世の中には様々なタイプの人がいます。「寝ること・睡眠」ひとつとっても、寝るのが好きでたまらない人もいれば、寝るよりも起きていて趣味や仕事をしていたい人もいます。また、必要とする睡眠時間が長いロングスリーパーの人もいれば、少しの睡眠時間でも問題のないショートスリーパーの人もいます。
人によって「寝ること・睡眠」についての価値観は様々ですが、寝るよりも起きていて趣味や仕事をしたい人たちにとっては、「寝るのが好き」な人のことを理解することが難しいかもしれません。
そこで今回は、寝るのが好きな人の心理と、長時間寝てしまう原因について、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
寝るのが好きな人の心理
寝るのが好きな人は、意外なほど多く存在しています。休みの日は1日のほとんどを家にこもって寝ている、という人も少なくありません。
寝るよりも起きていて趣味や仕事をしたくて、寝ることに価値や意味を見い出せない睡眠観の持ち主にとっては、このような寝るのが好きな人の心理や行動は理解できないかもしれません。
そこで、寝るのが好きな人の心理について、ご紹介したいと思います。
疲れをとって体力を回復したい
寝るのが好きな人の心理として最も多いのが、肉体的疲労あるいは精神的疲労によって疲れた状態の身体を休めて体力を回復したい、という気持ちでしょう。
そもそも睡眠の役割は、脳と肉体を休養させるところにあります。人間が身体を動かすための司令塔である脳を働かせ続けると、いわばオーバーヒートのような状態となり、脳の情報処理速度が遅くなって物事への反応速度・思考力・判断力などが低下してしまいます。同様に肉体も動き続けていると、筋肉や内臓が疲労してしまい動きが低下してしまいます。それゆえ、脳や肉体を休養させるために、人間は定期的に眠りにつかなければならないのです。
このように脳疲労や肉体疲労が発生すると、人は本能的に睡眠欲求を生じます。ですから、疲れをとって体力を回復したいという心理は、寝るのが好きな人だけでなく、人なら誰もが感じるものだと言えるでしょう。
気持ちをリフレッシュしたい
寝るのが好きな人の心理の一つとして、精神的なストレスを解消して気持ちをリフレッシュしたい思いの人もいるでしょう。
寝ることは、前述のように肉体的疲労や精神的疲労を取り除く役割を果たします。そのため、その日に溜まった精神的ストレスを寝ることによって解消することができ、気持ちのリフレッシュが可能になるのです。
例えば、何らかの嫌な思いをすると、なかなか気持ちの切り替えをするのが難しくて、モヤモヤした気分を引きずってしまった経験がある人も少なくないでしょう。しかしながら、一晩寝て起きてみると、ただ寝ただけで他に何をしたわけでもないのに、不思議と気持ちが軽くなっているものです。
これは脳疲労が睡眠によって解消されたことによって、精神的疲労や精神的ストレスも一緒に緩和されたわけです。つまり、寝ることは、優れたストレス解消法・ストレス対処法の一つと言えるのですね。
寝ることに心地よさを感じる
寝るのが好きな人の心理の一つとして、寝ること自体に心地良さや快楽を感じていることも挙げられるかもしれません。
前述のように脳疲労や肉体疲労が発生すると、人は本能的に睡眠欲求を生じます。そして、人は欲求が満たされると、心が満ち足りて心地良さや気持ち良さを感じるに至ります。食事をして食欲が満たされると幸せな気分になるように、睡眠欲が満たされる寝入りばなや起床直前には何とも形容しがたい心地良さを感じます。
また、ベッドに身体を横たえているときや、フワフワの布団や枕といった寝具にくるまれているときに、他にはない気持ち良さを感じる人もいます。
このような心地良さや気持ち良さの感覚に心を奪われた人は、結果として寝ることが好きになってしまうでしょう。
悩み事から現実逃避をしたい
寝るのが好きな人の中には、マイナス思考や心配性な性格から様々なことに悩み疲れてしまい、それらの悩み事から寝ることによって現実逃避したい心理状態の人もいるでしょう。
そもそも睡眠中は、浅い眠りのレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠を交互に繰り返すとされています。そして、レム睡眠のときに夢をみることがあると考えられていますが、夢は自分で積極的にみたいと思ってみれるものではありません。つまり、前述のように寝ることは脳を休めることであり、寝ている間は基本的に何も考えずにいられるのです。
ですから、マイナス思考や心配性な性格が理由となって様々な悩み事を抱えがちな人は、悩み事を考えなくて済み一時でも現実世界から離れられることから、消極的な意味で寝てしまうことを好む傾向があると言えるのかもしれません。
長時間寝てしまう原因
このように一口に寝るのが好きな人の心理と言っても、その心理は多岐にわたっており人によって千差万別なのです。
