近年、インターネット上で目にするようになった「放置子(ほうちご)」という言葉。その名のとおり“親からほおったままにされている子供”を指すネットスラング(インターネット利用者間でのみ通用する特殊な言葉)であり、辞書などで調べても意味は出てきません。
一般的に、学校が終わった後なども親の目がなく一人で過ごす小学生くらいの子供のことをそう呼んでいます。親から構ってもらえなかったり無視されることにより親からの愛情に飢え、その愛情を周囲の大人から得ようと様々な行動を起こす放置子について、特徴や困った事例、近所で見かけた時の良い対応方法などご紹介したいと思います。
放置子になる原因
多くの場合、親がネグレクト(乳幼児に対する適切な養育を親が放棄すること)であることが考えられます。
例えば、
- 子供に対して無関心
- 充分な食事を与えない
- 泣いても無視する
- 病気でも治療を受けさせない
- 体や服が汚れたままでもそのままにしておく
- 寒い季節も防寒に充分な服を着せない
- 子供を置いて長時間外出する
- いつも強く叱って子供を情緒不安定にさせる
などの行為をする親のことです。
また、核家族化が進み共働きや離婚などによりどちらか片方の親とのみ生活しているという状況が少なくない現在では、親と子供が接する時間が極端に少なくなることによりコミュニケーション不足となったり、親の目が行き届かない時間が増えてしまうことも原因の一つと考えられます。
放置子はそうされることにより親からの愛情が不足し、愛情に飢えています。そして親から得られない愛情の代わりを周囲の大人に求め、時には問題行動を起こしてしまいます。
放置子の特徴
放置子の特徴について紹介します。
見た目の特徴
清潔感がないのが多くの放置子の特徴です。具体的には以下のような状態が多いようです。
- 髪の毛がボサボサ
- 服のサイズが合ってない、汚れていたり伸びきっている
- 靴下や靴がボロボロ
- お風呂に入っておらず、顔や体が汚れいてる
行動の特徴
親の育児放棄をうかがわせる状況や、親の代わりを他の大人に求めているからこその行動や対応が見られます。
- 時間を気にすることなく公園などで一人で遊んでいる
- 愛想が良く他人によくなつく
- 初対面でも恥ずかしがることなく人と接する
- 一度家にあげるとなかなか家に帰らない
- 常にお金を持ち歩いている
- 常にお腹が空いている
放置子が起こす困った行動
意外にも多くの方が放置子と遭遇しており、インターネットで調べると様々な体験談や放置子の行動で困っている方の相談などが確認できます。
例えば
「子供と公園で遊んでいたら“一緒に遊ぼ!”と話しかけられ、とても愛想のよい子供だったので少しの間仲良く遊んだら、“お家にいってもいい?”としつこくお願いされたので困った。」
「玄関の軒下で待っていたり、インターホンをしつこく鳴らしたりする。」
「可哀想になって一度家にあげたらなかなか帰ってくれなかった。」
「一度家にあげたら毎日のように訪れてくるようになった。」
「家にあげると食べ物を要求されたり、勝手に冷蔵庫を開けられた。」
「家の庭など、勝手に敷地内に入ってきた。」
などがありますが、まだ小さな子供が起こす行動がゆえに、同情心から強く注意することができず困っている方が多いようです。
放置子に関わってしまったら?
放置子になる原因は親にありますが、親に注意をしてもネグレクトの場合や非常識な場合が多く、取り合ってもらえずあまり効果はありませんし、トラブルに発展する恐れもあります。インターネット上では「関わってしまったばっかりに、困っている」「関わらない方が良い」「強く拒否するのが良い」との意見が多くみられますが、それで良いのでしょうか?見て見ぬふりをしたり、強く拒否してしまったりした自分に対し罪悪感や嫌悪感を感じるのではないでしょうか?
日本はまだまだ安全な国だと思っている方も多いかと思いますが、スーパーやデパートで数分目を離しただけでも誘拐にあい命を落とすことがあります。親の目がなく長時間一人で行動する放置子は、児童犯罪の格好の標的となります。
実際に放置されていた子供が行方不明になったり、事件・事故に巻き込まれたというケースも存在します。罪のない子供たちを犯罪から守るためにも、周囲の大人ができることがあればしてあげるべきではないでしょうか?
「この子、放置子かもしれない」と感じたら
育児のプロでもない素人ができることには限界があります。そこで、市町村・都道府県の児童相談所など公的機関に通告することが良い方法だと考えられます。放置子・ネグレクトも虐待の一つです。『児童虐待の防止に関する法律』というのもがあり、そこでの虐待の定義は以下のようにされております。
- 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること
- 児童へわいせつな行為をすること、させること
- 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置
- 児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
また、第六条では“児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。 ”とあります。
下記「児童相談所全国共通ダイヤル」は全国共通の電話番号となり、問い合わせると近くの児童相談所につながります。また、通告・相談は匿名で行うこともでき、その内容に関する秘密は 守られます。
・児童相談所全国共通ダイヤル……189(いち・はや・く)
従来の児童虐待防止法の通告の対象は、虐待を目の前で見た場合や、実際に体のアザなど確認した場合など、虐待が明白な場合が想定されていましたが、現在は“児童虐待を受けたと思われる児童”に拡大されています。
「もし、間違った報告をしてしまったら…」「間違った報告をしたばっかりに迷惑をかけたりトラブルになるのでは…」と心配になり、通告を躊躇する方も多いと思いますが、実際には虐待がなかった場合や間違った通告であったとしても罰せられることもありませんし、通告者のプライバシーは守られるので心配ありません。
その他、「子育てが辛く、つい子供にあたってしまう…」「近くに子育てで悩んでいる人がいる…」などの場合も相談してみてください。
まとめ
近年、子供が巻き込まれた事件・事故や、親による虐待など子どもに対するあまりにひどい事件を耳にすることが多くなり、悲しい現実がそこにあります。放置子に関わると面倒なことになると考えるのが正直なところかもしれませんが、彼らに罪はありません。見て見ぬふりをしたり、拒否してしまうのではなく、勇気をもって通告してあげてください。そうすることにより救われる命・人格があるはずです。
すべての子どもたちが親からたっぷりの愛情を受け、安全に、健やかに育っていって欲しいと願わずにはいられません。
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