母親とは、あなたにとって、どのような存在ですか?もしかしたら、読者の方の年代によっても、母親に対する感情は異なるかもしれませんね。思春期で反抗期の時期には、母親に対してウザイ・嫌いといった感情が芽生えがちですが、成人して大人になるにつれ安定した関係に戻るというのが一般的だと言えるでしょう。
しかしながら、近年は毒親という言葉が生まれるなど、母親が嫌い、あるいは母親が好きになれないという子供も増えているようです。そして、母親が生みの親である親子関係の存在や、子供は親孝行すべきという世間一般の道徳概念によって、母親との人間関係に悩んでしまうのです。
そこで今回は、母親嫌いになる原因や母親嫌いの問題点、そして母親との付き合い方などについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
母親を嫌いになる原因
子供が母親を嫌いになってしまうのは、どうしてなのでしょうか?そもそも多くの子供たちにとって最大の庇護者となるのが母親であり、それは人間だけでなく哺乳類全般でも同様ですから、子供は母親を好きで頼ることが生物学的にも通常な姿だと言えるでしょう。
そこで、まずは子供が母親を嫌いになる原因について、ご紹介したいと思います。
幼少期に母親を嫌いになる原因・理由
多くの子供達にとって最大の庇護者となるのは、基本的に母親であると言えます。というのも、母親が主に子育てを担ってきたという歴史的背景や、人間だけでなく哺乳類全般でも母親が子育ての主要部分を担当しているという生物学的な理由があるからです。
近年、子育てや育児に関する父親・お父さんと母親・お母さんの分担が進みつつあるとはいえ、幼児期や幼少期の子どもたちがパパよりもママを好きな傾向にある事実は否定しようがありません。
しかしながら、幼少期の子供が母親に「嫌い」と口にする場合が、しばしば見られます。これは、子供が成長とともに人間関係を形成していく初期の段階で、最大の庇護者・理解者である母親の愛情を試している行動だと言って良いでしょう。子供達は、母親に対して嫌われるようなことをすることで、自分自身に対する愛情の存在を無意識的に本能で確認しているのです。
ここで母親の絶対的な愛情を確認する行動は、何かあっても帰るところがあることを子供が認識して、その後の人格形成において様々なチャレンジができるようになると言う点で非常に重要なことなのです。
このように幼少期の子供が母親に対して「嫌い」と口にするのは、本心からではなく母親の愛情を確認する心理の現れだと言えるでしょう。
思春期に母親を嫌いになる原因・理由
子供が思春期を迎えると、子供と母親の関係性は急速に変化をしていきます。それまでは、無条件に母親に甘えていた子供たちが、思春期に入ると母親に対してよそよしくなり、母親を避けるようになります。そして、母親が子供に何かすると、それに対して反抗する反抗期となるのです。
このような思春期・反抗期は、子供から大人へと成長して自立する過程です。身体は第二次性徴を迎えて、ホルモンバランスの変化が生じます。それに伴い、精神状態が不安定になるため、子供は母親のすることに対してウザイと思ったり、母親が嫌いだという気持ちが芽生えたりするのです。
例えば、母親が幼少期と同じように子供に干渉し過ぎると、精神的自立をはじめる子供にとっては、母親に対する嫌な感情が生まれてしまうでしょう。母親の考え方・意見や価値観などを子供に押し付けたり子供扱いする場合も、同様に子供は母親に対して悪感情を抱いてしまいます。
だからといって、思春期・反抗期の子供を放任すれば良いかというと、決してそうではありません。幼少期と同じで、やはり間違ったことには怒り、良いことには褒めるといった子供が愛情を確認できる場面は絶対的に必要なのですね。
このように思春期の子供が母親を嫌いになるのは、子供が大人へと成長して自立する過程の現れと言えます。ですから、母親としては、子供と意識的に適度な距離感を保って見守ることが大切になります。
成人しても母親が嫌いな原因・理由
思春期や反抗期の時期に、母親に対してウザイ・嫌いといった感情が芽生えたとしても、通常は成人して大人になるにつれて安定した関係性へと移行します。
しかしながら、成人しても母親嫌いがある場合は、状況は深刻だと言えるでしょう。成人しても母親嫌いが残る原因として、次のような原因が挙げられます。
- 母親による子供への肉体的な虐待
- 母親による子供への精神的な虐待
- 育児放棄(ネグレクト)
これらの原因が過去のトラウマとなって母親嫌いとなることもあれば、これらが現在進行形として母親嫌いとさせていることも考えられるのです。
母親による子供への肉体的な虐待
母親による子供への肉体的虐待は、最もイメージしやすい母親嫌いの理由と言えるでしょう。幼少期は身体も十分に成長していませんから、大人である母親に力では全く敵いません。母親の精神状態がストレスなどで不安定となり、そのストレスのはけ口として子供に躾(しつけ)と称して暴力を振るう事件は、たびたびテレビや新聞で報道されています。
