健康志向の高い人が年々増加している現代、新しいダイエット法や健康法が出るたびにブームになるなど、ある種の社会現象とも言える風潮が見られます。特に、食に関する情報は、多くの人の関心を集め、その安全性や効果についてなどを、気にかける人が増えているようです。
なかでも、最近注目されているの成分の一つに、「デキストリン」と呼ばれる成分があります。これは、食品や飲料などに含まれていることが多く、私たちにとって身近な存在であると言えるでしょう。
そこで、ここでは、デキストリンとはどのような成分なのか、摂取することで得られるメリットやデメリットについてなどを、ご紹介いたします。
デキストリンと難消化性デキストリン
デキストリンは、いくつかのα-グルコースが結合して、別の化合物になったもので、デンプンの1種です。赤ちゃんの離乳食や、ソース、粉末のスープ、スポーツ飲料などによく含まれています。
このデキストリンには大きく分けて「デキストリン」と「難消化性デキストリン」と呼ばれる2種類があり、それぞれ性質が異なります。まずは、この2つの違いについて、見ていきましょう。
デキストリン
デキストリンは、主にトウモロコシやジャガイモなどのデンプンを、酸や酵素、熱などを加えて加水分解することで生成された成分です。
実は、この成分は、私たちの体内でも、食べ物を消化吸収する際に作られている成分なのですが、デンプンよりも分子量が小さく、体内で吸収されやすい状態にしたのがデキストリンです。
先にも述べたように、α-グルコースが結合したものなので、ブドウ糖の数などを変えることで、甘味の強さや粘度を変化させることができるため、様々な種類のデキストリンが存在します。
また、身体に良くないと言われている、添加物の1種だと勘違いする人も多いのですが、あくまで自然の食材(トウモロコシなど)を原料にしている成分なので、添加物ではなく、食品素材の一つであるということも認識しておきましょう。
難消化性デキストリン
デキストリンがデンプン、すなわち炭水化物であるということは、食物繊維と糖質が含まれていることになります。お米にも、食物繊維と糖質が含まれていることを浮かべると、イメージしやすいのではないでしょうか。
一方、難消化性デキストリンは、加熱処理されたトウモロコシやジャガイモなどのデンプンを、アミラーゼと呼ばれる消化酵素で加水分解したものを除去し、分解されなかった成分を取り出したものです。文字通り、消化されにくい成分で、簡単に言うと水溶性の食物繊維ということになります。
難消化性デキストリンは、主に特定保健用食品に多く含まれており、いわゆる「トクホ」と呼ばれる食品や飲料に記載されている成分表を見ると、「難消化性デキストリン」の文字が並んでいることに気がつくかもしれません。
注目されている難消化性デキストリンのメリット
デキストリンの中でも、私たちの健康に嬉しい効果をもたらしてくれる成分として、注目を浴びているのが「難消化性デキストリン」です。
ダイエット効果を謳う食品や飲料などにも含まれていますが、粉末の状態で、健康食品店やインターネットで購入することができるため、料理に加えてオリジナルの健康レシピを考えている人も多くいるようです。
それでは、この、難消化性デキストリンには、どのようなメリットがあるのか、注目されているその効果について見ていきましょう。
血糖値の上昇を抑制する
ダイエットや健康に興味がある人ならば、難消化性デキストリンが食物繊維であるということを聞けば、血糖値の上昇を抑える働きがあることにも納得できるのではないでしょうか。
食事から摂取した糖質は、ブドウ糖に分解された後、小腸で吸収されます。このとき、難消化性デキストリンの働きによって、これらの吸収速度が緩やかになるため、血糖値の上昇を防ぐことができます。
しかし、血糖値の上昇を抑制すると、なぜ身体に良いと言われているのかまで知っている人は少ないかもしれません。
血糖値とは、血液に含まれるグルコースと呼ばれるブドウ糖の濃度を示し、大切なエネルギー源でもあります。血糖値は、インスリンやグルコカンなどの、様々なホルモンによって調節されているのですが、このうち、インスリンの分泌が肥満に大きく影響してきます。
インスリンは、血糖値が高くなると、血糖値を下げる(体内の糖分を減らす)ために、身体の組織に糖分を分けようと作用し、脂肪を溜め込む性質を持っています。
すなわち、血糖値が急激に上がると、インスリンがたくさん分泌され、その結果、体内に脂肪が蓄積するということです。
血糖値の上昇を抑制することは、インスリンの分泌を抑え、肥満や糖尿病などの予防につながるというわけです。
中性脂肪の上昇を抑制する
難消化性デキストリンの嬉しい効果は、糖質だけではなく、脂肪の吸収も緩やかになるという点です。これは、中性脂肪の上昇を抑制することにつながり、肥満や生活習慣病の予防にも効果的であることがわかります。
