体にいい食べ物を摂取したい。美容と健康を第一に考える人なら、つねに頭にあることでしょう。近年、特に話題なのが「油」です。「油だなんて、健康やダイエットから一番、遠いんじゃないの?」 そう思うのも無理はありません。
かつて油は目の敵にされた時代がありました。しかし今は一転、油を積極的に摂ろう!というような特集記事を見かけます。実際のところ、どうなのか? 多角的な視点から、油のホントを確かめてみましょう。
油は体をつくる上で欠かせない栄養素
炭水化物やタンパク質と並び、三大栄養素として欠かせないのが油(脂質)です。脂質は脳を正常に働かせるのにも必要な栄養素で、食事の消化吸収を助け、脂溶性ビタミンなどを体に行き渡らせる役目を担います。
内臓器官や神経、骨などをつくったり維持するのに欠かせないばかりか、体温を正常に保つ役割もあるのです。
体にいい油とは?
体にいい油とは、どんな油なのでしょう? 真っ先に浮かぶのがイタリア料理に代表されるオリーブオイルです。1980年後半から90年代の“イタ飯ブーム”で、本格的なイタリア料理店が次々にオープンしました。パスタや石窯で焼いたピザなどが人気になると、家庭でもオリーブオイルが手軽に使われるようになりました。
今ではスーパーの陳列棚にも多くの銘柄のオリーブオイルが並んでいます。パスタが家庭で気軽に食べられるようになるとともに、オリーブオイルの健康効果にも注目が集まり、消費を後押ししました。
近年は「オメガ3」という言葉とともに、アマニ油やえごま油といった変わり種も登場しました。また2014年あたりからは、海外セレブが愛用したことで、ココナッツオイルが急浮上します。雑誌やテレビの情報番組で次々に取り上げられ、その健康効果に注目が集まっています。
体にいい油は、どういいの?
■オリーブオイル
オリーブの実から搾取された油。オメガ9脂肪酸のオレイン酸を多く含み、中性脂肪や悪玉コレステロール(LDL)を減らし、善玉コレステロール(HDL)を優位にするため、動脈硬化の予防にいいと言われる。
■アマニ(亜麻仁)油
亜麻という植物の種から搾取された油です。オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸をはじめとする、不飽和脂肪酸を多く含みます。欧米では慢性の便秘や過敏性腸症候群、腸炎などに有効という報告があります。
■えごま(荏胡麻)油
シソ科の一年草、えごまの種から搾取された油です。オメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸がアマニ油よりも豊富に含まれています。
■ココナッツオイル
ココヤシの乾燥した実から得られる油脂です。昨今のブームは無精製・無添加・非加熱抽出のもので、ヴァージンココナッツオイルと区別される場合もあります。吸収が早くすぐにエネルギーに代わるうえ、体に蓄積されにくいとされる中鎖脂肪酸を多く含むため、ダイエットにいいとされています。
オメガ6脂肪酸過多について
昨今の健康油ブームの発端は、日本人が摂取する油が「オメガ6脂肪酸に偏っている」という報告から始まりました。オメガ6脂肪酸とは、リノール酸に代表される不飽和脂肪酸の1つで、食用油ではベニバナ油、ヒマワリ油、大豆油、コーン油に多く含まれます。
1950年代、アメリカの研究結果で「リノール酸が体内のコレステロール値を下げる」と報じられると、日本でも昭和40年代からリノール酸をより多く含んだ上記の植物油が主流になりました。戦後の第一次健康油ブームです。
その後、約40年間で食生活が大きく変化しました。パン食が当たり前となり、揚げ物や中華料理、洋食などが普通に食卓に並ぶようになると、リノール酸をはじめとするオメガ6脂肪酸の摂取量が飛躍的に上昇しました。コレステロール値を下げるどころか、脂肪分の取り過ぎによる肥満や生活習慣病の発症などが問題となってきました。
