骨盤骨折には自動車事故や、高所からの転落事故で起こるものなど、大きな外圧が加わることで起こることが多いですが、高齢者になると僅かな転倒によって、骨盤骨折を起こすこともあります。あまり骨盤骨折の事故には、皆様も遭遇されることは無いと思います。
骨盤骨折には一部が骨折する軽微なものから、骨盤の内臓や血管などの損傷による、手術を必要とするものまであります。その障害は軽微なものから、重度なものまであります。骨折と言っても、身体の一番重要な部分の骨折ですので、注意しないといけないことが、とても多くあります。
骨盤骨折について詳しく調べてみましたので、一緒に見ていきましょう!
骨盤骨折とは
骨盤骨折とはどのような状態になるのですか?骨盤はどのような機能を果たしているのですか?
骨盤とは
骨盤は私たちの体の中央に位置します。丁度環状線のように、環状構造になっています。上半身を支える土台の役目と、股関節に連なって下肢の血管や、神経の通り道になっている、人間にとって、とても重要なところです。骨盤の中には生殖器や、泌尿器、消化器など重要な臓器が支えられています。
骨盤は両側にある、寛骨(かんこつ)という骨と、後ろ中央にある仙骨が、放射線状に環状につながっています。寛骨は上の方の腸骨と、後ろ下の方の座骨、前下の方の恥骨から構成されています。骨盤環の前方は、恥骨結合で連結しています。後方には仙骨があり、腸骨と仙腸関節で結合して、骨盤の両側に股関節が存在します。
骨盤骨折
さて骨盤の構造はよくわかりましたが、骨盤が骨折するとはどのような、ことが起こるのでしょうか?
骨盤骨折には骨盤のわずかな部分の、環状構造に支障のない軽微なものから、骨盤の環状構造が損傷して股関節まで骨折が及んで、手術を必要とする重度なものまで、様々な状態がありますので、それによって治療の仕方も、リハビリの仕方も変わってきます。
骨盤骨折が起こると、痛みや腫れを引き起こします。そして合併症が伴うと、筋肉や血管神経などの損傷を伴い、内臓などの損傷が起こると、生死に関係することもあります。
骨盤骨折とは骨盤を構成している、寛骨、仙骨、尾骨に骨折が起きることです。交通事故や仕事などの、高所からの転落などの、強い衝撃によって起こることが多いですが、高齢者などは、わずかな転倒で起こることもあります。
骨盤骨折に合わせて、内臓や血管などの損傷があると、大量出血することがあります。そのような大量出血をした場合は、ショック状態になります。怪我の程度によっては、固定のみで経過を見る場合がありますし、手術が必要になる場合もあります。
骨盤骨折の原因
骨盤骨折の原因は、自動車事故や高いところからの転落事故のような、事故だけで起こるものなのでしょうか?
骨盤骨折の原因には、まず交通事故が挙げられます。また高いところからの墜落や、転落などの事故による大きな外力が、加わることで起こる外傷などがあげられます。また若年者のスポーツ外傷などもあります。若年者はまだ筋力が十分に固定されてないので、筋肉の付着部が剥がれる剥離骨折もあります。
また高齢者におきましては、わずかな転倒などで起こることもあります。また病気による骨盤骨折もあります。
骨盤剥離骨折
成長期の10歳~18歳くらいまでの、子供たちによく見られるのが、激しいスポーツなどしたときの骨盤剥離骨折です。この骨盤剥離骨折は、骨と筋肉の成長の度合いが著しく違うため、骨盤は骨の中でも剥離が起こりやすく、激しいスポーツなどをするときは、十分気を付けてやることが必要となります。
骨盤剥離骨折が起きた場合は、安静とアイシングで治療します。好発スポーツには、サッカー、柔道・相撲の投げ技、野球の空振り、陸上の短距離、ハードル、ジャンプ等があります。
キックなどでは骨盤骨端部の裂離やボールを蹴る動作では下前腸骨棘が起こります。またダッシュでは腸骨棘の発生が多く見られます。
骨折の種類
骨折の種類は3つに分けられます。
外傷性骨折
外傷性骨折とは外からの外圧が、加わることで発症する骨折です。交通事故や自転車事故、高所からの高所転落事故、高齢者の転倒などがそれにあたります。
疲労骨折
疲労骨折は弱い圧力が繰り返し加わることで、骨にひびが入りそれが骨折につながります。骨の密度の弱い人や、骨の弱い部分が繰り返し、ストレスを受けることで、骨折する骨折です。
骨粗鬆症の人は特に気を付けなければいけませんが、無理な刺激やストレスを受けることは、骨折につながりますので、無理な姿勢を長く続けるなど、骨に疲労を溜めないように、しなければいけません。
疲労骨折については、疲労骨折の症状とは?治療方法や予防方法も紹介!を読んでおきましょう。
病的骨折
病的骨折には腫瘍などの病的に、弱くなった骨に発症する骨折です。これらの疾患には、感染症や癌や骨粗鬆症などがあり、また良性の骨腫瘍などがあります。これらの疾患は骨の強度が部分的に低下して、骨折を起こしやすくなります。
骨が弱くなっているときは、何度も何度もストレスが掛かって、骨盤や股関節に骨折が起きることがありますので、十分気を付けてください。そして骨の密度を強くすることも大切です。
骨盤骨折の症状
骨盤骨折の症状は、どのようなものがあるのでしょうか?
