セロトニン症候群という言葉を聞いたことがあるでしょうか。セロトニン症候群を簡単に説明すると、脳内のセロトニンが過剰に分泌されることによって生じる諸症状を指します。
本日は、セロトニンとはどのようなもので、セロトニン症候群となってしまう原因、そしてその対策についてお話しできればと思います。セロトニンについて興味のある方、もしくはセロトニン症候群と思われる症状に苦しんでいる方に、ぜひとも参考になればと思います。
セロトニンとは
では、セロトニンとは一体どのような物質で、どのような効果があるのかについて簡単に説明します。
神経伝達物質のうちのひとつ
セロトニンは、主に心の安静を保つ上で重要な神経伝達物質です。セロトニンが正常な量体内に存在すると、精神的に安定し、不安に陥ったり、過度にいらついたりしないのですが、セロトニンが不足すると不安に陥ったり、小さなことですぐに腹を立ててしまったりと、精神を不安定にしてしまいます。
セロトニンは神経伝達物質ですから、脳にも存在するのですが、その多くは腸内に存在します。腸が第二の脳と呼ばれる所以でもあるのですが、腸内環境が悪化することが、体内のセロトニン量を少なくしてしまうことに繋がります。
セロトニンが過剰に少なくなってしまうと、神経系に異常をきたし、うつ病等の精神病を引き起こします。逆に、体内のセロトニン量が大きくなりすぎると生じてしまうのが、セロトニン症候群と呼ばれるものです。
セロトニン症候群について
では、セロトニン症候群が具体的にどのようなものなのかについて説明していきましょう。
セロトニン症候群の症状
セロトニンが体内に過剰にあると、神経系に異常が発生し、肉体的、精神的な症状が生じます。
まず、肉体的な症状として挙げられるのが、吐き気、体温調整が困難になることによる高温、血圧をコントロールできず高血圧になってしまったり、汗を大量に書いてしまったり、極度の緊張、心拍数の増加が挙げられます。これらの症状は、セロトニンが過剰に存在することで、自律神経を正常に機能させることができず、適切な反応を阻害しているためです。更年期障害も、女性ホルモンの低下による自律神経の乱れですから、似たような症状ともいえます。
また、筋肉に伝わる神経にも異常をきたし、足の裏やふくらはぎがつる、といったような筋肉に痙攣が生じたり、過度に筋肉が硬くなってしまったり、寒いわけでもないのに体が震えてしまうことがあります。
さらに、セロトニンの過剰は、神経的、つまり脳内の神経についても支障をきたします。脳内にセロトニンが過剰な状態となると、正常な判断能力が低下することで錯乱するようになってしまったり、小さなことでイライラしてしまったりする過度な興奮状態となったり、最悪の場合こん睡状態に陥ります。
セロトニン症候群の原因
薬によるもの
セロトニン症候群はセロトニンが過剰に体内に存在することによって生じますから、その原因は、セロトニンの過剰摂取によるものです。
まず挙げられるのは、セロトニン神経系に対して機能を増進させる薬剤の過剰摂取によるものです。
セロトニンは神経伝達物質で、ある情報を伝達した後、元の神経細胞に戻る性質があります。しかし、セロトニン量が絶対的に少ない方は、セロトニン量を維持するため、この戻るはずのセロトニンを体内に残すためにSSRIと呼ばれる薬を処方されます。このSSRIは、うつ病の治療にももちいられる薬ですので、これが正しく飲まれる場合については問題ありません。
しかし、うつ病の方が、自己の症状を改善しようと過度な服用をしてしまうと、セロトニン量が増大してしまいます。そして、セロトニンが増えれば精神的に落ち着きますが、また少なくなると、今度はSSRIを大量に摂取するようになり、結果的に薬に依存してしまいます。そのため、過剰なSSRIの摂取が繰り返され、結果としてセロトニン症候群を発症してしまうのです。
また、SSRIに限らず、うつ病に有効とされている薬は多数存在していますが、それらを複数の種類過剰に摂取することでも、セロトニン症候群を発症してしまう恐れがあります。
サプリメントの過剰摂取による場合
また、健康を増進するはずのサプリメントの過剰摂取によっても、セロトニン症候群を発症する恐れがあります。
セロトニンを作る成分としてトリプトファンというアミノ酸があります。トリプトファンが過剰摂取された場合には、その分だけセロトニンが過剰になってしまうので、セロトニン症候群を発症する恐れがあります。また、トリプトファンのサプリメントを過剰摂取していない場合でも、うつ病の薬物治療と相まって、セロトニンが過剰になってしまう場合があります。
日本国内で製造販売されているサプリメントは、比較的含有量が少ないのですが、海外産のものは、どうしてもトリプトファンの量が過剰な場合があります。それらのサプリメントも、適量を守って摂取する分には問題ないのですが、過剰摂取をしてしまえば、体に不調を及ぼす危険性が飛躍的に高まってしまいますので注意が必要です。
