三半規管って聞いたことはありますか?耳の中に存在している器官で平衡感覚を保っている器官になります。
この器官が弱いと、揺れを感じやすくなってしまい、車酔いや船結など乗り物酔いになりやすくなってしまいます。乗り物酔いって地味に辛いですし、酔わないことに越したことはありませんよね。
実はこの耳の中の小さな器官は鍛えることができます。乗り物に酔いやすく、旅行やレジャーを楽しめない方、3Dで気分が悪くなってしまう方、三半規管を鍛えてみませんか?
いろいろな鍛え方がありますので、ご自分に合った鍛え方を探してみましょう。
三半規管について
まずは、三半規管について知りましょう。どこにあってどの様な働きを担っているのかなどについて紹介していきます。
具体的な働きや感知能力を担っているのかについて知って、三半規管についての理解を深めていきましょう。
どこにあるの?
耳垢が溜まる場所が外耳道、鼓膜よりも奥に存在する空間が中耳、それよりも更に内側に存在するのが内耳。この内耳に三半規管は存在します。
内耳には、カタツムリの殻の形のような“蝸牛”と、蝸牛に続くカーブしたチューブがあります。カーブしたチューブは三本あるので三半規管と呼ばれています。
人の場合は三つこの管が存在しますが、他の動物では1つであったり2つであることから、この三半規管という名称は人間やその他の3本管を持っているものに対しての固有の呼び方になります。
三半規管の働きについて
重力に対して、身体がどれだけの傾きでどの方向に動いているかという、体の回転運動を感じ、平衡を取ることに役立っている器官です。
ちなみに隣接している蝸牛は音を電子情報に変えて脳に伝える働きを担っています。
回転を感じ取る平衡感覚の中心になるのは三半規管体ですが、三半規管だけで体のバランスを取っているのではありません。身体の内部や体表面にある他のセンサーからの情報と照らし合わせ、連携することで、自分の方向や傾きを判断しているのです。
三半規管は前半規管、後半規管、外半規管の三つで構成されておりそれぞれが90度ずつ傾いて設計されています。これによってそれぞれの器官でXYZ軸の三つの回転運動を感知して3次元空間の平衡感覚を保っています。
特に、視覚情報はとても重要な情報となります。見ることは、正しく“見当をつける”ことで、正しく自分の状態を確認し把握することができます。
三半規管の失調で発生する症状
回転運動を感知している器官が失調すると、どんな事が起こるのでしょうか?
そうです。めまいを起こしてしまいます。ぐるぐると回っているような感じのする、回転性めまいを起こしてしまうのです。高齢者のふらつきの原因だとも考えられています。
回転性のめまいは、三半規管の失調だけではなく平衡感覚に神経や脳幹部の障害によっても起こります。めまいと同時に耳鳴りや難聴、耳閉感が現れ、めまい症状が軽減するに従い他の症状も軽減します。
なぜ三半規管に失調が生じ、めまいが起こるのでしょうか。体質的に三半規管が弱い場合もありますが、加齢とともに弱まることも知られています。また、精神的なストレスや肉体の疲労、睡眠不足などが引き金になります。
乗り物酔い・3D酔い
一番の失調代表は乗り物酔いです。三半規管内のリンパ液がずっと揺られ続けることで、三半規管が上手く働かなくなってしまうのです。
また、体の震動情報と視覚からの情報が合わずに、脳が情報を処理しきれずに気分が悪くなります。
最近では、3D映像で酔い、気分が悪くなる方も多く見受けられます。目の前に飛び出してくる視覚情報と、体感情報のギャップが脳で生じているからです。あまりの視覚的迫力に、車酔いしない方でも気分が悪くなるほどです。
めまい
三半規管にカルシウムの塊である“耳石”が混入したり、リンパ液が増加して発症します。
