脱肛の治し方とは?手術の方法や治療法を紹介!原因や症状はなに?

脱肛とは、「肛門粘膜脱」といいます。直腸の下部や肛門の粘膜組織が肛門の外に出てしまうことです。出血や痛みをともなうことがあります。自然に元に収まることもありますが、指で押し込まないと元に戻らないようになったり、飛び出したままになったりします。

脱肛というより、「イボ痔」という方がわかりやすいかもしれません。イボ痔には「内痔核」と「外痔核」がありますが、進行すると、肛門の外に飛び出てしまいます。

脱肛と言おうが内痔核と言おうが、なかなか人前では口にできない病気ですよね。ましてイボ痔なんて、女性は絶対に知られたくない病名です。でも、脱肛で悩む人は、決して少なくありません。なにしろ、紀元前のエジプトから、人類を悩ましてきた病気なのですから。

脱肛とは、どんな病気か?原因・症状・治療法・予防法について、お伝えしますね。

脱肛とは、どんな病気か?

mountain-1209738_960_720岩に座る人

脱肛とは、直腸の下部や肛門の粘膜組織が肛門の外に飛び出してしまう病気です。特に、内痔核・内外痔核が進行すると、粘膜組織が肛門外に飛び出します。そのため、「脱肛」は「内痔核」を意味することが多いのです。

[脱肛の原因]

脱肛の原因は、いくつかあります。1つは加齢です。

加齢により、肛門括約筋や、直腸粘膜・肛門粘膜を支える組織が弱くなると、排便時に下腹に力が入ると、粘膜組織が肛門の外に飛び出てしまいます。

また、肛門周辺の手術の後遺症で、脱肛になることがあります。

でも、脱肛の最も大きな原因は、内痔核という病気の進行です。内痔核が進行すると、排便時に下腹に力を入れたり、長時間立っていたり、スポーツなどして力を入れたりした時、内痔核が肛門の外に飛び出してしまいます。初期は、自然に元に戻りますが、内痔核が進行するにつれて、指で押して戻さないと収まらないようになり、さらに、指で押しても戻らないようになり、飛び出したままになってしまいます。

[内痔核とは・・・?]

「痔」という、やっかいな病気があります。痔には、痔核(イボ痔)・裂肛(切れ痔)・痔瘻(穴痔)の3種類があります。

裂肛(切れ痔)は、便秘などで硬い便を無理に押し出そうとして、肛門の皮膚が裂けたり、切れたりした状態です。便秘がちな女性に多いようです。

痔瘻(穴痔)は、肛門周辺のくぼみに大腸菌が感染して炎症が起こり、化膿することがくり返された結果、細菌の入り口と膿の出口がトンネルのようにつながってしまう状態です。下痢をしやすい男性に多いようです。

痔核(イボ痔)には、内痔核と外痔核があります。

痔核

痔核は、だれにでもあります。健康な人でも痔核を持っています。直腸の先端にある肛門周辺には、静脈が網目状に集まっています。細い動脈や筋肉、細かい線維もいっしょに集まり、痔核となっています。痔核は、肛門の閉鎖に役立つクッションのようなものです。

この痔核に慢性的な負担がかかりすぎると、毛細血管の集まる組織がうっ血して、血行が悪くなります。痔核が腫れて大きくなり、周囲の組織が痔核を支えきれなくなります。周囲の組織が断裂して、痔核が外に飛び出るようになります。

直腸側の痔核を内痔核、肛門側の痔核を外痔核と言います。外痔核は内痔核といっしょにできて、いっしょに問題を生じるので、ふつう「痔核」と言うと、「内痔核」を意味します。「内外痔核」ということもあります。

外痔核が単独で問題を生じる時は、「血栓性外痔核」と言います。肛門の外側に血豆ができて、腫れて激しい痛みが出ます。出血は多くありません。長時間、歩いたり、座ったり、アルコール類や激辛料理を取りすぎたりが、原因となります。

[内痔核が起きる原因]

