混合性結合組織病とは、Gordon Sharpによって提唱された疾患で、日本では特定疾患として認められています。他の膠原病と同様に、原因は分かっていません。
原因が分かっていないため、予防をすることが困難です。本記事で説明する症状が少しでも表れたら、すぐに医師に診てもらい対処することが大事です。
混合性結合組織病とはどんな病気か
混合性結合組織病とは1972年に米国ミズーリ大学のGordon Sharpによって提唱された、膠原病の代表的な疾患の全身性エリテマトーデス様、多発性筋炎様、強皮症様の症状があり、血液検査時に抗U1-RNP抗体が高値陽性反応を示す疾患です。英名はMixed Connective Tissue Disease、略称をMCTDといいます。米国では混合性結合組織病は強皮症の亜型であるという主張が多数派でしたが、最近は一つの疾患として独立的に認識され始めています。日本では厚生労働省が1993年に混合性結合組織病を特定疾患として定めました。
個人調査票に基づいた調査では、平成20年度には混合性結合組織病の患者は全国で約8600人でした。平成25年には約10500人まで患者数が増加しました。
混合性結合組織病は女性が罹患しやすく、男女比は1:13-16です。子供から高齢者までの書く年齢層において発症しますが、最も多いのは30-40歳代です。
混合性結合組織病の原因
混合性結合組織病の患者の血液中に、体の成分との反応を示す抗U1-RNP抗体という抗核抗体、あるいは自己抗体が検出されるため、この病気は自己免疫疾患と見なされています。ところが、この自己抗体が形成される理由はまだ明らかではありません。
他の膠原病の自己抗体が形成される理由も明らかではありません。また、抗U1-RNP抗体が身体を損傷させている証拠が掴めていません。そして、混合性結合組織病の病体の形成過程など、今後明らかにすべきことがまだまだ存在します。
遺伝性の有無
混合性結合組織病の発症には遺伝的な要因が存在するという考察があります。混合性結合組織病自体が遺伝するのではなく、この病気を罹患しやすい体質が遺伝します。
混合性結合組織病の症状
(1) レイノー現象
冷たいと感じる刺激や気持ちが緊張することによって欠陥が収縮し、手の指や足趾が青白くなります。その後、暗い紫色から紅みがかった色を呈し、ようやく元の色に戻る、レイノー現象が起こります。
欠陥の収縮は可逆的であり、経過は数分-数10分程度です、抹消の血流が減少することにより発生しますので、冷たさあるいは痺れを感じます。混合性結合組織病のほぼ全ての患者においてレイノー現象が認められます。レイノー現象はよく初期症状として表れます。
(2) 手の指の腫れ
手の指から手の甲にかけて腫れて、指に指輪が入りにくなったりします。混合性結合組織病の患者の約80-90%でこの症状が確認できます。混合性結合組織病の特徴的な症状で、初期から回復するまで見られます。
(3) 肺高血圧症
混合性結合組織病の10%程度の患者に合併症として表れます。生死の危険に晒される、重篤な合併症です。よくある初発症状は、疲れやすい、身体を動かした際に動悸あるいは息切れをしやすい、などです。
これらの症状が顕著であるときや、混合性結合組織病を患ってから長い時間が経っているときには、肺高血圧症の症状があってもなくても検査を行うことによって、肺高血圧症重度のものとならないうちに発見することができます。
詳しくは、肺高血圧症って何?症状や治療方法、原因を理解しておこう!を読んでおきましょう。
(4) 全身性エリテマトーデス様症状
多発関節炎、リンパ節腫脹、顔面紅斑、心膜炎・胸膜炎は、全身性エリテマトーデスに非常に類似した症状です。関節炎のときの関節の変形は、しばしば関節リウマチとの差異を見ることが難しいです。
蛋白尿や血尿などの胃炎症状は、混合性結合組織病患者の約20%に確認されますが、全身性エリテマトーデスと比較して軽症であり、ネフローゼ症候群や腎不全を患うケースは少ないです。
(5) 強皮症様症状
手の指の皮膚が硬化する、肺線維症、食道運動機能の低下は、強皮症に類似した症状です。硬化は手の指周辺に限られ、肘を越える皮膚の硬化は非常に稀なことです。混合性結合組織病患者の60-80%に、食道病変を含む消化管病変全体が確認できます。
自覚症状は、食道病変については胸焼けや食べ物を飲み込む時の違和感、腸の病変については頻繁な便秘や下痢、肺線維症については乾いた咳や身体を動かした時の動悸や息切れです。
(6) 多発性筋炎様症状
多発性筋炎によく類似した症状として腕や脚の筋力の低下がある一方で、筋肉痛を自覚を自覚することは少ないです。階段の上り下りがしんどい、しゃがんだら立ち上がるのが難しい、腕に力が入らずヘアスタイルを整えることができない、今まで持つことができていた物が持てない、などの症状が表れます。