特定保健用食品で、ダイエット効果を謳うお茶などのCMを見ると、食事とともにお茶を飲むシーンが見られますが、脂っこい食事と一緒に摂取することで、その効果が期待できるためです。
整腸作用がある
難消化性デキストリンは、水溶性の食物繊維です。水溶性の食物繊維は、便のカサを増すだけではなく、水分を保持する性質があるため、便を柔らかくする作用も持っています。そのため、便秘解消には非常に効果的で、また、腸内細菌のバランスも整えるため、健康的な排便をもたらしてくれる効果もあります。
難消化性デキストリンを1日5g~10g摂ると、便通が改善したという報告もあげられているようです。
腸内環境はダイエットだけではなく、肌状態にも大きく影響しているため、美肌効果があるとも言えるでしょう。
内臓脂肪を減らす
一見、痩せていて、スタイル良く見える人でも、内臓脂肪がたっぷりとついているケースも少なくありません。最近では、40代~60代の中高年層の人に限らず、20代~30代といった若い世代の人にも、内臓脂肪がたくさんついている人が増えており、「隠れ肥満」とも呼ばれています。
難消化性デキストリンは、このような内臓脂肪の問題にも、一役買ってくれる優れものなのです。ある試験で、BMI値が23以上の男性に、難消化性デキストリンを含む飲料を摂取させることで、内臓脂肪の低下が確認されたという報告もあります。
食事とともに、これらを摂取する習慣をつけることで、健康や美容において、様々なメリットがあると言えるでしょう。
ミネラル分の吸収を促進する
嬉しいのはダイエット効果だけではありません。難消化性デキストリンには、カルシウムや鉄分、マグネシウム、亜鉛などの吸収を促進するという実験結果も報告されています。
特に、女性は、このようなミネラル分が不足すると、貧血などの症状を招きます。疲れやすい、顔色が悪いなどの症状がある場合は、ミネラル不足が原因として考えられます。
難消化性デキストリンを、バランスのとれた食事とともに摂取することで、ミネラル分の吸収率が上がり、これらの問題を改善に導いてくれることでしょう。
難消化性デキストリンを摂取することによるデメリット
ここまでご覧いただくとわかるように、難消化性デキストリンは、私たちにとって嬉しい効果を多々もたらしてくれる成分です。
しかし、その反面、過剰に摂取しすぎることで、デメリットも生じます。添加物ではなく、食品素材なので、安全性は高い食材ということに間違いはないのですが、以下のような点に注意しておく必要があります。
下痢
難消化性デキストリンは、腸から糖質や脂質が吸収されるのを抑制する効果がありますが、摂取しすぎると、この作用が働き過ぎるため、下痢を引き起こす可能性があります。
下痢をすると、体内の水分バランスや電解質バランスも崩れるため、健康や美容において様々な問題が出てきます。
しかしこれらは、過剰に摂取することで引き起こされる症状ですので、何事もバランスが大切ということですね。
カロリーを抑えるものではない
よく見られるのが、このような成分が、食事のカロリーまでも低減させてくれると認識しているケースです。難消化性デキストリンは、糖質や脂質の吸収速度を緩やかにする効果はありますが、摂取したカロリーを減らすという効果はありません。
いくら食事と一緒に、難消化性デキストリンを摂取していても、食事のカロリーを完全に無視していては、思うような効果を望めないということを、しっかりと把握しておきましょう。
遺伝子組み換え食品の問題
難消化性デキストリンの原料は、トウモロコシとジャガイモが主であることは、先にも述べたとおりです。そのうち、トウモロコシに関しては、日本国内で生産されている量は非常に少なく、その多くがアメリカからの輸入に頼っている状態です。
そして、それらの輸入されたトウモロコシの約9割以上が、遺伝子組み換え食品であると言われています。遺伝子組み換え食品が招く問題について、よく取り上げられているのは、ご存知のことでしょう。
遺伝子組み換え食品は、農薬を大量に噴霧するため、自然環境破壊や汚染などの、今後の農業の在り方についての問題に留まらず、アレルギーやガン、白血病の増加など、健康への悪影響も問題視されています。
難消化性デキストリンを摂取するということは、遺伝子組み換え食品を摂取することであるということを、事前に理解したうえで、摂取することをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。技術の発達により、私たちはいろいろな成分の効果を発見し、さらにはそれらを生成することができるようになりました。
「こんなものがあったらいいのに」と待ち望んでいたような製品が、次々と開発・販売されています。
健康志向が高くなることは、非常に良い傾向とも言えますが、それらの製品がどのような効果をもたらし、また、デメリットとしては、どのようなものがあるのかといったことを、きちんと理解したうえで、それらを摂取するか否かを選択していきたいものですね。