健康によいとされている「きなこ」ですが、どのような栄養分があるのか、どのように取れば効果的なのでしょうか?知っているようで意外と知らない「きなこ」について詳しく見ていきましょう。
きなことは?
漢字では「黄な粉」と書くように、大豆を炒って、皮を剥いた黄色い粉末状の食品です。加熱することによって、大豆特有の臭みがなくなり香ばしくなります。
きなこが一般的に流通するようになったのは江戸時代以降で、主に和菓子にまぶして利用されていたようです。わらび餅、くず餅、あべかわ餅などが現在まで伝わっています。
<余談1>
枝豆と大豆は同じものだって知っていましたか?大豆を未成熟の状態で収穫したものが枝豆なんです。
ただし、枝豆として食べるのに適した品種と大豆として成熟させるのに適した品種がありますので、枝豆向きの品種を大豆にしたり、大豆向きの品種を枝豆とすることはありません。
きなこの栄養
文部科学省が定めている、日本食品標準成分表2015年版(七訂)のデータです。国産・黄大豆・乾燥条件、可食部100gあたりの成分です。栄養素の順番も前述の資料に基づいています。久しぶりの大改訂なので、過去のデータと大きく変わっている部分もあります。
成分名 大豆 きなこ
タンパク質 33.8g 36.7g
脂質 19.7g 25.7g
飽和脂肪酸 2.59g 3.59g
1価不飽和脂肪酸 4.80g 5.92g
多価不飽和脂肪酸 10.39g 14.08g
炭水化物 29.5g 28.5g
食物繊維 17.9g 18.1g
カリウム 1,900mg 2,000mg
カルシウム 180mg 190mg
マグネシウム 220mg 260mg
リン 490mg 660mg
鉄 6.8mg 8.0g
亜鉛 3.1mg 4.1mg
銅 1.07mg 1.12mg
マンガン 2.51mg 2.75mg
セレン 5mg 5mg
クロム 3mg 12mg
モリブデン 350mg 380mg
βカロテン 7μg 3μg
βクリプトキサンチン 1μg 1μg
αトコフェロール 2.3mg 1.7mg
(食品としてビタミンEと表記される場合にはαトコフェロールを指します)
βトコフェロール 0.9mg 1.2mg
γトコフェロール 13.0mg 11.5mg
δトコフェロール 8.6mg 8.6mg
ビタミンK 18μg 27μg
ビタミンB1 0.71mg 0.07mg
ビタミンB2 0.26mg 0.24mg
ナイアシン 2.0mg 2.2mg
ビタミンB6 0.51mg 0.52mg
葉酸 260μg 220μg
パントテン酸 1.36mg 1.01mg
ビオチン 27.5μg 31.0μg
ビタミンC 3mg 1mg
上記成分表からわかるように、大豆・きなこ共に栄養豊富な食品であることが分かります。ただし、大豆は調理方法が(豆腐や納豆など)限定されるのに対して、きなこは粉末状のため様々な使用方法ができるので使い勝手がよいのが特徴です。
大豆は種類が多く、黒豆やうぐいす豆なども大豆の仲間です。主要な栄養素はそれほど大きく異なることはありませんが、微量でも有効な成分もあります。
特記すべき大豆に特有の栄養成分
食物繊維
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を豊富に含んでいます。食物繊維を豊富に含んでいるイメージのあるゴボウよりも、多くの食物繊維が含まれています。
排便をスムーズにする効果があり、便秘を予防します。
大豆レシチン
上記赤字で強調してある不飽和脂肪酸に含まれる成分で、リン脂質を主とする混合物です。主要なリン脂質としては4種類(フォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジル酸)あります。
人間の体内では、細胞膜を構成する重要な成分のひとつとして脳や肝臓に多く存在しています。脂質の代謝を正常にして、肝臓を保護する働きがあります。上述のとおり、レシチンにはコリンが含まれており、神経伝達物質のアセチルコリンを作る材料としても利用されます。
レシチン自体は人体に必要な成分なので摂り過ぎても過剰症はありません。しかし、食品として考えた場合には、脂質のためカロリー過剰になってしまうことがありますので注意が必要です。