このような子供に対する暴力や虐待は、当然ですが子供の心に傷を残しますので、それが過去のトラウマとして何かの拍子に思い出されると、母親嫌いになってしまう可能性があると言えるでしょう。
母親による子供への精神的な虐待
母親による子供への精神的虐待が、実は成人が母親嫌いとなる最も多い原因と言えるかもしれません。
例えば、母親が良かれと思って子供を過度に束縛したり、あるいは母親が子供時代にできなかったことを子供に強制して子供を過度に私物化したりといったことが、実は精神的な虐待に該当します。
また、母親が旦那・夫の愚痴や不満などを過度に子供に話すことも、子供が母親のストレスのはけ口に利用されており、精神的な虐待の例として挙げられます。この場合、子供は両親の不仲を見て育ちますので、人格形成上にも悪影響があると言えるでしょう。
さらには、兄弟姉妹の間で母親がその扱いに明らかな差を設けることも、精神的虐待になりかねません。信じられないかもしれませんが、綺麗に成長する娘に対して母親が女性として嫉妬して、男兄弟(息子)を溺愛して娘を差別するといったケースがあるのです。
このように母親に虐待の認識が無くても、精神的虐待に該当するケースがあります。そして、このような精神的虐待がトラウマとなって、母親に対して嫌悪感を抱いてしまう可能性があるのです。
育児放棄(ネグレクト)
育児放棄(ネグレクト)も、成人が母親嫌いとなるきっかけになる可能性があります。育児放棄は母親だけに限りませんが、母親に育児放棄をされると、それがトラウマとなって母親を嫌いになる可能性は十分にあるでしょう。育児放棄の具体例として、次のような事例が挙げられます。
- 子供に食事を与えない
- 子供が病気でも病院に連れていかない
- 洗濯や掃除をせず不潔な家庭環境
- 学校に行かせない
母親を嫌いになることに関する社会的な問題点
このように子供が母親を嫌いになる原因は、主に幼少期や成長期といった成長過程で現れる一時的な場合と、虐待などによるトラウマの場合とに分類できます。
ここでは、虐待や育児放棄などによるトラウマで母親を嫌いになることに関する社会的な問題点について、ご紹介したいと思います。
虐待が顕在化しにくい場合がある
社会的問題の一つに、母親による精神的な虐待が存在しても、それが周囲に顕在化しにくい場合があることが挙げられます。
特に母親が子供を過度に束縛したり、子供に対して過干渉な場合、表面的には母親は子供の世話に熱心であるように見えます。その結果、子供が母親から精神的虐待を受けていても、周りには愛情を持った模範的な母親に映ってしまい、その虐待が顕在化しにくいのです。
また、子供の側も生みの親である母親を、心情的に完全な悪者にすることができません。というのも、子供と母親の間には生物学的にも法律的にも親子関係が存在し、他人との関係性のようにドライに割り切ることに罪悪感を感じてしまうからです。そして、社会に広まっている子供は親孝行すべきという道徳概念も、そのような子供の罪悪感を大きくする要因となっているかもしれません。また、幼少期から虐待が家族生活の中で当たり前となっていれば、虐待であることにすら子供が気付かないという場合もあるでしょう。
このように母親の虐待の仕方や子供の心理面から、母親の子供に対する虐待が表に現われにくいケースが存在するのです。
共依存
共依存とは、母親が過度な束縛や過干渉など支配的な立場にあることで子供に依存するだけにとどまらず、子供が母親の支配的な立場を逆に利用する形で自らの自立を遅らせるなど、母親と子供が互いに依存しあうような関係性のことです。
母親は過度な束縛や過干渉などによって、子供が自分に依存しなくてはならない状況を作りだすとともに、そのような状況を作りだすこと自体が母親の子供に対する依存を示しています。一方で、子供は違和感を感じたとしても自立するよりも楽だと考えて、母親の支配を正当化するような理由を作り出して、現状に甘んじようとするのです。
しかしながら、このような母親と子供における共依存の関係性は、特に子供の心理面で歪みをもたらし、アダルトチルドレンを生む要因にもなります。そして、何かのタイミングで、子供の心理的な歪みが顕在化すると、当然ですが子供の人生に悪影響が及びますし、場合によっては母親を恨んだり嫌いになるといったことにつながるのです。
アダルトチルドレン
アダルトチルドレンとは、子供が成長過程を機能不全家族の中で過ごしたことにより、成人して大人になった後もトラウマ(心理的外傷)に悩まされる人たちのことを言います。
機能不全家族は、家庭内に頻繁な夫婦喧嘩・肉体的虐待・精神的虐待・育児放棄・親のアルコール依存などの問題が存在し、家庭として機能していない家族のことです。
そして、アダルトチルドレンには、自己肯定感の低さ・現実逃避・コミュニケーション能力の欠如など様々な特徴が見られ、多くが何らかの精神疾患を抱えています。
ですから、虐待や育児放棄などによって母親を嫌いになった人は、そのトラウマと前述のような道徳観念や肉親関係の存在との狭間で悩み続けるため、アダルトチルドレンに該当する場合もあるのです。
母親との付き合い方や対処方法
それでは、成人になっても母親が嫌いだと自覚した場合に、どのように自分の状況について対処すれば良いのでしょうか?