三半規管が原因で起こるめまいには耳鳴り、耳閉感、難聴を伴うことが多く、めまいの症状が軽減するのに伴って、耳の症状も軽快します。
内耳が原因のめまいとして「メニエール病」が広く知られています。この病気は、精神的なストレスで惹起されることが多く、不定期な発作を繰り返します。内耳のリンパが増えて起こる強い回転性のめまいに、耳鳴りと難聴を伴うのが特徴です。
良性発作性めまい症候群
これは三半規管内に存在している耳石という膜が剥がれることで発生する症状になります。
朝起きて起き上がるときに強く症状を感じやすい傾向があり、顔を傾ける、横になる、目で物を追う、などの運動を行った際に症状が強く発生しやすい症状になります。
1〜2週間で症状は自然に回復する症状で、日が経つにつれてめまいの症状が軽減している場合は特に問題ありません。徐々に悪化していく場合は、脳の病気の可能性も考えられますので、この場合は脳神経外科などの病院を受診するようにしてください。
ただのめまいの場合は耳鼻科での診断が可能です。
耳石が剥がれる原因は、栄養失調や自律神経失調症など、ストレスや生活習慣、食生活などが関わっていることが多くあります。
しっかりとした睡眠や軽い運動、バランスの取れた食事などをしっかり摂って良性発作性めまい症候群の症状につながらないようにしましょう。
三半規管の鍛え方
感覚を鍛えるものなので、少しずつ継続することで、効果が徐々に現われてきます。最初からやりすぎると、気分が悪くなりやすく、継続が難しくなってしまいます。無理のない範囲で地道にお続け下さい。
回転する
いずれも自分から挑む気持ちで取り組んでみてください。回される、揺らされるといった受身ではなく、自分が回す!揺らす!という気持ちでいると、不思議と体も前向きになり、酔いにくくなりますよ。
・ブランコ
一番簡単で手軽に出来てお勧めです。ブランコに座り、ゆっくりと揺れてみましょう。
徐々に振り幅を大きくして、揺れ幅とスピードを上げます。前に向かう時は胸から進むように、後退する時は背中の真ん中で自分を引っ張るように漕ぎます。
・回転イス
座って回ってみます。ゆっくりと回ってみましょう。左右、両方向に回ってみてください。初めはゆっくりと回し、慣れてきたらスピードと回転数を徐々に上げてみます。
・右向け右
立って、右に90度方向転換します。さらに90度、さらに90度で、元の正面に戻ります。兵隊さんになったつもりで、小気味よく一周します。左側も同じようにします。頭の向きを段々と早くして、揺れに慣らして下さい。
・でんぐり返し
お布団の上などで、マット運動のでんぐり返しをします。あらぬ方向に転がり、怪我をしないようにして下さい。
回転運動に強くなるので、自然と三半規管が鍛えられます。連続して行える回数を増やしていくとどんどん耐性が強くなっていきます。
・一輪車
子供であれば、でんぐり返しと一輪車の練習が効果的です。一輪車に乗れるようになると、平衡感覚が養われるだけでなく、体中の沢山の筋肉も使いますから爽快感と達成感も得られます。
・バランスボールで体幹トレーニング
身体を鍛えながらバランス感覚や三半規管を鍛えることが出来るのがバランスボールを使ったトレーニングです。
バランスボールに座った状態で足を宙に浮かしてお尻と上半身の力でバランスを取ります。姿勢を意識しながらバランスを保ちましょう。
ただ座っているだけでも僅かな揺れを常に感じることが出来るので、その揺れに耐性が付くことで三半規管を鍛えることが出来ます。テレビを見るなどの行為をバランスボールに乗って行って三半規管を鍛えていきましょう。
目を閉じて歩く
目を閉じて、ゆっくりと歩きます。慣れた場所で行ってください。よろけても大丈夫なように、壁や手すりの近くが良いでしょう。
