皆さんに最も恐ろしい病気は何だと思うか質問したとしたら、癌は必ず挙がると思います。映画やドラマなどで登場人物が死んでしまう原因になることも多く、とにかく死に至るイメージの強い癌ですが、定期的な検診を受けるなどして極力早期発見できるよう努めていることも多いかと思われます。
そして、そういった方々は主に内蔵を検査しているかもしれません。しかし癌の中にはほくろかと思っていたら癌だったという例があることを知っていますか。今回は皮膚癌のひとつであるメラノーマについて紹介します。
この記事の目次
メラノーマとは?皮膚の病気でありながら死亡率高し!
まず、メラノーマという病気そのものについて紹介します。
メラノーマってどんな病気?
メラノーマは、正式には悪性黒色腫と言う皮膚がんです。一般的には、ほくろの癌と考えられていますが、メラニン色素を生成する「メラノサイト」というメラニン細胞が悪性化したものと考えられています。
ほくろから発症する可能性も若干高めなのですが、身体中どこでも日焼けの可能性があるようにメラノサイトも全身に存在しているため、全身どこにでもできる可能性があります。
ほくろはほとんどが1mmの大きさを超えるものは多くありません。がメラノーマは3mmを超える大きさの皮膚の黒い斑点ができるため、3mmを超える場合は一度検査を受けたほうが良いかもしれません。
検査費用は自己負担額だけで言えば1つのほくろを検査するので2〜300円程の負担になります。初診料など含めればもう少し高くなりますが、それほどお金の掛かる検査ではないので時間がある時に皮膚科での検査を受けることをおすすめします。
30代以降でのメラノーマの発症の確率はさらに大きくなるので、30歳を越えての大きな黒斑が確認された場合は早めに検診を受けましょう。
出来やすい場所
特に発症しやすい場所としては足の裏や手のひらが挙げられます。どこにでも発症する皮膚がんなのですが日本人での統計でいうと約30%が手のひらと足の裏の部分に集中しています。
ほくろに非常に似ていますが、キレイな円を描くほくろと違って円の縁がギザギザであったり歪な形に皮膚が黒く染まるのが特徴です。色が茶色からだんだん濃い黒へと変化し、大きさも徐々に大きくなると言う特徴があります。
次に胸、背中、腹、足の付根付近と体の中心に近い位置に発生しやすくなります。高齢者では顔にも発生しやすいという傾向もあります。肌の色の濃い人よりも色の白い人に発生しやすい傾向もあります。時間が経過すると、黒い斑点部分が熟したようになってきたり、膨らみを帯びて結節になったりします。
なぜ皮膚の病気なのに死ぬかもしれないの?
では、何故皮膚の病気でありながらもこんなに恐れられているのでしょうか。それはメラノーマの死亡率にあります。
現在確認されている皮膚がんで、日本国内で特に発症数が多いのが「基底細胞がん」と「有棘細胞がん」なのですが、これらは早期発見が容易く早い段階で切除してしまえばいい上に、前者は皮膚がんの発症数の5割、後者が2割で実に国内の皮膚がんの7割がこの2つのうちのどちらかなのです。メラノーマはこれらの皮膚がんと違って、かなり希な病気です。
しかし、メラノーマの出来る表皮のすぐ下、真皮にはリンパや血管が通っているため、内蔵の癌であれば早期発見になるような段階でも、メラノーマだと既にリンパや血管を通って全身に転移している可能性があります。
また、こういった驚異的な進行の早さのため、希な病気にも関わらず皮膚がんによる死亡者の半数がメラノーマによるものなのです。
ほくろとメラノーマ、どう区別するの?
