ジャンクフードばかり食べている、味の濃いものを好むなどの習慣があると、味覚障害を起こす可能性があります。少しづつ症状が進むため、気づいた時には症状が重くなっている事もあります。
関係ないと思って暮らしている方も多いかとは思いますが、近年では若年層の味覚障害が多く起こっており、油断はできません。意外と起こりうる味覚障害について、理由や対策をまとめました。
味覚障害の症状とは
今まで好んで食べていたものがあまり美味しくなくなったり、お料理をされる方であれば「味が変わった」と言われたというような経験はないでしょうか。四味(甘み、酸っぱみ、苦み、塩辛み)の好き嫌いが激しい方の場合、味覚障害を起こしている可能性があります。
味覚障害と一口に言っても、その症状は多岐に渡ります。味が全く分からなくなれば自分でも気が付きそうですが、ある味だけがわからない場合などはなかなか自分では気が付きづらいものです。味覚障害には、様々な症状があります。代表的なものは以下の通りです。
・味覚減退、消失:味の感じ方が鈍くなる、味がないように感じる
・異味症:苦いものを甘く感じるなど、本来とは異なる味を感じる
・自発性異常味覚:何も食べていないのに味覚を感じる
・解離性味覚障害:ある味だけがわからなくなる
・悪味症:何を食べても変な味を感じる
味覚障害が起きる仕組み
舌の表面には「味蕾」という小さな感覚器官があります。この器官が舌に広がっており、ここから神経が脳に味の情報を伝達しています。年齢を追う毎に味蕾は減少し、1/2~1/3程度になるといわれ、そのため歳を取ると味付けが濃くなりやすいのです。
味は大きくわけて4つ、甘味、塩味、酸味、苦味から構成されています。この味蕾の働きが悪くなるか、神経による伝達が上手く行かなくなると味覚障害が起こります。
亜鉛欠乏症による味覚障害
味覚には亜鉛が大きく関わっています。味蕾は新陳代謝を繰り返していますが、この細胞の入れ替わりに亜鉛が大きく働いているため、これが不足すると細胞の若返りができず味覚障害につながるのです。
亜鉛の不足のサインとして以下の項目があります。
・抜け毛が多い
・目が疲れやすい
・疲れやすい
・怪我の治りが遅い
・肌荒れ、シミが目立つ
・爪の変形がある
代謝の激しい器官程亜鉛不足の影響を受けやすいと言えるでしょう。
また、薬剤により亜鉛の代謝に影響を与えると、亜鉛が不足し味覚に障害を及ぼす事があります。リウマチ、高血圧、パーキンソン病などの薬を飲んでいる場合に起こりやすい症状です。投薬の中止により改善されるものですが、回復には時間がかかります。
炎症を原因とするもの
・神経が原因のもの
神経や血管の障害が起こると、味の伝達が上手くいかなくなります。糖尿病などの全心疾患が味覚に影響を与えるのはこのためです。顔面神経麻痺や中耳炎による神経の障害が起こると、同様に味がうまく伝達されず味覚をおかしく感じる事があります。
・口の中の炎症
風邪をひくと味が分かりづらくなる事がありますが、この原因は風邪のウイルスが味蕾の細胞にダメージを与える事です。また、風邪に抵抗するため亜鉛の消費量が増え、(1)の亜鉛欠乏症の原因となる場合もあります。
同様に、舌の炎症、咽頭炎などを起こすと味蕾が障害を受けて味覚障害を来す場合があります。入れ歯による炎症、アレルギー症状や喫煙によるダメージも口の中の炎症を引き起こし、味覚障害の原因となります。
加齢によるもの
前述の通り、味蕾は年齢を重ねるにつれて減少して行きます。55歳以上を目安に味覚の変化が起こりやすく、唾液の分泌が少なくなる事も味覚障害へ影響を及ぼします。
また、女性ホルモンの影響や自律神経のバランスの乱れが舌の炎症につながり、これが味覚に影響を及ぼすパターンもあります。更年期の女性に多い症状です。
心因性のもの
若い方で他に理由が見つからない味覚障害の場合、心因性のものである可能性があります。不安感が味覚障害として現れる事があり、これはヒステリー性味覚脱失症として他とは区別して扱われています。
ただ、元々の原因が心の問題にあったとしても、味覚障害の直接の原因は亜鉛不足にある場合もあります。
ストレスが溜まると活性酸素が生まれますが、これを除去するために必要なたんぱく質をつくるために亜鉛を使ってしまい、亜鉛が欠乏して味覚障害が起こります。また、精神科や心療内科で処方される薬剤には亜鉛が排泄されるのを促進する作用を持つものがあり、これが亜鉛欠乏症につながる場合もあるのです。
味覚障害の対策
様々な原因により起こりますが、その対策としては味蕾を守る事と亜鉛を補う事が上げられるでしょう。
亜鉛が不足しないようにする
まず、味覚障害の大きな原因となる亜鉛の不足を防ぐ必要があります。
・食事で亜鉛を取り入れる
サプリメントでも構いませんが効率はあまり良くないので、亜鉛が多く含まれる食材である、牡蠣、小麦胚芽、全粒粉、レバー、肉類を積極的に取り入れるようにしましょう。クエン酸やビタミンCには、亜鉛を体で吸収しやすい形に変える働きがあるので、一緒に採る事で効率よく亜鉛を取り入れる事ができます。
また、逆にアルコールは分解の際にせっかく採った亜鉛を使ってしまいます。一緒に摂取するのは避けるべきです。
・食品添加物を避ける
食品添加物というとなんとなく体に悪いものだという感覚はありますが、ソーセージやハムなどで使われるつなぎの成分(ポリリン酸)や、酸味料、保存のために添加されるフィチン酸、増粘多糖類であるカルボキシメチルセルロースは、体内で亜鉛と結びつく成分です。亜鉛の吸収を妨げる可能性があるため、できれば避けたい素材です。
味蕾をダメージから守る
味蕾へのダメージを避ける事も同様に重要です。
・舌苔は取り過ぎない
舌の表面に付着した細菌や、口の中からはがれた粘膜細胞等で構成される舌苔は、味蕾を覆ってしまうため味覚に悪影響です。取った方がよいものですが、舌をゴシゴシ磨きすぎると味蕾を傷つけてしまいます。キウイフルーツを使ったタブレット等、適切なものを使って取り除くとよいでしょう。
・辛いものの食べ過ぎに注意しましょう
辛いものは体に悪い事ばかりではありませんが、味蕾にとってはダメージになります。特に、唐辛子の辛味成分は舌の表面を荒らしてしまうため注意が必要です。
・喫煙は控える
タバコでやせたという迷信は、喫煙による味覚障害が原因の一つのようです。喫煙時に出る煙の中には、シアン化水素や活性酸素が含まれており、これが味蕾を傷つけてしまいます。また、タールが舌に付着し、これが蓄積する事で味を感じにくくなる事があります。ただ、幸いな事に味蕾は再生するので、禁煙する事ですこしづつ回復が望めます。できれば早めに喫煙習慣をなくしましょう。
まとめ
若い人にも多くみられる味覚障害ですが、味がわからなくなる等日常の楽しみを奪ってしまうのは避けたいですよね。特に濃い味しか分からないという症状がある場合、調味料の採り過ぎから生活習慣病にもつながりかねない障害です。
味覚の異常は脳腫瘍等、他の病気のサインとなる場合もあります。通常時の味覚を正常に保っておく事で病気のサインを見逃す事なく早期発見ができるので、日常生活から味覚を正常に保つよう対策してみましょう!