足に痛みがあると、日常生活に支障をきたしてしまうことがよくあります。特に動いていなくても座っている時や寝ている時にまで痛みが生じる人もいます。太ももは筋肉の中でも最も大きい物であり、歩行を行うためには必ず動かさなくてはいけない部分です。
そんな辛い足の痛み。中でも太ももに痛みを感じる場合、どんな原因が考えられるのでしょうか?
今回は太ももの痛みが伴う病気やその症状、治療方法について詳しくまとめてみました。
この記事の目次
太ももが痛い原因
太ももに痛みがある時に考えられる原因には、どのようなことが考えられるのか見ていきましょう。
筋肉痛
最もよくあるのは太ももの筋肉痛です。
激しい運動をした後や筋肉トレーニング後など、太ももの筋肉に大きな負荷がかかった後に筋肉痛が生じます。
■症状
筋肉痛の痛みとしては、通常太ももの中でも特定の箇所に痛みが集中している場合が多いようです。
また、動かしていない安静時に痛みを感じることはほとんど無く、動かして筋肉に負担をかけた際に損傷筋部に痛みを感じます。
特に太ももの後ろ側や前側の筋肉どちらかが痛くなる事が多いでしょう。短距離走などのトレーニングの場合は後ろ側、登山や登りや下り坂などでの長距離のトレーニングや運動の後では前側の太ももの筋肉をよく使うので、その部分が筋肉痛になります。
■原因
先に挙げた通り、筋肉に大きな負荷をかける運動をした場合に起こります。
通常、運動をした直後ではなく翌日から翌々日頃に痛みが現れます。
負荷によって筋肉の線維が壊れ炎症を起こしたり、疲労物質である乳酸が溜まることで痛みが生じると言われていますが、はっきりとした原因はまだ解明されていないようです。筋肉痛が起こる原因は諸説言われていますが、最近は筋肉繊維が壊れることで発生し、それを修復するために痛みが発生しているという説が主流のようです。
■治療
筋肉痛の場合は特に治療を行う必要はありません。筋肉を休ませれば自然治癒していきます。
早く回復させたい場合は、休ませる他に”タンパク質””ビタミンB群””亜鉛”といった栄養素を摂取することで、溜まった乳酸を排出してくれる働きをします。
筋肉を大きくしたかったり、効率よく筋肉を成長させるには筋肉の超回復を行うことが重要になります。超回復はトレーニングを3日置きや4日置きに行うことで効果を発揮します。筋肉をしっかり回復させてからトレーニングをすることで筋肉の成長が早くなります。
詳しくは、筋肉痛から回復する4つの方法と4つの予防方法!を読んでおきましょう。
・タンパク質の多い食べ物
鶏のささみ、牛肉、豚肉、卵、大豆製品など
・ビタミンB群の多い食べ物
レバー、赤身魚、うなぎなど
・亜鉛の多い食べ物
レバー、カキ、大豆製品など
これらの食材を出来ればトレーニングなどを行った後1時間以内に摂取すると効果は上がります。消費したエネルギーを体が吸収しようと筋肉に働きかけるため、すぐに栄養補給することで筋肉に栄養を届けることが出来ます。
肉離れ
筋肉痛に続いて、運動をしている人についてまわるのが肉離れです。
「肉離れによって練習が出来ない、大会に出場出来ない…」といったことを経験した人や耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。大腿部挫傷や下腿部挫傷とも言われます。
■症状
多くの場合、太ももの後ろ側に発症します。
もちろん前面に発症する場合もありますが、前面の筋肉は非常に強い筋肉組織で出来ている為、後ろ側よりも肉離れを起こしにくいのです。
軽症の場合は痛みはあるものの、歩行などの軽い動きは可能な場合が多いようです。程度が重くなるにつれて自力歩行が困難となったり、かなり激しい痛みを伴います。
また発症後2〜3日後に強い炎症反応を起こします。程度によって痛みの続く期間は違いますが軽度〜中度の場合は1週間ほどで痛みの回復が見られるでしょう。
詳しくは、肉離れの痛みの特徴について!期間や治療方法は?を読んでおきましょう。
■原因
瞬間的な筋肉の収縮が過度に行われた時、筋細胞や筋膜が急激に引き延ばされ、部分断裂をしてしまうことが原因です。
筋肉や骨格が完成した高校生以上から発症が見られ、筋肉の柔軟性が低下している場合にも発症しやすい傾向にあります。
逆に筋肉の柔軟性が高い幼少期の子供は、筋肉量が少なく強力な筋収縮を行うだけの筋肉が備わっていないので発生しにくい傾向があります。また、20代を超えると、筋肉の柔軟性が徐々に衰えてくるので、肉離れになりやすくなります。
■治療
痛みが生じたらただちに運動を中止し、まずは安静にしましょう。
それと同時に氷を入れた袋を患部に当てるなどのアイシングを行えると悪化を抑制することができます。
冷やす目的は、部分断裂によって内出血を起こしていることが大半である為、冷やすことで血流が悪くなり、この内出血を抑えることが出来るからです。
