鎖肛の治療には手術が必要?原因や症状、鎖肛との付き合い方を考えよう!

新生児の先天的な病気は様々あります。誰もが聞いたことがある病気といえばダウン症があるでしょう。精神発達の遅れ、独特の顔立ち、奇形等の症状を発症します。

先天的な病気がわかった時、親としてはどんな気持ちになるか想像に難しくありません。健康で生まれてくれればいい、とそう思うことはありますが、そうではないことも現実にはあります。

さて、そんな先天的な病気の一つに鎖肛があります。鎖肛とは生まれながらにして肛門や泌尿器に異常がある病気です。この鎖肛についてくわしくみていきましょう。

鎖肛とは?

赤ちゃん

鎖肛とは肛門や泌尿器に異常がある病気のことです。肛門や直腸の状態・位置によって高位型・中間位型・低位型と分類されます。それぞれの具体的な症状は以下のとおりです。

高位型

肛門直腸無発生

排便する際、肛門はその出口です。この肛門が先天的な原因のため、正常に作り出されない状態を肛門直腸無発生といいます。きちんとした処置をしなければ排便ができなくなり、深刻な症状を発症します。

肛門直腸無発生はさらにいくつかの種類に分けられます。1つが「直腸前立腺部尿道瘻」です。これは直腸と前立腺の尿道部がトンネルで繋がっている状態です。前立腺は男性にしかないので、男児のみの症状です。

女児であれば「直腸膣瘻」と呼ばれます。これも男児と同じように直腸と膣がトンネルでつながっている状態です。肛門は形成されず、きちんと排便することができません。

無瘻孔

これら症状は他の臓器とトンネルでつながり、肛門が作られない種類です。しかし、他の臓器とつながりがなく、肛門や直腸が閉鎖している「無瘻孔」という症状もあります。

その中でも「直腸閉鎖」は、便を排出するために収縮する直腸が閉鎖している状態です。高位型の鎖肛ではこれら状態が確認できます。

中間位型

直腸球部尿道瘻

直腸が尿道と陰囊の中間部(球部)とトンネルで結合している状態です。この場合でも肛門が作られておらず、処置が必要です。男児のみの症状です。

直腸前庭瘻

直腸が正常の位置より前にある状態です。他の部位とのつながりはありません。

直腸膣瘻

直腸が膣とトンネルで繋がっている状態です。肛門とは繋がっていません。

肛門無発生

肛門が外部から見えない状態です。

低位型

肛門会陰部皮膚瘻

直腸が正常な位置に近いものの、肛門まで達しておらず、皮膚のすぐ下にある状態です。

肛門狭窄

肛門はあるものの、狭窄している状態です。

鎖肛の原因とは?

妊娠

鎖肛は先天的にみられる症状です。つまり、お母さんのお腹の中での発育の過程で何かしらの異常が起こり、鎖肛を発症します。

ただ、どうして鎖肛が起こるのかということについては、現在でもわかっていないことが多く、先天的な疾患であるということしかわかっていません。

鎖肛が起こる確率としては5000人に1人。この頻度は先天的疾患としては低い数字ではありません。誰にでも起こりうる病気といえるでしょう。

胎児の発育過程で直腸、泌尿器、生殖器は最初は1つです。妊娠6週間後を境にこれらは分かれ、それぞれの臓器として発達します。

この段階でこれら臓器の発育に異常が生じることで、鎖肛を発症します。他の臓器との間に瘻孔ができるのも、この時期であるといわれています。

鎖肛の症状とは?

赤ちゃん泣き顔

実際に鎖肛を発症したとき、どのような症状を発症するのでしょうか?具体的には以下の症状がみられます。

目で見てわかる肛門の閉鎖

赤ちゃんを取り上げた時、肛門を見てみるとつるんとしていて穴がない。このように、肛門がないことが目で見てわかることがあります。

直腸が浅い

赤ちゃんの体温を計るとき、直腸に体温計を挿入することがあります。この際、体温計がうまく入らなかったり、浅かったりすると直腸の狭窄の可能性があるでしょう。

お腹の張り

お母さんのお乳を飲み、尿や排便が作られますが、鎖肛ではこれらをうまく排出することができません。そのため、お腹に過度な張りがみられます。

嘔吐

お腹の張りと同様、飲食物が適切に排出されないため、口から嘔吐してしまいます。出生後、このような症状がみられるようであれば注意が必要でしょう。

尿に便が混じっている

鎖肛では様々な症状がありますが、その中には泌尿器と直腸が接続されてしまっているケースがあります。この場合、尿と一緒に便が排出されることがあります。

膣から便が排出される

尿に便が混じっているケース同様、女児であれば膣から便が排出されることもあります。これも、体内で生殖器と直腸が繋がっていることが考えられます。

便が細い

便が細いという症状も稀に起こります。これは新生児の時に異常は見つからないケースも少なくなく、ある程度成長し、症状を自覚して検査をしてみると、直腸の位置がおかしいということがわかります。

鎖肛の治療とは?