内痔核は、痔核に慢性的な負担がかかりすぎることによって起こります。

➀便秘

内痔核が起きる一番の原因は、便秘です。便秘になると、便が固くなり、排便が困難になります。便を無理に押し出すために、肛門部を強く刺激することになります。そのため、うっ血が起こり、血行障害が起こります。便を押し出すためにいきむので、下腹に力が加わり、肛門部の負担が増します。

便秘は一過性のものではなく、長年続くことが多いようです。肛門部が慢性的に刺激され、強い負担がかかり続けるので、痔核が腫れて大きくなります。

②慢性的な下痢

下痢をすると、便が急激に排出されるので、肛門部を刺激し、大きな負担がかかります。慢性的に下痢をしていると、肛門部に負担がかかりすぎ、痔核が腫れて大きくなります。

③妊娠・出産

妊娠中期から後期になると、妊婦さんは常に思い荷物を抱えているような状態になり、腰や下腹部に負担がかかります。出産時は同じ姿勢でいきむので、下腹部に力が加わり、肛門部の負担が急増します。妊娠や出産をきっかけにして、内痔核が起きたり、悪化したりすることが、よくあります。

④長時間、同じ姿勢を続ける

長時間、立ち続けたり、歩き続けたり、座り続けたりすると、身体の下方にある肛門部に重力が強くかかります。重力が負担となって、うっ血して血行が悪くなり、痔核が腫れて大きくなります。

⑤激しい運動や力仕事

激しい運動や力仕事をすると、どうしても下腹部に力が入ります。肛門部に強い負担がかかり、うっ血や血行障害が起きます。

脱肛(内痔核)の症状と治療方法

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脱肛(内痔核)の主な症状は、出血と粘液です。時には疼痛が生じます。治療法には保存療法・外来処置・外科手術があります。

[内痔核の症状]

最初の症状は出血です。痛みはありません。鮮やかな赤い血が出ますが、紙につく程度から、便器にボタボタ落ちる程度、ほとばしるように出血する程度まで、いろいろです。出血する頻度も、1ヶ月に1~2回だったのが、1週間に2~3回になり、排便する度毎に出血するようになります。

出血する頻度が高くなると、内痔核が肛門から飛び出るようになります。つまり、脱肛するようになります。初めは、排便を終えると、自然に元に収まります。やがて、指で押し込まないと戻らないようになります。さらに進行すると、運動したり、重い物を持ち上げたり、クシャミをしたりするだけでも、内痔核が肛門の外に飛び出てしまいます。ついには、常に、肛門外に飛び出したままになります。

内痔核が肛門外に出る時に、異物感があります。ふだんは痛みがないのですが、脱肛すると、痛みが出ることもあります。粘膜組織は弱いので、脱肛すると、こすれて出血したり、痛みが生じたりするのです。

飛び出した痔核を押し戻すことができなくなり、常時脱肛したままになると、粘液の分泌が増えます。また、排便後の便の始末が行き届かず、便が肛門周囲に残ることがあります。そのため、便や粘液で下着が汚れます。便や粘液で肛門周囲がベトベトして、湿疹ができたり、痛痒くなったりします。

嵌頓痔核(かんとんじかく)

飛び出した痔核が肛門括約筋に締めつけられると、激痛が生じます。これを「嵌頓痔核」といいます。一部が壊死したり、感染を起こしたり、発熱したりします。

出血には要注意

内痔核の出血は、ふつう、真っ赤な鮮血です。暗赤色・暗紫色の出血は、直腸や結腸からの出血かもしれません。大腸ポリープや大腸癌の疑いがあります。真っ赤な鮮血でも便に混じっている場合は、大腸ポリープ・大腸癌の検査をオススメします。

私の父は、排便時に鮮血が多量に出たのを痔核と思い込み、大腸検査を受けるのが遅れました。進行性の大腸癌で、手術後一年も経たずに亡くなりました。65歳になったばかりでした。

内痔核の主な症状は脱肛と出血ですが、医師とよく相談して、大腸に異常がないことを確認する方が安全です。

[脱肛(内痔核)の治療方法]