あとは出来るだけ動かさないようにして、整形外科を受診しましょう。内出血が治まっていれば、今度は温める温熱療法や固定、圧迫の処置が行われます。
よほどの重症でない限り、手術は行われません。
もしスポーツなどを行っている場合気になるのはどのくらいの期間で復帰できるのかということですが、軽度の場合は2週間程度、中度の場合は1〜2ヶ月程度、重度の場合は3ヶ月以上の治療とリハビリの期間が必要になります。
坐骨神経痛
太ももに痛みがある時、筋肉の損傷の他にもう一つ考えられる大きな原因に坐骨神経痛があります。足部全体に広がり痛みを発生させる神経痛です。
■症状
特定の箇所に集中して痛む筋肉痛に対して、坐骨神経痛の場合ははっきりと痛みのある箇所が分かりにくく、太ももだけではなくお尻から足先にかけて鋭い痛みやしびれを感じることが多いです。
状態によっては太ももだけに痛みが出る場合もありますが、”しびれたような痛み”を伴うかどうかが大きな特徴です。
また、筋肉を動かしていない安静時にも痛みが生じ、何週間、何か月と痛みが続きます。
■原因
坐骨神経とは、腰から爪先まで伸びる末梢神経で、圧迫されるなどの刺激を受けることによって痛みが生じます。
坐骨神経痛を引き起こす原因としては、主に以下の疾患を抱えている場合が多いようです。
・腰椎椎間板ヘルニア
背骨を構成している椎間という骨があるのですが、この椎間と椎間の間には椎間板と呼ばれる軟骨があり、クッションの役割をしています。
この椎間板が老化や姿勢の歪み、日常での動作によって飛び出してしまう状態を腰椎椎間板ヘルニアと言い、飛び出した椎間板が神経を圧迫することで坐骨神経痛を引き起こします。
・腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
背骨には神経の通路である脊柱管という管があるのですが、生まれつきや加齢に伴って脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されて痛みが生じる病気です。
・変形性腰椎症
老化現象の一つとして、椎間板や関節、じん帯が劣化したり、椎間板の水分が減少して弾力性が無くなり変形することで発症します。
この変形によって神経が圧迫され、坐骨神経痛を引き起こします。
■治療
まずは重い物を持ったり、長時間座り続けるといったことを避け、負担を和らげます。
症状にあわせて薬物療法や牽引療法、温熱療法などが行われますが、痛みがひどい場合にはブロック注射によって痛みを抑えます。
また、椎間板ヘルニアの場合は手術によって治療を行うこともあります。
変形関節症
太ももの付け根の部分に痛みが発生する場合に考えられる症状です。特に歩行や走るなどの活動をよく行う人に発生しやすいものです。
・症状
股関節の関節部分の軟骨が長時間の歩行などの活動によってすり減ったり炎症を起こすことによって形が変形し痛みを発症します。太ももの付け根、鼠径部の当たりに痛みが集中します。
発症初期は股関節のこわばりや、違和感、歩行時に足を上げにくいなどの症状から始まります。次第にその違和感が痛みに変わり、徐々に痛みが強くなります。歩いていないときでも痛みを感じる場合もあります。
症状が悪化すると日常生活に大きく支障をきたす痛みへと変わり、太ももの可動域はどんどん狭くなり歩行が困難な状態にまで発展します。
・原因
原因は一次性のものと、二次性のものに分けられます。一次性のものは原因が明確にならない場合が多いです。軟骨の栄養不足による欠損や歩行などによる負荷が原因になる可能性があります。また老化による影響も大きいと考えられます。
二次性のものは先天性の軟骨の形の変形や発達の過程で起こる関節の脱臼、リウマチや痛風などの他の病気から関連して起こる場合です。
二次性での発症の方が多く患者が見られます。若い人よりも老人に多いもので、なかでも女性に発生しやすい傾向があります。関節痛などの症状が女性に出やすい理由の一つに、筋肉量が少ないことが挙げられます。また、女性ホルモンのバランスの関係で骨が弱くなりやすいことも関係しています。特に50代を過ぎた女性は関節の症状に悩まされやすいので注意が必要です。
・治療方法
変形性関節症の治療では、手術する場合と温熱療法や負担を減らすことで症状を軽減させる保存治療の二つの方法で治療が行われます。とりわけ、早めに見つかった症状の場合は手術を行わなくても治療を行うことが出来ます。
マッサージや筋力トレーニング、ストレッチなどでリハビリが行われます。
手術では関節や軟骨を削って動きを滑らかにする関節形成手術と、人工の軟骨を入れて関節を固定する人工関節手術の二つがあります。特に老人の場合は軟骨の摩耗が大きい場合が多いので人工関節手術の施術となる可能性が高いでしょう。
