皮膚に赤いポツポツができて、かゆくてたまらない。鼻水が止まらない。クシャミが出たり、鼻が詰まったりして不愉快だ。目はかゆいし、咳が治らないし・・・こんな症状で悩むことはありませんか?
これは、もしかすると、ダニアレルギーかもしれません。
アレルギー症に悩む人が世界中で増えています。アレルギーの原因はいろいろありますが、ダニが原因のアレルギーが多いようです。小児喘息で苦しんでいる子供達の90%がアレルギー症で、しかも、ダニアレルギーが最も多いと言われます。
ダニアレルギーの原因は何か?ダニアレルギーの症状とその対策をお伝えしますね。
ダニアレルギーの原因は?
「ダニアレルギーの原因はダニに決まっている」と思われるかもしれませんが、ダニにもいろいろ種類があります。アレルギーの原因となるだけでなく、恐ろしい感染症を媒介します。
[アレルギーはどうして起こるの?]
人間には生まれつき病気と闘う力があります。これを免疫作用といいます。体外から細菌やウィルスが侵入したり、体内に癌細胞のような異物が発生したりすると、血液中の白血球の仲間が攻撃して排除しようとします。この免疫作用のおかげで、身体を護ることができます。
ところが、この免疫作用が過剰に働くことがあります。免疫を担うのは、血液中の白血球の仲間です。白血球の仲間にT細胞があります。このT細胞はTh1とTh2に分化して、免疫反応を支えています。Th1とTh2のバランスがとれていれば、免疫反応が正しく起こるのですが、バランスが崩れてTh2が優位になると、過剰な免疫反応を起こすようになります。
アレルギーとは、特定の物質、つまりスギ花粉、ソバ、小麦粉(グルテン)などに過剰な免疫反応を起こすことです。過剰免疫反応を起こす物質をアレルゲンといいます。ダニがアレルゲンとなって困った症状を起こすことが、ダニアレルギーです。
アレルギーは「多因子遺伝性疾患」の1つで、複数の遺伝子が関係しています。アレルギーになりやすい体質があるようで、アレルギー体質の人がアレルゲンと接触すると、アレルギー反応を起こします。
現在、世界中でアレルギー症が増えています。世界的に起こっている様々な環境の変化が、積もり積もって遺伝子に影響を与えているのかもしれません。
[ダニアレルギーの原因になるのは、どんなダニ?]
ダニは節足動物クモ綱ダニ目に分類される小型生物です。2万種以上もあり、中には体長1㎜以下という微小なものもあります。
人間に関係するダニには、3種類あります。人間を刺して血を吸うダニ、人間に寄生するダニ
吸血も寄生もしないがアレルゲンとなるダニ の3種類です。
吸血ダニ
マダニ、イエダニ、ツツガムシ、ワクモ、ツメダニの類です。
マダニ類やツツガムシ類は野生の脊椎動物に寄生していて、人間が山などの草むらに入った時に刺します。イエダニ類は住宅地域のネズミ類に寄生しています。
ダニが咬む(刺す)と、唾液物質によってアレルギー性咬症が起きることがあります。でも、それだけではありません。咬まれた傷口が化膿したり、リケッチアやウィルスにより、恐ろしい感染症になったりすることがあります。
寄生ダニ
ヒゼンダニ、ニキビダニの類です。
ヒゼンダニ類は穿孔して皮膚の下に潜りこみ、「疥癬」という皮膚病を起こします。
ニキビダニ類は顔の毛包に寄生しますが、ふつうは何の症状もありません。でも、アレルギー体質の人に寄生すると、アレルギー性皮膚炎を起こします。
ハウスダストに潜むダニ
チリダ二もしくはヒョウダニと呼ばれるダニ類です。特に、ヤケヒョウダニとコナヒョウダニがアレルゲンとなりやすいようです。目に見えない微細なダニなので、気づかないことが多いのです。
ヒョウダニ類は人体を刺したり、寄生したりはしません。ハウスダスト、つまり家の中に溜まるホコリの中に棲みつき、ホコリの中の有機物(髪の毛や垢など)を食べています。一年中、ホコリの中で生きていますが、高温多湿の7~9月が繁殖期です。
ヒョウダニは、生きているものだけでなく、その死骸や脱皮した後の殻、排泄物などもアレルゲンとなり、皮膚炎や喘息を発症させます。7~9月に増殖するので、死骸や脱皮殻、排泄物も増えます。そのため、秋になると、ダニアレルギー症が発生しやすくなります。
また、ツメダニ類は、ヒョウダニ類を食べて増殖します。ツメダニ類は人間を刺して、血を吸い、皮膚炎を発症させます。