幼児

鎖肛の治療は基本的に手術となりますが、低位型・中間位型・高位型によって方法が異なります。それぞれの症状の程度に応じて、治療法をみていきましょう。

低位型

直腸が他の臓器との接続がなく、それほど重篤な症状を発症していない低位型の状態。この状態では、根治手術を行います。状態によりますが、それほど大掛かりな手術となることは少ないようです。

女児であれば「会陰式肛門形成術」という手術を行います。これは会陰部(膣と肛門の中間部)の皮膚下に直腸が来て閉塞してしまっている場合、正常な位置に肛門を形成する手術です。

また、他の臓器に交通路ができている場合は、排便の処置を行い、時期をみて肛門を形成する手術を行います。

中間位型

状態の経過を待ち、ストーマを作ります。ストーマとは便や尿を排出するために腹部に形成する排出口です。ストーマから一時的に体外へ排便をさせます。その後、肛門形成術を行います。術後、経過を見て作成したストーマを閉じます。

高位型

中間位型同様、ストーマを作成します。きちんと排便等ができることを確認し、その後の経過をみます。その後、開腹し、排便・排尿に関わる臓器を正しい位置へ戻す手術を行います。術後、ストーマを閉鎖します。

鎖肛の予後は?

鎖肛の治療をし成功したとき、その後の生活はどのようなものになるのでしょうか。鎖肛はしばし、症状の程度により生活に支障をきたすことがあります。

低位型の鎖肛の場合、それほど深刻な支障はきたしません。少し直腸の位置がずれていたりというような、そのくらいの症状なので、術後の予後は良好です。

一方で中間位型、高位型の場合、自然排便するまでリハビリが必要であったり、強い便秘、便失禁が起こります。肛門機能が低下しているため、しばし注意が必要です。

鎖肛の手術をした後、その後の目標は自分の力で自然排便できるようになることです。そのためには、家族の支えがとても重要なものになるでしょう。

ブジー治療について

ブジー治療とは手術後、肛門がしまってしまわないよう、肛門を器具で開くことをいいます。定期的に行わなければ、肛門は閉じてしまうので医師の指導のもときちんと行うようにしましょう。

ダウン症との関係性

先天的な遺伝子疾患に伴い、障害を持ってしまうことをダウン症といいます。ダウン症には精神発達の遅れ、特徴ある顔立ちの形成といった症状がみられます。

ダウン症は内臓の形成にも特徴があります。心臓に何かしらの異常を形成することが最も多いケースですが、その次に消化器官の異常が多いといわれています。

鎖肛の場合、ダウン症児の3%から5%に発症するといわれています。これは一般的な5000人に1人という確率からかなり高い数値といえるでしょう。

そのため、ダウン症と診断されたのであれば、心臓等の循環器以外にも鎖肛をはじめとする消化器の検査をする必要があるでしょう。

ダウン症の発症原因はよくわかっていないですが、その背景には高齢出産がきっかけとなっていることがあります。高齢出産に伴い、卵子が老化し、遺伝子異常が発症すると考えられています。

男性の精子の老化もダウン症との関連性が指摘されています。男性の高齢化もダウン症を招くひとつの原因なのです。自分には原因がないと言い張る男性がいますが、きちんとした検査をすることをオススメします。

もし自分の子供が鎖肛になってしまったら?

親子の手

あまり聞きなれない鎖肛という症状。もし、そんな症状に自分の子供がなってしまったとき、親としてはとても辛いことかと思います。

ただ、症状は手術によって十分完治することができます。また、症状によっては予後の経過も良いものもありますから、余計に心配することはありません。

もちろん、中間位型・高位型というような少し症状の重い場合でも、きちんと手術をすることで症状を改善することができます。

その後は自然排便できるように、きちんとサポートする必要がありますし、辛いこともあるかもしれませんが、子供に付き添ってあげることが大切です。

将来、子供はそんなことを覚えていないというでしょう。ですが、そんな風に健康に育つために親ができることを一つ一つ積み重ねていくことが、病気との付き合い方なのだと思います。

まとめ

鎖肛という病気は、命を落とすほど重篤なものではありません。しかし、本来あるべきものがないという症状は親としても、なかなか精神的な負担になることがあります。

もちろん、きちんとした治療を行えば完治することはできますし、予後も良好であることが多いです。ですから、「もうだめだ」というようなことを思うのは考えすぎかもしれません。

健気に生まれてきた自分の子供が病気を抱えていることは非常にショックなものです。けれど、それでも子供は自分の足で立ちあげり、成長していくことでしょう。

そうなるようにサポートするのは親の使命なのだと思います。病気に悲しむこともできますが、そうではなく二人三脚で歩むこともできます。病気に負けることなく、立ち向かっていく。そう思うようにしてみてください。

  
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