花粉症は森林の多い日本にとって国民病ともいえる症状です。実際、あるデータでは日本人の3,000万人、4人に1人が発症しているといわれています。とても多い数ですよね。
さて、花粉症では強い鼻炎のほか、熱症状がみられることがあります。時期としてインフルエンザなんかが考えられることもありますが、そのメカニズムはどうなっているのか。このことについてみていくことにしましょう。
花粉症の熱とアレルギー
花粉症と熱の関係を述べる前に、まずはアレルギーについてお話ししましょう。アレルギーは体の外から入ってきた異物に対して、体がそれを排除する際に起こる反応のことをいいます。この異物をアレルギー物質といいます。必要以上に反応してしまうことで、体に負担や悪影響を及ぼしてしまいます。イネ科アレルギーや、食べ物アレルギーなんかがありますよね。
花粉症もアレルギーの一種です。花粉は体内に入っても無害ですが、それを体が異物として認識して、体外へ排出しようと過剰に反応してしまうことで起こります。防御反応・免疫反応の1つなのですね。とめどなく出る鼻水はまさに排出しようという体の表れなのです。
花粉症で熱が出る?
花粉症で熱が出ることはしばしばあります。
ただ、それはインフルエンザのような高熱を招くことは稀で、基本的に37度程度の微熱で終わることが多いようです。熱を発症する原因は大きく2つ考えられます。
抵抗力の低下
花粉症の時期になると、度重なるアレルギーによって体の免疫能力が低下します。それは防寒の対策や、食事の偏りなどの原因が重なることもあり、積み重なったものが免疫力の低下となることがあります。
特に花粉症に過度な反応が表れる人は、外に出るのでさえ億劫になると思います。体調管理という面でも、体にかなり負担がかかっているかもしれませんね。そういったことが積み重なると熱を発症することがあるのです。
ただ、一時的な体調不良とも言えるので、それほど心配する必要はないでしょう。食事、睡眠をきちんととり、安静にしていれば、熱は自然に下がっていくと思います。
体の生理的反応
体の外から異物が入ってきたとき、免疫システムが働き出します。その中でも白血球はその異物と戦う細胞です。この細胞が体温を上昇させる作用をし、熱を発症するということがあります。
この反応はウイルスに感染したときにみられます。インフルエンザにかかると高熱がでますが、体内では白血球が体温をあげて、ウイルスを排出しようという働きが起きているのです。
ただ、このような場合でも、花粉症で高熱が出るということは稀です。38度以上の熱が出ているようであれば、それはインフルエンザなどの他の感染症を疑った方がいいでしょう。
花粉症と感染症の見分け方
熱は出たものの、それが花粉症なのか感染症なのかわからない…そういったときの判断方法・基準について考えていきましょう。
きちんとした対処が必要なこともあるので注意してくださいね。
発熱
先に述べたように、花粉症でも発熱することがあります。もちろん、感染症でも発熱します。このときの区別は微熱か高熱かということでしょう。37度程度であれば花粉症、それ以上であれば感染症の可能性があります。
特に冬場であれば花粉症あり、インフルエンザありで、どちらかわからなくなってしまうかもしれませんね。そんなときは、まず体温を基準に判断してみてください。
鼻水の濃さ
花粉症の代表的な症状は鼻水ですよね。一般的に、出る鼻水はサラサラとした粘性の低いものです。こういったタイプの鼻水が出続けるようであれば、花粉症と判断してよいでしょう。
一方、感染症の場合は色の濃いドロっとした鼻水を出します。粘着性が高く、鼻づまりを起こしやすく、塊のような鼻水。喉の奥に行ったり、中耳にいけば耳が聞こえにくくなるということもあります。見分け方として鼻水の種類を見ることが一つのポイントです。
咳の有無
花粉症では咳症状はあまりみられません。鼻がむずむずしてくしゃみをすることはありますが、引っかかるような強い咳症状を発症することはないでしょう。喉に痛みが走るということはないのです。
一方、感染症の場合は強い咳症状を発症します。鼻水が喉に流れ込んでしまったり、喉で炎症が起こっていたり。口での呼吸が乾燥を招くこともあります。様々な原因が考えられますが、咳が重なるようであれば注意が必要でしょう。
頭痛
鼻づまりなどの症状がみられると、しばし頭痛を発症することがあります。誰しも経験があるかもしれませんね。鼻詰まりによって頭・脳へ酸素が十分に供給されず、血管が膨張するなどの理由が考えられます。酸欠状態になってしまっているのですね。
一般的な頭痛対策としては薬を飲んで治すなどがあげられるでしょう。しかし、それが花粉症によるものであれば、原因が違うので根本的な治療が必要でしょう。
その他の不調