出来るだけ早めの治療を始めることが重要になります。保険診療が出来るものなので早めに病院での治療を受けましょう。
きついズボン
固い生地のズボンやスキニーパンツなどのきついズボンを穿いていることで、太ももに痛みが生じることもあります。
ズボンだけではなく、下着やベルトなどで締め付けすぎている場合にも起こりますが、腰や足を過剰に締め付けることで腰椎に負荷がかかり、骨盤の歪みや神経を圧迫してしまう為です。
また、生地が擦れて摩擦によって皮膚を傷めている可能性もあります。
穿いてはいけない訳ではありませんが、帰宅したら楽なズボンに穿き替えたり、締め付けをゆるめて血行を促し、筋肉の緊張を緩和させてあげる必要があります。
痛みが出ている場合は出来るだけ原因となっているズボンを穿くことはお休みしてあげて下さいね。
妊娠
女性の場合ですが、妊娠の症状として太ももの痛みが現れることがあります。妊娠すると、まだお腹の大きくない初期段階であっても体の中はどんどん変化していきます。
子宮が大きくなっていき、骨盤を広げる為に”リラキシン”と呼ばれるホルモンが分泌されるのですが、これには骨盤周辺の筋肉を緩める働きがあります。すると筋肉が緩み過ぎてしまい、骨盤が歪みやすくなるのです。
骨盤が歪んだり子宮が大きくなることで腰や神経が圧迫されて痛みが生じます。
対策としては、医師に相談の上、許可が出れば妊婦さん用の骨盤矯正ベルトをしたり、軽いストレッチやウォーキングなどを行って骨盤を安定させていきましょう。
カルシウムを積極的に摂ることもお勧めです。
太ももの痛み予防法
太ももの痛みを起こさない為の改善・予防方法を幾つかご紹介していきます。
運動後はクールダウン
痛みを予防する為には運動直後にしっかりクールダウンを行うことが最も重要になります。
肉離れの治療法でも述べましたが、運動直後は乳酸が溜まり筋肉が熱くなっていますので、アイシングをして冷やすことがその後の痛みの予防や悪化防止に繋がります。
また、アイシングと同様にストレッチもしっかり行いましょう。
■太もものストレッチ
- 壁や何かにつかまって片足で立つ。
- 上げている方の足の甲を片手でつかみ、お尻の方に引き寄せて太ももの前面をよく伸ばす。
- 左右交互に数回繰り返す。
■股関節のストレッチ
- あぐらの体勢で両足の裏を合わせる。
- 両足の爪先を両手でつかむ。
- そのまま上体を前に倒し、股関節を左右に伸ばす。
これらは準備運動として運動前にも行うことで、筋肉や関節が柔らかくなり、ケガの予防にもなります。
姿勢矯正
普段の姿勢が悪いと、骨が歪み痛みを生じさせる原因になります。
片足に重心をかけたり、座っている時に足を組んだり、猫背になっている人は注意しましょう。
■座り姿勢
- 椅子に深く腰をかける。
- 膝の角度は90度か少し前に出す。
- パソコン画面は下向きになるようにする。
■立ち姿勢
- 左右の肩の高さは水平にする。
- 頭、肩、お尻、かかとは一直線にする。
- 肩甲骨を軽く寄せる。
- 肩の力を抜く。
- 軽く顎を引く。
- 下腹部を引き締めてお尻を突き出さない。
■歩き方
- 顔は真っすぐ正面を見る。
- ひじを引くことを意識する。
- 胸を開いて背筋は伸ばす。
- 着地時、ひざを曲げない。
腹筋、背筋を鍛える
日頃から筋肉を鍛えておくと、筋肉や関節、骨の劣化を防ぐことができます。
中でも腹筋と背筋を鍛えると、体の中心部である体幹が強くなり、正しい姿勢を保つことが出来るようになります。
■腹筋の方法
- 仰向けになり、両腕を頭の後ろにまわす。
- 膝を曲げて顎を引き、上体を少し起こす。
- 5秒静止する。
■背筋の方法
- うつ伏せになり、肘をつく。
- 上体を少し反らす。
- 5秒静止する。
腹筋、背筋それぞれを1日5~10回行うようにして下さい。体が痛い時は無理をしないようにしましょう。
まとめ
太ももには体の中で最も大きい筋肉と、もっとも太くて長い坐骨神経が通っている場所です。
その為、どのような原因であれ痛みが強く出る場合が多く、日常生活に支障が出る程の苦痛を伴うことが少なくありません。
また、症状がいずれも似ていることから、原因を自己判断すると思わぬ悪化を招くことにも繋がります。
それぞれの特徴を踏まえ、早期に適切な処置を行うことによって、軽症で済む場合も多くあります。
特に判断できないような痛み、長期間痛みが続くような場合は整形外科を受診し、専門医に診断をしてもらいましょう。
また、日常のストレッチや姿勢矯正などを行うことを心掛け、痛みを起こさないように予防することも大切です。
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