ほくろと見た目が似ていること、足の裏などのわかりづらい場所に出来ることで早期発見がしにくいメラノーマですが、意外にもほくろとは大きな違いがあります。
ひとつは、色の違い です。ほくろと違い、メラノーマには濃淡があったり、まだらになっていたりします。また、ほくろは健康な細胞から成っているので毛が生えていますが、メラノーマはがん細胞のため毛が生えません。
もうひとつは、形の違い です。ほくろはきれいな円であることが多いですが、メラノーマは周囲がギザギザしていることが多いです。また、黒色斑点の中に塊のようなものが生じていることもあれば、色素斑そのものが固いこともあり得ます。
最後に、これが1番大きな違いになりますが進行速度が早く 短期間での拡大 が確認されます。30代以降など大人になってから出来たほくろのような斑が、1年程度の短期間で7㎜を越えたらメラノーマの可能性が高いです。
一つの発症例では、発症者が発見した時は2mm以下のものだったのが2年以内に12mm以上の大きさにまで大きくなっていたというケースがあります。
メラノーマはとても希な皮膚がんですが、もしこのような症状が見られたら、必ずお医者さんに相談しましょう。この病気は早期発見早期治療が鍵になります。
メラノーマにはいくつか種類があった!各症状は?
希ながんとは言えども、メラノーマにも細かい分類があり、少しずつ症状も違います。
悪性黒子型黒色腫
顔面や首筋、手の甲など露出の多い部位に黒い腫瘍が発生するタイプです。初期症状としては褐色でまだらのシミが現れ、それが年月をかけて黒色腫に成長していきます。
主に高齢者に多く見られ、進行が遅いために早期発見率が高いという特徴がありますが、4つのタイプのメラノーマの中でも最も発症例は少ないそうです。
表在拡大型黒色腫
ほくろの細胞から発生するタイプで、全身のどこにでも発生します。初期は黒子が若干盛り上がったような状態で、比較的緩やかに拡大し、色も濃い黒に変わっていきます。進行が緩やかとは言えども、悪性黒子型黒色腫よりは治癒率が低いです。
主に50代で発症することが多いですが、子供から年配の方まで幅広い患者さんがいらっしゃいますし、白人の方に多いとも言われていますが、日本人の患者さんも増えています。
結節型黒色腫
上記の症例から大きく変わって、最初から立体の腫瘍が発生するのがこのタイプです。全身あらゆる場所に発症の可能性があり、初期には褐色っぽかったしこりが早いスピードで濃黒色になっていきます。
進行が最も早く、早期に深部への進行や転移が見られるタイプで、最も悪性度が高いと言えます。特に40代~50代での発症が多いと言われていますが、特に世の中で恐れられているような症状を持つ割には患者数は減少傾向にあります。
また、上記2種類のようなシミの症状が見られないのも特徴と言えるでしょう。
末端黒子型黒色腫
日本で最も多いメラノーマの症例です。初期は足の裏や手のひら、爪などの末端に褐色の斑が出現し、だんだんとしこりや潰瘍になっていきます。爪に発症することもあり、その場合は爪に黒い縦筋が浮かび、やがて爪全体に広がっていきます。爪にメラノーマが見られる可能性がある場合は、メラノーマが爪に出来てる?見分け方や他の病気の可能性についての記事を読んでおきましょう。
その後、爪が割れて黒色部が皮膚まで滲んで出たり、更に悪化すると爪が取れてしまうこともあります。特に40~50代で多く発症しますが、進行が緩やかなので早期発見率が高いです。
メラノーマと間違いやすいもの
メラノーマの発見が遅れる理由の一つが、多くの似たような症状が存在するからです。シミやほくろなど良性の黒点や色素の沈着は見た目に変化を及ぼす以外に何ら悪影響を及ぼしません。
ほとんどはこれらのような悪影響のない色の変化なので、軽視してしまう傾向があります。これらの良性の物との違いと特徴を知ってメラノーマを早期発見出来るようにしていきましょう。