ダニアレルギーの症状
ダニアレルギーの症状は、大きく分けて4つです。➀皮膚症状、②鼻炎症状、③目の症状、 ④咳 です。ダニアレルギーの症状が出た時は、できるだけ早く医者の治療を受けてください。素人判断で薬を使ったり、放置したりするのは、とても危険です。
[皮膚症状]
皮膚症状には、ダニに咬まれた場合と、アトピー性皮膚炎のようなアレルギー性皮膚炎があります。
ダニに咬まれた皮膚症状
家の中で、夜寝ている時などに咬まれるのは、イエダニとツメダニです。
イエダニは咬まれてすぐ痒くなりますが、ツメダニは咬まれて数時間から2日後くらいに痒くなります。赤くポツンとした点で、広く腫れることはありません。ピリピリするような痒みはなかなか治らず、1週間程度続きます。
マダニ類は人間に咬みつくと、1週間くらい取りついて血を吸い続けます。1㎜~1㎝の大きさですから、目で見えます。見つけたら、すぐに医者に行ってください。感染症にかかると、生命に関わることがあります。
アレルギー性皮膚炎
赤いポツポツした湿疹が広範囲にできます。腫れて熱を持つこともあります。痒みが強く、時には疼痛もあります。
アトピー性皮膚炎も、ダニアレルギーが原因となることが少なくありません。赤みがあるジュクジュクした湿疹ができて、強い痒みがあります。痒いのでかくと、液体がにじみ出てきます。良くなったり悪くなったりして、なかなか治りません。長引くと、湿疹がゴワゴワと硬くなり、盛り上がってきます。
発症しやすい場所は、目・口・耳の周囲、ひたいと首、脇、手足の関節の内側です。
[鼻炎症状]
クシャミの連発。鼻水が止まらないで、いつも鼻がグズグズしている。鼻が詰まる。これがアレルギー性鼻炎の特徴です。風邪の症状と似ていますが、1~2週間経っても、症状が改善しません。
スギ花粉、ヒノキ花粉、ブタクサなどによって起こることもありますが、季節が限られています。ダニアレルギーによる鼻炎症状は1年中続きます。人によっては、ダニアレルギーとスギ花粉アレルギーの両方を持っていることがあります。
症状は、朝と夕方に強く出ます。自律神経が関わっているので、交感神経と副交感神経が交替する朝夕に、症状が出やすくなります。ちなみに、昼間の活動を支えるのが交感神経、夜に安静を保つのが副交感神経です。
この鼻炎症状は、副鼻腔炎(蓄膿症)の症状とよく似ているので、間違えることがあります。
[目の症状]
アレルギー性結膜炎が起こります。
目がとても痒くなり、結膜が充血して赤くなります。目が腫れて、むくみが出ます。目がゴロゴロした感じ(異物感)で、目ヤニが多く出るようになります。花粉症の症状と似ていますが、1年を通して症状が消えません。
重症になると、上まぶたの裏側にブツブツ(乳頭)が出来て、大きくなることがあります。角膜(黒目)近くの眼球結膜が腫れ上がって、赤くなります。角膜が傷ついて濁ることもあります。
[咳喘息と小児喘息]
咳喘息
「咳喘息」は気管支の慢性的な病気です。
ダニによるアレルギー反応で、気道(空気の通り道)に炎症が起こると、ちょっとしたことが刺激となって、咳が出るようになります。ゼイゼイ・ヒューヒューという喘鳴や呼吸困難はありません。咳は、夜中から明け方にかけて出やすいようです。
風邪と併発して発症することが多く、「風邪が治ったのに咳がとれない」という症状です。女性に多いといいますが、ダニアレルギーのある人は、だれでも発症する可能性があります。また、咳喘息を放置しておくと、本当の喘息に移行する危険性があります。
小児喘息
「小児喘息」は、子供の病気ですが、見ている大人も泣きたいほどつらくなります。小児喘息は気管支に炎症が起こり、気管支の粘膜がむくんで気管が狭くなる病気です。気道が敏感になり、ちょっとしたことに刺激されて咳が出ます。
激しい咳が出ます。ゼイゼイ・ヒューヒューという喘鳴がはっきり聞こえ、呼吸困難になります。こういう発作をくり返す慢性的な疾患です。
発作には、小発作・中発作・大発作があり、発作がひどくなると、食欲が落ち、よく眠れなくなります。苦しくて話もできないようになり、日常生活に支障が出てきます。
ダニアレルギー症では、小児喘息とアトピー性皮膚炎を併発することも少なくありません。
ダニアレルギーの対策は?
