジネスシーンではトラブルを未然に防ぐという意味でも、書面・文書で証拠を残すことが徹底されます。
ですから、会社という法人の所在について変更がある場合、正式にはハガキや封書・手紙などの郵送で通知・案内するのです。
その他の通知・案内の手段
このように「事務所移転のお知らせ」は、ハガキや封書・手紙で通知・案内するのが基本であり正式な方法です。
とはいえ、通知・案内する相手が大きな会社になると、ハガキや封書・手紙で移転の通知をしても、それがすぐに会社内の末端まで共有されるには無理があります。
そこで、実務担当者の間では電話・FAX・メールなど他の手段も使って、実務に支障が出ないように担当者が自社の移転の事実を相手方に対して周知していくことになります。また、数多くの顧客を抱える会社・企業の場合は、自社のホームページ(コーポレート・サイト)にも「事務所移転のお知らせ」を掲載することにより、通知・案内に努めます。
ですから、「事務所移転のお知らせ」は正式にはハガキや封書・手紙で通知・案内するものの、電話・FAX・メールなどの手段を補完的に用いることにより広く周知を図ることになるわけです。
「移転のお知らせ」の具体的な例文・文例
それでは、ここまでの説明を踏まえた上で、会社の事務所・オフィスの移転にあたり、どのように「移転のお知らせ」の文面を作成すべきなのでしょうか?
そこで、「移転のお知らせ」の具体的な例文・文例を、いくつかご紹介したいと思います。
ハガキや封書・手紙のケース
≪事務所移転のお知らせ≫
拝啓 新緑の候 貴社におかれましては益々ご隆盛のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り誠にありがたく厚く御礼申し上げます。
さて、このたび平成〇〇年〇〇月〇〇日より下記の住所へ弊社事務所を移転することとなりましたので謹んでご案内申し上げます。
これを機に社員一同さらに一層の努力をいたし、日頃のご愛顧に報いていく所存です。
今後とも変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
まずは略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます。
敬具
平成〇〇年〇〇月 吉日
新住所:〒123-4567
□□県□□市□□町1-2-3 □□ビル10階
電話番号:098-765-4321
FAX番号:098-765-4322
株式会社△△△△
代表取締役社長 △△ △△
メールのケース
件名:事務所移転のお知らせ
◇◇◇株式会社 ◇◇部
◇◇様
いつも大変お世話になっております。
株式会社△△△△、営業部の△△でございます。
さて、このたび平成〇〇年〇月〇日より弊社事務所が下記の住所に移転いたしますのでご案内申し上げます。
これを機に更なる社業の充実を図り、皆様のご期待に添うよう努力をしてまいる所存です。
事務所移転後も格別のご支援ご指導を賜りますようお願い申し上げます。
まずは略式ながらメールにてご連絡申し上げます。
新住所:〒123-4567
□□県□□市□□町1-2-3 □□ビル10階
電話番号:098-765-4321
FAX番号:098-765-4322
「移転のお知らせ」の書き方のポイント
このように基本例文をご紹介しましたが、「移転のお知らせ」の書き方について補足する形で注意点やポイントをご紹介したいと思います。
頭語と結語、時候の挨拶
頭語とは、手紙の文章の書き出しにあたる言葉です。「拝啓」が最も有名ですが、「謹啓」も比較的使われます。結語とは、手紙の文章の結びにあたる言葉であり、基本的に頭語とセットで使われます。「敬具」が最も有名です。
時候の挨拶は、手紙の文章の最初に添える礼儀文のことで、「〇〇の候」がこれにあたります。時候の挨拶に続いて、日頃の取引などについて御礼を述べるのが通常です。
ハガキや封書・手紙による移転通知は正式なビジネス文書となりますので、頭語と結語や時候の挨拶が必須となります。一方でメールの場合は、前述のように補完的に実務担当者間で交わすため、頭語と結語や時候の挨拶は無くてもかまいません。
移転の案内
次に、事務所・オフィスなどの移転の事実と移転日時を明示します。住所の他に、電話番号変更なども伴う場合は、その旨の注意書きなども添えると親切です。また、紙面に余裕があれば、簡単な地図を掲載すると、より分かりやすくなるでしょう。
所信表明と結びの挨拶
最後に形式的ですが、所信表明の一文を入れ、結びの挨拶として今後の愛顧を願う一文も入れます。こちらは、ハガキや封書・手紙でもメールでも記載するのがビジネスマナーとされていますので、欠かさないようにしましょう。
コーポレート・サイトやFAXでの対応
コーポレート・サイトやFAXでの対応は、基本的にハガキや封書・手紙の文書に準じます。ハガキや封書・手紙の場合と同じ文書でFAXしたり、PDF化してサイトにアップロードすると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?事務所・オフィスの移転に伴う取引先企業や顧客に対しての、事務所・オフィス移転のお知らせ・案内をする通知方法について説明してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?
事務所・オフィスの移転は何度も経験することではありませんから、「事務所移転のお知らせ」の作成や発送に慣れないのも当然でしょう。しかも、事務所・オフィスを移転するとなると、物件の選定、事務所・オフィスのレイアウト決定や什器の選定、引っ越しの手配など、通常業務に加えて様々な仕事が発生しますから尚更バタバタとしがちです。
とはいえ、難しく考えすぎることはありません。文面の作成・印刷・発送の日程管理とタスク管理さえしっかりとしておけば、忙しい仲でも十分に進めることが可能です。本記事などを参考にして、しっかりと準備をして下さいね。