脱肛(内痔核)の治療法は、薬剤による保存療法が基本です。脱肛が進行して重症になると、外来処置を行います。さらに悪化した時は、外科手術することもあります。

➀保存療法

内痔核だけでなく痔疾全般には、基本的に保存療法を行います。保存療法は、生活療法と薬剤投与です。

生活療法では、便秘や下痢などしないように注意して、排便時に肛門にかかる負担をできるだけ少なくします。これは、脱肛の予防法と同じです。肛門周囲はできるだけ清潔にします。排便後や入浴時には、肛門周囲をよく洗い、乾燥させます。通気性の良い下着をつけ、アルコール類や激辛食品は控えるようにします。

外用薬は座薬と軟膏です。内痔核が肛門の奥にあれば座薬、肛門近くにあれば軟膏を使用します。軟膏は、肛門周囲の湿疹や痛痒感を改善するためにも使います。外用薬は、出血・痒み・痛みなどの症状を緩和するだけでなく、排便時の肛門への負担を軽減します。外用薬を使用することで、排便がスムーズになります。

外用薬としてステロイドを含む軟膏を処方することがあります。ステロイドを含む軟膏は強くて効果的ですが、長期間の使用はオススメできません。水虫(白癬症)や皮膚炎を生じることがあるので、医師とよく相談し、医師の指示に従って使用するようにしてくださいね。

内服薬には、炎症や腫れを抑えて痔核を縮小させるもの、痔核の血流を改善するもの、痛みや出血を軽減するものがあります。緩下剤を服用して、便を柔らかくしたり、便秘を防いだりします。

②注射療法(硬化療法・ALTA療法)

外来処置の1つに注射療法があります。

出血が激しく、なかなか止まらない場合は、硬化剤を痔核に注射して、痔核の血流を抑え、出血を止めようとします。

ALTA療法では、ALTA剤を痔核に注射して、痔核を縮小して脱肛を防ぎます。

注射療法は手術より簡単ですが、効果が持続せず、再発することが多いといいます。硬化療法の効果は約1年です。ALTA療法も、しばらくすると再発が増えてきます。

注射は麻酔なしで行うので、痛みを感じないところに注射します。内痔核には注射できますが、外痔核をともなっている内外痔核の場合、注射するのは難しくなります。外痔核に強い痛みが生じます。注射液の注入は、粘膜下に行います。粘膜下に届かないと、痔核の表面粘膜が損傷されます。注入場所が深すぎると、肛門周囲が薬剤の影響を受けて、危険な状態になることがあります。

注射療法には、下腹部の痛み・発熱・血圧の低下などの副作用があります。

③ゴム輪結紮(けっさつ)療法

外来処置の1つです。麻酔なしで、脱肛している痔核を取り除きます。

特殊な機器で輪ゴムを伸ばして、内痔核の根元に輪ゴムをはめます。輪ゴムがじわじわと痔核の根元を締めつけていき、1~2週間で痔核を脱落させることができます。ただし、麻酔なしなので、外痔核をともなわない内痔核のみだけに有効です。外痔核をともなっている内外痔核の場合は、痛みが生じて、療治が困難になります。

④外科手術(痔核結紮切除手術)

保存療法や注射療法では、なかなか症状が改善できなかったり、再発をくり返したり、進行して日常生活に支障をきたすようになると、手術による根本治療が必要になります。手術は、痔核の根元の血管を結索して、痔核を切除します。

手術時の大量出血と術後の出血には、要注意です。術後の後遺症として、肛門狭窄があります。肛門が狭くなり排便障害が起こります。痔核が再発することもあります。

脱肛(内痔核)の予防法

prairie-dog-1361276_960_720食事

脱肛(内痔核)は、何よりも予防が大事です。予防法は、内痔核の治療法の1つである生活療法と同じです。内痔核を発症した人にも効果があります。

[排便時の負担を軽くする]