感染症を発症すると体の火照りや倦怠感、関節痛などを発症します。関節の痛みなどを発症すれば、しばらく動きたくないというような強い気持ちが生まれ、精神的にも辛いでしょう。
花粉症は基本的に目のかゆみ、鼻炎といった頭部に集中した症状を発症します。全身症状を招く感染症とは違うので、判断がつくかもしれませんね。
どちらも体調管理に注意を
花粉症にしても感染症にしても、発症中は体調管理に気をつける必要があります。例えば花粉症では、外に出るとアレルギー反応を起こしてしまいますが、それがきっかけとなって精神的に辛くなることがあります。
それが生活リズムの乱れを招くこともあるでしょう。睡眠時間が短くなったり、食事が偏ってしまえば、それが体調不良の原因になってしまうのです。例えば子供であれば、そういった影響を受けやすいといえます。
感染症もまた十分な体調管理が必要でしょう。特に周囲へうつしてしまわないよう十分気をつける必要があります。症状が重い時は自己判断は控え、病院へいくようにしてくださいね。
もちろん飲酒・喫煙は禁止
花粉症で体調が悪くなっている時でも、飲酒・喫煙をしてしまう人がいます。体に染み付いている習慣ともいえるかもしれませんね。お酒を飲んだり、タバコを吸わなければ落ち着かないのでしょう。
体調不良の時は、当たり前ですが、飲酒・喫煙をしないようにしましょう。症状がより悪化し、治療期間が延びることがあります。仕事や生活に影響を与えることがあるので守ってくださいね。
花粉症で微熱が出てしまったら…
花粉症と思われる微熱を発症してしまったら、どういった対処法を実施すればいいのでしょうか。
冬から春にかけて、気温が変動するこの時期は体調を崩しやすいものです。次のことに気を払ってみましょう。
まずは花粉症のアレルギー対策を
まずは体からなるべく花粉を遠ざけるようにします。体が花粉に過剰反応を起こしているので、その原因から離れることが大切なのですね。対策法として以下のことがあげられるでしょう。
衣類の花粉を処理する
衣類や布団など花粉がつきやすいものがあります。こういったものに掃除機をかけて花粉を取ると、アレルギー反応を抑えることができます。室内の花粉を処理することは大切です。
また、外に出るときは外に出るとき用の衣類を着て、マスクをしましょう。帰ってきたら玄関で着替えるというのも効果的です。自分が思っている以上に花粉が付いているので注意するようにしましょう。
窓から花粉が侵入するのを防ぐ
窓から侵入する花粉は思っている以上に多いものです。きちんと閉めたつもりでも、隙間から入ってくるなんてこともあるでしょう。そのため、戸締りはいつも以上に気を配るようにしましょう。
窓の近くにはカーテンをつけましょう。換気で窓を開けるとき、カーテンをすると花粉避けの効果があります。もちろん、定期的にカーテン掃除をするようにしましょう。
十分な睡眠を取る
花粉症による熱を発症すると、体がだるくなることがあります。ただ、37度と微熱であることから、しばし仕事に行くという人もいるでしょう。仕方のないこともありますが、体を休める必要があります。
そういうときは何より睡眠をきちんと取るようにしましょう。花粉症には抗ヒスタミン薬などが有効ですが、成分に注意しながら市販薬を飲んだりして、いつもより早めの就寝をし、いつもより遅めの起床をしてもいいかもしれませんね。もちろん、夜更かしは厳禁です。
食事をきちんととる
普段忙しいと、どうしても食事がおろそかになってしまうことがあるかもしれません。そういったことが積み重なると、体への栄養が偏り、体調不良を起こしてしまうことがあるでしょう。
花粉症で発熱してしまった時は、いつも以上に食事に気を配ることをおすすめします。市販のインスタントラーメンなどの栄養価が低いものではなく、きちんとした食事を取るようにしてくださいね。
花粉症と発熱の予防対策
発熱をしてしまうと、仕事や日常生活に支障をきたすことがあります。花粉症の症状と合わせて熱が出てしまうと、心身共にかなり辛いでしょう。
では、予防のためにできることはどういったことがあるのでしょうか。予防方法として以下のことがあげられます。
いつも以上に休息を取る
花粉症の時期が来ると、自然と体が反応します。その反応を見て、今年も花粉症の時期が来たと自覚します。寒暖の差があり、体調を崩しやすい時期ですから、まずは意識して休息を取るようにしましょう。
睡眠を多く取る。食べ物に気を配る。ストレスを発散する。これらのことは心身の健康の状態を保つ上でとても重要なことです。反対に体が疲れてしまうと、一気に体調を崩してしまうということもあるでしょう。
室内環境を整える
室内に花粉をいれない工夫と共に、室内環境を整えることが体調を崩さないポイントです。体がゆっくりと休め、リラックスできる環境を作ることが体調管理に直結します。具体的には以下のことに気を配ってみてください。