また、母親が嫌いだと自覚して以降、どのように母親と付き合っていけば良いのでしょうか?そこで、成人しても母親が嫌いな場合における対処法や母親との付き合い方について、ご紹介したいと思います。
被害者意識にこだわらない
前述したように成人になっても母親が嫌いな場合、その原因には母親の子供に対する酷い仕打ちがあることが多いのが事実です。子供から大人に成長して自立心や自分で判断する能力を身につけると、「友達は普通に育っているのに、どうして私だけ…」と被害者意識が芽生えてしまうことは避けられないでしょう。
たしかに、母親を嫌いな人たちが、母親による虐待や育児放棄の被害者であることも事実であり、子供が母親を選ぶことはできませんから同情されるべきことかもしれません。しかしながら、厳しい言い方になってしまいますが、被害者意識にこだわったり、周囲の同情を買っても事態は好転しないのです。
ですから、被害者意識にこだわるよりも、前向きに親から自立して自分の人生を充実させることに焦点をフォーカスすべきでしょう。
母親の変化を期待しない
人間の性格や考え方は、簡単に切り替わることはありません。自分を見ても、周囲の他人を見ても、結局のところ同じような考え方や行動に終始して、大して変化はしませんよね。そして、性格や考え方が簡単に変わらないのは、母親も人間ですので同じなのです。
どうしても母親は肉親ですから、社会的に理想とされる親子関係に戻れるかもと期待してしまいがちです。しかしながら、母親も様々な弱い部分を持つ人間ですので、長年染みついた性格や考え方を切り替えることは困難なのです。
それゆえ、子供の期待するような強く理想的な母親像への変化を期待することは、ほとんどが裏切られて失望させられることになるのが通常でしょう。ですから、母親の変化を期待するのではなく、過去のトラウマから自分が解放されて、自分の人生が充実するように自分を変化させようとするほうが建設的だと言えます。
母親との距離を置いて自立する
成人になっても母親が嫌いな場合、被害者意識にこだわらず、母親の変化を期待しないという二つの心構えに加えて、母親のいる実家を離れて物理的に距離をとることも有効な対処法であり母親との付き合い方と言えます。嫌いで肌が合わない他人と距離を置くように、母親とも距離をとるのです。
たしかに、肉親であることや親孝行すべきという道徳観念などの他にも、お金や仕事などの都合もあり、転居をすることに障害を感じるかもしれません。しかしながら、様々な理由をつけて現状を正当化しようとすることは、前述した共依存の関係に他なりません。
ですから、共依存の深みに嵌らない為にも、自分の人生を充実させる為にも、勇気を出して転居して母親と物理的な距離をとりましょう。そうすれば、自分と母親の関係性を、より客観的に見られるようになるでしょう。
心療内科などの病院を受診する
自分なりに努力しても、物理的に母親との距離をとっても、なお母親との関係性に悩みが生じる場合は、もしかしたらアダルトチルドレンなのかもしれません。
アダルトチルドレンは医学的な精神疾患名ではありませんが、アダルトチルドレンの多くは心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病・社交不安障害・自己愛性パーソナリティー障害などの精神疾患を有しています。
ですから、自分一人で思い悩むのではなく、心療内科などの専門の医師やカウンセラーに相談してみると良いでしょう。また、病院で同じような患者が集う自助グループを紹介してもらい、参加してみると良いかもしれません。というのも、自分と同じ悩みを抱える人が他にもいると知ることができ、それぞれの体験談を共有することは、心理的な安定をもたらしてくれる効果があるからです。
まとめ
いかがでしたか?母親嫌いになる原因や母親嫌いの問題点、そして母親との付き合い方などについて、ご理解いただけたでしょうか?
幼少期や思春期における母親嫌いと、成人以降に残る母親嫌いとの間には根本的な違いが存在します。そして、成人以降に残る母親嫌いは、より深刻なものと言えます。というのも、母親が生みの親である親子関係の存在や、子供は親孝行すべきという道徳観念が、子供の悩みを大きくしてしまうからです。
また、母親嫌いの原因である精神的虐待が顕在化しにくかったり、母親と子供の共依存という関係性が、事態をより複雑化するケースも存在します。
このように一口に母親が嫌いと言っても、そこには非常に取り扱いに慎重さを要する問題が山積しているのです。
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