➀排便コントロール

脱肛(内痔核)は、便秘でも慢性的な下痢でも起こります。女性は便秘することが多く、男性は下痢することが多いようです。

便秘を解消してスムーズに排便できるようにします。食物繊維の多い食事をしたり、便秘薬を服用したりすると、効果があります。ストレスを溜めないように心がけることも大事です。運動不足も便秘の原因になりますから、毎日、軽い体操をしたり、ウォーキングしたりすることをオススメします。

下痢をしないためには、身体に合った食物をとるようにして、サプリメントで腸内環境を整えます。ストレスは下痢にも良くないので、できるだけ解消するようにします。

②排便に長時間かけない

便意を催したら、すぐにトイレに行きます。ロダンの「考える人」の姿勢で、排便します。長くいきんだり、ふんばったりすると、肛門に負担がかかるので、5分前後で終わらせます。

便秘していると、なかなか排便できません。途中で切り上げて、時間を置き、またトイレに行くようにしてください。長時間、ガンバルのはNGです。

[肛門周辺を清潔にする]

できるだけウォシュレット(シャワー・トイレ)を使用することをオススメします。脱肛している人には、必需品です。

入浴時には、意識して肛門周辺を洗うようにします。

ただし、ウォシュレットの水勢が強すぎたり、洗いすぎたりすると、肛門を刺激するので負担になります。

[冷やさない]

身体が冷えると、血行が悪くなり、痔核に血行障害を起こしやすくなります。脱肛している場合は、血行が悪いと、痔疾を進行させます。

冷房のかけすぎ・冷たい飲み物のとりすぎに注意します。夏でもシャワーだけで済まさず、じっくりとお風呂に入って、身体を温めるようにしてくださいね。

[長時間、同じ姿勢でいないようにする]

長時間、同じ姿勢でいると、重力が肛門に負担を与えます。立ちっぱなし、座りっぱなしには要注意です。長時間、歩き続けるのも、よくありません。仕事上、どうしても同じ姿勢でいることが多くなると思いますが、時々、休憩して姿勢を変えることをオススメします。

[食生活を整える]

➀バランスの良い食事を適量とる

肉や魚、野菜をバランス良く食べるようにします。野菜の食物繊維は便秘に効果的ですから、野菜不足にならないようにします。お米の御飯は、便秘にも下痢にも効果的です。

ダイエットで、炭水化物制限や食事量制限をしすぎると、便秘しやすくなります。腹八分目が身体にいいようです。

下痢をしやすい人は、自分の身体に合わない食物をとっていることが多いので、何を食べると下痢を起こすのか、確かめるといいですよ。

②アルコール類や刺激物は控える

アルコール類や刺激物(激辛食品・激辛調味料など)は、血流を刺激して充血させます。特に、脱肛を発症している場合は、要注意です。アルコールや香辛料は適量ならば、血流を良くする効果がありますが、取りすぎはNGです。

コーヒー・紅茶・緑茶類は、関係ないと言われています。温かい物を飲むようにすると、身体が温まりますよ。

まとめ

脱肛(内痔核)は、珍しい病気ではありません。女性の3人に1人は脱肛(内痔核)だと言います。痔核は健康な人にもあり、肛門閉鎖に役立っているのですから、だれでも脱肛(内痔核)になる可能性があるのです。

脱肛の原因は、日常の生活習慣にあります。便秘や慢性的な下痢、長時間の同じ姿勢など、日頃何でもなくしていることで、脱肛を発症させたり、悪化させたりするのです。

ですから、生活習慣を少し変えるだけで、脱肛を予防したり、症状を改善できたりします。

脱肛に気づいても、なかなか医者へ行きにくいものです。市販の薬で治そうとする人が多いようです。特に女性は、人に知られるのをイヤがり、病院に行きたがりません。

市販薬で改善できればいいのですが、進行すれば、手術が必要になることもあります。「嵌頓痔核」になったりすると、激痛が生じるだけでなく、壊死など危険なことになります。

出血は、痔疾だけの症状ではありません。重大な大腸疾患を発症している場合があります。「脱肛(内痔核)かもしれない」と思ったら、できるだけ早く医師に相談してください。肛門科に行くのがイヤならば、まず内科か消化器専門病院に行くことをオススメします。

  
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