骨盤骨折が起こると、骨盤部位の痛みのため、座ったり歩いたり、自力で体を動かすことが、非常に困難になってきます。骨盤骨折の症状は、少し触っただけでも激痛が走り、内臓に障害が及ぶと、腹痛が起きたり、尿が出なくなったり、神経が障害されて足の感覚がマヒして、歩行がスムーズにできなくなったりもします。また大量出血をすることが多く、大量出血が伴う場合は、ショック状態になることもあります。
骨盤は生殖器や、泌尿器や消火器を支えている骨です。骨盤の骨が損傷するということは、骨が支えているこれらの内臓にも、損傷が及ぶことがあります。特に交通事故や、高所からの落下の事故の場合などは、神経や筋肉、血管などに、ダメージを与えることになることがあります。
内臓に障害が及ぶと、腹痛が起きたり、排泄がスムーズに、できなくなる場合があります。また神経に傷をつけてしまうと、筋肉の感覚がなくなったり、鈍くなったりすることもあります。そのため歩行がスムーズにいかない場合も出てきます。骨折が股関節に及ぶ場合は、股関節の痛みも出てきます。
骨盤は骨自体融合して治りやすい部分ですが、合併症が加わることで、損傷によってはリハビリをしても、後遺症が残る場合もあります。
骨盤骨折の種類
骨盤骨折の種類として、安定型と不安定型があります。
安定型
安定型の骨盤骨折は、歩行などの時に比較的骨盤が、安定している骨折のことを指します。立った時に骨盤に負担が掛からない骨折です。安定型の骨盤骨折には恥骨骨折や、坐骨骨折、腸骨翼骨折などがあります。
不安定型
不安定型骨盤骨折は、骨盤が歩行時に不安定になり、重症化しやすくなります。仙骨や仙腸関節に体重が掛かり、負担が増してしまいます。
骨折した場所に負担が掛かって、骨盤がずれてしまいます。不安定型他の骨盤骨折には、腸骨骨折、仙骨骨折、仙腸関節離開など、比較的骨盤の中心部に近い部分に多いです。この不安定型の骨盤骨折は、重度の骨盤骨折です。
骨盤骨折の検査
骨盤骨折が起こった場合、どのような検査が行われるのでしょうか?
X線・CT・MRIの検査は、絶対に必要となってきます。X線レントゲン写真は、7~10日後に何度も繰り返して撮影することもあります。受傷直後大量出血している場合、切れている血管をこれらのCTやMRI(磁気共鳴画像)で確認します。止血止めをカテーテルで行います。
寛骨臼(かんこつきゅう)骨折の検査
股関節は骨盤側の寛骨臼と、大腿骨側の大腿骨頭の2つの面の、関節が接してできています。寛骨臼骨折はこの大腿骨頭の部分が、ハンマーのように動いて、寛骨臼に衝撃を加えて骨折させ破壊する骨折です。寛骨臼骨折とは、股関節の関節内の骨折なのです。
寛骨臼骨折は高エネルギー外傷による、すなわち交通事故や、落下事故などによる原因が多く、下肢からの関節外力によって、起こりやすいです。寛骨臼は複雑な構造をしているので、内側に腹部臓器があって、外側を厚い軟部組織で、被覆されているために、手術は簡単ではありません。大量の出血を伴うこともありますので、慎重に手術をするかどうかを決めることが大切です。
骨盤輪(こつばんりん)骨折の検査
骨盤輪骨折は寛骨臼骨折を除いた骨折です。
骨盤骨折の治療
骨盤骨折の治療には、どのようなものがあるのでしょうか?
