鼓膜再生の方法とは?治療法と注意点、原因を紹介!

私たちの身体は、たくさんの素晴らしい機能が備わっています。身体の仕組みについて、普段から意識することはあまりないかもしれませんが、当たり前のように感じていることも、改めて見直してみると、驚くほど優れた構造で役割を果たしています。

例えば、「音を聞くこと」に関してもそうです。日常生活で、様々な音や声を聞けるのは、耳が機能しているからこそです。空気中の振動が鼓膜に伝わり、鼓膜の振動が電気信号に変換され、神経節細胞・大脳聴覚皮質に伝わることで、音として認識されています。

すなわち、「鼓膜」は音を聞くための最初の通り道であるとも言えるのです。鼓膜が破れてしまうと、正常に音を聞き入れることが困難になります。では、もし、鼓膜が破れてしまった場合、再生は可能なのでしょうか?

そこで、ここでは、それらの疑問を紐解くために、鼓膜が破れる原因や、鼓膜の再生について、ご紹介いたします。

鼓膜が破れる原因

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耳は「外耳」「中耳」「内耳」の3つで構成されており、鼓膜は外耳と中耳を隔てるようにして存在しています。耳たぶが空気の振動を集め、外耳道を通り、鼓膜を震わせることで音を脳に伝えています。

また、わずか0.1ミリ程度の厚さしかなく、空気圧にとても敏感に反応するので、実は私たちが想像する以上に破れやすいのです。飛行機に乗ったときなどに、耳が痛くなるのは、気圧の変動で鼓膜が凹むためです。

では、鼓膜が破れる原因としてあげられるのは、どのようなことなのでしょうか?早速見ていきましょう。

中耳炎

中耳炎は鼻の奥から入ってきた菌が繁殖し、中耳の部分が炎症を起こす病気です。抵抗力の弱い小さな子供によく見られますが、大人も風邪やダイビングなどが引き金となり、中耳炎を起こすことがあります。

中耳炎になると、鼓膜の奥にある「中耳腔」と呼ばれる所に膿が溜まり、鼓膜を外耳道側に圧迫します。膿が溜まり過ぎると鼓膜を破り、外耳道を通って耳垂れとして外へ出てくるのです。

鼻水が溜まった状態や喉の炎症があると、中耳炎を悪化させる可能性があるので、まずはそれらの治療を行いますが、治療をしてもなかなか改善が見られない場合は、鼓膜を切開して、内部に溜まった膿を出すこともあります。

また、飛行機やダイビングなどで、急激な気圧の変化によって起こる「滲出性中耳炎」の場合、中耳腔に滲出液が溜まり、内部の圧力が下がります。すると、外耳道側ではなく中耳腔側へ鼓膜が凹み、破れてしまうことがあるのです。

中耳炎については、中耳炎が大人に現れるとどんな症状?治療方法も紹介!を参考にしてください。

衝撃

鼓膜は空気圧の変化にとても敏感です。ボールが耳にぶつかったり、耳を強く叩かれるなどの衝撃を受けると、外耳道から鼓膜までの間が、まるで注射器の押し子を一気に押したような状態になるため、強い圧力がかかります。すると、その圧力に耐え切れなくなり、鼓膜が破れてしまうのです。

これは希なケースですが、爆発による大きな音(=激しい空気振動)や爆風(=強い空気圧)を浴びて、鼓膜が破れたという症例も見られます。

また、柔道やボクシングなどの格闘技の選手は、このような原因で鼓膜を損傷した人が多くいるようです。

外傷

外から見るとわかりませんが、鼓膜は耳の奥深くにあるわけではなく、意外と浅い場所に位置しています。そのため、耳かきをしていて誤って鼓膜を破ってしまうケースや、虫が耳の中に入り込んで鼓膜を傷つけ、破れてしまうというケースがあります。

「耳かきをしている人の側を通るときには、ぶつからないように気をつけなさい」と小さな頃に言われた経験がある人もいるのではないでしょうか?ほんの些細なことでも鼓膜が破れる可能性があることを思えば、この言葉にも頷けます。

鼓膜再生のための治療方法

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鼓膜が破れると、まったく音が聞こえなくなるイメージがあるかもしれませんが、実際には一瞬で何も聞こえなくなるということはありません。

強い痛みを感じた後、水の中にいるような音の聞こえ方になり、周囲の音を正確に聞き取りづらくなります。場合によっては出血や耳垂れ、めまいや耳鳴りを伴うこともあるようです。

鼓膜が破れている可能性がある場合は、何よりもまず、耳鼻咽喉科を受診してください。

また、鼓膜は傷のように再生しない印象を抱く人も多いかもしれませんが、傷の程度によりますが、軽度の場合は自然に治癒します。

さて、鼓膜再生のための治療法について、さらに詳しく見ていきましょう。

自然治癒

破れた箇所が、比較的小さな穴であれば、耳鼻咽喉科を受診した後、自然に鼓膜が再生するのを待ちます。鼓膜が再生すれば、元のように聴覚が回復するので、一生何も聞こえなくなるというわけではありません。

実は、鼓膜というのは意外と再生能力が高いため、自然治癒の場合、1週間~10日、長期になったとしても2~3ヶ月ほどで再生します。薬の服用などもとくにありませんが、耳垂れがある場合には、点耳薬や抗菌薬などの投与が必要になります。