セロトニン症候群にならないための対策
では、セロトニン症候群を防ぐには、どのような対策を講じる必要があるのかをお伝えします。
薬品の過剰摂取を控える
まずは、うつ病治療において処方されるような、SSRIを代表とするセロトニンの量を増やす薬の過剰摂取を控えることが挙げられます。
うつ病で苦しんでいられる方は、早く改善して通常の生活に戻りたいと、医師の指示に従わず、処方された薬を過剰に摂取してしまうことがあります。もちろん、これらの薬を過剰に摂取すれば、一時的にですが、症状は改善されます。しかし、薬がなくなり、国外で販売されている薬に手を伸ばしてしまい、どんどん摂取量を増やしてしまえば、適正な量の摂取に戻ることが難しくなってしまいます。また、セロトニンの量が過剰に増えることとなりますので、うつ病を改善しているつもりが、他の病気を併発してしまう、というのでは本末転倒です。
そのため、医師の指示に従って薬を飲むことをお勧めします。医師の指示は、あくまでうつ病に苦しむ方々が早く通常の生活に戻れるように、それぞれの体調を考慮して薬品の量を決めているのです。その指示に逆らって、過剰摂取をしてしまえば、うつ病改善が等のいてしまいます。ですから、医師の指示に従い、正しい量の薬の摂取を続けることが必要です。
そして、日常的にサプリメント等を摂取している方は、そのことを医師に聞かれずとも報告するようにしてください。薬単体では害が発生しない場合でも、サプリメントと合わさることでセロトニン症候群を発症する恐れがあります。
うつ病対策として、セロトニン量を増やす
セロトニン症候群の主な原因が、うつ病で用いられる薬の過剰摂取によるものです。ですから、そのような薬を飲まなくてもいいように、うつ病対策をすることが重要です。食事や生活習慣から、セロトニン量を増やし、うつ病対策をするのが効果的です。
セロトニンがつくられる元となる栄養素が、先ほど紹介したトリプトファンと、ビタミンB6です。トリプトファンは、牛肉や鶏肉といった肉類に豊富に含まれており、とくに牛肉のレバーには多く含まれています。また、肉類が苦手な方でも、魚類を食べられる方には、魚を多く食べることをお勧めします。つまり、トリプトファンは、動物性のタンパク質に豊富に含まれています。また、植物性タンパク質にもトリプトファンが含まれていますので、豆腐や納豆といった豆を用いた製品を摂取することをお勧めします。
ビタミンB6が豊富に含まれている食材としては、にんにくやマグロといった魚介類が挙げられます。また。豆類やバナナの様な果物にも多く含まれます。これらの食品だけを摂取するとなると、栄養バランスが偏ってしまいますから、これらの食品を意識しつつ、栄養バランスを維持した食事をすることが、うつ病対策にとっては最善なものとなります。
また、人間の体は、日光を浴びることでもセロトニンが生成されます。そのため、朝早くのウォーキングは、セロトニンを分泌させる上では必要となります。可能な限り、朝に起きて、夜に寝るというような、自然な生活を心がけましょう。昼夜逆転の生活になってしまう方は、セロトニン量が少なくなってしまうため、食品でセロトニンを維持できるよう意識してみてください。
セロトニン減少を抑える
セロトニン量が減少してしまう一番の理由が、乱れた生活習慣にあります。夜勤がメインの方は、どうしても日光を浴びる時間が限られてしまうので、セロトニンが生成されず、徐々に減少してしまいます。また、夜更かしをしてしまう方の場合も、朝に起きることができなくなってしまいますから、セロトニンが減少してしまうのです。
さらに、食生活にも気を付けていないと、セロトニンの減少を引き起こします。インスタント食品やファーストフードのような食事を継続して摂取していると、栄養状態が著しく悪くなってしまうので、注意が必要です。
まとめ
セロトニンとは、神経伝達物質のひとつで、これが減少すると、極度の不安感に陥ってしまったり、小さなことでイライラしてしまうようになります。セロトニン症候群とは、このセロトニンが体の中に大量にあることによって生じる病気を指します。
セロトニン症候群の症状としては、自律神経の乱れによる吐気、体温調整の異常、大量の汗といったものや、筋肉に作用する神経に異常をきたし、痙攣や震え、脳の神経に異常をきたして、錯覚や不安感の増大等があります。
セロトニン症候群の原因としては、薬物の過剰摂取等が挙げられ、セロトニン症候群を予防するには、薬物の過剰摂取を控えたり、薬に頼らなくて済むように、生活習慣や栄養を意識して気に摂取することが挙げられます。
セロトニン症候群は、自己管理を徹底することである程度予防できますし、薬の過剰摂取も、医師の判断に従うことで防げます。ですから、あまり恐れることはせず、出来る限り健康的に生活することを心がけてみてください。