しかし、完全に立てなくなったり、寝たきりで動けない状態になってしまったりするほど深刻になることはあまりないです。
(7) 無菌性髄膜炎
イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬を使用することによって、細菌以外の原因でおこる髄膜炎である無菌性髄膜炎が誘発されることがあります。その仕組みは不明で、誘発頻度は低いです。可能な限り、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬を使用することは避けましょう。
どうしても使用したい場合には、アセトアミノフェンを使用することを推奨されます。一方で、混合性結合組織病の病気自体が無菌性髄膜炎を発症させることもあります。
(8) 三叉神経障害
混合性結合組織病患者の約10%に確認されます。他の膠原病で起こることは稀で、混合性結合組織病の特徴的な症状であると言えます。顔の下方に出やすく、片側に寄る傾向があります。
ピリっとくる知覚障害や味覚障害が確認されますが、神経痛をもたらすことは少ないです。
混合性結合組織病の治療法
(1) 治療の基本方針
混合性結合組織病の原因は未解明ですので、原因を解決するような治療をすることは不可能です。混合性結合組織病の患者さん一人一人が訴える最も深刻な症状について、副腎皮質ステロイド薬などの免疫抑制療法で処置します。
(2) レイノー現象などの末梢循環障害
この場合は冷却しないことが大切です。手足だけではなく、身体全体を冷やさないでください。煙草は血管を収縮させて症状を深刻化させるため、禁煙する必要があります。
症状が重いときには、カルシウム拮抗薬、プロスタグランディン製剤などの血管拡張薬や、抗血小板薬が処方されます。
(3) 軽症から中等症
発熱や関節炎などの軽症にはPSL 20mg/日以下を用います。胸膜炎や軽症筋炎などの中等症については、プレドニゾロンを約30mg/日用います。
(4) 重症
重症筋炎、ネフローゼ症候群、間質性肺炎急性増悪、血小板減少症、中枢神経症状などの重症の病態については、体重1kgにつきプレドニゾロン1-1.2mg/日程度のステロイド薬を、大量に投与する治療を行います。
症状が非常に重く早急に効果を得たい場合には、ステロイドパルス療法が施されることもあり得ます。原則的には、メチルプレドニゾロン1g/日を3日間連続で投与します。
ステロイド薬の投与によって効果が不十分な場合や、重い副作用のためステロイド薬の大量投与療法を行うことが困難な場合には、免疫抑制薬を用います。
(5) 肺高血圧症
混合性結合組織病による肺高血圧症に対しては、肺血管拡張薬を使用します。
ここ15年間のうちに肺高血圧症治療薬は改善され、プロスタサイクリン製剤、エンドセリン受容体拮抗薬、PDE-5阻害薬、グアニル酸シクラーゼ刺激薬など、身体に作用する順番の違う薬を併せて用いることによって、治療がより効果的になります。
(6) 無菌性髄膜炎
非ステロイド性抗炎症薬など、無菌性髄膜炎の誘発原因であると思しき薬がある場合は、薬をやめるだけでも少し快方へ向かいます。
混合性結合組織病自体により症状が引き起こされている場合には、よくステロイド治療が実施されます。症状の大部分は中くらいの量のステロイド薬に対して反応し、治癒をもたらします。
(7) 三叉神経障害
ステロイド薬はそれほど有効ではないという考えが広まっています。特発性三叉神経痛については、カルバマゼピン、プレガバリン、フェニトインなどが治療に使用されます。
混合性結合組織病の経過
SLEや多発性筋炎様症状は混合性結合組織病の治療で快方へ向かいます。
しかし、レイノー現象や手の指の腫れ、強皮症様症状に対してはステロイド薬が効果的ではないため、治療の最後まで残ることが多いです。
まとめ
混合性結合組織病とはどんな病気か
- 膠原病の代表的な疾患の全身性エリテマトーデス様、強皮症様、多発性筋炎様の症状が混在して、血液検査時に抗U1-RNP抗体が高値陽性反応を示す疾患
混合性結合組織病の原因
- 明らかにされていない
- 混合性結合組織病自体は遺伝せず、なりやすい体質が遺伝する可能性はある
混合性結合組織病の症状
- レイノー現象
- 手の指の腫れ
- 肺高血圧症
- SLE様症状
- 強皮症様症状
- 多発性筋炎様症状
- 無菌性髄膜炎
- 三叉神経障害
混合性結合組織病の治療法
- 原因に基づいた治療を行うことは不可能
- 最も深刻な症状に対して、副腎皮質ステロイド薬などの免疫抑制療法で処置する
混合性結合組織病の経過
- SLEや多発性筋炎様症状は混合性結合組織病の治療で快方へ向かう
- レイノー現象や手の指の腫れ、強皮症様症状は治療の最後まで残る
以上が本記事のまとめです。混合性結合組織病は早期に発見して早期に治療することが大切です。何か少しでも症状が表れたら、病院へ行き、検査を受けることをおすすめします。