それでは、このような寝るのが好きな人の心理を踏まえた上で、ただ単に寝るのが好きだからと言って、1日中眠り続けることができるのでしょうか?そこで、長時間寝てしまう原因について、ご紹介したいと思います。
疲労が大きいと眠りが長くなる
長時間寝てしまう原因の一つとして、疲労が大きいことが睡眠時間に影響している可能性が考えられます。
成人における適切な睡眠時間は、概ね7~9時間とされています。しかしながら、この睡眠時間で疲労が回復できないほど酷く疲れていた場合には、それ以上に眠りが長くなってしまう可能性があるのです。
特に中高年になると、深い睡眠が得られにくくなりがちで、それに応じて疲労の回復にも時間がかかりがちです。そのため、疲れが抜けないことが原因となって、長くダラダラと寝てしまうことにつながりやすいのです。
睡眠時間が長い体質の人もいる
長時間寝てしまう原因の一つには、平均的な人たちに比べて長い時間の睡眠が必要な体質であることも挙げられます。
前述のように成人の適切な睡眠時間は7~9時間程度とされていますが、中には9時間以上の睡眠を必要とする体質の人がいます。このような人たちは、いわゆる「ロングスリーパー」と呼ばれ、全人口の5%~10%が該当すると考えられています。
ロングスリーパーであることは決して病気ではなく、遺伝的なものであると考えられていて、年齢を重ねて突然ロングスリーパーになることはありません。むしろ、基本的には子供の頃から睡眠時間の長さが特徴的に現れていることが多いとされます。
ちなみに、ロングスリーパーとは逆に、平均的な人たちに比べて短い時間の眠りでも睡眠不足に陥らない「ショートスリーパー」も一定の割合で存在します。
性格が悲観的でネガティブ
長時間寝てしまう要因の一つに、性格が悲観的でネガティブなことも挙げられるかもしれません。
ある研究報告では、ポジティブで外向的・活動的な性格の人は平均より短眠傾向があり、ネガティブで内向的・悲観的な性格の人は平均より長眠傾向があるのだそうです。というのも、ネガティブ思考・マイナス思考の人は精神的ストレスを受けやすく、そのストレス解消のために睡眠を長くとる必要があるからだと考えられているのです。
ちなみに、特にネガティブで内向的・悲観的な性格の人でなくとも、日常生活で何らかの大きなストレスを受けると、その心理的ストレスの回復のために睡眠時間が普段より長くなる傾向があるとされます。それによって、生活リズムが一時的にせよ崩れてしまうこともあるようです。例えば、小学校から中学校に進級して学校が変わった時、会社に入社したり社内で異動があった時など、人生の節目は注意が必要です。
過眠症の可能性
長時間寝てしまう原因として、過眠症の可能性を疑わなければならないケースもあります。
過眠症とは、夜間に十分な睡眠をとっているはずなのにもかかわらず、日中に強い眠気を感じて覚醒していることができずに眠りに落ちてしまう症状のことです。
ただし、日中に眠気を感じて居眠りしてしまったからと言って全てが過眠症であるわけではありません。例えば、不規則な生活習慣で体内時計や睡眠サイクルが乱れ寝不足の場合などは過眠症に含まれません。
過眠症と診断される場合、主に脳機能の異常が見られる三つの病気(ナルコレプシー・特発性過眠症・反復性過眠症)を指します。
ナルコレプシー
ナルコレプシーは、昼間に強い眠気に襲われて場所や状況を問わずに寝入ってしまう過眠症状を主症状とする睡眠障害かつ脳疾患です。
ナルコレプシーで特徴的なのは、感情が高まると全身の筋肉が脱力して姿勢維持ができなくなる情動脱力発作、入眠時に幻覚を見る入眠時幻覚、いわゆる「金縛り」になる睡眠麻痺といった症状も現れることです。
特発性過眠症
特発性過眠症も、昼間に強い眠気に襲われて場所や状況を問わずに寝入ってしまう過眠症状を主症状とする睡眠障害かつ脳疾患です。
特発性過眠症で特徴的なのは、頭痛・動悸・胃腸の不調など循環器系や消化器系などに不調が生じる自律神経症状を伴う点にあります。
反復性過眠症
反復性過眠症は、傾眠期(長時間睡眠の期間)と正常期(通常の睡眠時間の期間)が不定周期で訪れる睡眠障害かつ脳疾患です。
まとめ
いかがでしたか?寝るのが好きな人の心理と、長時間寝てしまう原因について説明してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?
たしかに、人によって「寝ること・睡眠」についての価値観は様々です。それゆえ、寝るよりも起きていて趣味や仕事をしたい人たちにとっては、「寝るのが好き」な人のことを理解することが難しいかもしれません。
しかしながら、実は自分ではどうしようもない理由で過眠症状となったり、睡眠時間が長くなっている人もいます。また、寝るのが好きな人にも、様々な理由や心理が存在しているのです。
ですから、「寝るのが好き」だからと言って、その人のことを怠け者のように判断するのではなく、睡眠の役割や睡眠にまつわる病気の存在を理解して、寛容な姿勢でいることが大切なのではないでしょうか。