ほくろ(色素性母斑、母斑細胞母斑)
ほくろは生まれつきある先天性のものと、成長の過程で発生する後天性のほくろがあります。その大きさは7mm以内のものがほとんどで時間経過しても大きさはほとんど変わりません。
毛穴が存在し黒斑部分から毛が生えることがります。表面はなめらかなことが多いですがたまに盛り上がったほくろを確認することも出来ます。
後天性のほくろはメラニン色素を持つ細胞、メラサイトの増殖による皮膚の変化です。しかし良性のものなので悪さをするわけではありません。日焼けや刺激、ニキビなどによる炎症を繰り返すことで発生しやすくなります。
色調は茶色や黒と言った色が多いですが、肌色に近い色のほくろもあります。ほくろにはいくつか種類があり境界型、複合型、真皮内型などの種類にわけられます。
殆どの物が1mm〜2mm以内の大きさで、膨らみも1mmを超えるものは確認されません。
脂漏性角化症(老人性イボ)
80代程の高齢に近づくにつれ発症しやすい老化性のイボです。早い人では20代から発症する人も居ます。皮膚であればどこにでも出来る可能性のあるものですが、特に紫外線の当たる部分にできやすい傾向があります。
首や顔にできやすく、次に足や手にできやすくなります。自然消滅することはなく、老化とともに増加します。
色調は肌色から黒までの色で、シミに似た色素沈着が特徴です。はじめは1mm程の物が時間とともに大きくなり2〜3mmほどの大きさになります。発症部分の皮膚がザラザラしていたり硬くなります。人によっては痛みや痒みの症状が出る場合もあります。
皮膚表面の膨らみや質の変化がメラノーマとの大きな違いになります。見た目が悪いことや、悪性と疑われることがありますので、検査を受ける場合が多いでしょう。保険が適用される場合とされない場合があります。痛みや痒みを伴う場合や、大きさが大きい場合は保険が適用されやすく、また手術方法によっても保険の適用が効きやすいものそうでないものがありますので、医師と相談しましょう。
基底細胞癌
年間で5万人近くが発症していると推測される皮膚がんです。皮膚がんの中では最も多いもので50歳以降から発症の確率が増え始め、70代以上での患者が全体の45%を占めています。
顔や頭に8割の発症が見られることから、原因は太陽光線による紫外線の影響が大きいと言われています。また誘発される可能性としてやけどや外傷による瘢痕(傷跡)などが影響しているとも考えられます。また基底細胞がんが発症しやすい人として色素性乾皮症の障害を抱えている人はこの病気を発症しやすいため注意が必要です。
皮膚の最下層の基底層や毛包の細胞が悪性に変化し、色素が黒もしくは黒褐色になります。表皮が多少盛り上がった状態になります。初期症状ではほくろとの違いを判断できない場合がほとんどです。数年の時間をかけて大きくなり粉瘤や潰瘍などの状態に変化します。
日本人の多くは顔のTゾーンにこの症状を発症しやすく、稀に色が紅色のものでがんに見えない物があります。色素の沈着以外の潰瘍や肌の表面の剥がれ落ちなどの症状が見られる点でメラノーマとの区別が出来ます。
メラノーマ同様、他の臓器や細胞への転移が起こる可能性もあり、進行具合によって生存率も変化するため早めの治療が必要です。
有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)
これも日本人に多い皮膚癌になります。
皮膚は大きく表皮、真皮、皮下組織の三層に分けられます。一番表面に当たる表皮はさらに4つの層に分けられます。表面から角質層、顆粒層、有棘層、基底層となります。その下に真皮が存在します。真皮には神経、静脈、動脈、毛嚢、汗腺、脂腺などが通っています。
有棘細胞がんは表皮の有棘層で起こった癌のことです。症状は発生原因や部位によって様々で、大きく皮膚の肉が崩れたり、皮膚の盛り上がりや潰瘍を伴い出血が起こる場合もあります。