実はリノール酸をはじめとするオメガ6脂肪酸は、適量なら悪玉コレステロール(LDL)を下げる働きがありますが、過剰に摂取すると善玉コレステロール(HDL)も低くしてしまうことが明らかになったのです。後年、さらに研究が進むとオメガ6脂肪酸の過剰摂取が、アトピー性皮膚炎や喘息など、アレルギー疾患を引き起こす要因とされる説が有力になってきたのです。
火付け役はオメガ3脂肪酸
長い間、日本人は悪玉コレステロール(LDL)の値を低くするリノール酸を多く含む、オメガ6の油脂を摂取してきましたが、これらの油脂の過剰摂取は、同時に善玉コレステロール(HDL)も低くしてしまうことが明らかとなり、今ではオメガ6の油脂を減らそうという流れに変わっています。
代わりに多く摂取したほうがいいと言われるのが、α-リノレン酸を多く含むオメガ3脂肪酸です。これらは、イワシやサンマなどの青魚の油(DHA/EPA)やえごま油、アマニ油などに豊富に含まれています。
α-リノレン酸を適量摂取すると、リノール酸の過剰摂取により起こっていたアレルギー症状を抑制すると言われています。昨今、食品などによるアレルギー疾患が増えていることから、オメガ3脂肪酸による第二次健康油ブームが始まったのです。
体にいい油はバランスよく摂取すること
戦後の高度経済成長期から今まで、日本人の食生活にすっかり浸透した植物油ですが、近年の美容・健康ブームで、オメガ3脂肪酸をはじめとする体にいい油の人気は、今後ますますヒートアップしそうな勢いです。
ただ注意しなくてはならないのが、その選び方や摂取方法です。ブームに煽られて間違った商品選びや摂り方をすれば、何もかも逆効果ということになりかねません。
油の特性を知ろう
日本人はリノール酸をはじめとするオメガ6脂肪酸が過多だと説明しました。
でもこれらをまったく摂らなくなると、逆に「オメガ6欠乏症」に陥ることがわかっています。また問題なのは、市販のドレッシングやマヨネーズ、油を多く使ったパンなど、私たちが普段口にする加工食品や調味料に「油脂」がいかに多いかということです。これらは“見えない油”といわれ、加工品の場合は何にどれだけ使われているか、素人にはわかりません。
魚にオメガ3脂肪酸が豊富とお伝えしましたが、同様に牛肉、豚肉、鶏肉などにもオメガ6脂肪酸が多く含まれています。肉や魚、ときにはアボカドやナッツなどの果実にまで含まれる脂肪は、不飽和脂肪酸といい、本来人間の体内でつくられないため、食べ物で補う必要性があるのです。
3つの脂肪酸の摂取量と摂取方法
オメガ3とオメガ6、オメガ9。これらの3つの脂肪酸の理想的な摂取量は、1:4:16と言われています。それぞれどのように摂取すればいいか、効果的な方法を考えてみましょう。
■オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸を多く含む)・・・青魚/えごま油/アマニ油
不飽和脂肪酸の1つで、人間の体内ではつくられない必須脂肪酸です。青魚に多く含まれるため、刺身や寿司、焼き魚や煮魚などで摂ることが望ましいです。
ただし魚の油も酸化するので、できるだけ新鮮な状態のものを選ぶことが重要です。えごま油やアマニ油の摂取の目安は1日小さじ1杯(5cc)。味噌汁やヨーグルト、野菜ジュースに入れたり、自家製ドレッシングに加えるなど加熱せず、生で摂取するのが理想的です。
■オメガ6脂肪酸(リノール酸を多く含む)・・・ベニバナ油/大豆油/コーン油など
不飽和脂肪酸の1つで、人間の体内ではつくられない必須脂肪酸です。
国が定める1日の摂取量の目安は男性で11g、女性で8g(18歳以上)だが、もともと摂り過ぎと言われているので、この目安を超えている可能性も大いに有ります。意識して減らすようにしてください。
市販のマヨネーズやドレッシングを控え、オメガ3脂肪酸を含むえごま油などで手作りするようにしましょう。炒めものや揚げ物を食べる機会を減らして、焼いたり茹でたりと油を使わないおかずにシフトするのも得策です。
