“不妊治療=多額の治療費”といったイメージを持っている方が多く、そのために治療を断念する方もいらっしゃるかと思います。
不妊治療にはいくつかの種類があり、比較的少額でできる保険適用内のものもありますが、高度なものとなると適用外となり経済的な負担も大きくなります。
ここでは、不妊治療の1つである「人工授精」について、かかる費用やメリット・デメリットなどについて説明していきたいと思います。知っておくと得する情報もご紹介!
人工授精について
一般的な不妊治療は、まず排卵誘発剤の使用やタイミング法によって自然妊娠を目指す方法ですが、それでも難しい場合、人工授精→体外受精→顕微授精と段階を踏んで進めていきます。
人工授精ってどんな治療?
まず、精子をあらかじめ採取しておき、排卵予測日に細いカテーテルを用いて子宮の奥深くに注入します。注入にかかる時間は1~2分程度で、基本的に痛みはありません。
人工授精を行った翌日~2日後くらいに排卵があったかどうかチェックし、排卵が確認できれば着床率を高めるために黄体ホルモンを数回にわたって注射する場合が多いようです。
体外受精と同じだと思われるこもありますが、体外受精は、卵子と精子が受精するまでは体の外で人工的に行い、受精卵を子宮に戻します。人工授精は、精子が卵子にたどり着くまでの距離を縮めるにすぎず、その後の受精・着床は自然妊娠と同じです。
男性の精子について、以前は採取したまま子宮に注入していましたが、この方法では妊娠率が低いのに加え、精液内には、細菌なども混入している場合がありますので、ほとんどの施設では遠心分離などによって洗浄濃縮し、元気が良く質の高い精子を選別して子宮に注入する方法が用いられています。
人工授精はどんな場合に行うの?
- 精子の運動や数に問題があり、自然妊娠が難しい
- 勃起障害(ED)や膣内射精障害、セックスレス
- 子宮頸管のトラブルなどで精子が通過しにくい
- 精子を異物として感知してしまう抗精子抗体が陽性である
- 卵管通過障害はないが、タイミング療法で妊娠しない
- 男性、女性両方の検査で異常が認められず、不妊の原因が不明
- できるだけ早く妊娠したいなど、本人の希望がある
人授精にかかる費用は?
日本で人工授精を受ける場合の平均費用は、1回あたり約10,000~20,000円程度です。その他に、正確に排卵日を特定するための超音波検査(エコー検査)にかかる費用、排卵や着床をサポートするために行う注射や薬の費用などがかかってきますので、すべて合わせると30,000円程度となります。
1回で成功すればそれほどかかりませんが、人工授精で妊娠する確率は10%程度と言われており、それほど高くありません。人工授精で妊娠する人は5~6回目くらいに成功する人が多く、そうなると150,000円程度必要となります。7回目以降の成功率が格段と落ちると言われておりますので、年齢にもよりますが、5~6回を超えると他の方法を考える方が多いようです。
保険は使えないの?
タイミング療法や排卵誘発剤による治療までは保険が適用になります。人工授精については、診察・検査・薬には保険が使える場合がありますが、人工授精治療そのものは適用外となります。そうなると、病院の自由診療扱いとなるので、病院側で自由に金額が決められ、ばらつきがでてきます。
人工授精のメリット・デメリット
メリット・デメリットについても知っておきましょう。
メリット
- 1回あたりの治療費が比較的少額
- 時間がかからない
- ほとんど痛みもなく、身体への負担が少ない
デメリット
- 保険適用外
- 妊娠率は5~10%となり、それほど高くない
- 排卵誘発剤を使う場合、多胎妊娠やOHSS(卵巣過剰刺激症候群)になりやすい
- 治療日が直前まで分からないため時間の確保が難しい
助成金はもらえないの?
不妊治療を行っている人に対して、都道府県や市町村が援助をしてくれる“不妊治療助成金”があります。これを利用しない手はないのですが、病院で治療を受けている場合でも、全ての人がもらえるわけではありません。
助成金をもらうには治療方法や収入制限・年齢制限(平成28年4月1日~)・指定された医療機関で治療を行う必要があるなど、様々な条件があります。不妊治療の最初の段階で検査を受けたり、タイミング法を行ってるケースでもらえることほとんどなく、体外受精を行ったり、さらに進んで顕微受精を行ったりする場合が対象となります。ごくわずかですが、人工授精や男性不妊の場合でも助成金を出してくれる市町村がありますので、問い合わせてみるもの良いかもしれません。
医療費控除は受けられる?
多額の医療費を支払った場合には、不妊治療に限らず「医療費控除」というシステムによって支払ったお金(税金)が一部戻ってきます。1年間の医療費が10万円を超えている場合や、年収200万円未満の世帯の場合は、所得金額の5%を超えていれば申告することができます。ご夫妻ともに収入がある場合は、収入の多い方が請求を行うとお得です。
医療費控除の額は、最高でも200万までと定められていますし、すべての治療が対象ではありませんが、支払った際の金額が記載された領収書はすべて保管しておくことが大切です。ちなみに、不妊治療のための鍼灸治療やマッサージも対象となります!
不妊治療の助成金をもらっている場合は、治療費から不妊治療助成金・医療保険から支払われた給付金・高額医療費として支給された金額を引いたものが控除の対象となります。
不妊治療に悩んだら…
不妊治療には、経済的負担に加え、精神的負担もかかってきます。そこで、不妊に悩むカップル・夫婦に対し、不妊に関する医学的・専門的な相談や不妊による心の悩み等について医師・助産師等の専門家が相談に対応してくれたり、診療機関ごとの不妊治療の実施状況などに関する情報提供をしてくれる「不妊専門相談センター」というものを、各都道府県、指定都市、中核市が設置しております。
厚生労働省のHPに“全国の不妊専門相談センター一覧”が載っていますので、「専門家の意見が聞きたい」「助成金や医療機関について詳しく知りたい」「不妊治療に対する不安や悩みがある」「長引く治療に疲れた」「パートナーと意見が合わない」といった方など、一人で悩まず利用してみることをおすすめします。
まとめ
赤ちゃんが欲しいと切実に願う人たちの不妊治療の継続を困難にさせているのが高額な医療費ですが、治療を行えば自然妊娠よりも妊娠する確率は高まります。また、不妊治療は早期原因の発見と対処が大切となり、開始のタイミングは早ければ早いほど良い結果につながると同時に、費用負担も抑えられます。
不妊治療の方法や治療をどのくらい続けるのかなど、パートナーと十分話し合って決めてることが大切となりますが、人工授精数回で妊娠できるのであれば経済的・身体的負担も比較的軽いので、諦らめずチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
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