最初にやる治療
骨盤骨折が起こった場合の治療方法は、最初はレントゲンで診断します。しかし骨盤の形状は非常に複雑なので、CTを撮って確認します。また血管損傷や膀胱損傷などを、調べるためには、造形撮影によるCTが必要なります。
血管造影で損傷の動脈などを見つけて、ゼリー状の物質や、金属製のコイルを動脈内に侵入して、人工的に閉塞させる処置の、塞栓術(そくせんじゅつ)を行います。
大量出血をしている場合の治療
大量出血などをしている場合は、まず緊急に止血処置を行います。骨折部を安定化させることが、止血の基本となります。骨盤の周囲を一定の圧力で、圧迫する器具を使ったり、創外固定と呼ばれる骨折部を、体外で仮固定する器具を用いて安定させます。
止血処置が効果的に敏速に行えれば、ショック状態から離脱することも可能です。ショック状態から脱した時は、骨折の治療の計画を行います。
まず下肢をけん引することで、骨折部のずれを少しでも減らします。手術までの間持続的にけん引を行いますが、やり方は大腿骨遠位また脛骨近位に、ワイヤーをさしてけん引をします。
寛骨臼骨折(かんこつきゅうこっせつ)の治療
寛骨臼骨折は骨折が股関節に、及んでいる場合の骨折で、骨が治りかけていても関節のズレがあると、歩行に支障をきたすことになるので、ずれをなくすように手術をします。
寛骨臼骨折は関節内骨折であるために、正しい修復位置に戻すことが重要です。骨のずれや段差をそのままにしておくと、将来人工関節置換術をすることになります。なぜなら骨折が治癒しても、変形性関節症が時間の経過とともに、関節の変形が進行するためです。
寛骨臼骨折の手術は非常にむつかしく、大量の出血などの危険性を伴うために、手術を行うかどうかは、慎重に考えてから決めるほうが良いので、多くの医師の判断が必要となります。
骨盤環骨折(こつばんかんこっせつ)の治療
骨盤環骨折は骨盤の、環状構造が破壊されている骨折です。骨折が起こっているのは、通常前方と後方の2か所で脱臼が起こっています。交通事故や転落事故などの、外からの大きな外力により発生し、内臓の損傷を伴った骨折をすることがあり、大量に出血することもあります。大量に出血した場合は、生命の危険も起こりうる状況になります。
その場合はまず命を救うことを、いの一番に行います。命を安全なものにしてから、骨折の治療は骨折したズレが大きく、不安定な骨折の場合は骨折した場所を、金属で固定した手術が行われます。
骨盤輪骨折(こつばんりんこっせつ)の治療
骨盤の丸い空洞の部分を、骨盤輪と言います。この部分は骨盤底筋という筋肉に覆われています。骨盤底筋肉は出産と大きく関係のある筋肉です。
骨盤輪の中には直腸、S状結腸、尿道、膀胱、肛門などがあります。女性の場合はこれに加えて、子宮、卵管、卵巣、膣が含まれます。
骨盤輪骨折には骨盤輪の切れる場所で違いが出てきます。
- 恥骨結合離開は女性の場合は出産のときに、小さな離開が起こりますが、事故などで大きな離開が起こった場合は、検査が必要です。
- 恥骨~坐骨骨折は骨盤骨折の中で非常に頻度の高い骨折です。骨盤は安定して輪っかが保たれていれば、安静にしているだけで治癒します。
- 骨盤輪二十骨折は骨盤が2か所できれて、骨盤の形がいびつになって不自然な形になっている骨折で重傷化しやすいです。
骨盤輪骨折は骨盤後方の部分が破壊されて、骨折の不安定が強い場合は、手術をしなければなりません。スクリュー、プレート、脊椎固定用のインプラントなどを使用して、骨盤内固定をします。保存的に治癒する場合に比べて、回復は早くなり早期に車いすや、歩行訓練が可能になる利点があります。
恥骨骨折(ちこつこっせつ)、腸骨翼骨折(ちょうこつよくこっせつ)の治療
恥骨骨折は下腹部にある骨折です。腸骨翼骨折は腰の両横にある、ベルトの掛かる部位の骨折です。これらの骨折は、骨盤骨折の中でも軽いほうの怪我です。
治療としましては3週間程度安静にしていると、歩行が可能となり治癒します。
合併症
骨盤骨折で合併症が起こる一番の症状は、足に行く神経が阻害されることがあります。また膀胱や尿道損傷が起こることがあります。足に行く神経が阻害されると、歩行がスムーズにできなくなることがあります。
また膀胱や尿道損傷では、尿や便がスムーズに出なくなることがあります。骨折が股関節に及びますと、股関節の痛みも出てくる場合もあります。
骨盤骨折の予防
骨盤骨折の予防としまして、どのような事があるでしょうか?
事故などは不意に来るもので、避けようと思っても避けられない事が多いですが、骨盤骨折が起こったとしても、軽く済む方法としては、次のような予防ができると思います。
骨の骨密度を強くして、骨の健康を保つことが大切です。そのためにはカルシウムを多く摂取したり、腹筋の腹膜筋を鍛えたりすると、いざといったときに骨折の度合いが少なくて済みます。骨の骨密度を強くすると、少々の衝撃では骨折しにくくなります。
また骨盤骨折をした人の予防としては、正しい姿勢を維持するために意識したり、コルセットを着用したりすることで、腰痛を防ぐことができます。腹部や腰を支える骨盤に、負担をかけることが少なくて済みます。
またストレッチも効果的だと思います。身体が硬いことは転んでしまうと、そのまま衝撃を受けてしまいます。特に高齢者などは普段から歩くことを心がけて、筋肉を柔らかくして転倒などが起きた時には、骨盤骨折が起こらないような予防が大切になります。
まとめ
皆様骨盤骨折について、少しは解っていただけましたでしょうか?あまり骨盤骨折は起こってほしくない疾病ではありますが、事故はどこで起こるかわかりません。その時にいろいろと知識があれば、少しは納得いくことも出てくると思います。
骨盤骨折を起こして、軽症の場合は安静にしていればよいですが、重症の場合は自分では何もできなくなります。まな板の鯉になってしまいますが、しかし治療方法としてどのように進められるのか?手術はしたほうが良いのか?しないほうが良いのか?色々なことを考えなければいけない時が来ます。その時に少しでもお役に立てればと思います。