和食が、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。選定理由は4つあります。
①多様で新鮮な食材
②自然や季節を表現
③年中行事と密接
④健康的な食生活を支える栄養バランスです。
そうなのです、和食には、健康になるノウハウがぎっしり詰まっているのです。農林水産省は、高らかにこう宣言しています。「和食は、日本人の長寿や肥満防止に役立っています」
紹介するわかめも、和食で頻繁に使われていて、なおかつ、長寿や肥満防止に貢献している食材です。例えば、わかめを入れた味噌汁ですが、実は「パワーメニュー」なのです。
わかめの成分を知ると「わかめパワー」の秘密が分かります。さらに、わかめは、がん予防に効果があることが分かっているのです。
わかめの10種類の強い味方
わかめには、体にいい成分が10種類も入っています。どれも、現代人には不足しがちな成分で、私たちが毎日摂りたい栄養素です。それでは、10種類すべてを紹介します。
セルロース
水分を抜き取ったわかめのうち、40%は食物繊維です。その食物繊維には、水に溶けない食物繊維と水に溶ける食物繊維があり、いずれもわかめに含まれています。まずは、水に溶けない食物繊維「不溶性食物繊維」、別名「セルロース」をみてみましょう。
良い便を作る
水に溶けないということは、口から入った後も多くが溶けずに肛門まで届くということです。そのため、腸でつくられる便にも含まれるようになります。「良い便」の条件は、適度に水分を含み、適度に硬くツルンッと出てくることです。この良い便の条件を支えているのが、セルロースなのです。
腸の働きを助ける
腸にまで到達しても溶けないセルロースは、腸を刺激します。
腸は動いています。例えば、長期間、寝たままの状態の人でも便が出ますよね。重力と関係なく、あれだけ大きなものが体外に出るのは、腸が自ら動き便を肛門の方に運んでいるからです。それを「腸の蠕動(ぜんどう)運動」といいます。
セルロースに刺激された腸は、蠕動運動を活発化させます。それで、便は次々に肛門に向かって進行していくのです。便は腐敗物です。体に良くない成分がたくさん含まれています。便が腸を速く通過することは、良いことです。
腸は「吸収」する器官ですから、便の「滞在時間」が短ければ短いほど、腸が便から有害物質を吸収しないで済むのです。こうしたことから「セルロースは腸に優しい成分」といわれ、そして、大腸がんの予防にもなると考えられているのです。
ダイエット効果も
セルロースの、水に溶けないという性質は、もうひとつ良いことがあります。それは、満腹感が得られるということです。セルロースは水を多く貯めることができるので、胃の中で大きく膨らみます。しかしカロリーは極少量しかありません。
つまり、セルロースはダイエット食材なのです。
アルギン酸
突然ですが、「食」に関する質問です。フレンチでも、イタリアンでも、和食でも、一流料理人が「最高の調味料」と絶賛してやまない調味料はなんでしょうか。
それは、塩です。
次の質問です。近年「うま味」が脚光を浴びていることはご存じだと思いますが、その「うま味」を引き出す最高の食材はなんでしょうか。
それも、塩なのです。
塩分の摂り過ぎ
人が塩を摂るのは、「体に必要だから」だけではなく、「おいしさという快感を得たい」という理由もあるのです。しかしそのせいで、塩分を摂りすぎてしまい、高血圧→心臓病→死という、恐ろしい現代病に陥ってしまうのです。
みそ汁
わかめの成分の話に戻ります。水に溶ける食物繊維、アルギン酸は、わかめの「ぬめり」を作る成分です。アルギン酸の健康機能は「くっつく」ことです。まずは、ナトリウムとくっつきます。ナトリウムは、塩です。
わかめを食べると、成分のアルギン酸が体内の余分な塩とくっつき、便となって体外に排出してくれるのです。この「健康機能」を存分に発揮したメニューが、「わかめ入りみそ汁」なのです。多くの人が求める「おいしさ快感」を得つつ、高血圧の元になる塩分を体外に出してくれるのです。まさに、いいとこどりです。
腸の掃除機
アルギン酸はもうひとつ、重要なものと「くっつき」ます。それはコレステロールです。さまざまな生活習慣病の元凶といえるコレステロールを、自然な形で排出してくれるのです。そのほか、カドミウムなどの毒とも「くっついて」、便と一緒に体の外に追い出してくれます。
アルギン酸は、腸の掃除機なのです。さまざまな研究で、腸が「老化」と「こころ」に関わっていることが分かってきました。わかめを食べるということは、腸をキレイにするにつながり、腸をキレイにすることは、文字通り、身も心もキレイになるのです。
カルシウム
海はミネラルの宝庫です。海の植物である、わかめは、多くのミネラルを吸収し、「体」に蓄えています。それを私たちが食べるのですから、わかめは、間違いなく「一級品の健康食」なのです。
わかめに多く含まれるミネラルは、カルシウム、カリウム、ヨウ素です。まずはカルシウムからみてみましょう。
魚より多い