また、小さな子供の場合、中耳炎で鼓膜が破れるとひどく痛がることがあります。そのようなときには、清潔なガーゼで耳垂れを拭き取り、保冷剤で冷やすと痛みを若干和らげてくれるので、耳鼻咽喉科を受診するまでの間、保冷剤を持っていくと良いでしょう。

手術療法

破れた箇所が広範囲に及ぶ場合や、中耳炎で鼓膜再生が困難な場合は「鼓膜形成術」と呼ばれる手術療法が必要になります。

この手術は、身体のほかの場所から手術に使用する組織を採取し、それを破れた箇所に貼り付け、血液からつくったフィブリン糊で接着するというものです。

所要時間は20分~30分と比較的短時間に終わり、通常1~2週間の入院が必要となりますが、最近では日帰りで鼓膜形成術を受けられる医療機関もあるようです。

小さな子供の場合は、局所麻酔だとどうしても動いてしまうので、全身麻酔で行われます。そのため日帰り手術が可能な病院でも最低1日の入院が必要になります。

費用は、保険適用で6万円~10万円程度と高額ですが、90%以上の確率で聴力が回復する非常に有効な手術です。また、このような自分の皮膚組織を接着する手術のほかに、「軟骨膜」のついた軟骨を耳介から採取し、それを鼓膜部分に移植する手術もあります。

この手術は従来の鼓膜形成術に比べて閉鎖率が良く、フィブリン糊も使用しないため感染症の心配もなく安心です。ちなみに、この手術では1万円~30万円(加入している健康保険や年齢によって異なる)が費用の目安なります。

保存的治療

これは、破れた穴が比較的小さな場合に適応の治療法です。刺激を与えて鼓膜が自然に再生するのを促す方法で、特殊な紙を貼り付けて刺激を与える方法や、自分の血液から点耳薬をつくり、点耳して再生を促す方法、そのほかにもいろいろな方法があります。

費用は5000円~1万円程度、手術の所要時間もかなり短時間で済むため、体への負担が少ないというのがメリットですが、成功率が低いので、ベストな治療法を医師としっかり相談することが大切です。

再生療法

これは従来の治療法とは少し異なり、近年開発された新しい治療法です。この治療法では、鼓膜が破れた箇所の周りを針で刺激し、傷つけて、再生するための基盤となる細胞を呼び寄せます。

そこへ、「塩基性繊維芽(えんきせいせんいが)成長因子」と呼ばれる栄養素をスポンジに浸し、刺激した箇所に乗せることで鼓膜の再生を促すというものです。

麻酔も必要なく、3週間前後で鼓膜が再生すると言われており、早い人だと1回の治療で鼓膜が再生したという例もあるようです。4回までは施術可能で、後遺症の危険性が少ないというのもメリットと言えるでしょう。

しかし、まだ保険適用外のため自己負担額はかなり高額になります。

治療中の注意点

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鼓膜再生の治療を受けたら、あとは組織が回復するのを待つのみです。鼓膜が再生するまでの注意点としては、以下のようなことが挙げられます。

耳に水が入らないように注意する

最も注意しなければならないのは、鼓膜再生までの期間、耳に水が入らないようにするという点です。耳に水が入ると、水に潜んでいる病原性の高い細菌やウイルスによって、中耳炎を起こすことがあります。入浴の際には耳に綿を詰めるなどして十分に気をつけましょう。

刺激物は避ける

鼓膜が破れた場所には傷がついており、とてもデリケートな状態になっています。炎症を引き起こすのを防ぐためにも、アルコールなどの刺激物は避けるようにしましょう。

栄養バランスの良い食事を摂る

鼓膜再生のために特別効果的な食材というのは明確にはありませんが、傷ついた組織を修復し、再生するのに必要な細胞をつくるためには、十分な栄養素が必要です。

タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル、鉄分など、バランスの良い食事で身体の修復作用が正常に機能するよう、食事の面でもサポートしましょう。

強く鼻をかまない

何度もお伝えするようですが、鼓膜は空気圧に敏感です。鼻をかむと、鼓膜が膨らむような経験がある人もいるかもしれませんが、強く鼻をかむことで、せっかく塞がってきた鼓膜が再度破れてしまうこともあります。

自然治癒・手術療法いずれの場合も、鼓膜が完全に再生して閉鎖するまでは、鼻を強くかまないように気をつけましょう。

清潔に保つ

鼓膜が破れた場合、破れたことそのものよりも感染症を併発する方が、厄介です。汗をかいた時には耳の周りを清潔な布で拭い、耳内部も含めてできるだけ乾燥した状態を保っておくことが大切です。

しかし、耳かきは鼓膜を再度傷つけてしまう可能性があるので、避けたほうがベターでしょう。どうしても気になる場合には、耳鼻咽喉科で耳垢を取ってもらうのも方法の一つです。

また、何らかの原因によって、接着したはずの鼓膜が歪んだり、ずれたりすると、そこから耳垂れすることがあります。このような場合は、自己処理よりも病院で適切に処置・消毒してもらうのが安心です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。繊細な鼓膜も、きちんと再生させる人間の身体機能に、驚いた人もいるのではないでしょうか。

音や声が聞こえるということが、どれだけ日常生活に彩りを与えてくれるかというのは、楽器を演奏したり、鳥の声などが好きな人ならば重々承知のことでしょう。

しかし、鼓膜が破れた状態でも、そのまま放置してしまう人もなかにはいるようです。痛みや出血、難聴などの症状がある場合には、できるだけ早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

  
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