目を閉じることで視覚的な平均感覚の情報は脳に送られなくなるので、より三半規管からの情報や耳からの音からの情報の収集が敏感に働くようになって、耳の総合的な機能が鍛えられます。
この働きを最大限まで鍛えることが出来れば、エコーロケーションという音の跳ね返りで周囲の状況や空間を正確に把握できる能力を会得することが出来ます。
目の見えない動物に元々備わっている能力で、盲目の人間でも鍛えることで自転車を運転できる人も存在します。
後ろ向き歩き
つまづくものが何もないところで、後ろ向きに歩いてみます。なるべく壁には手をつかずに、自分の感覚を頼りに歩きます。
転倒しないようにゆっくり行ってください。普段視覚で得ている情報を無くすだけで平衡感覚が狂ってめまいを感じる人も存在します。
この様な症状を感じる場合はかなり、三半規管が弱い状態ですのでめまいや乗り物酔いを起こしやすいでしょう。この症状が無くなるくらいまで訓練すると大分三半規管は鍛えられます。
頭を振る
一点を見つめたまま、頭を右・左・上・下・右斜め・左斜めに動かします。10回を1セットにして続けてみましょう。初めはそっと振ってみて、慣れてきたら段々と早くします。
場所を選ばすどこでもできますが、よろけて転んだりしないよう気をつけて下さい。
もしこの運動で強いめまいを感じる場合は耳石が剥がれることにより起こる良性発作性めまい症候群という症状になっている可能性があります。
ツボ刺激
ツボを刺激することで酔いの症状を軽減したり、酔いづらくすることが出来ます。
・内関
ー腕の内側中央部分で、手首の皺から肘に向かい指3本分のところです。ちょうど、コリコリとした腱2本の間になります。気分を落ち着け、胃の不快感を解消するツボです。
・肩のこっている部分
ー肩こりでも酔ってしまうことがあります。肩関節と頸の間の筋肉を鷲掴みにします。耳の周囲から頭にかけて、痛みを感じつつも気持ちよく響く場所をじんわりと揉み解すようにします。
肩こりの自覚症状がなくても、筋肉が硬くなっていることはよく見受けられます。筋肉のコリは様々な体の不調を引き起こします。知らず知らずにコリや疲れを溜めないよう、普段から体のお手入れを心がけたいものです。
乗り続ける
ちょっとハードな鍛え方ですが、とにかく乗って、身体を慣らします。短距離から始めて、徐々に距離を伸ばします。なるべく遠くの一点に視点を合わせ、視点が揺れないようにすると酔いにくいです。
清涼感のあるガムやキャンディー、飲料水などを手元に置き、爽やかな物ですぐに気分転換できるようしておくと良いでしょう。
食べ物で対処しよう!
ペパーミントやレモンなど、口の中に爽やかさが広がるものが効果的です。ガムや飲料水など、手軽に口にできるものを準備しておくと安心です。
乗り物酔いになってしまった場合に症状を抑える効果のある食べ物を紹介します。
・レモン
気持ちの切り替えを促したり、冷静さを取り戻す働きがあります。
しかし吐き気が強く発生しているときはレモンの酸の刺激が胃に更に影響を与えて吐き気が強くなる事があります。
すでに嘔吐している場合は、逆に胃を酸で荒らしてしまって再度吐き気を発生させる事もあります。ですので、吐き気や嘔吐しているときは柑橘系の飲料は避けたほうが良いでしょう。
うがいなどで使用する際には臭気を取る効果や、リフレッシュ効果があるのでレモン水などを使用するのは有効です。
・ペパーミント
消化管の調子を整え、頭をスッキリとリフレッシュします。乗り物酔いや時差ぼけを軽くしてくれます。
二つをブレンドしても良いでしょう。頭がクリアになり、すっきりした気分にしてくれます。
ミントにアレルギーを起こす方もあります。ハーブを使う場合、初めはごく少量で試すことを忘れずにいて下さい。
・飴、ガム、炭酸飲料