カルシウムといえば「魚」をイメージする方が多いと思いますが、実は、海藻の方が多いのです。100g中のカルシウム量を比較すると、
- あじ65mg
- いわし85mg
に対し、
- わかめ100mg
- ひじき1400mg
です。
ひじきがダントツですね。しかし、わかめの100㎎も相当なものです。カルシウムは、丈夫な骨や歯を作り、ストレスに強くなる心にも関与しているといわれています。
カリウム
わかめに含まれるカリウムが最も活躍するのは、高血圧の予防です。カリウムは、ナトリウムと「シーソーの関係」にあります。カリウムの摂取量が増えると、ナトリウムを減らすことができ、ナトリウムを摂りすぎると、体内のカリウムが減ってしまいます。
高血圧予防に
カリウムもナトリウムも、体に絶対なくてはならない必要不可欠なミネラルですが、いずれも摂りすぎると「毒」になるという難しい性質があります。しかし現代人は、「カリウム不足」「ナトリウム過剰」に陥りやすいので、「カリウムは善人」「ナトリウムは悪人」として考えられています。カリウムの過剰摂取については、カリウムを過剰摂取した時の症状は?予防方法も紹介!を読んでおきましょう。
カリウムを多く摂り、ナトリウム摂取を極力減らしましょう。
ナトリウムが体に悪いのは、体に水分を溜め込む性質があるからです。ナトリウムが過剰になると血液の量が増え、血管を圧迫し高血圧を引き起こすのです。
そこで、医師も病院も、厚生労働省も農林水産省も、「カリウムを摂りましょう」「ナトリウムを控えましょう」と呼びかけているのです。
ヨウ素
「ヨウ素」というより、「ヨード」の方が、なじみ深い方もいると思います。同じものです。わかめといえば「ヨウ素」というイメージがありますよね。
甲状腺に関与
わかめに含まれているヨウ素の量は、100gあたり、8000マイクログラムと、ごくごくわずかなんです。しかし、ほかの食材に比べると、段違いに多い数値です。
例えば、魚介類で最も多くヨウ素を含んでいる「あわび」でも、100g当たり180マイクログラムしかありません。
ヨウ素の「健康貢献」は、甲状腺ホルモンの材料を作ることです。甲状腺ホルモンは、人の成長に関わっています。また、新陳代謝を高める働きもあります。
ヨウ素はまた、コレステロール値を下げる効果も期待できます。
ビタミンA
カロチンといえば、ニンジンですが、わかめにも、カロチンが含まれています。カロチンは、腸で吸収されるとビタミンAに変わります。
ビタミンAは、人の成長や、骨と歯の発育に関わっています。皮膚や粘膜を守る働きや、抗がん作用も分かってきました。
ビタミンB
ビタミンBもわかめには含まれています。ビタミンBには皮膚や粘膜を保護する働きがあります。また「こころ」の働きには関与しているという研究結果もあります。
ビタミンC
含有量はさすがに果物に及びませんが、わかめにも「美白の元」ビタミンCが含まれています。
EPA
そうです、イワシとかサバなどの青魚で有名なEPAも、わかめは多く含んでいます。EPAは、コレステロールを体の外に出す働きがあります。さらに、花粉症やアトピー性皮膚炎などの症状を改善することも分かっています。EPAには、アレルギー症状のかゆみを抑える効果があるからです。
フコイダン
わかめの成分で最も注目されているのは、フコイダンです。国内のがん治療に関わる医師たちでつくる日本癌学会において、フコイダンの抗がん作用の研究結果が発表されています。
がん治療
がんの特性は、「自然死しないこと」です。人の健康な細胞は、自然死することで、人の体を正常に保っています。
――このように説明すると、「正常な細胞が死ぬのに、人の体が正常になるのはおかしい」と、感じるかもしれません。しかし、古い細胞が死に、新しい細胞に置き換わることで、生命が維持されているのです。
しかし、がん細胞は死なないのです。ずっと、増え続けます。死なないで増え続けるので、正常細胞をどんどん破壊していき、そしてとうとう、人を死に至らしめるのです。
フコイダンには、がん細胞を自然死させる作用があることが、分かりました。しかも、だからといって、フコイダンが、正常細胞を自然死より早く殺してしまうことがないことも分かっているのです。
注意点数
ただ、わかめをそのまま食べても、フコイダンによる抗がん作用は期待できないそうです。特殊な方法でわかめから抽出し、さらに加工を加えることで、効果が期待できるようになるのです。
フコイダンによるがん治療に興味を持たれた方は、正規の医療機関が行っていますので、そこに相談することをお勧めします。つまり「わかめの成分でがん治療」という「看板」は、民間療法ともつながりやすいので、十分注意する必要があります。
まとめ
いま、「スーパーフード」が注目を集めています。しかし、わかめは、古来からスーパーフードであり続けています。安くて手軽で身近でおいしい、わかめを、みなさん、もっと食べましょう。
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