ダニアレルギーの原因は、ハウスダストの中に棲息するヒョウダニ(チリダニ)ですから、これを退治することが、一番の予防法です。
[アレルゲンとなるダニを退治するには・・・]
アレルゲンとなるヒョウダニは、ハウスダスト(ホコリ)の中に棲息しています。ホコリといっしょに、ダニ、ダニの死骸や排泄物などを吸い込むと、アレルギー反応が起こります。ダニ退治は、徹底した掃除です。部屋の中だけでなく、寝具の手入れも大事です。
毎日掃除機をかける
掃除機は毎日かけてください。特にTVの後ろやベッドの下にはハウスダストが溜まりやすいので、念入りに掃除機をかけます。ダニはしがみつく力がとても強いので、できるだけ吸引力の強い掃除機がオススメです。
フローリングの床はホコリが舞い上がりやすいので、まず拭き掃除をしてから掃除機をかけます。常識とは逆のようですが、ダニ退治には、「拭き掃除してから掃除機」が効果的です。
毎日家具のホコリも掃除する
家具の上や家具の隙間、サッシの上などにもホコリが溜まります。掃除機の小さなブラシやハンディモップ(クイックルワイパー・ハンデイなど)、雑巾(ウエットシートなど)を使用して、ホコリを取ります。
ベッドはダニの温床
ベッドはダニの温床です。万年床と同じですから、マットや布団は寝汗などの水分を吸収しています。ホコリやダニのエサとなる抜け毛やフケ、垢なども、たっぷりついています。つまりダニまみれで寝ているのと同じですね。
布団やマットレスを日光にあてたり、布団乾燥機を使用したりすると、熱に弱いヒョウダニは死にます。しかし、その死骸や脱皮殻、排泄物はなくなりませんから、アレルギー症は消えません。
布団やマットレスにも丁寧に掃除機をかけてください。布団専用の掃除機や掃除ローラーがあります。専用掃除機がない時は、吸引力の強い掃除機のヘッドにストッキングをかぶせると、掃除しやすくなります。
1年に1回、布団を丸洗いすると、いっそう効果的です。すでにアレルギー症状が出ている場合は、まず布団を丸洗いしてください。丸洗いして清潔にしてから、こまめに掃除して、清潔な状態を維持するようにします。
ダニが棲息しにくい環境を作る
徹底的に掃除をすると同時に、カーペットや絨毯を使わないようにします。カーテンや子供の好きな縫ぐるみなども、こまめに洗濯します。室内に日光と風を入れるようにします。これで、ダニは棲息しにくくなります。
[咬むダニ、寄生するダニを予防するには・・・]
ダニに咬まれたり、寄生されたりしても、アレルギー反応が起こることがあります。
アウトドアライフを楽しむ時は、長袖・長ズボンを着用するなどして、マダニ類に咬まれないようにします。イエダニやツメダニは、家の中を清潔に保つことで、予防できます。
ヒゼンダニは栄養状態が悪く、不潔にしていると寄生しやすくなります。免疫力の低下した病人や高齢者も寄生されやすいようです。常に身体を清潔にして、免疫力を低下させないようにして、防ぎます。ニキビダニについては、あまり心配要りません。
まとめ ダニアレルギーは掃除で改善できます
ダニアレルギーは、咳喘息や結膜炎、アトピー性皮膚炎や鼻炎など、やっかいな症状を引き起こします。アレルゲンとなるダニを殺虫剤などで殺しても、その死骸がアレルゲンとなりますから、アレルギー症状は改善しません。
ダニアレルギーを改善するには、その棲息場所となるハウスダストを徹底的に排除することです。ハウスダストがなくなれば、アレルゲンとなる物が消えてしまいます。少し面倒ですが、毎日の掃除を、寝具も含めて、念入りに行ってください。
ダニアレルギー症が発症したり、ダニに咬まれたりしたら、すぐに医師の診察を受けることをオススメします。素人判断で家庭で治療することは、危険を招きます。