何かしらを常に口にしていることで気が紛れて酔いの症状が軽減するという証言がたくさんあります。
特に子供は気分が悪くなってしまったら、その気分の悪化に集中してしまい更に気分が悪くなるという負のスパイラルに陥っていまいます。それを避けるために何かを口にすることで気を味覚にそらせて状態の悪化をふせぐことが出来ます。
特に有効な物が唾液がたくさん出るものや唾液をしかり飲み込める飴、ガム、炭酸飲料が効果的です。
・生姜
生姜には血行を良くする効果や嘔吐中枢の感度を弱くする効果があります。これによって酔の症状が軽減することは科学的にも明らかになっています。
生姜湯などの飲み物や上記の炭酸水とあわせてジンジャーエールなどを選択してそこにしょうが汁などを後から足して摂取すると効果的でしょう。
紅しょうがなどであれば単体でも摂取しやすくおすすめです。
空腹はNG
どうせ酔ってしまうのであれば、空腹の状態にしておいた方が酔わないし、吐くものが胃の中に無いから吐き気も無いだろうと思ってしまいますが、それは間違いです。
空腹の状態の方が酔いやすくなります。満腹状態はよくありませんが、お腹が5〜8割ほど適度に満たされている状態が最も自律神経が安定し、リラックスしている状態になります。
逆に空腹だと感覚が敏感になり、揺れなどを感知しやすく気分が悪くなります。軽く何かお腹に入れている方が酔わなくなりますので朝ごはんを抜くなどの行為は避けましょう。
しかし、にんにくなどの臭いものを食べていると自分の息の臭いで気持ち悪くなるので、それらは避けたほうが良いでしょう。
どうしてスポーツ選手は目が回らないの?
アイススケートの選手はトリプルアクセルやその場で遠心力を使って回転を行うなど、かなりの回数回転しているのにどうして目が回らないんだろうと疑問に思いませんか?
バレエダンサーなどもそうですが、どうして目が回らないのかについて紹介します。
慣れが最も大きな要因
日々の訓練による慣れによって目が回らなくなっています。
普通の人は、何度も回転運動などで三半規管内のリンパの流れが止まらずに眼振が発生します。ある程度の回転運動については眼振運動で、回転運動を相殺して目が回らないようにしますが、激しい回転では制御が効かなくなってしまいます。
これが毎日の訓練により、身体が慣れて三半規管のリンパの流れの情報を無駄に脳に伝えなくなって眼振が発生しなくなります。
また、一点を見つめる事や軸を安定させるなどのコツも存在します。回転させる動きを予め予測している軌道で行うことで酔いづらくさせるものです。
逆回転であれば酔う
選手たちも完全にどの回転運動にも対応できるかというとそうではなく、普段から慣れていない運動や逆回転であれば、同じように酔うと言う結果が出ています。
酔の症状は比較的抑えられますが、それでも一般人同様に目が回るようです。
まとめ
三半規管について
- どこにあるの?
- どんな働きがるのか
三半規管の失調
- 乗り物酔い、3D酔い
- めまい
- 良性発作性めまい症候群
三半規管の鍛え方
- 回転する
- 目を閉じて歩く
- 後ろ向き歩き
- 頭を振る
- ツボ刺激
- 乗り続ける
- 食べ物
三半規管の脆弱化は加齢やストレス、不規則な生活でも起こりやすくなりますから、日常生活を忙しく過ごしてるうちに少しずつ悪化する可能性もあります。
三半規管を鍛え始めたからと言って、一朝一夕に強くなるものではありませんが、続けることで必ず効果を実感できる器官でもあります。乗り物酔いは決して治らないとあきらめる前に、三半規管の鍛錬を少しずつ始めてみてはいかがでしょうか?
遠出や遊びに億劫にならず、イベントを心待ちに出来るようになる日がきますように!
関連記事としてこちらの記事もあわせて参考にしてみてください。