部屋を加湿する
冬場は乾燥しやすい時期でもあります。朝起きた時、のどがからからに乾いているということもあるでしょう。これは花粉症による熱ではなく、ウィルスの繁殖を助長してしまうこともあります。
加湿器で部屋の加湿を行い、のどや鼻に優しい部屋環境を作ってあげることが、快適に過ごすために必要でしょう。毎年使うものですから、ちょっと高めの加湿器を買ってみるのもいいかもしれませんね。
こまめな掃除をする
室内の花粉処理にもつながりますが、定期的な掃除をするようにしましょう。掃除は室内を清潔に保つことにつながり、花粉が舞ったり、ウイルスの繁殖を抑える効果があります。もちろん、空気を自然に綺麗にすることにも繋がるでしょう。
花粉症を治療をする
アレルギーである花粉症は一度発症すると、一生付き合い続けなければならないと考えられていました。しかし、最近では様々な治療法が登場し、花粉症の症状を緩和することができます。
例えば舌下免疫療法という治療法があります。これは舌の裏側に専用の免疫薬を点滴し、免疫を獲得します。人によっては花粉症の症状を完全に抑えられることがあります。
また、花粉の遺伝子を注入したお米を継続的に食べることで、免疫を獲得する花粉症緩和米というものもあります。実験段階ではありますが、症状緩和に効果が期待されています。
治らないと思っている花粉症が医療の進歩によって治りつつある時代。副作用も少ないので、一度、アレルギー科の医師に相談してみてはいかがでしょうか。
花粉症と似た症状を招く病気
熱や鼻炎などを招く病気は花粉症だけではありませんよね。環境に根ざした病気もあるので、症状が続く時は注意が必要でしょう。具体的には以下の病気が考えられます。
アレルギー性鼻炎
花粉のほか、ハウスダストを原因とするアレルギー性の鼻炎を発症すると、花粉症同様に鼻炎などを発症します。しばし、肌荒れや熱が出ることもあり、心身ともに疲れてしまうかもしれません。
アレルギー性鼻炎であれば、まずは生活環境を変える必要があります。こまめな掃除や、ハウスダストの原因となる衣類を遠ざけるなどがあります。
蓄膿症
鼻腔の奥に膿が溜まってしまう病気です。鼻炎が慢性化すると発症します。鼻水に細菌が繁殖してしまうと炎症を招き、頭痛や鼻腔内の痛みを感じます。しばし、厄介な病気といえるでしょう。花粉症との違いは、症状が長く続くということ。数ヶ月や年単位で症状続くことがあり、患者を苦しめます。
蓄膿症である場合、自身で治療することは難しいでしょう。なので、きちんと医者へ行き、適切な治療を受ける必要があります。放置してしまうと、慢性化し、より治療が困難になるので注意が必要です。
単なる風邪
鼻水や咳が単なる風邪によって引き起こされていることがあります。こういったときは大体、疲れや睡眠不足によって引き起こされることがあります。仕事が忙しかったりすると、どうしても風邪をひきやすくなるものです。
季節の変わり目なんかも体調不良を起こしやすいですよね。夏から秋、そして秋から冬など急に冷え込む時期は衣替えのタイミングもわからないことが多いですから、風邪をひきやすいものです。
風邪をひいた時は、安静にすること。特に睡眠をとることが大切です。また、きちんと換気をするようにしましょう。仕事に行かなければならないこともあるかもしれませんが、無理はしないようにしてくださいね。
そのほかのアレルギー症状
花粉症は花粉にアレルギー反応を示す疾患でした。しかし、人の体は花粉以外にもアレルギー症状を発症することがあります。ハウスダストのほか、食品や動物などがあげられるでしょう。
例えば食品なんかはアレルギー表示されているものがありますよね。程度は低いものの、実はアレルギーだったなんてこともありますから、小さな症状をきちんと汲み取ることが大切でしょう。
動物アレルギーも知らないうちに発症していることがあります。友人宅へ行き、動物を飼っていて、それ以降どうも鼻水が止まらない。そういったことがあるかもしれませんね。こういったときにも注意が必要です。
まとめ
花粉症で発熱症状が出た時、体が弱っている可能性があるでしょう。それは単なる疲れであったり、睡眠不足などが背景にあるかもしれませんね。花粉症はただのきっかけに過ぎないことがあるのです。
一方、症状があまりに重いようであれば、それは感染症の可能性があります。ですから、耳鼻科ではなく内科の病院へ行き、きちんとした治療を受ける必要があるでしょう。放置すると症状は悪化する一方だと思います。
体調が悪い時はきちんと休み、回復に注力しましょう。風邪だったとしても、風邪薬を飲んできちんと治すようにしましょう。くれぐれも無理はしないようにしてくださいね。
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