大豆イソフラボン
大豆中のイソフラボンは、糖と結合した大豆イソフラボン配糖体(約245mg/100g)として含まれています。大豆イソフラボン配糖体を摂取すると、腸内細菌により糖の部分が分離し、大豆イソフラボンアグリコン(アグリコン換算量として、約140mg/100g)となり身体に吸収される状態となります。
このアグリコンの状態にならないと、人体に吸収することはできません。大豆イソフラボンは数種類あることが確認されていますが、代表的なものとして、ダイゼイン、ゲニスティン、グリンチンがあります。
イソフラボンアグリコンは、体内において女性ホルモン(エストロゲン)様の働きをします。更年期障害の改善、骨粗しょう症の予防、肌のハリを維持、血流改善、乳がんの予防など特に女性に対して様々な効果が期待できます。
一方で、過剰に摂取することによる悪影響も報告されています。女性ホルモン作用を増強するためなのか、子宮内膜症の発症率増加や月経周期異常など様々な報告があります。動物実験においては、生殖機能に悪影響を与えることが確認されています。
食品安全委員会(内閣府内に設置)では、1日の許容摂取量は70~75mgに設定されています。上乗せ摂取(サプリメントや特定保健食品など)の上限は30mgです。日本を含めた東アジア諸国では、そもそも大豆食品の摂取量が多いため、わざわざ補う必要性は少ないと言われています。
大豆サポニン
サポニンは植物に広く含有されているサポゲニンの配糖体です。(前述のイソフラボンや、アントシアニンなども配糖体の仲間です。)苦みやアクと言われている成分で、生薬に用いられる高麗人参や桔梗などにも含まれていますが、特にマメ科に多く含まれることが知られています。
サポニンは界面活性作用や抗酸化力が強く、血栓の元になる過酸化脂質の生成を抑制します。過酸化脂質を原因とする各種の血管系障害(動脈硬化・高血圧・高脂血症など)に対して血中脂質を低減させる効果が確認されています。
サポゲニンには、トリテルペノイド・サポニンとステロイド・サポニンの2種類があります。
トリテルペノイド・サポニンは、豆科、セリ科、キキョウ科、アケビ科、高麗人参類、ナツメ類などに含まれています。
ステロイド・サポニンは、キク科、ユリ科、トチ類などに含まれています。
トリテルペノイド・サポニンは、昔から食用や漢方用として利用されてきました。ステロイド・サポニンについてはまだ研究が進んでいないため不明な部分も多くありますが、トリテルペノイド・サポニンよりも活性が高く、ガン予防や抗炎症作用に対して効果があるという報告もあります。
サポニンには溶血作用(赤血球が破壊される現象)があることが知られていますが、どの程度摂取すると症状がでるのか詳しいデータはありません。一般的に、トリテルペノイド・サポニンの副作用は弱く、ステロイド・サポニンの副作用は強いと言われています。作用が強ければ、当然副作用も強くなる理屈です。
きなこの効果的な摂取方法
きなこは大豆ですから味噌や醤油との相性がよく、お味噌汁や納豆などに大さじ1杯くらいを加えるだけでOKです。
また、ヨーグルトや牛乳、チーズなどの乳製品との相性もよいようですので、ヨーグルトや牛乳にも大さじ1杯くらい加えてみてください。
何故大さじ1杯?
上記表でも確認できますが、きなこは栄養価の非常に高い食品です。特に、タンパク質と脂質の量が多いのが特徴です。健康によいからといって大量に摂取すると、カロリー過多になってしまいます。
まとめ
大豆は「豆の王様」と呼ばれるほど栄養豊富な食品です。それを加熱して粉末状にした”きなこ”も、その栄養素を引き継いでいます。
ただひとつだけ問題になりやすいのが、その栄養豊富さがカロリー過剰になってしまうことです。よって私がお勧めするのは、1日大さじ1杯のきなこを朝食にプラスすることです。
人間の身体は、糖分以外の栄養素は身体に留めておくことができません。(糖質抜きダイエットが効果的だと言われるのも、糖質を摂らなければ身体に脂肪が付きにくいからです。)そのため、活動に必要な栄養素は朝に、回復に必要な栄養素は夜に摂ることが効果的です。
きなこで健康的な身体を手に入れましょう。