繰り返し症状が起こることで、表面が黒く変色することもあります。患部は感染症を起こしやすく、膿を発生させたり異臭を発生させることもあります。
血豆
メラノーマは爪に出来ることもありますが、この見た目は血豆によく似ています。爪の一部が黒く染まり徐々に大きくなっていくのですが、大きな違いや症状の相違点として、押しても痛くない事や、黒い部分が爪の成長とともに移動しない事が挙げられます。
血豆は外傷によって靴が小さいことや、足をぶつけたことで毛細血管が破裂し内部で血が酸化し黒くなります。なので円を描くように血豆が発生します。また押すと痛みが発生しますが、メラノーマでは痛みは発生しません。
しかしメラノーマは縦線状に爪に黒い線が入ったり、大きさが広がっていったりします。さらに爪の下の皮膚で色素の変化が起こっているため、血豆なら爪の成長とともに移動しますが、メラノーマは移動しません。また血豆は改善するための対策をしていれば時間経過とともに小さくなりますが、メラノーマは逆に大きくなります。
この様な違いがありますので、爪に血豆のような物ができた時は、しばらく様子を見てその変化を観察しましょう。もし、異変が見られたらその時点で皮膚科などの専門病院へ行きましょう。
治療は病期によって違う?予防法はあるの?
メラノーマの治療や予防について紹介します。
メラノーマの治療
メラノーマもがんの一種ですので、当然進行具合によって治療法も変わりますし、目安となる5年生存率も変わってきます。
・Ⅰ期
初発部位にのみ腫瘍があり転移の無い状態で、がんの厚さが1㎜以下のもの、もしくは1㎜以上2㎜以下で潰瘍の無いものが当てはまります。がんから1~2㎝離して切除手術を行います。5年生存率は95~100%です。
・Ⅱ期
がんの厚さが1㎜~2㎜で潰瘍有り、潰瘍の有無を問わず2㎜~4㎜、潰瘍の有無を問わず4㎜以上でも、初発部位からの転移が認められ無い状態です。初発部位から2~3㎝離しての切除手術を行い、予防のためにリンパ節にも手術を施したり、抗がん剤の投与の可能性もあります。5年生存率は70~80%程度です。
・Ⅲ期
所属リンパ節(初発部位から最も近いリンパ節)、もしくは初発部位の周囲か初発部位から所属リンパの間に皮膚転移や皮下転移が認められる場合です。初発部位から2~3㎝離しての切除の他に転移部分の切除、抗がん剤の投与などで治療を進めていきます。5年生存率は50~60%です。
・Ⅳ期
所属リンパ節を超えた領域や他の臓器への転移が確認された状態です。切除手術や抗がん剤の投与の他、免疫療法や放射線治療などを病状合わせて組み合わせた治療を行います。5年生存率は10%前後で、現在のところ完全治癒は難しいとされています。
1,2,3のステージでの外科療法、化学療法、放射線治療で治療が行えた場合でも2年以内に内蔵や他の皮膚への転移が確認される場合が多くあります。次に3年以内にもう一度再発の山が訪れます。
しかし、この3年の山を越えればほとんど再発することはありません。
メラノーマの予防
メラノーマは希ながんではありますが、実は白人の方ですと皮膚が薄く紫外線に弱いため、日本人のメラノーマ発生数に比べ10倍にもなるそうです。がんの予防と言うとおかしなことを言っているような気もしますが、こういった事実もあるため、日頃から紫外線対策はしっかりとしておきましょう。
また、ほくろのかきむしりなどがメラノーマ化したという例もあるので、ほくろは自分でとらないようにしましょう。
まとめ
恐ろしい恐ろしいと言われている割には発症した数の少ないメラノーマですが、紫外線、ほくろのかきむしりなど案外身近なところに原因が隠れていることもあるようです。
転移までがかなり早いので、もし怪しげなほくろを見つけたら直談判せずにお医者さんに相談することが早期発見を確実にしてくれるでしょう。
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