■オメガ9脂肪酸(オレイン酸を多く含む)・・・オリーブオイル/キャノーラ油など
不飽和脂肪酸の1つだが、体内でもつくられるので、目標の摂取量は存在しません。健康にいいからといって大量に摂取するのはNGです。過剰と言われているオメガ6脂肪酸に替えて使用するなど、考えて使うことをおすすめします。
バランスよく摂取しよう
いくら体にいいと言っても、これらのどれかが極端に偏っていれば、体に変調が起こるのは避けられません。
また1つの植物油の中にも、α-リノレン酸、オレイン酸、リノール酸はそれぞれ含まれます。例えばオリーブオイルには、オレイン酸が76.5%、リノール酸が6.9%、リノレン酸が0.7%、飽和脂肪酸が約14.8%など、割合があるのです。
その比率はやはり目に見えるものではないので、食用油だけでなく、加工品や肉、坂ににどの材料など、全体の油の摂取量を意識し、バランスよく摂ることが肝心です。
安易にブームに乗らない
2014年あたりから人気となっているのがココナッツオイルです。ハリウッドセレブが火付け役と言われ、日本でもモデルや女優など有名人のブログなどで瞬く間に広がりました。
2016年も引き続き注目の食品で、ダイエットにも効果的と言われていますが、流行のまっただ中にある食品は、まだきちんとした研究やテストがなされていないため、安易に飛びつくのはおすすめできません。今のところ目立った健康被害は報告されていませんが、植物だからと安心するのは早計です。アメリカなどでは、一部ココナッツオイルによるアレルギー症状も報告されています。
ココナッツはもともと熱帯の食べ物。現地の人は何十年、何百年と食べ続けているのでしょうが、私たち日本人が昔から食べつけていないものを口に入れることで、下痢や発疹など、思わぬ事態を引き起こすこともあり得ます。
一度に大量に摂取せず、少しずつ取り入れてみるなど、様子を見ましょう。
油は酸化するもの。品質や保存にも注意
どんなに体にいいと言われる油でも、その搾取方法やその後の品質管理が悪ければ話になりません。油は空気に触れた瞬間から、どんどん酸化をします。製品自体の品質はもちろんのこと、輸入時や小売店などでの保存状態も肝心です。オリーブオイルを例にして説明しましょう
信頼できるメーカーや輸入業者が扱う商品を選ぶ
最近では有名な原産地のオリーブオイルでも、搾取する方法を偽ったり、いろんな方法で絞った油をブレンドしている、などという話もよく聞きます。ただ素人が商品を見ただけで見破ることは難しいため、信頼できるメーカーや輸入業者が扱う商品を選ぶことが大切です。
生産団体が認証する品質を保証するマークやラベルを参考にするのもいいでしょう。
屋内陳列、遮光されたボトル選ぶ
いくら特価セールでも、屋外に山積みにされているものは避けるのが無難です。日差しを浴びたり、急激な温度の上昇で中身の油は確実に劣化しています。
またボトルは遮光(光を通さない)性の高い黒や濃い茶色、深緑のビンが大前提です。油は光にさらされると酸化しやすいことから、信頼できるメーカーの商品はすべてこうした遮光ビンを採用しています。
開封後は早めに使い切る
栓を開けたら早めに使い切る、が鉄則です。高価だからと一年近くかけてチビチビ使うのはもってのほかです。空気に触れるごとに酸化しているので、健康効果は日々下がる一方です。
保管場所は冷暗所を選びましょう。使い勝手からガスレンジなど火の回りに置くのは酸化を早める一因になります。ヘンなニオイがしてきたら、賞味期限内でも処分しましょう。
まとめ
油は体にいいと言っても、その種類や選び方、摂取方法によって毒にも薬にもなるということをしっかりと認識して、効果的に活用してください。
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